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はじめに(再掲)

無人航空機(ドローン)は、Covid-19の感染拡大を背景とする非接触型サービス事業へのニーズの高まり、働き手不足、脱炭素、インフラの老朽化・未整備、過疎化への対応といった現在の多様なニーズや社会問題に応えるものとして、国内外において、商用利用とそのための政府による施策・環境整備が進んでおり、関連事業市場の将来的な成長が期待されている。我が国では、インフラ点検や農業等の分野を中心に利用が進んでいるとともに、さまざまな企業によって、機体等の技術開発、新しい事業やそのための実証実験が日々行われている。
そのような現状において、我が国では、第204回通常国会において、2021年6月4日に成立した「航空法等の一部を改正する法律」(以下「新法」という)により、航空法(以下単に「法」と略すことがある)の無人航空機(ドローン)に関する規定が改正され(以下「本改正」といい、本改正の内容を「本改正法」という)、飛行リスクの程度に応じた新しい飛行規制が導入された。有人地帯での補助者なし目視外の飛行(いわゆる「レベル4飛行」)にも途を拓く本格的な商用利用に向けた制度の変更といえ、ドローンの登録制度を導入した2020年の航空法改正(以下「2020年改正」という)注1に続く、ドローン関連の航空法の大きな改正であり、各種ドローン事業への影響も大きいと予想される。本稿は、本改正の内容を2回に分けて検討することを目的とする注2

今回は、前回に引き続き本改正の概要、特に、操縦者技能証明制度および運行管理に関連する新たなルールについて紹介し、最後にドローンの商用利用における本改正の意義・留意点について述べる。

本改正の概要(続き)

操縦者技能証明制度およびその関連制度

(1) 操縦者技能証明制度

第1回1.で紹介した飛行規制の導入に伴い、飛行の安全性を確保するため、ドローンを操縦するのに必要な技能を有することを証明するための操縦者技能証明制度が創設されている注3
技能証明は、カテゴリーⅢの飛行を行うために必須とされる一等無人航空機操縦士に対する技能証明と、カテゴリーⅡの飛行を行うための二等無人航空機操縦士に対する技能証明とに区分され(本改正法132条の42)、国土交通省令で定めるところにより、ドローンの種類または飛行方法についての限定や、身体の状態に応じて条件が付されることもある(本改正法132条の43および132条の44)注4
技能証明を取得するには、一定の欠格事由(本改正法132条の45)等がないこと注5のほか、原則として、身体検査、学科試験および実地試験を受けて合格する必要がある(本改正法132条の47)注6。ただし、下記(2)のとおり、登録講習機関が行う無人航空機講習を修了した場合の特例が設けられている。
技能証明の有効期間は3年とされ、申請により更新することができる。更新の際には、身体適性に関する基準を満たし、下記(2)の登録更新講習機関が実施する更新講習を修了する必要がある(本改正法132条の51)。

(2) 指定試験機関・登録講習機関・登録更新講習機関

ドローンの利活用の進展に伴い、技能証明の取得者の数は多くなることが予想される。そのため、上記の機体認証等の検査事務と同様、技能証明の試験事務を国が行うのはキャパシティ上困難であることが予想される。そこで、国の指定を受けた者への当該試験事務の委託を可能とする操縦士指定試験機関の制度が創設されている(本改正法132条の56以下)。中間とりまとめによると、試験の内容や合否判定の基準等の統一性・公平性を確保する観点から、全国で一者のみを指定する方針のようである注7
同時に、一定水準以上の講習を実施することのできる民間機関が、国土交通大臣の登録を受けて、無人航空機講習を行う登録講習機関の制度が創設されている(本改正法132条の69以下)。登録講習機関が行う無人航空機講習を修了した場合、技能証明に必要な学科試験と実地試験の全部または一部を免除することも可能とされている(本改正法132条の50)。ドローンスクールのノウハウやリソースを、技能証明制度が導入された後も、有効に活用するための制度とされており注8、既に数多く存在している民間のドローンスクールが、登録講習機関の登録申請を行うと予想される。
また、技能証明の更新に必要な更新講習についても、登録講習機関と同様、民間機関が、国土交通大臣の登録を受けて実施する登録更新講習機関の制度が創設されている(本改正法132条の82)。登録更新講習機関における登録要件や手続等は、登録講習機関のものに準じるとされている(本改正法132条の83)。

運行管理に関連する新たなルール

第1回1.で紹介した飛行規制の導入に関連して、ドローンの運行管理に関連する新たな規律がいくつか創設されている。

(1) 立入管理措置を講じる特定飛行中に第三者が立ち入った場合の措置

第1回1.で紹介したとおり、立入管理措置を講じない場合(カテゴリーⅢ)の特定飛行と、講じる場合(カテゴリーⅡ)の特定飛行の法規制の内容が大きく異なることから、立入管理措置を講じた上で特定飛行を行っていた場合に、当該特定飛行中のドローンの下に人の立入り、またはそのおそれのあることが確認された場合には、ドローンの飛行者は、ただちに、当該ドローンの停止、飛行経路の変更等必要な安全措置を講じる義務を有することとなった(本改正法132条の87)注9

