長島・大野・常松法律事務所 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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成長分野のプロジェクトチームを立ち上げ支援体制の充実を図る

企業が直面する多種多様な法律問題について、国内外で豊富な経験・実績を有する長島・大野・常松法律事務所。同事務所は、大きな成長が期待される業務分野に取り組む所内プロジェクトを2022年に複数発足させた。

大規模化・テクノロジー導入が進む農林水産分野をチーム立ち上げで支援

農林水産法務チームは同事務所が立ち上げたプロジェクトの一つで、少子高齢化に伴う担い手不足やマーケット縮小、ESG投資の拡がりによる同分野の再構築など、ビジネスの変革に応じて必要となる法領域を約20名でサポートする。
チームを立ち上げた背景について、インフラストラクチャー、エネルギー、環境、不動産などの領域を得意分野とする渡邉啓久弁護士は「少子高齢化やウクライナ情勢に伴うフードセキュリティ、ESG投資、ブランディング戦略と知財、輸出レギュレーションなどさまざまな問題を抱えている同分野について、当事務所の幅広い専門性に基づく知見を集約し、サポートできる体制を作ることを目的として発足しました。各々の問題意識に基づいて弁護士がチームに所属しており、個々の知見や関心を集約して農林水産分野の多様なトピックに対応したいと考えています」と語る。
農林水産分野の変革に伴いプレーヤーが変化することで、同分野とはこれまで以上に接点が生まれたという。「これまで同分野の主たるプレーヤーは日本各地に点在する小規模事業者が中心で、当事務所とは接点が少ない状況でした。昨今は事業主が大規模化し企業体を組成することも多く、海外進出やテクノロジーの導入が進むなど、従来とは異なる法的サポートが必要とされるに至っています。他の業界と同様に最新かつ広い視点での法的サポートが必要とされる分野だと考えています」(渡邉弁護士)。

渡邉 啓久 弁護士

農林水産分野を切り口に投資判断や開示を法的観点から整理

M&Aや再編、スタートアップ支援等を得意分野とする笠原康弘弁護士は、ブラジルの法律事務所に在籍時代に、確立した法領域となっている農業分野に触れ、日本でも食品系の企業もクライアントに多く持つ。「農業の輸出支援は、伝統的に輸出企業を多く支援してきた法律事務所の弁護士がサポートしやすい分野といえるでしょう。また、スタートアップへ投資する企業の投資対象が農林水産分野にも広がってきました。顧客と農林水産分野とテクノロジーをマッチングさせたビジネスモデルの法的論点について議論する場面も増えています」(笠原弁護士)。
テクノロジー関連の領域は、海洋資源の保護と水産資源の管理、養殖の分野にも広がっているという。「海洋資源の保護と水産資源の管理、養殖などの分野も、2020年施行の改正漁業法や、国連のレギュレーションの影響が注視されます。特に養殖産業は大規模化やテクノロジー発達による効率化が進む分野であるため、法的な論点についても注視しています」(笠原弁護士)。

笠原 康弘 弁護士

キャピタルマーケットやコーポレートガバナンス分野に強みを持つ宮下優一弁護士は、開示の切り口から農林水産分野に携わっている。「生物多様性や自然資本といったESG分野と関わりの強い農林水産分野を産業として成長させ、ESG投資を呼び込む観点からは、企業情報開示が重要となるでしょう」(宮下弁護士)。
また、企業によるサステナビリティ情報のステークホルダー向け開示基準の開発が急速に進んでおり、これは自然資本・生物多様性に関する情報開示も同様だという。「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)による開示フレームワークの策定が進む中、今後の任意開示・制度開示の双方の動向に留意が必要でしょう。法的な観点からは気候変動開示と同様、ウォッシュの問題やリスク開示などさまざまな論点があります」(宮下弁護士)。

