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注目の分野・プラクティスで活躍する弁護士より、おすすめ書籍をご紹介。


契約書・仕事術

Selected by 片岡総合法律事務所 高松志直 弁護士、佐藤有香 弁護士

法律学講座双書 債権各論Ⅰ上―契約総論

法律学講座双書 債権各論Ⅰ上―契約総論
平井宜雄 著 2,300円+税(弘文堂、2008)

契約のドラフト作業は、日々の繁忙の中でどうしてもルーティン化しがちです。本書は、そんな忙しい法務パーソンにとって、契約法務の重要性についての気付きを与えてくれます。例えば同書は、契約法学について「特定の取引主体間における権利義務関係を事前[取引開始前]に設計することを主要な任務とするもの」と定義しています。ここで想定されている当事者は、権利義務の設計者として主体的かつ積極的に動く法務パーソンであり、同書を読むと、法律実務を担う者として「ビシッとしなければ」と身が引き締まります。各論的にも、契約解釈をめぐる各種視点が示されており、実務的にも参考になる内容が多く含まれています。日々のドラフト作業において、ちょっとオシャレに、また、より精緻な検討を目指す方々にぜひお薦めしたい一冊です。(高松志直 弁護士)

世界で一番やさしい会議の教科書

世界で一番やさしい会議の教科書
榊巻亮 著 1,600円+税(日経BP社、2015)

本書は、有意義な会議を実現するためのノウハウ(会議ファシリテーション)を紹介する本です。入社2年目の若手社員を主人公としたストーリーに沿って、会議をうまく進めるためのさまざまな技術がわかりやすく説明されています。ファシリテーションと聞くと“会議の進行役が身につけるべき技術”というイメージがあるかもしれませんが、本書では、主人公を含むあらゆる立場の方がすぐに実践できそうな技術が紹介されている点も魅力の一つです。リモート勤務や柔軟な労働時間制度の浸透に伴い、効率的な会議運営のニーズはますます高まっています。いわゆる“会議ノウハウ本”に挑戦してみたけれども挫折した方をはじめ、時間通りに会議を終わらせたい方やより効率的に法律相談を行いたい方など、会議を改善したいと考えるすべての方にお薦めの本です。(佐藤有香 弁護士)

金商法・規制対応

Selected by 三浦法律事務所 山口 亮子 弁護士

ポイント解説 実務担当者のための金融商品取引法〔第2版〕

ポイント解説 実務担当者のための金融商品取引法〔第2版〕
峯岸健太郎 編著 3,600円+税(商事法務、2022)

上場会社の法務担当をはじめとして、金融商品取引法の実務に携わる方向けにわかりやすく書かれた一冊です。2021年の会社法改正で導入された株式交付などの最新論点を含む幅広いテーマを取り上げ、簡潔に規制の概要と実務上問題となる点を記載しており、M&Aや不適切会計などの上場会社の危機管理に際し突然生じる事案に関して、経験の少ない実務担当者であっても論点や関係する規制の概要を把握し、専門家への相談を含むさらなる調査のきっかけをつかむことができます。編著者である三浦法律事務所の峯岸健太郎弁護士は金融庁において金商法施行時の改正作業などに従事しており、そのほかにも検査局、財務局、SESCでの勤務経験を有する弁護士が執筆に参加していることから、当局の目線も踏まえた実務対応も知ることができます。

企業法務のための規制対応&ルールメイキング

企業法務のための規制対応&ルールメイキング
日本組織内弁護士協会(JILA) 監修、里 雅仁ほか 編著 3,500円+税(ぎょうせい、2022)

規制対応・ルールメイキングに関する一般的な手法や実践例を記載した一冊です。日本組織内弁護士協会に所属する企業・官公庁での勤務経験を有する弁護士により記載された弁護士向けの実務書ではあるものの、手に取りやすいボリューム感で平易に記載されており、後半は事例形式で記載されています。比較的新しい分野であるルールメイキングの何たるかをわかりやすくイメージすることができ、弁護士にも規制対応を行う部署の実務担当者にもお薦めの一冊です。事例形式の後半部分についてはレンディングプラットフォーム、投資型クラウドファンディング、フードテック、オンライン診療等が取り上げられており、これらのビジネスに関心を有する方にも一読の価値があります。

