【Web 3 /メタバース】飽くなきチャレンジ精神で、ルールやプラクティスが確立していない先端領域の法的課題に挑む - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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新ビジネスの概念理解とルールメイキングで挑戦者を支援

「近時ややバズワードとなっている“Web 3”“メタバース”ですが、ビジネス上も法的にも既存の概念からの大きなパラダイムシフトであると感じており、事務所としても非常に注目・注力している分野の一つです」。長島・大野・常松法律事務所の松尾博憲弁護士・殿村桂司弁護士の語り口には確かな熱がこもる。
「総合法律事務所として、テクノロジー、知的財産、消費者保護、金融レギュレーション、税務、海外法(NYやアジアの各オフィス)など各弁護士が専門知識を持ち寄ることで、先端領域の法的課題の検討・解決を果たしてきた強みが、直近のWeb 3/メタバース関連案件においても十分に発揮されています」(松尾弁護士)。

松尾 博憲 弁護士

「これまで、プラットフォーム・ビジネスやフィンテックなど新しい技術に基づいた新しいビジネスが興ってきたときも、当事務所の適切なチーム体制が功を奏した実績があります。特に今回は、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)やメタバースなど新しい分野に興味を示すアソシエイト弁護士の多さには驚いており、若手の高いチャレンジ精神は頼もしく感じます」(殿村弁護士)。
夢や理想が先進的であるからこそ、越えるべき現実の問題も“チャレンジング”だ。
「グローバルな市場で日本がいかにプレゼンスを示していくか。自民党デジタル社会推進本部“NFT政策検討プロジェクトチーム”が昨年度末にNFTホワイトペーパーを公表しており、遠藤弁護士と私も作成に関与しています。世界と伍していくためのルール作りはチャレンジングですが、今後も実務で培った経験を政策提言に反映していきたいと思います」(殿村弁護士)。
トークン(暗号資産)を商品として直接取り扱う金融機関から、メタバース(AR/VR)を用いて空間を表現したい不動産業界。Web 3を社会変革と捉えて事業の急成長を図る数多のスタートアップから、有望な投資先を追って還流する豊富な資金。先端案件にリーガル・サービスを提供する各弁護士の語る現場は、決してバーチャルではなくリアリティにあふれている。
「コンテンツの流通やゲーム分野におけるNFTの活用、トークンへの直接出資、ブロックチェーンを用いたDAO(自律分散型組織)的な組織の作り方、メタバース(AR/VR)上の活動から新たに生じる法的問題といった実務的な質問を受けています。また、NFTを最初に譲渡した以降の二次流通・三次流通の段階でも、大元のコンテンツホルダーが収益をあげられるモデルを契約上どう構築するか、複数のプラットフォーマーをまたいで流通するNFTを、技術面に加えて契約上どう引き継ぐか、というリーガル面の整理・検討も興味深いテーマです」(殿村弁護士)。

殿村 桂司 弁護士

「日本で先端ビジネスを展開するにあたり、まずは税制が問題となります。例として、法人が発行されたトークン(暗号資産)を保有しているだけで譲渡していないにもかかわらず評価益に課税されてしまう場合があるなど、税務上のルールの適用が過剰または不明確な部分が多く、その結果起業家や投資者が海外に退避してしまっている現状があります」(遠藤努弁護士)。
「NFTは無体物であるにもかかわらず “所有するもの”という誤解をもって市場に出回り、ユーザー(コンテンツホルダー)が予期せぬ被害を受けるおそれも上述の政策提言で指摘されており、適正取引と投資環境の整備を進める上で弁護士によるクリアな説明は重要と考えます」(松尾弁護士)。
「案件の性質にもよりますが、トークンと従来の株式・債券等との違い、“トークンってそもそも何を買っているのか”といった根本的な質問に的確に回答する力量も求められています。ルールやプラクティスが確立しておらず試行錯誤の段階ですが、投資環境としてはスタートアップ側が優勢であり、投資家側は“このチャンスを逃すまい”として、市場全体がやや過熱気味の状況といえます」(松尾弁護士、殿村弁護士)。

