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はじめに

仮にあなたが“建設残土”に関わる企業(ゼネコン等の元請業者・下請事業者、デベロッパー、工事発注業者、土砂の置場の土地所有業者等)の法務部員や顧問弁護士だったとしよう。そこで、もしあなたが現時点で以下のような“常識”を持っているとしたら、そのこと自体が自社にとってのリスクとなるかもしれない。

① “土砂は廃棄物ではない”という解釈だったはずだから、建設残土について廃棄物処理法は関係しない。

② 建設残土を盛土に使う場合は、地方公共団体が定める盛土条例が適用されることがあるが、仮に違反があっても、拘禁刑(懲役)2年または罰金100万円が限度で、それほど重いものではない。

③ 一時仮置きをすること、工事期間中に土砂を一旦積んでおくこと、処分場ではなく中継地で堆積すること等は、法規制の対象ではない。

④ ③のため、当社の土地を仮置き場所として貸しても特に法的責任が生じることはないはず。

⑤ 建設残土の搬出先が宅地造成の場合は宅地造成法が、森林の場合は森林法が、農地の場合は農地法がそれぞれ関係してくるので、それぞれの区域に応じた法対応を考えていればよい。

⑥ 元請工事業者として、公共工事でいわゆる“指定処分”や“指定利用”がなされている場合には、建設残土の搬出先が指定されているため、その確認が必要となるが、民間の場合や受注者が搬出先を決定できる“自由処分”の場合には、特に搬出先確認は必要なく、下請業者に任せておけばよい。

⑦ 当社は、継続的に大規模な建設工事を発注してはいるが、民間事業者なのだから、基本的には“自由処分”で発注して構わない。建設残土の搬出先を確認する必要もない。

近年、建設残土の不法投棄等が問題となった案件が続き、社会的に問題視されている注1)。
特に、2021年7月に発生した熱海市伊豆山土石流災害を契機として、危険な盛土・残土堆積が人命に直結する社会問題であることが強く認識され、盛土をめぐる法制度は大きく転換した。
2023年5月に施行された「宅地造成及び特定盛土等規制法」(昭和36年11月7日法律第191号)(以下「盛土規制法」という)は、建設残土も利用される盛土行為について、土地の用途やその目的を問わず全国一律の基準で包括的に規制する法律である注2)。
また、資源有効利用促進法(「資源の有効な利用の促進に関する法律」(平成3年4月26日法律第48号))関係の政省令改正および運用強化により、建設発生土の搬出について、元請業者には、

・ 搬出先の法令適合性確認

・ 確認結果票の作成・保存

・ 受領書による搬出確認

・ (一定の場合における)最終搬出先までの追跡確認

が求められるようになった。
本稿では、建設残土をめぐり、近年実務上の論点となっている事項を、

① 建設残土と廃棄物処理法の関係性

② 盛土規制法の施行による変更点

③ 建設工事から発生する土の搬出先の明確化

等について整理し、さらに近時の

④ 盛土規制法に基づく工事停止命令の義務付け仮処分命令の事案

を紹介して、企業・弁護士がとるべき実務対応を示すこととする。

建設残土と廃棄物処理法の関係性

“建設残土”に明確な定義はないが、一般的には「建設工事で穴を掘ったときに出る土砂」注3)と認知されている。
この点、伝統的には昭和46年10月の通達注4)において“「土砂及びもっぱら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの」は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年12月25日法律第137号)(以下「廃棄物処理法」という)の対象となる廃棄物でない”とされたことから、土砂については規制があいまいな状況もあった。
しかしながら建設現場で穴を掘ったときに出るものの中には、そもそも廃棄物に該当する“建設汚泥”も存在し、逆に、地山の掘削により生じる自然由来の純良な土砂については、上記の通達でいうところの「土砂及びもっぱら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの」に当然該当するので、“建設発生土”注5)として、資源有効利用促進法に基づき再生資源として他工事に用いられたり、残土処理場での埋め立てに用いられたりすることとなる。
一方で、廃棄物が土砂に混入している“廃棄物混じり土”注6)については、そのままでは廃棄物としてしか扱いようがないため、通常は、ふるい分けその他の方法で土砂と廃棄物に分別され、一定の品質を有し、周辺環境への影響がないことにより地方自治体の環境担当部局から“分別土”として認定された場合には、「土砂及びもっぱら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの」として建設工事等に有効利用することが可能となるとされる。自治体によっては、わずかな廃棄物でも混入している分別土を“管理分別土”として取り扱い、自治体による個別指定を活用することが求められる場合がある注7)。この管理分別土を含む廃棄物混じり土の分別・分級のフローを図にすると次のようになる(図表1)。

