© Business & Law LLC.

ログイン

はじめに

景品表示法に関する2025年1月~2026年3月における主要な動向としては、以下が挙げられる。

① 2025.2.26|景品表示法に関する初めての確約計画認定注1)

② 2025.4|「いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査」公表(消費者庁新未来創造戦略本部国際消費者政策研究センター)

③ 2025.4.30|「買取サービスに関する実態調査報告書」および「買取サービスに関するQ&A 」公表

④ 2025.7.17|日本弁護士連合会が、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)および消費者庁長官宛ての「サプリメント食品に関する法規制の早急な整備を求める意見書」を提出注2)

⑤ 2025.7.25|措置命令取消請求訴訟における初の請求認容判決(糖質カット炊飯器表示)注3)

⑥ 2026.3.31|「環境表示ガイドライン【令和8年3月版】 」公表注4)

今回の対象期間では、新たな規制の導入等を内容とする法令改正は基本的に見当たらず注5)、それまでに行われた法改正やガイドラインの整備を受けて、さまざまな運用が行われた期間であったと位置付けられる。

実務対応に大きな影響が生じているのは確約手続の本格運用開始であり、上記①に関して、2025年1月~2026年3月に認定された確約計画を概観する(Ⅱ)。また、上記③についても注意が必要であり、概要を確認する(Ⅲ)。加えて、2025年1月~2026年3月における措置命令・確約計画認定事例について、表示類型ごとに整理する(Ⅳ)。
上記のほかにも、各適格消費者団体がさまざまな表示について差止請求・差止訴訟を行っていることなど注6)、景品表示法に関しては多様な動きが見られるが、本稿では、さしあたり、上記3点について概観する。

なお、本稿では主に景品表示法の表示規制に焦点を当てて論じるが、同法の景品規制に関する動きとして、上記「買取サービスに関するQ&A」のほか、規制改革推進会議「第13回 スタートアップ・イノベーション促進ワーキング・グループ」(2026年4月13日)注7)において、「消費の活性化に向けた総付景品の上限額の引上げについて」が取り上げられたことを紹介しておく。同会議では、消費者庁、一般社団法人フランチャイズチェーン協会および法律事務所による各報告の後に議論が行われ、今後、消費者庁において、総付景品に関する実態調査を行い、改めて、規制の趣旨や在り方等について整理・検討が行われる模様である(当日、フランチャイズチェーン協会から、上限価格について、急激な物価上昇によりペットボトル1本を200円の範囲内で提供できないことについての問題意識が示され、①「総付景品の最高額を取引価額の30%に引上げ」または②「20%は維持し、取引価額1,500円未満は300円までに引上げ」という二つの案が示されており、この点も念頭に検討されると考えられる)。現時点で総付制限告示にどの程度の必要性があるのか疑問があり(拙著『エッセンス景品表示法』(商事法務、2018年)141頁Column(1)参照)、今後の動向については引き続き注視したい。

2025年1月~2026年3月に認定された確約計画の概観

2025年1月~2026年3月における行政処分件数の推移

本稿対象期間を含む、2023年4月~2026年3月の3年度における消費者庁による行政処分件数は、図表1のとおりである。2026年度(2025年4月~2026年3月)の傾向として、2024年10月から導入された確約計画の認定事例が相応に登場した一方で、措置命令の件数は、2024年度(2023年4月~2024年3月)の44件と比較して3分の1程度に減少した。

確約手続は、措置命令または課徴金納付命令(以下「法的措置」と総称する)と比べ、「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為をより早期に是正し、消費者庁…と事業者が協調的に問題解決を行う領域を拡大し、景品表示法の効率的かつ効果的な執行に資する」ものである(「確約手続に関する運用基準」1)。そのため、一時的に確約手続の導入直後に検討すべき事項等が増えて消費者庁の負荷が増えた可能性はあるものの、今後、確約手続の運用安定化に伴い行政リソースが最適化され、調査件数や法的措置件数が再び増加する可能性はあるだろう。

