安傑世澤法律事務所 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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安傑と世澤の合併

安傑法律事務所(安傑)と世澤法律事務所(世澤)は、2022年11月に合併手続を完了し、安傑世澤法律事務所(安傑世澤)に統合された。合併後、安傑世澤は、北京、上海、深圳、広州、香港、海口、南京、廈門にオフィスを置き、中国全土の案件に対応している。約500名の弁護士等の人員体制で、総合法律事務所として、中国のすべての法律分野の業務をカバーしている。同事務所は、独占禁止、紛争解決、M&A、知的財産権、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ、資本市場、労務、医療およびヘルスケア、不動産およびインフラ、エンターテイメント、金融規制、データ・ネットワーク規制、訴訟および仲裁、破産および再生、海運および海商等の分野において豊富な経験と優れた実績を有している。
安傑、世澤それぞれが合併前から十数年間にわたって多くの日系企業に対してサービスを提供してきた。特に、投資・M&A・撤退、独占禁止法・競争法、人事・労務、データ・ネットワーク、知的財産権、紛争解決等の分野において質の高いサービスを提供し、日系企業のクライアントから高い評価を得ている。合併後の安傑世澤日本業務チームはより強力な布陣となっており、董輝弁護士、翁維維弁護士、諸韜韜弁護士、金日華弁護士の4名のパートナーおよび約10名のアソシエイト等のメンバーから構成される大きなチームになった。すべてのパートナーは日本で勤務、留学したことがあり、日系企業の文化を熟知し、チームを率いて日本語で複雑な法的問題を解決することができる。日本業務チームは、事務所のその他のチームと一丸となって、日系企業に対してより便利で使いやすいサービスを提供する所存であるという。

外商投資(外資系)企業の進出・撤退を手厚く支援

「中国への投資(進出)後に撤退を余儀なくされた場合でも、順調な撤退が可能な点は、中国のよい投資環境の一環といえます。外商投資企業の撤退の原因は一概にはいえませんし、時にはいくつもの原因が重なっていることもありますが、主要な原因としては、市場の変化、法律の変化、合弁相手との信頼関係の悪化、または親会社の事情(破産、会社更生、清算、吸収合併等)、または経営期間の満了等が挙げられます」と、董弁護士は中国における外資系企業の撤退事情をこう語る。
「撤退の方法としては、出資持分(または株式)譲渡、解散清算、破産清算または減資等となりますが、これらに共通する問題点は、従業員問題の解決、資産(特に土地使用権と建物)の処分、税務税関関連業務の清算、契約関係の整理、政府部門との交渉等です。我々日本業務チームは、日系企業による新規投資やM&A等の方式により数多くの中国投資(進出)の支援の実績もありますが、同時に撤退案件も数多く取り扱っており、先程述べたすべての撤退方法の経験があります。撤退方法の選択から不動産(土地使用権と建物)売却相手の紹介、従業員との労働契約解除への支援、政府部門への説明や交渉、税務税関への説明、取引相手との交渉、関連登記認可手続の代行まで、すべての手続に参加し、クライアント企業を支援します」(董弁護士)。