図表1 廃棄物混じり土の分別・分級フロー

出典:建設工事で遭遇する廃棄物混じり土対応マニュアル(案)検討委員会(第5回(平成19年度第2回))資料83頁より引用。

先ほど“建設汚泥については廃棄物に該当する”と述べたが、産業廃棄物たる建設汚泥に中間処理を加えた後の物である“建設汚泥処理物”については、「建設汚泥処理物の廃棄物該当性の判断指針について」との平成17年の通知注8)に加え、令和2年には「建設汚泥処理物等の有価物該当性に関する取扱いについて」との通知注9)がなされ、そこでは「各種判断要素の基準を満たし、かつ、社会通念上合理的な方法で計画的に利用されることが確実であることを客観的に確認できる場合にあっては、建設汚泥やコンクリート塊に中間処理を加えて当該建設汚泥処理物等が建設資材等として製造された時点において、有価物として取り扱うことが適当である」として、建設資材や建設資材の原材料として再生利用されるべき建設汚泥処理物等につき、再生利用先へ搬入される途中で廃棄物から有価物にその取扱いを変更することによって、適正な再生利用が可能となる旨述べられている。
このように、一口に“建設残土”といっても、そもそも廃棄物処理法の適用外となる「土砂及びもっぱら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの」に該当するものから、適切な分別が必要となる廃棄物混じり土、廃棄物である“建設汚泥”を処理して再生利用される“建設汚泥処理物等”までその内容はさまざまである。
そして、本来必要とされる対応を軽視して、廃棄物を“土砂”として取り扱った場合には、廃棄物の不法投棄(廃棄物処理法16条)、無許可営業(同法14条1項)、委託基準違反(同法12条5項)等に問われ、5年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金またはこれの併科が科せられる(同法25条1号、6号、14号等)可能性があり、法人としても3億円以下の罰金刑を受ける可能性があることに留意する必要がある。

法制度の転換―盛土規制法の施行による変更点

2021年7月に発生した熱海市伊豆山土石流災害では、死者28名、住宅被害98棟の被害が発生しており、危険な盛土が崩落することによる被害の甚大さが強く認識され、それまでの宅地造成等規制法注10)(以下「旧宅地造成法」という)では規制できなかった部分にまで規制を及ぼすべく、2022年5月、旧宅地造成法の改正法として盛土規制法が制定(施行は2023年5月)された。

旧宅地造成法と盛土規制法とを比較すると、図表2のとおりである。

図表2 2022年改正による主な改正点

項目

宅地造成等規制法(旧宅地造成法)

盛土規制法(現行法)

法律の目的

主として宅地造成に伴う崖崩れ・土砂流出災害の防止

宅地造成・特定盛土等・土石の堆積に伴う災害防止を包括的に規制

規制対象の土地

主に宅地又は宅地にしようとする土地

宅地・農地・森林等を含め、土地用途を問わず対象

規制区域の考え方

宅地造成工事規制区域を指定して規制

宅地造成等工事規制区域+特定盛土等規制区域を設け、人家等に被害を及ぼしうる区域を広く指定

区域外の扱い

規制区域外は基本的に旧宅地造成法の直接規制が及びにくい

危険性があれば自治体が区域指定の対象にし、隙間のない規制を目指す

規制対象行為

主に宅地造成のための土地の形質変更

宅地造成に加え、特定盛土等、単なる土捨て行為、一時的な土石の堆積も対象

森林・農地での盛土

旧宅地造成法では直接の対象外になりやすく、森林法、農地法で対応

明確に規制対象

許可制度

宅地造成工事規制区域内の宅地造成工事が中心

規制区域内の盛土等を広く許可対象に拡大

施工中の確認

現行法ほど体系的ではない

定期報告、中間検査、完了検査を導入

責任の所在

主として造成行為に着目

土地所有者等の安全維持責務を明確化し、必要に応じて原因行為者にも是正命令可

罰則

抑止力が十分でないとの指摘があった

罰則を強化(最大で拘禁刑3年、罰金1,000万円、法人両罰規定3億円)

盛土規制法の特徴注11)