図表1 消費者庁による行政処分件数(2023年4月~2026年3月)

2024年度

(2023.4~2024.3)

2025年度

(2024.4~2025.3)

2026年度

(2025.4~2026.3)

措置命令

44

26

13

課徴金納付命令

12

7

10

確約計画の認定

-(未施行)

1

8

認定された確約計画の整理と若干の検討

(1) 確約手続および認定された確約計画の概要

確約手続注8)の概要は別稿注9)で触れたとおりであり、確約措置を内容とする確約計画の認定がされた場合、対象行為について、法的措置(措置命令および課徴金納付命令)は行われない(景品表示法28条、32条)。

消費者庁が確約計画の認定をした際には、「認定確約計画の概要、当該認定に係る違反被疑行為の概要、確約認定を受けた事業者名その他必要な事項」が公表される(「確約手続に関する運用基準」9)。実際には、消費者庁ウェブサイト上で、「〇〇から申請があった確約計画の認定について」と題するリリースページが公表されている。
同ページで示されるのはあくまで「認定確約計画の概要」であり、確約計画の認定申請書に記載された確約措置の内容や実施期限そのものは公表されない。ただ、2025年1月~2026年3月に認定された確約計画9件に関して公表されている認定確約計画の概要を整理すると図表2のとおりであり(「〇」は消費者庁リリース上で確約計画の概要として記載されていることを示す)、基本的な内容は共通することが窺える。

図表2 認定確約計画の概要

事業者名

違反類型

確約計画における措置の内容

①将来同様の行為を行わない旨の取締役会決議(機関決定)

②一般消費者への周知徹底

③再発防止措置

④返金

⑤各措置の履行状況の報告

措置内容の十分性・措置実施の確実性との関係

十分性
(必要)

十分性
(必要)

確実性
(必要)
(十分性も)

十分性
(有益・重要)

確実性
(必要)

(1) Caname

有利誤認表示※1

○

○

○

○

○

(2) LAVA

ステマ※2

有利誤認表示

○

○

○

△

(※3)

○

(3) 味の素
(4) イングリウッド

ステマ

○

○

○

―

(なし)

○

(5) イングリウッド

ステマ

優良誤認表示※4

○

○

○

△

(※5)

○

(6) ビッグローブ

有利誤認表示

○

○

○

○

○

(7) SOELU

有利誤認表示

○

○

○

○

○

(8) 千葉ロッテ

有利誤認表示

○

○

○

○

○

(9) ソシエ・ワールド

有利誤認表示

○

○

○

○

○

※1 消費者庁「有利誤認とは」参照。
※2 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」参照。
※3 返金対象者:有利誤認表示疑い行為期間の対象クーポン利用者
※4 消費者庁「優良誤認とは」参照。
※5 返金対象者:優良誤認表示疑い行為期間の対象商品購入者

(2) 措置内容の十分性の判断に関する若干の検討

措置内容の十分性(確約措置が措置内容の十分性を満たしているか否か)については、「過去に法的措置で違反行為が認定された事案等のうち、行為の概要、適用条項等について、確約手続通知の書面に記載した内容と一定程度合致すると考えられる事案の措置の内容を参考にする」とされている(確約手続に関する運用基準」6(3)ア(ア))。
記各確約計画認定に関するリリースでは、措置内容の十分性を満たすと判断した理由として、いずれも、「近時の景品表示法第5条の規定に違反すると認定された事案において命令された措置の内容を含んでいること」が挙げられている。基本的に、措置命令では、一般消費者に対する周知徹底(上記措置②に相当)、再発防止策を講じること及び将来同様の違反行為を行わないこと(上記措置③に相当)が命じられており、上記①は②及び③の前提となる。今後も、事案により個別に検討されることにはなるものの、確約計画の申請を行おうとする際には、上記措置①~③は不可欠となる。
なお、図表2記載の措置②(一般消費者への周知徹底)および③(再発防止措置)に関して、図表2の(3)(4)の事例では、一般的に措置命令で命じられている内容より踏み込んだ措置が確約計画の内容とされた。当該事例に関する調査担当官の解説では、対象商品の「購入を申し込んだ一般消費者に対して個別に周知徹底をする措置」「味の素とイングリウッドの2社が共同で法遵守に向けた管理体制の整備に取り組むこと」が含まれ、「過去に法的措置で命じられた措置では必ずしも実施されてこなかった内容が盛り込まれている」と言及されている注10)。他の事例についても、公表資料からは明らかではないが、同様に、確約計画の内容として、一般的に措置命令で命じられている内容より踏み込んだ措置が記載された可能性はある。

