アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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ビジネス・金融の中心都市ロンドンにオフィスを開設

日本における国際法律事務所の草分けとして1950年代初頭から国内外企業にリーガルサービスを提供してきたアンダーソン・毛利・友常法律事務所注1は、2022年9月1日にロンドンオフィスを開設した。
ロンドンオフィス代表には2013年から2022年にかけてシンガポールオフィス代表を務めた前田敦利弁護士が就任し、ヨーロッパのビジネス・金融の中心都市で業務を開始した。「ロンドンオフィスでは日本法のアドバイスを提供し、英国法をはじめ欧州各国の法律問題については各国の有力ファームと連携して対応します。以前から事務所として世界の主要都市にオフィスを設置していく方向で考えており、その有力候補としてロンドンの名前は挙がっていました。ロンドンオフィスを開設することで、英国・欧州を主な市場とするグローバル企業に対し、M&Aやジョイントベンチャーを通じた対日投資案件や不動産投資案件の日本法アドバイスを提供することが可能になりました。また、グローバル企業の日本でのビジネスに関わる国際紛争案件を支援し、日本進出後に生じるグループ内再編や日本子会社の労働問題などさまざまなアドバイスも実施していきます」(前田弁護士)。
シンガポールオフィスに在籍していた頃から、日本や東南アジア諸国のクライアントはもちろん、欧州のクライアントにも、何十年にもわたりアドバイスを提供してきた。「従前からつながりのある多数の企業にはより深く、密に。また、新たな欧州発の新興企業のサポートにも力を入れていきます。ロンドンオフィスでは、私を含め2名の弁護士が海外企業への日本法アドバイスの窓口になり、依頼者・案件の内容に応じて当事務所内のベストな人材をアレンジし、サービスを提供します」(前田弁護士)。

前田 敦利 弁護士

人とビジネスが行き交うロンドン 利点を最大限に活かして

欧州のグローバル企業、特にテクノロジーを活用した金融サービスを提供しグローバル展開を目指す企業にとって、日本は米国や中国、東南アジアと並ぶ大きなマーケットだ。ロンドンオフィスはそのような企業が日本進出を検討する際に、日本独自の商習慣や法体系を理解し、日本での投資やビジネスを拡大するためのサポートを担う。「グローバル展開する外国依頼者に日本の特徴を理解していただきつつ、日本でのビジネスを拡大していただくことがロンドンオフィスの目的でもあります。また、コロナ禍によるリモートワークの普及で通常業務を行う上で物理的な場所の重要性が相対的に下がりましたが、やはり欧州のクライアントにとって、同じ時差の地域に弁護士がいる安心感は強いと感じます。ロンドンに駐在してから、欧州のクライアントから私の携帯電話に着電することが非常に増えました。そうした意味でも、ロンドンに事務所を開設した意義は大きかったと感じます」(前田弁護士)。
また、世界中のビジネスマンが行き交うロンドンにオフィスがあることは、弁護士同士のネットワークを広げる上でも非常に有用だという。「ロンドンは国際弁護士のネットワーキング集積地です。多数の欧州主要国の主要事務所がロンドンにオフィスを構えていますし、世界中の弁護士がロンドンに頻繁に出張に来ます。50年以上、当事務所が独自に培ってきた世界中のトップファームとの関係をさらに強化することができます。今後、日本企業の各国拠点への進出や各国法のアドバイスにおいて、より一層の利便性を提供できるかと思います」(前田弁護士)。

元プロeスポーツプレイヤー所属のプラクティスグループを設置

アンダーソン・毛利・友常法律事務所は、2022年6月にeスポーツ・ゲーム法務プラクティスグループを立ち上げた。同分野に興味・関心を持つ、多様な専門性を兼ね備えた弁護士が約30名集結し、案件の共有や社内勉強会、セミナーやニュースレターを通じて外部発信といった活動を開始している。
「当事務所はこれまでもゲーム業界およびeスポーツ業界への助言を行ってきましたが、近年、当該業界のクライアントへの助言に加え、これらの業界へ出資等を検討されるクライアントからの法的助言を求めるニーズが高まっているところです。そこで、プロゲーミングチームに所属経験のある宮本康平弁護士を中心にこのような分野を一つの柱としようという経緯で、プラクティスグループを設立しました」と語るのは、加納さやか弁護士。加納弁護士も幼い頃からゲームに親しんできた一人だ。