(1) 隙間のない規制

旧宅地造成法では、規制が必ずしも十分でなかった規制区域について、都道府県知事等が、規制区域を指定できるようにし、かつ市街地や集落、その周辺など、人家等が存在するエリアについて、森林や農地を含めて広く指定できるようになった(盛土規制法10条)。
これまで、森林法、農地法等による規制は存在していたものの、目的も対象も異なる法律での規制では、直接生命・身体の安全を図るという目的が達成できず、かつ各自治体の盛土条例では限界があったところを、隙間のない規制を及ぼすことができるようになった。
具体的な区域指定については、法施行後5年以内に全都道府県に及ぼすべく2025年5月までに約9割の自治体が区域指定を行っており、その後も以下のように指定が進められている。

北海道(14町村以外) → 2026年7月1日に54市町村が区域指定

青森県、青森市、八戸市 → 2026年4月1日に指定

水戸市 → 2026年4月1日に指定

久留米市 → 2026年4月1日に指定

佐賀県 → 2026年1月5日に指定

沖縄県 → 沖縄県、那覇市 → 2026年10月1日に指定

また、旧宅地造成法では、宅地造成等の際の盛土だけに偏っていた規制対象を、単なる土捨て行為や一時的な土石の堆積等にまで拡大した(盛土規制法26条以下)。
この結果、「一時仮置き」「工事期間中だけの堆積」「処分場ではない中継地」といった従来の実務的抗弁は、原則として通用しなくなった。

なお、省令注12)で「工事の施行に付随して行われるものであって、当該工事に使用する土石又は当該工事で発生した土石を当該工事の現場又はその付近に堆積するもの」については許可不要とされており、

・ 主任技術者が工事の管理と合わせて一体管理ができること

・ 工事の工期内の堆積であること

等を満たせば許可が不要である場合もある注13)。
実務上の対応としては、具体的な計画に応じて管轄窓口に確認することが推奨される。

(2) 盛土等の安全性の確保

都道府県知事は、地形・地質等に応じて、災害防止のために必要な許可基準を設定し、施工状況の定期報告、施工中の中間検査、工事完了時の完了検査を通じて、安全対策が講じられているかを確認する必要がある(盛土規制法30条以下)。

(3) 責任の所在の明確化

盛土等が行われた土地について、土地所有者等が常時安全な状態に維持する責務を有することが明確化され(盛土規制法41条1項)、都道府県知事は、災害防止のために必要なときは、土地所有者等だけでなく、原因行為者に対しても是正措置等を命令できることとなった(同2項)。

(4) 実効性のある罰則の措置

盛土条例による罰則の上限より高い水準に強化され、最大で拘禁刑3年以下・罰金1,000万円以下、法人両罰規定3億円以下までの罰則が科される可能性がある(盛土規制法55条以下)。

建設工事から発生する土の搬出先の明確化等

盛土をめぐる現状として、熱海市の土石流事故を機に盛土規制法が施行されたことは記述のとおりだが、盛土による災害の防止に関する検討会の提言注14)では、建設工事から発生する土の搬出先の明確化等が謳われた。
これを受け、資源有効利用促進法に基づく建設発生土の搬出先計画制度が強化されている注15)注16)注17)。

指定利用等の徹底

公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針注18)や公共工事標準請負契約約款注19)の見直しにより、建設発生土の搬出先の名称・所在地を仕様書等に明示し、設計図書や契約で共有する方向が強められている。
また、継続的に大規模な建設工事を発注している民間工事発注者に対しても、指定利用等の実施や、元請業者により適正処理が行われていることを確認するよう求めることとされた。
基本的に、公共工事では指定利用、指定処分が行われることとなり、自由処分の余地はほぼなくなったと考えられる。また、民間工事でも民間建設工事標準請負契約約款の改正注20)等により、大規模な工事では建設発生土の搬出先の明確化が求められることになった。
公共工事標準請負契約約款および民間建設工事標準請負契約約款の改正について、図表3のとおり抜粋しておく。

図表3 公共工事標準請負契約約款および民間建設工事標準請負契約約款の改正の抜粋

公共工事標準請負契約約款の改正

民間建設工事標準請負契約約款(甲)の改正

(八 建設発生土の搬出先等)
[注] この工事に伴い工事現場から建設発生土を搬出する予定である場合は、「建設発生土の搬出先については仕様書に定めるとおり」と記入し、仕様書に建設発生土の搬出先の名称及び所在地を定める。
なお、この工事が資源の有効な利用の促進に関する法律(平成三年法律 第四十八号)の規定により再生資源利用促進計画の作成を要する工事である場合は、受注者は、工事の施工前に発注者に再生資源利用促進計画を提出し、その内容を説明しなければならず、工事の完成後に発注者から請求があったときは、その実施状況を発注者に報告しなければならない