宮下 優一 弁護士

規制の変化とテクノロジー導入で生じる法的問題を得意分野から支援

不動産取引などを取り扱う宮城栄司弁護士は農地規制の変化から農林水産分野に取り組む。「農地規制の緩和を受け、民間事業者による参入が可能となったり、生産管理ノウハウ、作業ノウハウ、作業効率化に先端技術を活用するスマート農林水産業が広がってきました。新規技術に対する法規制の新設・改正に対応する必要があります。脱炭素化や“みどりの食料システム戦略”への対応など、歴史的な転換期を迎えている農林水産分野の最新の動向に適切に対処することが必要でしょう」(宮城弁護士)。
炭素を吸収する観点から注目される木造建築物についても、法務の支援が重要となるという。「技術的に木造建築物の高層化が可能となり、政府も木材利用促進法を改正してカーボンニュートラルの取り組みを進めています。林業でも“エリートツリー”の開発・普及が進められ、好循環が期待されますが、同時に新たな論点も発生しています」(宮城弁護士)。

宮城 栄司 弁護士

ライフサイエンス・ヘルスケア分野のM&A、ライセンス、共同研究開発や規制対応などを中心に取り扱い、厚生労働省への出向経験もある鳥巣正憲弁護士は、食品の安全性や食糧安全保障の観点からの農林水産法務の重要性についても述べる。「ライフサイエンス・ヘルスケアと食品は共通した技術を用いることが多く、バイオテクノロジーの進化が産業構造を変える可能性があります。一方で、新たなテクノロジーにはベネフィットだけでなく安全性等のリスクもあり、関連する法規制をはじめとする国内外の動向を注視する必要があります」(鳥巣弁護士)。
ウクライナ危機などをきっかけに食糧安全保障の確立に注目が集まった結果、農林水産業へのテクノロジー導入は官民問わず盛んに検討されている。「スマート農林水産業、フードテック、バイオテックなど、新しい農林水産業のあり方は国家の安全保障にもつながります。企業法務の視点、出向時代の経験を総合してアドバイスするとともに、必要に応じて政策提言も行っていきたいと考えています」(鳥巣弁護士)。

鳥巣 正憲 弁護士

知的財産に関する国内外の紛争、ライセンス契約などを取り扱う羽鳥貴広弁護士は、同分野から農林水産領域にアプローチしている。「近年はフードテックやアグリテックの分野で多様な知的財産が創出されています。一方で、表示、認可等に関するルールは形成途上ですので、国内外の動向を注視するとともに、ルール形成への関与も重要でしょう。また、新しい技術分野の開発・事業化等におけるスタートアップ企業や大学等との連携における法的支援も欠かせません」(羽鳥弁護士)。
農林水産関連のデータや技術・ノウハウ、ブランド等の保護も重要なポイントだ。「農林水産分野でのデータ利活用の進展が期待される一方で、競争力の維持のために、有用なデータや熟練者のノウハウや技術の法的保護や流出・不正使用防止が必要です。また、農水産品等のブランドの保護も大事です。地理的表示法の制定・改正、種苗法の改正など、農林水産分野の知的財産保護強化の取り組みがされましたが、国内外を問わず契約や知的財産権等を通じて、ノウハウ・技術等やブランド価値を保護し、利潤獲得の機会を守ることが重要です」(羽鳥弁護士)。

