法務で、はたらく。シャープ株式会社 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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事業軸×施策軸で攻めの法務とコンプライアンスを実現

シャープ株式会社は、創業者である早川徳次氏の「まねされる商品をつくれ」という精神を具現化させ、“世界の亀山モデル”と称賛された液晶テレビ等、独自技術の製品を次々に世に送り出してきた。現在は、家電をメインとする“スマートライフ&エナジー”、PCやオフィス関連ソリューションなどを提供する“スマートオフィス”、テレビやスマートフォンを扱う“ユニバーサルネットワーク”の三つのブランド事業と、ディスプレイモジュールや車載カメラを含む“ディスプレイデバイス”と、カメラモジュールやセンサーモジュールの“エレクトロニックデバイス”の二つのデバイス事業をグローバルに展開し、海外拠点は26か国・地域、69社におよぶ。
「ブランド事業とデバイス事業では生産の仕方も販売の仕方も異なるため、法務が扱う契約も多種多様になります。加えて、当社ではすべての契約に法務が関わることが社内ルールとなっていますので、年間5,000件を超える案件に71名の法務部員(男女比6:4)が対応しています」。
山崎理志法務部統轄部長によれば、同社では本社直轄の組織としていわゆる集中型の法務部があり、“訴訟・通商”と“契約知財”、そして事業によって区分けされた“契約・コンプライアンス”A・B・Cの計5グループで構成されるという。「コンプライアンスについては、あえて専門のグループは作らず、五つのグループのスタッフでグループ横断的なチームを作り、特にリスクが大きい独禁法・個人情報保護・贈収賄の防止に力点を置いて全事業横断的に対応しています。さらにM&Aなどの重要な案件や、新規事業、新たに制定された法令への対応などの施策ごとにチームを編成することにより、各スタッフが幅広い業務を経験することができるようにしています。“契約”は事業のアクセル、“コンプライアンス”はブレーキとなる傾向にある中、どちらか一方だけではなく両輪を体験することでバランス感覚を養ってほしいと考えています」(山崎氏)。
法令分野ごとのチームでは、社内ルールの作成・全社教育・関連情報の全社発信・相談対応・監査部門との連携等をはじめとした法令遵守活動を行っているが、自身の興味に応じて複数のチームに所属することが可能だという。また、同社の特性として新規事業や新製品の立ち上げが頻繁に生じるため、たとえばAI関連法対応など、その都度臨機応変にチームが組成される。紛争時には“訴訟・通商”グループのメンバーに加えて当該案件の契約を担当する他のグループメンバーも参画するなど、よりビジネスに即したアウトプットに貢献する。こうした“縦横無尽さ”は、まさに“アメーバ経営”ならぬ“アメーバ法務”といえよう。

山崎 理志 氏

“世界一”の法務組織を目指して

同社法務部におけるキャリアパスについて、山崎氏は次のように語る。「来たるべきボーダーレスの社会においては法務組織の拡充は必須。その中で、多種多様な人材が必要になると考えています。“独禁法が好きだからこれを極めたい”という人もいれば、“企業法務全般に精通したい”という人もいるでしょう。また、人事部門が関わる労働法や調達部門の下請法、品質部門の消費者関連法などに携わりたいという希望があれば、そうした部署を経験して知見を広げてもよいと思います。キャリアは“与えられる”ものではなく、一人ひとりが“考えて作り上げていく”べきものですので、極力本人の希望を考慮するようにしています」。
研修やOJTと同時に、法務部員のさらなる能力向上を図るしくみも設けているという。「人材育成は法務の最重点課題です。そのために取り組んでいるのは、まず“全員のノウハウをオープンにすること”、いわば“法務知のデータベース化”ですね。皆がどんどん知識を入力することで、新人であっても当部が蓄積してきた知見にすぐにアクセスできますし、法務部のグループチャットで誰でも常に質問することが可能で、先輩社員からの回答が得られます。また、毎週水曜日午後に30分、部員が順番に講師を務める全員参加の勉強会を実施しています。このほか、米国ロースクールのサマープログラムへの留学も再開しました」(山崎氏)。
教育体制の強化は、経営陣からの期待値の表れでもある。「鴻海精密工業(台湾)のグループとなって法務部のプレゼンスは格段に上がりました。契約の全件審査のルール化もそうですし、契約・投資・M&A・訴訟紛争などの重要な案件に関して、意思決定手前の審議を行う会議体である“経営戦略会議”にも参画し、法務の意見を伝えています。単に法律上、契約上のリスクの指摘だけではなく、ビジネスとしての勝ち筋も考慮したアドバイスを求められているという意識をもって臨んでいます」(山崎氏)。
そんな同社法務部が掲げるビジョンは、“世界で輝く法務組織への成長”だ。「やるからには、やはり“世界一”を目指したい。“クオリティ”“信頼性”“経営貢献”“楽しさ”など、八つの要素について“No.1”を達成するという目標を掲げています。世界一を目標にした瞬間、他社のまねはできなくなります。若手法務スタッフが海外拠点のスタッフとも一緒に“これで世界一だと言えるのか?”“どうすれば世界一になれるのか?”といった議論を続けていくことで、組織全体としてもよい方向に進んでいけると信じています」(山崎氏)。

求む、“二意専心”で挑戦するリーガルパーソン

同社法務部のモットーについて、山崎氏は「世の中も会社も常に変化しており、同じことの繰り返しでは変化に対応できません。“過去の常識”は“今の常識”ではなく、“今の常識”は“将来の常識”ではない。当社は元々、未知のアイディア探求やフロンティア精神が息づく会社ですので、法務もあらゆることについて“このやり方でよいのか”“もっと他にやるべきことはないのか”とその都度よく考えて、さまざまな新しいことにチャレンジする。その継続こそが重要です。何よりも、それをみんなで楽しめることを大事にしていますね」と笑顔で語る。
同社の経営信条である「二意専心 誠意と創意」には以下の一節がある。「創意は進歩なり、常に工夫と改善を」―これこそ、同社法務部に求められる人物像であるといえよう。

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山崎 理志

シャープ株式会社 法務部 統轄部長
Satoshi Yamasaki

91年シャープ株式会社入社。電子部品事業本部(当時)を経て、96年法務部門に配属。契約関連業務を中心に、イタリアでの合弁会社設立、液晶子会社の株式売却、米国、韓国の大手企業からの出資受入れ、鴻海との資本提携などを担当。19年グローバル法務責任者就任。21年~関西学院大学法学部非常勤講師。