八、その他
注(略)
この工事に伴い工事現場から建設発生土を搬出する予定である場合は、「建設発生土の搬出先については仕様書に定めるとおり」と記入し、仕様書に建設発生土の搬出先の名称及び所在地を定めることが望ましい。建設発生土の搬出先の名称及び所在地を定めることが困難な場合にも、発注者は、受注者により建設発生土の適正処理が行われることを確認することが求められる。
なお、この工事が資源の有効な利用の促進に関する法律(平成三年法律第四十八号)の規定により再生資源利用促進計画の作成を要する工事である場合は、受注者は、工事の施行前に発注者に再生資源利用促進計画を提出し、その内容を説明しなければならず、工事の完成後に発注者から請求があったときは、その実施状況を発注者に報告しなければならない。

建設発生土の計画制度の強化

元請業者は、再生資源利用促進計画の作成に際して、搬出先における許可等の有無、土壌汚染対策法上の手続結果等を確認し、発注者へ説明したうえで現場掲示・記録の保存を行う必要がある。さらに、搬出時には土砂受領書の交付を求め、その内容を確認し、一定の場合には最終搬出先まで記録しなければならない。

発注者の役割

発注者は、建設発生土の適正な処理が行えるよう、契約締結時における適切な費用負担や、予期せぬ費用増が生じた場合の追加負担について元請業者と適切に協議することが求められる。また、継続的に大規模な建設工事を発注している民間発注者についても、公共工事の発注者と同様に、指定利用等の取組を実施し、または元請業者による適正処理を確認するなど、より積極的な役割が期待されている。
このように、発注者、元請事業者ともに、建設発生土の搬出先の明確化のために協力して資源有効利用促進法に基づく建設発生土の搬出計画制度に沿った対応を行う必要がある。

盛土規制法に基づく工事停止命令の義務付け仮処分命令

2026年3月31日、東京地方裁判所は渋谷区に対して、東京都渋谷区富ヶ谷1丁目で進行中のマンション建設工事に関し、盛土規制法に基づく工事停止命令を事業者に対して発するよう義務づける仮処分命令を下した。渋谷区はその後、同年4月6日付けで同法20条2項による工事停止命令を行ったことを公表し、4月7日には即時抗告を行った旨を報告している注21)。
渋谷区側は、“マンション建設に向けた一時的な堆積であるから盛土規制法の許可は不要である”との主張を行ったが、裁判所は、同法12条1項の許可を得ないで工事を行う業者に対し、同法20条2項に基づき工事停止命令を発することを仮に義務付ける旨の判断を示した、盛土規制法についての行政の運用をめぐって司法判断がなされたのは本件が初めてであると報じられている注22)。
発注者、元請事業者の観点からは、着工前の規制区域の指定状況の確認、許可対象か否かの確認等が必要かつ重要であることを、直近の司法判断は強く示唆している。

企業法務の実務対応

これまで述べてきた一連の法制度の改正に伴い、企業法務において新たに留意すべき点や、新たに必要となる主な手続をまとめると、図表4のとおりである。

図表4 当事者ごとの留意点と手続

当事者

新たに留意すべき点

新たに必要となる主な手続

元請事業者

搬出先の適法性確認を下請任せにせず、現場側・搬出先側双方の規制区域指定、許可・届出要否、一時仮置き該当性までを着工前に確認する必要がある。

再生資源利用促進計画の作成・提出・説明・掲示、確認結果票の作成、運搬業者への通知、受領書の交付請求・確認・保存、一定の場合の最終搬出先までの追跡記録・保存を行う。

発注業者

公共工事では指定利用・指定処分、民間でも大規模・継続的発注では搬出先の明確化と元請による適正処理確認が求められる。費用負担面でも関与が必要である。

仕様書等への搬出先の明示、元請への必要情報の提供、再生資源利用促進計画の受領・説明聴取、実施状況報告の受領、適正処理費用の見積り・追加協議を行う。

下請業者

搬出実務を担うことが多いため、元請の確認・記録義務に協力し、元請確認前に独自判断で搬出先や仮置場を手配しない運用が必要である。

搬出先候補・搬出方法等の事前報告、運搬・受入実績の記録協力、受領書取得・追跡記録への協力、受入地で堆積等を行う場合の許可・届出要否確認を行う。

土砂の受入地の所有者

土地を貸すだけでも安全維持責務や是正命令対象となり得るため、受入地の規制区域指定、盛土・土石堆積の許可・届出要否を事前に確認する必要がある。

必要な場合の許可取得・届出対応、搬出先管理者としての受領書交付体制整備、受入後の安全管理・是正対応を行う。

元請事業者の留意点

(1) 盛土規制法適用の確認

盛土規制法との関係で、現場側、搬出先の双方についての規制区域指定の有無、許可・届出の要否を着工前に確認する。特に一時仮置きでも許可が必要な場合があることに留意すべきである。