(2)飛行計画の通報

ドローンを特定飛行させる場合には、原則として、当該特定飛行の日時、経路その他国土交通省令で定める事項を記載した飛行計画を国土交通大臣に通報する義務を有する(本改正法132条の88)こととなった。国のシステムに登録する等の方法で通報し、飛行経路や日時等についての情報を他の操縦者等と事前共有することが想定されている注10 注11。通報された飛行計画に基づく飛行の安全に懸念がある場合には、国土交通大臣は、飛行日時や経路の変更等について指示することができ、飛行者は、原則として、かかる指示に従う必要がある(同条2項および3項)。

(3)飛行日誌の備置

ドローンを特定飛行させる場合には、ドローンの飛行者は、国土交通省令で定める事項を記載した飛行日誌を備える必要がある(本改正法132条の89)注12

(4)技能証明書の携帯

技能証明を受けた上でドローンを特定飛行させる場合には、ドローンの飛行者は、技能証明書の携帯義務を有する(本改正法132条の54)注13

(5)事故等の場合の措置

ドローンの飛行者は、人の死傷または物件の損壊、航空機との衝突または接触、その他国土交通省令で定めるドローンに関する事故が発生した場合には、ただちにドローンの飛行を中止し、負傷者を救護する等の危険を防止するための必要な措置を講じる義務を有する(本改正法132条の90第1項)注14。かかる事故発生時には、ドローン飛行者は、国土交通大臣に対する報告義務が課せられている(同条2項)が注15 注16、かかる事故に至らない場合でも、他の航空機とのニアミスの場合や、上記事故のおそれがあった場合の報告義務も課せられている(本改正法132条の91)。これらの義務は、特定飛行の場合のみならず、国土交通大臣の許可・承認の対象外のドローンの飛行(カテゴリーⅠ)を行う場合にも対象となる点に留意する必要がある。

施行日

本改正は、新法の公布日から1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される(新法附則1条4号)。

ドローンの商用利用における本改正の意義・留意点

本改正法は、今後策定される国土交通省令等に委任されている事項が相応に残されており、その具体的内容に関する政府の動向には留意が必要であるが、最後に、ドローンの商用利用における本改正の意義・留意点について簡単に言及しておきたい。
まず、レベル4飛行については、上記のとおり、新法が施行されれば、上記カテゴリーⅢに係る要件を充足することにより法律上可能となるが、当該要件を充足することができるかは今後の機体の開発の進捗に大きく関わる注17。また、レベル4飛行に際しては、第三者の諸権利との調整や、航空法以外の許認可の取得も必要になってくるが、関連の議論も進められており注18、今後の官民の取組みが注目されるところである。
次に、現在も商用利用や各種実証実験において行われているカテゴリーⅡの飛行に関しては、新法の施行後に機体認証や技能証明を取得すると、一定重量のドローンの場合を除き、DID飛行、夜間飛行、目視外飛行、30m未満飛行のために、今まで飛行ごとに必要とされていた許可・承認の取得を省略することができ、頻繁に許可・承認申請をしていた事業者にとってはメリットが大きく、新制度の利用は広がると予想される注19。機体認証や技能証明の手続負担がどの程度のものになるかが関心事とはなるが、許可・承認制度の合理化は本改正の目的の一つとされ、上記のとおり、型式認証取得時における機体認証検査の軽減制度や、既存のドローンスクールが担い手となる見通しの登録講習機関による講習修了時における技能証明の学科・実地試験の省略制度等があることから、本改正法のもとで、スムーズな運用が試みられることが予想される。
反面、ドローンの安全管理のための多くの新制度が創設され、ドローン飛行の際に遵守を要する規制が多くなった点に留意が必要である(2020年改正で導入された登録制度も、本改正に基づく制度とほぼ同じタイミングで導入されると予想され、運行に供するドローンの登録も必要となってくる)。航空法は、事業者や運航者が遵守すべき業法であり、複数の脚注で言及しているとおり、違反時には刑事罰が適用されるものも多く、かかる刑事罰は、行為者のみならず法人にも適用されるものが多い(法159条、両罰規定)。機体認証や技能証明には有効期間が設定され、機体認証にはドローンの使用条件が、技能証明にはドローンの種類や飛行方法の限定、条件が付されることもある。有効期間を失効させたり、これらの条件等に反して漫然と飛行させた場合には、法令違反となる。軽微な法令違反に思えても、事故発生時に当該違反があった場合には、事業者の信用により大きなダメージを与え注20、事業継続が困難になってしまうリスクも否定できない。また、本改正により、飛行計画の通報、飛行日誌の備置、事故時の報告に関する各義務等、運行ルールが厳格化された点も特筆するべき点である。
そのため、ドローン事業の実施に際しては、法規制の内容を正確に把握し、いずれも確実に遵守していく必要がある。今後、相当数の機体や操縦者を擁して、相当規模の事業を実施する事業者も増えてくることが予想されるが、この場合は、いずれの機体・操縦者についても法規制を遵守するよう管理する必要があり、遵守体制の整備が一層重要になろう。国内外のドローンの技術の進展やビジネスの動きは早く、これらに対応するため、ドローン関連規制(ハードローのみならず、ソフトローを含む)はしばしば改正・新設されている。したがって、各機体の登録・認証、各操縦者の技能証明、各運行管理に関して、社内ルール、各種マニュアル・チェックリスト等を整備し、最新の規制内容を踏まえて、これらを定期的にモニタリング・検査し、アップデート・改善していくことが重要である。定期的に社内研修を実施したり、遵守体制に関して専門家のアドバイスを求めることも有益であろう。
同様の観点から、ドローン事業者との間で新たな取引関係に入る(ドローンの製造・運行委託のほか、業務提携、出資、M&Aといった取引も考えられる)ことを検討する場合には、当該ドローン事業者の法令遵守体制の整備状況を調査・確認することが重要になってくると思われる。