国家から企業へ、企業から個人へ 冷静な視点で方向性を見極める

今後のWeb 3/メタバース業界の行方を見極める上で、キーとなるのはマクロ的な国際社会の視点と個々の関係者の意識変容というミクロ的な観点だ。
「私が主に取り扱っている税務の分野では、課税ルールには国により複数のパターンがあります。欧米の先進諸国では暗号資産やNFTに対する課税のあり方をめぐる議論が深まる一方で、原則非課税としてマーケット活性化を狙うシンガポールのような例もあります。日本は主に欧米の動向を見ながら、他国に比べ不利にならないルール作りを志向するものと推測しています」(遠藤弁護士)。

遠藤 努 弁護士

「技術的な側面が注目されがちですが、GAFAなど巨大ITプラットフォーマーに一極集中していた権限・データ・富の一極集中を個人に取り戻すという大きなパラダイム転換と捉えることも可能です。そうすると、ビジネスモデルや組織のガバナンスの考え方、さらには人々の考え方や行動も変容していくことになると思われるので、それにより既存の法制度・法解釈のうち何を維持して何を変えていくべきか、冷静な見極めが必要です」(殿村弁護士)。
伝統企業とテック・ベンチャーを分かたず、経営戦略の舵取り役である法務担当者にとっても、プレゼンスを示す絶好のタイミングが訪れている。
「拡大するマーケットに参入するメリットとユーザー保護の要請とのバランスを意識することが法務担当者には期待されていますし、動きの速いWeb 3の世界では、法改正の動向にも常に関心をもつ姿勢が望まれます」(遠藤弁護士)。
「“トークン”や“VR/AR”といった新たな技術を用いた新しい取引や当事者間の関係を、まずは既存の法体系やリーガルフレームワークに照らして冷静に分析することは、法務の重要な役割です。その上で、残るリーガルリスクをいかにマネジメントして新しいビジネスをサポートするか。Web 3やメタバースについて網羅的に記された法務関連の書籍は僅少であり、非常に動きの速い世界です。世間のトレンドにアンテナを張られる中で、リーガル面で不明確な部分に知見・助言をお求めの際は、我々にご相談ください」(殿村弁護士)。

→『LAWYERS GUIDE Compliance × New World』を「まとめて読む」
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松尾 博憲

弁護士

04年東京大学法学部卒業。05年弁護士登録(第一東京弁護士会)。09~15年法務省民事局参事官室勤務。法務省民事局では民法(債権法)改正の立案作業を担当。主な取扱分野は、一般企業法務、消費者関連法、民事・商事争訟、テクノロジー関連法務、バンキング、買収ファイナンス。

殿村 桂司

弁護士

04年京都大学法学部卒業。06年京都大学法科大学院修了。07年弁護士登録(第一東京弁護士会)。13年Columbia Law School卒業(LL.M)。13~14年Kirkland & Ellis(シカゴ)。M&A取引、知財関連取引、企業法務全般を中心に取り扱い、TMT業界の案件やテクノロジーの発展が生み出す新しい事業分野の案件にも幅広い経験を有する。自由民主党デジタル社会推進本部「NFT政策検討プロジェクトチーム」ワーキンググループメンバー。経済産業省「スタートアップ新市場創出タスクフォース」構成員。

遠藤 努

弁護士

06年東京大学文学部卒業。09年東京大学法科大学院修了。10年弁護士登録(第一東京弁護士会)。16年Universit of Cambridge卒業(Master of Corporate Law)。17年Vienna University of Economics and Business(Wirtschaftsunivers ität Wien)卒業(LL.M.)。自由民主党デジタル社会推進本部「NFT政策検討プロジェクトチーム」ワーキンググループメンバー。