(2) 再生資源利用促進計画の作成・提出・説明・掲示

対象工事を実施するにあたり、元請事業者は、再生資源利用促進計画を作成し、発注者に提出・説明し、現場に掲示しなければならない。

(3) 確認結果票の作成

500m³以上の建設発生土を搬出する工事では、搬出前に、搬出先における盛土規制法上の許可・届出の有無などの必要に応じた土壌汚染対策法等の手続状況を確認し、その結果を確認結果票に書面化しておく必要がある。

(4) 運搬業者への通知

建設発生土を運搬する者に対し、搬出先の名称・所在地・搬出量および確認結果票の内容を通知する。

(5) 受領書の交付請求・確認・保存

搬出先への搬出後、搬出先管理者に受領書の交付を求め、計画記載の搬出先と一致しているかを確認し、受領書(または写し)を5年間保存する。

(6) 最終搬出先までの追跡記録の作成・保存

建設発生土が計画記載の搬出先からさらに他へ搬出された場合は、その都度、最終搬出先までの追跡ができるよう、搬出先名称・所在地・搬出量等を記載した書面を作成・保存する(ただし、登録ストックヤード等の例外はあり)。

発注業者の留意点

(1) 指定利用・指定処分の徹底

公共工事、民間工事を問わず、大規模、継続的な工事の発注者においては、指定利用・指定処分の徹底が求められる。
※元請業者としては、建設発生土が適正処理できるよう必要な情報を提供し、費用負担面でも協議に応じる必要がある。

(2) 搬出先の明示

建設発生土を搬出する工事では、搬出先の名称・所在地を仕様書等に明示する。
※民間工事で、明示が困難な場合であっても、元請事業者による適正処理の確認が求められる。

(3) 元請事業者への必要情報の提供

搬出元工事側(元請事業者)が確認結果表を作成できるように、土壌汚染対策法等の手続状況、受入地側の盛土規制法・条例等の手続状況に関する情報を提供する。

(4) 元請事業者から提出される再生資源利用促進計画の受領・説明聴取

対象工事では、元請事業者から再生資源利用促進計画の提出とその内容説明を受け、完成後、実施状況報告を受ける必要がある。

(5) 適正処理費用の負担・追加協議

契約時に運搬費・処分費等を適切に見積もる。
※予期せぬ費用増が生じた場合には、元請事業者と追加負担について適切に協議することが求められる。

下請業者

資源有効利用促進法上の再生資源利用促進計画の作成主体や確認義務の中心は元請事業者だが、実務上は下請業者が搬出や現場管理を担うことが多いため、元請業者の確認・記録義務に協力する体制が必要となる。

(1) 元請事業者への情報提供・事前協議

建設発生土の搬出先候補、搬出方法、仮置場利用の有無等を元請事業者に事前報告し、確認結果票・計画作成に必要な情報を提供する。

(2) 運搬・受入実績の記録協力

建設発生土の実際の搬出量、搬出日、搬出先、受入状況を元請事業者が受領書で確認・追跡記録できるように整理・報告する。

(3) 無許可・無届けの受入地への搬出回避

建設発生土の仮置場・中継地・残土処分場等について、元請事業者の確認前に下請業者の独自判断で搬出しない運用が必要となる。実際に受入地で堆積等を行う場合には、盛土規制法上の許可・届出の要否を確認する。

土砂の受入地の所有者

(1) 土砂を受け入れる際の許可・届出の要否確認

建設発生土の受入地が規制区域内で、盛土・切土・土石堆積が一定規模に達する場合、自治体の許可または届出が必要となる。土地所有者として、受入行為を行う者任せにせず、許可・届出の有無を確認すべきである。

(2) 受領書対応(搬出先管理者として)

搬出先管理者として、元請事業者から受領書の交付請求を受ける立場になるため、搬入量・搬入日・管理者名等を記載した受領書を交付できる管理体制が必要となる。

(3) 安全維持・是正命令対応

盛土規制法では、土地所有者も行政からの改善命令・是正命令等の対象となりうる。このことを前提に、建設発生土の受入後も土地を常時安全な状態に維持し、危険があれば是正対応をとる必要がある。