 


注1  2020年改正は2020年6月24日に公布され、公布日から2年以内に施行されることとなっている。2020年改正の内容については、拙著「航空法の改正に基づく無人航空機(ドローン)の登録制度の概要」(西村あさひ法律事務所ニューズレター2020年6月19日号)を参照。

注2  なお、本稿において意見にわたる部分は、筆者個人の見解であり、筆者が所属する組織の見解ではない。

注3  規定の立付けとして、有人航空機の航空従事者技能証明(法22条以下)に類似したところがある。

注4  違反時には、50万円以下の罰金の対象になる(本改正法157条の9第7号および第8号)。

注5  たとえば、16歳未満の者は技能証明を申請することはできない(本改正法132条の45第1号)。

注6  申請者が試験に合格した場合でも、国土交通省令で定める精神病の場合や、アルコールや麻薬中毒の場合等、国土交通大臣が技能証明を拒否・保留することができる事由も定められている(本改正法132条の46)。

注7  交通政策審議会 航空分科会 技術・安全部会「無人航空機の有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実現に向けた検討小委員会 中間とりまとめ」(2021年3月)(以下「中間とりまとめ」といい、当該検討小委員会を「検討小委員会」という)9頁参照。

注8  中間とりまとめ10頁参照。

注9  違反時は、50万円以下の罰金の対象である(本改正法157条の9第19号)。

注10  中間とりまとめ11頁参照。

注11  違反時は、30万円以下の罰金の対象である(本改正法157条の10第1項10号)。

注12  違反時は、10万円以下の罰金の対象である(本改正法157条の11第2号および第3号)。

注13  違反時は、10万円以下の罰金の対象である(本改正法第157条の11第1号)。

注14  これに違反して、危険を防止するために必要な措置を講じなかった者は、2年以下の懲役または100万円以下の罰金という厳罰の対象になっている(本改正法157条の6)。

注15  違反時は、30万円以下の罰金の対象である(本改正法第157条の10第2項)。

注16  なお、運輸安全委員会設置法上の事故等調査の対象は有人飛行機に限定されていたが、新法に基づき運輸安全委員会設置法も改正され、本文で記載した本改正法132条の90第1項に掲げるドローンの事故のうち、国土交通省令で定める重大事故は、運輸安全委員会の事故等調査の対象に含まれることとなった(改正後の運輸安全委員会設置法2条1項2号)。

注17  現時点では、我が国において、レベル4飛行が可能な国産機体の製造はまだ実現していないようである(2021年5月14日開催の衆議院国土交通委員会での航空局長の答弁)。

注18  この点の詳細については、小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会が策定した「小型無人機の有人地帯の目視外飛行に向けた制度設計の基本方針」(2020年3月)(最終閲覧日: 2021年5月18日)、内閣官房、国土交通省が策定した「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン Ver.1.0(法令編)」(2021年3月)(最終閲覧日: 2021年5月18日)等を参照。

注19  国土交通省に対するドローンの飛行に関する許可・承認申請の総件数において、これらの4種の飛行に関するものが大半を占めるようである。検討小委員会の検討資料(資料3 国土交通省 航空局「中間とりまとめ骨子(案)説明資料」(2020年11月19日))(最終閲覧日: 2021年5月18日)を参照。

注20  岐阜県においてドローンの落下に起因して負傷者が発生した2017年の事件では、ドローン事業者が、業務上過失致傷については不起訴処分となったものの、航空法上の飛行規制の違反があることが発覚し、航空法違反に関する刑事処分を受けている。

掘越 秀郎 氏

西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

1996年一橋大学法学部卒業。1998年弁護士登録。2003年ニューヨーク州弁護士登録。国内外の金融取引、M&A、ジェネラルコーポレート案件に関与するほか、ドローンに関する各種プロジェクトや法規制についてもアドバイスを提供している。