羽鳥 貴広 弁護士

スポーツビジネス案件に携わる弁護士がチームで拡大するスポーツ産業をサポート

スポーツにおけるDXやスポーツエコシステムの議論が盛んになる中、政府のスポーツビジネス促進の動きを背景に、企業活動におけるスポーツ領域への法対応の必要性は日々増している。その潮流に応じる形で立ち上がったのがスポーツ法/eスポーツ法チームだ。所属するのは若手弁護士を中心に18名で、スポーツビジネスを営む企業に勤務する元事務所員もチームメンバーとして盛んに意見交換に参加している。
「スポーツビジネスの案件に携わる弁護士が中心となって、さまざまな得意分野を持つ弁護士とともに情報収集および議論を行っています。議論となる法分野によっては、チーム外の弁護士からも知見を得て議論を深めています」と語るのは、ファイナンス分野を得意とする糸川貴視弁護士。スポーツ分野ではスポーツ施設の法務やM&A取引、スポンサーシップ契約に取り組んできた。
同チームに所属する加藤志郎弁護士は、ロサンゼルスのスポーツエージェンシーでの勤務経験があり、業界経験を活かしてスポーツエージェント、スポンサーシップのほか、スポーツビジネス全般、スポーツ仲裁裁判所(CAS)での代理を含む紛争・不祥事などスポーツ法務を広く取り扱っている。「エージェンシーでは、日本人メジャーリーガー等のアスリートのサポートやイベントの企画運営などの経験を積みました。スポーツビジネスは米国が日本よりも進んでいるので、その経験を日本のスポーツ業界に活かし、貢献をしていきたいと思っています」(加藤弁護士)。
世界的にスポーツ業界は新型コロナウイルス感染症流行の影響で一時的に縮小したものの、ポストコロナを見据えて市場は急激に戻りつつある。日本政府も少子高齢化等の影響で他産業が縮小傾向にある中、世界潮流を受けてスポーツ産業のポテンシャルに期待を向けている。これにより、スポーツの関係者およびスポーツに関連する法領域も拡大傾向にある。「従来、一般企業がスポーツに関連するとすれば、典型的なものはスポンサーシップ等のマーケティングでしたが、DXや世界的な新しいサービスの誕生によって、あらゆる法領域での検討が必要になりました。海外が先行しているNFTやスポーツベッティングのほか、メタバース、投資などのアプローチが検討される中で、そのビジネスそのものや法的枠組みを知りたいというニーズもあります」(加藤弁護士)。

加藤 志郎 弁護士

eスポーツ独自の権利処理の論点を幅広い専門性で対応

黎明期といえるeスポーツ分野についても取扱実績を積んでいる同事務所。コンテンツを制作するパブリッシャーや配信サイト運営企業を依頼者層としているという。「配信サイトと配信者であるストリーマーの権利関係の処理、ストリーマーが所属しているチームと配信サイトの権利処理などは、eスポーツ特有の論点だといえます。また、ゲームそのものの規制として風営法への目配りが必要ですし、大会を主催するに際しては景表法、風営法、それから賭博など多角的な論点整理が必要です」(糸川弁護士)。
ビジネスモデルとしては共通する部分も多いという旧来スポーツとeスポーツだが、今後議論が進展すると見込まれる分野も複数あるという。「販売規制など消費者保護の観点は、今後新たなビジネスが促進されるに伴い、射倖性も含めて議論される分野でしょう。eスポーツ固有の分野としては、パブリッシャーが自社の著作物をさらに盛り上げるような仕組み作りなども議論されるでしょう。ストリーマーの炎上など有事対応や著作権侵害を予防するための権利処理の整理なども進むと考えています」(糸川弁護士)。

糸川 貴視 弁護士

専門性の幅と渉外案件の経験を活かし拡大するスポーツ産業の発展に貢献

従来は“相談しやすさ”の観点から小・中規模の事務所への紛争解決に関する依頼が多かったスポーツ法の分野だが、産業として拡大するにつれてさまざまな法分野にまたがる論点の整理が必要となり、大規模事務所のスケールが活かせる場面も増えてきたという。「例えば独禁法や個人情報保護法など、高度で専門的知見が必要な問題が発生した場合には、大規模事務所ならではの連携とノウハウの蓄積で対応が可能です。また、スポーツビジネスは年々国際化しており、国際的な交渉の場面でも渉外業務の経験が豊富な我々がお役に立てる場面が増えています」(糸川弁護士)。

