【リモートワーク・副業】リモートワークは、“緊急措置”から“平時”における体制整備へ - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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“緊急措置”から“通常の働き方”へ 社内制度とセキュリティの整備が急務

新型コロナによって人々の就労形態が大きく変わった。リモートワークが一気に普及、企業活動がいきなり従業員の自宅に切り出された。「金融関係のクライアントが多いため、当初現場では“従業員に自宅でどの範囲までの仕事をさせられるのか”といった悩みがありましたね」。弁護士法人片岡総合法律事務所の義経百合子弁護士は、コロナ禍に伴う混乱をこう振り返る。
それから2年半。リモートワークが“緊急措置”から“平時”の就労形態としても定着しつつある。労務管理面では、社内規程としての在宅勤務規程の整備が重要になる。リモートワークに関する規程については、「厚生労働省テレワーク総合サイト」に就業規則の雛形が掲載されているが、運用面ではより踏み込んだ検討が必要になるという。「“リモートワーク用端末についたカメラで、就労状況をモニタリングしてよいか”などの相談もよくあります。従業員には職務専念義務があり、会社が職場でそれをチェックできることは当然のことですが、従業員の自宅内でのモニタリングは、プライバシーとの関係で会社の労務指揮権の限界が問われるところです」(義経弁護士)。

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義経 百合子 弁護士

藤田侑也弁護士も、「多様な働き方を認めてリモート会議が選択されるなど、テレワークは定着しています。企業はそれに応じた体制の裏打ちをすることが必須です。個人情報保護委員会や金融庁は積極的に情報発信を行っていますので、Q&Aやパブリックコメントのチェックを欠かさないことが必要です」と指摘する。

情報漏えいリスクには敏感に 監督官庁の発信情報も注視を

職場を離れてのリモートワークでは、当然情報漏えいリスクが高まる。実際にはUSBメモリなど媒体の紛失、クラウドの設定ミスなど人為的なミスが多く報告されているという。「対策づくりとして、まず総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」を参照すべきです」と藤田弁護士は指摘する。
「VPN、リモートデスクトップ等システム構成方式の種別や、オフィスネットワークを経由するか否か等で対策が異なってきます。特にオフィスネットワークを経由せずクラウドサービスに直接接続する場合は、情報漏えいが起こりやすいので、細心のセキュリティ対策が必要です」(藤田弁護士)。

藤田 侑也 弁護士

松澤瞭弁護士は、業種や取り扱う情報の内容・性質に応じて求められるセキュリティレベルが異なると指摘する。「金融庁などでは、個人情報保護委員会のガイドラインに上乗せする形でガイドライン等を策定しています。また、業法に基づく規制もあります。漏えい等報告の対象事案も通常よりも広い場合があるため、留意する必要があります」(松澤弁護士)。

松澤 瞭 弁護士

ガイドラインと実際の事業活動とは乖離しやすい。企業側が運用する際のポイントについて松澤弁護士と藤田弁護士は次のように指摘する。
「人とルールと技術のバランスをしっかり見据えて情報の安全管理体制を整えていく必要があります」(松澤弁護士)。
「見解が異なるパブリックコメントや、関係官庁の委員会議事録のチェックも必要となる場合があります」(藤田弁護士)。
義経弁護士は、企業から寄せられる相談について、「むしろガイドラインに触れられていない部分の相談が多く、他の規制や他社事例を踏まえてお答えしています」と話す。業務の具体的な場面を想定しながらの、社内での洗い出しが必須だ。
さらに、令和2年個人情報保護法改正では、安全管理措置について本人の知りうる状態に置くことが義務付けられた。個人情報を利用する企業に対し本人がアクセスし、情報が安全に取り扱われているかを把握できるように、組織的、人的、物理的、技術的等の安全管理措置を講じ、その状況を公表等する必要がある。「講ずべき安全管理措置の指標は、事業の規模および性質、情報の取扱状況等の要因で変わります」と藤田弁護士は対応の多様さを指摘する。
万一、情報漏えいが発生したら。松澤弁護士は「具体的に、当局への漏えい等報告が必要であるか、またどのように対応すべきかは悩みどころですが、これまでの事例の蓄積や経験等をもとに法的に助言をさせていただきます。また、原因究明に必要な調査等も行わせていただきます」と語る。
労務管理上の対処も必要だ。「端末の回収や確認、従業員に対する人事上の措置、必要に応じて懲戒処分や、その後に紛争化が想定されるような場合でもワンストップで対応します」(義経弁護士)。
同事務所では、情報セキュリティ体制の構築のほか、プライバシーポリシーの改訂や周知徹底のための社内研修など、情報保護分野に加えて、労務分野についてもワンストップで幅広く対応している。

副業の社内規程整備が重要に

義経弁護士が同事務所の弁護士らによる共著書『副業制度の導入と運用の実務』(中央経済社、2021年)でメインテーマの一つとするのが、厚労省が示す「副業・兼業促進に関するガイドライン」が大幅に改定され、従業員に副業を認める追い風となるべく指標が示されたことを踏まえての対応だ。
時間外労働や休日労働について、本業と副業を通算して割増賃金を支払わなければならない場合が想定されるほか、副業に伴う労務管理のためには、副業制度に関する社内規程の整備が重要になる。「法律問題が顕著になるのは、本業も雇用、副業も雇用の場合です。労働時間管理や割増賃金をどうするかという、労働基準法に関わる問題が出てきます」と義経弁護士は指摘する。

“社会を取り巻くあらゆる環境との調和の中で、法律に関する事務を取り扱うことを通じ、より良き法制度の構築と法運用に貢献することによって、多くの人々に対し、多くの善き価値をもたらすこと”を基本理念に、多くの企業を支える弁護士法人片岡総合法律事務所。藤田弁護士、松澤弁護士、義経弁護士は、以下の言葉で締めくくる。
「潜在する法的問題が突如として日常業務で現れてくることは多々あると思いますので、そうしたときの身近な相談先としてご相談いただきたいと思っています」(藤田弁護士、松澤弁護士)。
「ご相談の際には、法令等必要なルールを踏まえつつも、実務対応については、依頼者ニーズに即した柔軟な選択肢をお示しできるよう日頃より心がけています」(義経弁護士)。

→『LAWYERS GUIDE Compliance × New World』を「まとめて読む」
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義経 百合子

弁護士

98年早稲田大学政治経済学部卒業。03年弁護士登録(東京弁護士会)。労働法務(使用者側)を専門とし、そのほか、コーポレート・M&A、争訟・紛争解決、情報法、危機管理・コンプライアンス、弁護士の役員就任・派遣、不動産、新法・法改正対応を取り扱う。著作『副業制度の導入と運用の実務』(共編著、中央経済社、2021年)『就業規則の法律実務』(共著、中央経済社、2007年初版・2010年第2版)。

藤田 侑也

弁護士

17年中央大学法学部卒業、19年慶應義塾大学法科大学院修了。20年弁護士登録(東京弁護士会)。著作『Q&A個人情報保護がよくわかる講座[第2分冊]損害保険業務と個人情報保護〔2022年改訂版〕』(共著、きんざい、2022年)。

松澤 瞭

弁護士

17年中央大学法学部卒業、19年早稲田大学法科大学院修了、20年弁護士登録(東京弁護士会)。著作『Q&A個人情報保護がよくわかる講座[第2分冊]銀行業務と個人情報保護(2022年改訂版)』(共著、きんざい、2022年)。