先輩弁護士が薦める読んでおくべき書籍 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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今後の弁護士に求められる素養の一つに「深く精通する専門的な分野を持つこと」が挙げられることも多い。 いま注目される分野・プラクティスで活躍する先輩弁護士のお二人、 弁護士法人御堂筋法律事務所 武井祐生 弁護士/アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 宮本康平 弁護士から、読んでおくべき書籍を教えてもらった。


独禁法を学ぶ!(武井祐生 弁護士)

独占禁止法〔第4版〕

独占禁止法〔第4版〕
菅久修一 編著、品川武・伊永大輔・原田郁 著 4,100円+税(商事法務、2020)

通称「赤本」。独占禁止法分野は判例の蓄積が少ないこともあり、執行機関たる公正取引委員会の考え方や運用が重要です。本書は、公正取引委員会の担当者によって、各種学説の紹介などは捨象し、条文解釈や判例紹介を中心に、公正取引委員会の考え方と運用実務等が端的かつ丁寧に解説されており、一通り独占禁止法の全体像と実務を把握するのにはうってつけの一冊です。

独占禁止法〔第3版〕

独占禁止法〔第3版〕
白石忠志 著 5,600円+税(有斐閣、2016)

独占禁止法は難しい。一見すると異なる規制(違反類型)で構成されているような独特の体系をしており、横串を通して理解することは容易ではありません。本書は、各違反類型の共通要素を抽出し独占禁止法の基本的な考え方を解説した上で、それに沿って各違反類型を網羅的・体系的に整理しており、独占禁止法の理解を深めたい方や実務家には最適の一冊です。本書の概説版として、同著者の『独禁法講義〔第10版〕』(有斐閣、2023)があり、これから独占禁止法を学ぶ入門者にはそちらもお薦めです。

競争法ガイド

競争法ガイド
デビッド・ガーバー 著、白石忠志 訳 3,000円+税(東京大学出版会、2021)

競争法とは何であるか、何ができ、何をしているのか。競争法の規制内容を解説する書籍は数多あれど、その本質を突き詰めた書籍はあまりありません。本書は、日本の独占禁止法を含め、世界の競争法に共通する中核的な意味・法目的を明らかにし、競争法の真の姿を解き明かします。競争法という法律の“内容”ではなく、その“本質”を学べる貴重な一冊です。

eスポーツ/コンテンツビジネスを学ぶ!(宮本康平 弁護士) 

eスポーツの法律問題Q&A

eスポーツの法律問題Q&A
eスポーツ問題研究会 編 2,200円+税(民事法研究会、2019)

eスポーツの法律問題をQ&A方式で解説した一冊です。eスポーツについて法的に解説した書籍がほとんどない中で、法的に論点になりうるところについて全般的に法的分析がされているため、価値のある一冊です。eスポーツの法的論点についておおよその理解ができます。もっとも、本書はしがきでも記載されているとおり、急速に発展している分野ですので、本書で提示されている法的論点はあくまで問題提起として捉えて、読者自らアップデートすることも期待されています。

映画・ゲームビジネスの著作権〔第2版〕

映画・ゲームビジネスの著作権〔第2版〕
福井健策 編、内藤篤・升本喜郎 著 2,500円+税(公益社団法人著作権情報センター、2015)

エンタテインメントと著作権の基本入門書として、映画・ゲームビジネスの成り立ちと著作権の関わりなど、現場で必要となる著作権の知識を平易に解説した一冊です。ゲームビジネスの概観から入り、著作権との関わりについて記載されています。入門的に映画・ゲームのコンテンツビジネスの概略および法的な概説を知りたいときに読んでみると、大まかな理解ができます。

ショウ・ミー・ザ・マネー

ショウ・ミー・ザ・マネー
升本喜郎 著 2,500円+税(ソニー・ミュージックソリューションズ、2001)

アメリカのスポーツ・ビジネスの歴史において、どのような問題が発生し、どのように解決を図ってきたのかについて、スポーツ・エージェントという切り口から、その発展の経緯とともに、法的観点からの実状を学べる一冊です。歴史の浅いeスポーツという分野にとって、歴史のあるスポーツ分野が辿ってきた歴史は参考にすべきものであり、弁護士としてどのように法的課題に関わっていけるかについてのヒントになります。

→『RECRUIT GUIDE 2023』を「まとめて読む

武井祐生

弁護士法人御堂筋法律事務所 パートナー弁護士

06年京都大学法学部卒業、08年京都大学法科大学院修了。09年弁護士登録(大阪弁護士会)、10年弁護士法人御堂筋法律事務所入所。18年弁護士法人御堂筋法律事務所パートナー。国内の談合・カルテルへの対応(リニエンシー、取消訴訟等)や国際カルテル対応(外国競争当局対応、クラスアクションへの対応等)、企業結合審査への対応、独禁法コンプライアンス体制構築サポート等の独占禁止法・競争法分野に加え、M&A・企業再編、争訟・紛争解決、コンプライアンス・企業不祥事を中心に、企業法務全般を取り扱う。

宮本康平

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 アソシエイト弁護士

16年東京大学法学部(私法)卒業。17年同大学法学部(政治)卒業。19年東京大学法科大学院修了。20年弁護士登録(第二東京弁護士会)。18年東京大学法科大学院在学中にeスポーツ世界大会で優勝。専門は企業法務、M&A、eスポーツ/ゲーム。プロゲーミングチームDeToNator所属。