加納 さやか 弁護士

プラクティスグループ立ち上げの原動力となった元プロゲーマーである宮本弁護士は、現在コーポレートやM&Aを中心にその専門性を高めつつ、eスポーツ・ゲーム法務分野の案件対応や対外発信に努めている。「私は大学院在学中に“ARMS”という格闘ゲームのオンライン対戦をプレイしはじめ、その後ゲームパブリッシャーの公式大会で優勝し、日本で開催された世界大会で5位の成績を収めたところで、プレイヤー仲間から米国での大会出場に誘われました。仲間と出場資金を捻出するためのクラウドファンディングを募っていたところ、日本を本拠地とするプロゲーミングチームであるDeToNatorから声がかかり、プロゲーマーとなりました。チームはその後、ラスベガスで開催された大会で優勝することができました」(宮本弁護士)。
業界のことをよく知る元プロゲーマーである宮本弁護士を窓口に関係者からの相談があることも多い。「外部発信を見たeスポーツ・ゲーム業界の方から、直接私宛にコンタクトをいただき、案件や顧問契約につながったケースもあります。eスポーツ業界は法的対応に苦手意識を持つ人も多い業界です。私が弁護士となったことで、精神的距離が近づき、相談してみることへの安心感を持っていただければ嬉しいですね。また、たとえ私の専門外の知見が必要な場面でも、所内の共有システムに投稿すればすぐに当該分野の専門家と議論を行う場が得られます。eスポーツ業界と専門的な法領域との橋渡しとなれればと思っています」(宮本弁護士)。

宮本 康平 弁護士

eスポーツと既存分野との融合に業界内部の知見を柔軟に活かして

金融庁、大手証券会社法務部への出向経験を持ち、金融機関へのアドバイスやFintech案件を取り扱う長瀨威志弁護士も3歳の頃からゲームに親しんできた。2021年頃からNFTがゲームで活用されるようになると、長瀨弁護士にはさまざまなバックグラウンドを持つ顧客から“新たなゲームを作りたい”という相談が集まるようになったという。「既存の暗号資産交換業者や金融機関、ゲーム会社などから、“ゲームの中のアイテムをNFTにしたい”といったものだけでなく、“プレイヤー間でゲームプレイの結果に応じてトークンを付与できるか”等のeスポーツ的な要素を含む相談も増えてきています。既存の論点だけでなくeスポーツ特有の論点もキャッチアップしていくべきだと感じています」(長瀨弁護士)。

長瀨 威志 弁護士

元知財高裁判所裁判事で訴訟実務を中心に幅広い紛争処理案件を担う早田尚貴弁護士は、将棋で東日本学生名人を獲得した経歴を持つ。「私の専門である知財分野においては、知財案件のクライアントがそのままゲームの案件で相談に来ることはありませんが、eスポーツやNFTには知財の要素が多分に含まれます。プラクティスチームに所属することで、同分野の最新の知見を得ながら、自身の知財や訴訟に関する知見を提供していきたいと考えています」(早田弁護士)。

早田 尚貴 弁護士

既存クライアントであるゲーム業界からも、eスポーツの元プロゲーマーが弁護士として所属していることに対し、期待と信頼が寄せられているという。
「eスポーツや、ブロックチェーンを使ったNFTゲームの知見を手に入れるための手段としての投資契約レビューの依頼や、M&Aを前提とした出資関係の相談が大変増えてきています。業界団体の会合でも、eスポーツやガチャを使ったしくみのゲームはどうしても賭博の論点の検証が必要ですが、内情に通じた宮本弁護士が参加することで実務から乖離した判断はしないだろうという安心感を得ていただいているようです」(長瀨弁護士)。
「“誰の視点か”という点も非常に大事で、トッププレイヤーの視点を反映することで、運営会社や取引会社もいる中で“プレイヤーファースト”としての視点を取り込めることもポイントでしょう」(早田弁護士)。

発展し変わりつつある業界に適格に寄り添い支援を

「eスポーツ・ゲームの世界を俯瞰すると、構成要素は大まかに①ゲームパブリッシャーおよびゲームディベロッパー、②eスポーツチーム、③大会運営組織、④コミュニティに分けられます。eスポーツの大会はパブリッシャーやディベロッパーによるものが“公式大会”と呼ばれます。他にも、大会運営組織によるもの、コミュニティによるものもあり、その場合はゲームパブリッシャーとの権利関係が問題となります」と宮本弁護士は語る。
日本のeスポーツの大会はさいたまスーパーアリーナなど大規模な会場が観客で埋まるほどの盛り上がりを見せているが、海外と比較すると一歩遅れたものになっているという。「日本では賭博関連の規制、風営法による規制や、景品表示法の規制による賞金の低額さなどがeスポーツを盛り上げる上での障害となっています。ファンや文化が醸成されつつあり、投資額も年を追うごとに増えてきているだけに、制度として変化すべき時だと思います」(宮本弁護士)。
“遊び”であるゲームで儲けることはけしからん、という風潮がようやく変わってきたと語るのは長瀨弁護士。「経産省もeスポーツの市場が大きな規模になると見込んで、抽象性の高い風営法の賭博の規定や景表法の問題を解釈で乗り越えようと整理しています。eスポーツは健全に技能を競い合う場だと認識されはじめているのではないでしょうか」(長瀨弁護士)。