日系現地法人のA株・香港株上場

「中国は現在“世界の工場”と“世界の市場”の役割を併せ持つようになっています。生産コストの上昇や米中関係など、さまざまな要因によって中国から撤退した外資系企業もありますが、一部の日系企業を含む多くの外資系企業は、依然として中国を重要な市場や研究開発・生産の重要な拠点と見ており、中国での業務を拡大しています。一方、日本経済の長期低迷に伴い、日本の親会社による中国現地法人への支援は縮小しており、特に事業拡大に必要な資金調達を現地法人が自ら解決するニーズが高まっているのが現状です」。翁弁護士は、中国市場の発展と国際的な立ち位置を踏まえた外資系企業の状況をこう指摘する。
「証券市場は資金調達の重要なルートですが、中国の証券市場は外資系企業にとっては活用しにくいものといえます。これまで、中国A株および香港株(H株)の直接上場は中国証監会がすべて判断し、上場機会を国有企業などの内資企業に多く与えていました。これに対し、一部の外資系企業は、多くの法律上の障害を克服し、間接的な方法(海外SPCやVIEスキームで)で米国や香港などに上場していました。ところが、2019年から上海科創板や深圳創業板、北京証引所が段階的に登録制を試行し、二つのメインボードと新三板も近々登録制を全面的に実施し、海外上場も届出制に転換されますので、企業の上場可否は証取所が判断することとなり、証監会は“監督者”という立場に変化します。また、最近、国務院の部門が、外資系企業によるA株上場での資金調達の支援強化を発表しました。こうした流れを受け、登録制の下で既にA株への上場に成功していたり、証取所から上場承認を受け、証監会の登録手続に入っている日系企業もあります。
一方で、米中関係の不安定化や米国の「外国企業責任法」の規定、米国証取委員会のVIEスキーム上場企業(米国に上場する中国企業の80%以上がVIEスキーム)に対する監督の強化、米国の“ロング・アーム管轄”に対する中国側の警戒などにより、米国上場の中国企業が徐々に香港上場に回帰し、クラスタ効果が形成されています。こうした動きに伴い、香港も上場規則を見直し、香港株の人民元建てメカニズムを徐々に確立し、外商投資企業を含む中国国内企業の香港上場を積極的に受け入れています。現在、中国現地法人がA株と香港株の上場を通じて生産経営の拡大に必要な資金を調達することは、既に有効な手法となりつつあります。さらに、現地法人が中国現地(香港を含む)に上場することは、経営、財務、人材、コーポレートガバナンスなどローカル化の諸問題の解決、日本親会社への依存の最小限化、中国社会での知名度向上につながり、中国市場のさらなる拡大に有利な条件を整えられるといえます。我々と香港オフィスとの協働で日清食品の会社再編による中国事業の香港上場(01475.HK)をサポートした経験もありますので、今後も、当事務所の日本、中国の内陸および香港におけるリソースを十分に活用し、日系企業が中国キャピタル・マーケットを通じてさらに多くの発展のチャンスを獲得するようにサポートしていきたいと考えています」(翁弁護士)。

労働人事業務の対応

「労働人事は中国のすべての日系企業が関わる問題で、企業の日常管理のあらゆる面に関係します。労働人事における問題点は、大きく日常的な労働人事事務(人事制度の制定、日常人事管理など。どの企業にも関係する)、労働紛争処理(労働仲裁、訴訟、訴訟によらない紛争の処理を含む。中国の労働法は労働者を強く保護しており、労働紛争が発生した場合、会社は簡単に敗訴してしまう。労働紛争の処理において、企業は非常に高い負担を強いられることとなる)、大規模な労働事件(ストライキ対応や人員削減など。日系企業の再編や撤退の動きに伴い、この種の案件対応の需要も高まっている。また、この種の案件処理の難易度は非常に高く、再編の類型に応じた法的根拠・人員削減方式を適用する必要があり、どのように従業員と協議をするか、どのようにストライキやデモなどの集団事件を未然に防ぐかなどは、十分な知識と経験を必要とする)の三つに分けられます」と、諸弁護士は外資系企業が直面する労働問題について、こう指摘する。
「我々日本業務チームは労働人事分野でも豊富な経験を有し、これまでに100社以上の日系企業に日常の人事管理、労働紛争解決のリーガルサービスを提供し、労働紛争の勝訴率は司法実践における平均勝訴率を大きく上回っています。
また、日本業務チームでは数十社の日系企業の再編・撤退に伴う従業員の人員整理対応を行っており、これらの人員整理案件ではほぼ円満な解決を実現し、大規模な労働紛争が発生することはほとんどありませんでした。当チームには兼任労働仲裁員も在籍しており、労働紛争に対する当局の立場を熟知し、企業の労働紛争解決を助ける役割を負うだけでなく、『HR全フロー法律顧問』など、労働人事管理に役立つ実用書の執筆にも携わっています」(諸弁護士)。

中国のデータ規制への対応

「中国のデータ規制は、関連法令や国家基準の量が膨大であり、複雑で不明確なところが多く、法的責任が重いのが特徴です。例えば、「データ越境移転安全評価規則」(2022年9月施行)は、データ越境移転に関する政府による安全評価の事由、手続および審査要件等について規定していますが、遡及効があり、施行日以前のデータ越境移転にも適用され、それが“安全評価の事由”に該当する場合には、2023年2月末までに是正しなければならないとされています。日系企業は、こうしたデータ越境移転規制の適用を受け、難しい対応を迫られています」。金弁護士は、急速に整備されつつある中国のデータ規制に苦慮する日系企業の現状をこのように語る。
「デジタル化に伴ってデータの価値が高まる中、中国政府も、データを管理し、データの濫用を防止すべく、データの自由な流通を制限し、名目・記録・安全措置構築等を求めています。公共利益や国の安全に影響を与えるおそれのあるデータの取扱い(一定の量を超える個人情報の中国国外への移転を含む)については、政府の審査が必要となる等、特に厳しい規制がかかっています。資金に対する規制(会計制度や外貨規制等)のように、データを規制しています。
企業側としては、会社のデータ取扱状況の調査(データマッピング)、リスク評価、対応策の検討および実施といった体系的な対応を進めるのが一般的ですが、重大な問題(データ越境移転に関する違反行為等)が既に認識されている場合には、その解決を優先することもあります。我々は、専門知識や豊富な経験を活かし、クライアントの個々の状況に適した対応策を提案していきたいと考えています」(金弁護士)。