税務

Selected by 北浜法律事務所・外国法共同事業 米倉裕樹 弁護士、安田雄飛 弁護士

企業法務で知っておくべき税務上の問題点100

企業法務で知っておくべき税務上の問題点100
米倉裕樹、中村和洋、平松亜矢子、元氏成保、下尾 裕、永井秀人 著 3,800円+税(清文社、2021) 

一見、税務とはかけ離れた案件であっても、隠れた税務問題が潜んでおり、それが落とし穴となって最終解決が困難となり、あるいは新たな紛争の火種となることは少なくありません。そこで、本書では、Q&A方式にて、実際に企業法務に携わる方が知っておくべき留意点・対応策を、法務、税務、両方の観点から、できる限り広範囲に紹介し、わかりやすく解説することに重点が置かれています。具体的には、事業承継、M&A、組織再編、海外取引、外国子会社管理、外国人労働者に関する問題、取引先・役員等に対する債権、役員報酬、グループ会社間での取引、企業不祥事、破産・倒産といったテーマでの留意点・対応策について、法務・税務の両側面から紹介されています。ぜひ企業法務に携わる方々にお薦めしたい一冊です。(米倉裕樹 弁護士)

スタンダード法人税法〔第2版〕

スタンダード法人税法〔第2版〕
渡辺徹也 著 3,000円+税(弘文堂、2019)

企業の実務に密接に関連する法人税ですが、法人税については、法令のほか、裁判例、通達などによる膨大な量のルールが存在し、その全体像を理解することは容易ではありません。しかも、法人税は経済・ビジネスに深く関わるため頻繁に改正がなされ、非専門家にとって、一つひとつの規定や制度の詳細を学んでいくことはそもそも困難であり、また非効率です。本書では、そのような膨大な量で頻繁に改正されるルールの“背後”あるいは“土台”にある考え方について、コンパクトにわかりやすく説明されています。主として初学者向けに書かれた学習書ではありますが、法人税に関わる原理・原則について、効率的に必要十分な理解が得られる良書であり、ビジネスパーソンにこそお薦めしたい一冊です。(安田雄飛 弁護士)

ESG・SDGs

Selected by 森・濱田松本法律事務所 田井中 克之 弁護士

ESGと商事法務

ESGと商事法務
森・濱田松本法律事務所 ESG・SDGsプラットフォーム 編著 2,400円+税(商事法務、2021)

ESGが商事法務と交錯する主要な企業活動ごとに、その現状、課題、取組み等を紹介しています。具体的には、株主対応、取締役会、役員報酬、開示、資金調達(SDGs債、グリーンローンとサステナビリティ・リンク・ローン)、M&A、危機管理(ビジネスと人権)、独禁法・競争法、不動産を取り上げて、各分野を第一線でリードする弁護士がわかりやすく解説したものです。今日、企業活動のあらゆる局面においてESG要素を考慮することは避けて通れなくなっており、一方で、多様な分野におけるESGの議論の進展を網羅的に理解することは容易ではありません。本書は、ソフトカバーのコンパクトな書籍でありながら各分野の基本を押さえることに十分な記述を含んでおり、ESGと法務の接点を掴むことに最適な一冊となっています。

企業価値経営

企業価値経営
伊藤邦雄 著 4,200円+税(日本経済新聞出版、2021)

「伊藤レポート」で著名な伊藤教授が、“資本生産性とサステナビリティをいかにして共に高めるか”という経営テーマに取り組むためのヒントとして、企業価値を会計・財務・経営戦略の三つの視点から総合的に解説しています。全体は3部構成で、「分析編」では、それらの三つの視点からの分析の手法や考え方をわかりやすく紹介し、次の「評価編」では、分析を前提とした企業価値の実際の算定について論じられており、非財務情報やESG情報を用いた評価のあり方も詳述されています。「創造編」においては、分析と評価の理論と実践を踏まえ、“大株主からレターを受け取った企業が価値構造のために奔走する”という架空の設例に基づくストーリーが展開され、読者を引き込む内容になっています。経営環境が激変する今、経営の本質を理解する良書といえます。

→『LAWYERS GUIDE Compliance × New World』を「まとめて読む」
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