おわりに

建設残土に関しては、元請事業者、発注者、下請事業者、土砂の受入地の土地所有者のいずれの立場からも、2021年7月の熱海土石流災害を契機に強化された各法規制を十分理解し、対応する必要がある。
法務部員・弁護士に求められるのは、最新法令の理解、技術的実態への理解、そして事後対応のみではなく予防法務である。盛土規制法時代において、「知らなかった」「前からこうしていた」は通用しないであろう。
Ⅴで紹介したように、盛土規制法への対応が不十分であったとして司法が直接自治体に「NO」を突きつけた事例があることも踏まえ、各事業者においても、法務部門が主導するリスク管理が不可欠であると考えられる。契約書の内容の再確認や現場手順に何を盛り込むかについて、事業者ごとの対応が求められる。

→この連載を「まとめて読む」

  1. 総務省行政評価局「建設残土対策に関する実態調査 結果報告書」(令和3年12月)。[↩]
  2. 国土交通省ウェブサイト「「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)について」。[↩]
  3. 直原史明「建設残土の不法投棄問題に関する一考察」建設機機械施工Vol.71。[↩]
  4. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について」(昭和46年10月16日 環整43号)。[↩]
  5. 資源の有効な利用の促進に関する法律施行令別表第二の第一欄に掲げる「土砂」(建設業に属する事業を行う者の再生資源の利用に関する判断の基準となるべき事項を定める省令第1条)。[↩]
  6. 廃棄物混じり土の処理方法については、『建設工事で遭遇する廃棄物混じり土対応マニュアル』(独立行政法人土木研究所監修/財団法人土木研究センター編、2009年10月)が最も詳細である。[↩]
  7. 阪本廣行「建設工事における廃棄物混じり土への対応について」環境管理2017年6月号(Vol.53 No.6)。[↩]
  8. 「建設汚泥処理物の廃棄物該当性の判断指針について」平成17年7月25日環廃産発第050725002号。[↩]
  9. 「建設汚泥処理物等の有価物該当性に関する取扱いについて」令和2年7月20日環循規発第2007202。[↩]
  10. 宅地造成等規制法(昭和36年11月7日法律第191号)。[↩]
  11. 国土交通省都市安全課「宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の概要について」(令和6年10月)。[↩]
  12. 「宅地造成及び特定盛土等規制法施行規則」(昭和37年2月20日建設省令第3号)。[↩]
  13. 参考として、岩手県環境生活部・農林水産部・県土整備部「工事の施行に付随して行われる土石の堆積の取扱い」。[↩]
  14. 盛土による災害の防止に関する検討会「盛土による災害の防止に関する検討会 提言」(令和3年12月24日)。[↩]
  15. 国土交通省ウェブサイト「建設発生土の搬出先計画制度」。[↩]
  16. 国土交通省 不動産・建設経済局 建設業課「建設工事から発生する土の搬出先の明確化等」(令和6年6月更新)。[↩]
  17. 「宅地造成、特定盛土等又は土石の堆積に伴う災害の防止に関する基本的な方針」(令和5年5月29日農林水産省、国土交通省告示第5号)。[↩]
  18. 公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(令和4年5月20日閣議決定)。[↩]
  19. 公共工事標準請負契約約款(中央建設業審議会決定、最近改正:令和7年12月2日)。[↩]
  20. 民間建設工事標準請負契約約款(甲)(中央建設業審議会決定、最近改正:令和7年12月2日)。[↩]
  21. 渋谷区ウェブサイト「富ヶ谷一丁目における建築工事について(お知らせ)」。[↩]
  22. 「マンション建設 盛り土「災害の恐れ」」2026年5月10日付け毎日新聞朝刊社会面等。[↩]

山路 邦夫

弁護士法人御堂筋法律事務所 パートナー弁護士

01年京都大学法学部卒業、02年弁護士登録。企業関係の訴訟・紛争解決、企業不祥事対応を取り扱う。とりわけ環境法(廃棄物処理法、土壌汚染対策法等)について企業の相談、案件対応を多く受任し、19年には廃棄物処理法違反被告事件で主任弁護士として無罪判決(一審確定)を獲得するなど、行政対応、民事・刑事の訴訟対応までを見据えたアドバイス、案件受任に特徴がある。東京弁護士会所属。

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