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 DATA 

ウェブサイトhttps://www.anjielaw.com

所在地・連絡先
■北京オフィス
〒100600 中国北京市朝陽区東方東路19号亮 馬橋外交弁公大楼D1座19階
【TEL】8610-8567-5988 【FAX】8610-8567-5999
■上海オフィス
〒200031 中国上海市徐滙区淮海中路1010号 嘉華中心28階
【TEL】8621-2422-4888 【FAX】8621-2422-4800
■広州オフィス
〒510610 中国広東省広州市天河区林和中路8号 海航大厦10階1003室
【TEL】8620-8131-6888 【FAX】8620-3702-8033
■深圳オフィス
〒518041 中国広東省深圳市福田区中心四路1号 嘉里建設広場3座21階
【TEL】86755-8285-0609 【FAX】86755-8285-0605


所属弁護士等:パートナー約130名、アソシエイト約370名(2022年11月現在)

沿革:2022年、安傑(2012年設立)と世澤(2004年設立)の合併統合により設立

受賞歴:Chambers and Partners、LEGALBAND、ALB、China Business Law Journal、The Legal500、Benchmark Litigation、Asialaw、Who’s Who Legal、Asian-Mena Counsel等の複数の評価機構から、長年、多くの分野で受賞

所属弁護士等による主な著書・論文(共著を含む):諸韜韜『HR全フロー法律顧問』(共著・編集、法律出版社、2018)、諸韜韜『HR全フロー法律顧問―300個人事核心問題の閲覧マニュアル』(共著・編集、法律出版社、2019)、諸韜韜『対日投資実務指南』(共著・編集、上海訳文出版社、2016)、諸韜韜「会社紛争事例と対応」(The Daily NNAChina Edition所収コラム、毎月1回、2022年12月時点で105回)、金日華『新しい中国民法』(共著、商事法務、2021)、金日華『中国の「個人情報安全規範」について」(共著、国際商事法務2019年7月号所収)、金日華「中国における個人情報保護規制の強化とその対策」(共著、国際商事法務2018年2月所収)

各事務所の所在地:北京、上海、深圳、広州、香港、海口、南京、廈門

董 輝

中国弁護士
Dong Hui

85年華東政法大学法学部卒業。88年華東政法大学法学修士学位取得。88年上海大学文学院法律学科入職(教員)、93年中電輸出入華東公司入職(総経理助手)。97年早稲田大学に外国人研究員として入学。その他、中国の法律事務所を経て、13年〜世澤法律事務所(現安傑世澤法律事務所)パートナー。特に会社法、外商投資、M&A、清算破産、労働法、知的財産権等の分野での経験が豊富であり、中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)仲裁員。

翁 維維

中国弁護士
Weng Weiwei

91年北京大学法学部卒業。97年慶應大学大学院法学研究科修士号取得。日本の大手法律事務所を経て、08年〜世澤法律事務所(現安傑世澤法律事務所)パートナー。特にM&A、会社の解散・清算、コンプライアンス、会社上場、労働紛争、商業賄賂防止、渉外紛争解決等の分野での経験が豊富。

諸 韜韜

中国弁護士
Zhu Taotao

03年華東政法大学法学部卒業。06年華東政法大学法学修士学位取得。日本の大手法律事務所を経て、11年〜世澤法律事務所(現安傑世澤法律事務所)パートナー。特にM&A、労働法、コーポレートガバナンス、訴訟・仲裁等紛争解決等の分野での経験が豊富。

金 日華

中国弁護士
Jin Rihua

06年復旦大学法学部卒業。13年一橋大学国際企業戦略研究科修士号取得、21年同研究科博士課程単位取得退学。日本および中国の大手法律事務所を経て、21年安傑法律事務所(現安傑世澤法律事務所)入所。データ・ネットワーク等の分野のコンプライアンス、投資・M&A・撤退、紛争解決等の分野での経験が豊富。海南国際仲裁院仲裁員。