スポーツ法/eスポーツ法チームメンバー

→『LAWYERS GUIDE 2023』を「まとめて読む」
→ 他の事務所を読む

 DATA 

ウェブサイトhttps://www.noandt.com/

所在地・連絡先
〒100-7036 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー
【TEL】03-6889-7000(代表) 【FAX】03-6889-8000(代表)


所属弁護士等:538名(日本弁護士493名、外国弁護士45名)(2022年11月現在)

沿革:2000年1月に長島・大野法律事務所と常松簗瀬関根法律事務所が統合して設立

受賞歴:Chambers Global/Asia-Pacific、The Legal 500 Asia Pacific、IFLR1000、ALB Rankings等の複数の有力な外部機関による部門別評価において各分野にて継続的に高い評価

笠原 康弘

弁護士
Yasuhiro Kasahara

05年東京大学法学部卒業。06年弁護士登録(第一東京弁護士会)。12年Columbia Law School卒業(LL.M.)。14年Machado Meyer Sendacz Opice Advogados(サンパウロ)に勤務。

宮下 優一

弁護士
Yuichi Miyashita

07年大阪大学法学部卒業。09年京都大学法科大学院修了。10年弁護士登録(第一東京弁護士会)。16年University of California, Los Angeles, School of Law卒業(LL.M.)。

渡邉 啓久

弁護士
Yoshihisa Watanabe

07年慶應義塾大学法学部卒業。09年慶應義塾大学法科大学院修了。10年弁護士登録(第一東京弁護士会)。16年University of San Diego School of Law卒業(LL.M.)。

宮城 栄司

弁護士
Eiji Miyagi

07年大阪大学法学部卒業。09年京都大学法科大学院修了。10年弁護士登録(第一東京弁護士会)。15~17年国土交通省勤務。18年University of Southern California Gould School of Law卒業(LL.M.)。

鳥巣 正憲

弁護士
Masanori Tosu

07年東京大学法学部卒業。10年早稲田大学大学院法務研究科修了。11年弁護士登録(第一東京弁護士会)。17年Duke University School of Law卒業(LL.M.)。19~21年厚生労働省勤務。

羽鳥 貴広

弁護士
Takahiro Hatori

11年東京大学法学部卒業。13年早稲田大学大学院法務研究科修了。14年弁護士登録(第一東京弁護士会)。20年Munich Intellectual Property Law Center卒業(LL.M.)。

糸川 貴視

弁護士
Takashi Itokawa

06年京都大学法学部卒業。08年京都大学法科大学院修了、京都大学大学院医学研究科「医学領域」産学連携推進機構勤務。09年弁護士登録(第一東京弁護士会)。15年Duke University School of Law卒業(LL.M.)。

加藤 志郎

弁護士
Shiro Kato

08年慶應義塾大学法学部卒業。10年東京大学法科大学院修了。11年弁護士登録(第一東京弁護士会)。17年University of California, Los Angeles, School of Law卒業(LL.M.)。17~18年B-Global Agency, Inc.(Los Angeles)勤務。

『カーボンニュートラル法務』

著 者:長島・大野・常松法律事務所 カーボンニュートラル・プラクティスチーム[編]、三上二郎・本田圭・藤本祐太郎・服部紘実・宮下優一・渡邉啓久・宮城栄司[著]
出版社:一般社団法人金融財政事情研究会
価 格:2,640円(税込)

『会社分割ハンドブック〔第3版〕』

著 者:酒井竜児[編著]、岩崎友彦・滝川佳代・服部薫・大久保圭・宰田高志・田子弘史[著]、水越恭平・窪木千恵・椎名紗彩・堀川達流[執筆協力]
出版社:商事法務
価 格:7,700円(税込)

『宇宙ビジネスの法務』

著 者:大久保涼[編集代表]、髙橋優・武原宇宙・小原直人・松本尊義・松本晃 ほか[著]
出版社:弘文堂
価 格:2,530円(税込)

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