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 DATA 

ウェブサイトhttps://www.amt-law.com/

所在地・連絡先
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング
【TEL】03-6775-1000(代表)


所属弁護士等:弁護士等599名(日本法資格弁護士518名、非日本資格弁護士60名(内、外国法事務弁護士15名)、弁理士17名、行政書士3名、司法書士1名)(2022年12月現在)

沿革:1952年設立。2005年、旧友常木村法律事務所と合併。2015年ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業)の主力弁護士と統合。2021年外国法共同事業を開始。2022年9月ロンドンオフィス開設

受賞歴:ALB Japan Law Awards 2022においてInvestment Fund Law Firm of the Year、Equity Market Deal of the Year、M&A Deal of the Year (Midsize)を受賞。Chambers Asia Pacific 2023において、Banking & Finance、Capital Markets、Capital Markets : Securitisation & Derivatives、Competition/Antitrust、Corporate/M&A、Dispute Resolution、Employment、Insurance、Intellectual Property、Life Sciences、Projects & Energy、Real Estate、Restructuring / Insolvency、Osaka General Business Lawの各部門にて高い評価(Band 1 group)。IFLR1000 2022-23において、Banking、 Capital markets – Debt, Equity and Structured finance and securitisation、M&A、Private equity、Project development、 Project financeの各部門にて高い評価(Tier 1)

所属弁護士等による主な著書・論文(共著含む)『ケースでわかる実践「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」』(中央経済社、2022)『人事と税務のクロスレファレンス―会社のコンプライアンスを深化させる新アプローチ』(中央経済社、2022)『スタートアップ法務』(中央経済社、2022)

[注]
  1. 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用しています。[]

前田 敦利

弁護士
Atsutoshi Maeda

98年東京大学法学部卒業。00年弁護士登録(第二東京弁護士会)、アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。04年英国University College London(LL.M.)。05年現Herbert Smith Freehills勤務。08年パートナー。13年シンガポールオフィス代表。22年〜ロンドンオフィス代表。

早田 尚貴

弁護士
Naoki Hayata

90年東京大学法学部卒業。93年裁判官任官、東京地裁判事、東京高裁判事、知財高裁判事、最高裁事務総局行政局第一課長などを歴任。98年Superior Court of New Jersey等で在外研究。12年弁護士登録(第二東京弁護士会)、坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業)オフカウンセル。15年統合によりアンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル。

長瀨 威志

弁護士
Takeshi Nagase

05年東京大学法学部卒業。09年弁護士登録(第二東京弁護士会)、アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。13年金融庁総務企画局企業開示課出向。14年University of Pennsylvania Law School(LL.M., Wharton Business and Law Certificate)。15年国内大手証券会社法務部出向。16年ニューヨーク州弁護士登録。21年パートナー。

加納 さやか

弁護士
Sayaka Kano

08年東京大学工学部卒業。11年東京大学法科大学院修了。12年弁護士登録(第二東京弁護士会)、アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。23年パートナー。専門は企業法務、eスポーツ/ゲーム、エネルギー。

宮本 康平

弁護士
Kohei Miyamoto

16年東京大学法学部(私法)卒業。17年同大学法学部(政治)卒業。18年東京大学法科大学院在学中にeスポーツの世界大会で優勝。19年東京大学法科大学院修了。20年弁護士登録(第二東京弁護士会)、アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。専門は企業法務、M&A、eスポーツ/ゲーム。プロゲーミングチームDeToNator所属。

『ケースでわかる実践「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」』

著 者:アンダーソン・毛利・友常法律事務所 事業再生・倒産プラクティスグループ[著]
出版社:中央経済社
価 格:2,860円(税込)

『人事と税務のクロスレファレンス―会社のコンプライアンスを深化させる新アプローチ』

著 者:仲谷栄一郎・嘉納英樹・下尾裕[著]
出版社:中央経済社
価 格:4,070円(税込)

『スタートアップ法務』

著 者:アンダーソン・毛利・友常法律事務所[編著]
出版社:中央経済社
価 格:2,860円(税込)

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