ステルスマーケティング告示に該当し景品表示法5条3号に違反する疑いがあるとされた(3)(4)以外の事案では、確約計画の中に「返金」が含まれている。
各確約計画の概要では「一部を返金すること」と記載されており、具体的な金額等は明らかではないが、例えば事例(6)(事案概要は注11を参照注11)のビッグローブ社は、2026年4月30日まで自社ウェブサイト上で返金を受け付け注12)、その際、申込当時の事務手数料相当分のAmazonギフトカード(1回線当たり3,300円)を送付する旨記載していた注13)。各事例に応じて、金額や被害回復の方法を検討のうえ、消費者庁と協議が行われている模様である。

事例(2)および(5)注14)の確約計画でも「返金」が含まれているが、その対象は景品表示法5条1号違反の疑い(優良誤認表示)や同条2号違反の疑い(有利誤認表示)に関するものであり、ステルスマーケティング告示に該当する疑いのある表示に関しては、「返金」の対象とされていない。「返金」は措置内容の十分性判断に重要なものではあり、また個別の確約計画に記載された措置の内容次第ではあるものの、ステルスマーケティング告示に該当する疑いのある事例において、返金を内容としない確約計画が認定されている点には注意が必要であろう。

(3) 措置実施の確実性の判断に関する若干の検討

図表2の(1)~(9)いずれの事案も、「措置の内容ごとに実施期限を設けていること、また、消費者庁に対し、これらの措置の履行状況の報告をするものであること等を踏まえ」、措置実施の確実性を満たすと判断されている。

「等」の内容として、たとえば、図表2記載の③の再発防止措置を事案に即して具体的に設計し、当該措置について役員および従業員に周知徹底する旨も、措置実施の確実性の積極評価につながると考えられる注15)。

買取サービスに関する実態調査報告書

「買取サービスに関する実態調査報告書」の意義

消費者庁は、2024年4月の景品表示法定義告示運用基準改正に伴い、査定して商品を買い取ること等を内容とする「買取サービス」に関する表示に景品表示法が適用されうることを明示した注16)。そのうえで、2025年4月30日、「買取サービスに関する実態調査報告書」が公表された。
同報告書では、実際に行われている「買取参考価格・買取実績価格」「買取価格アップ」「買取価格保証」「何でも買取り」「どこよりも高く買取り」といった5類型について考え方が整理されている。
買取サービスの市場規模は、「一般消費者のエコ意識や有効資源活用に対する意識の高まりを背景に年々拡大傾向」にあり、2018年は約7,843億円であったのに対し、2023年は約1.3兆円とされている注17)。
買取市場の拡大に伴い事業者間の競争激化が進む中、事業上は一般消費者の目を引く広告表示を作成する必要があると考えられる一方、当然ながら、同報告書を意識して、適正な広告表示を行う必要がある。このような中、2026年6月11日、買取サービスに係る表示について、景表法に基づく初めての措置命令が行われた(「株式会社ゲオストアに対する景品表示法に基づく措置命令について」)。

「買取サービスに関する実態調査報告書」の概要

「買取サービスに関する実態調査報告書」にて、前記5類型の表示について考え方が記載されており、概要を整理する。

(1) 「買取参考価格・買取実績価格」(報告書第3の2(1))

まず、「買取参考価格」という表示を見た一般消費者は、表示されている商材が当該価格で、または当該価格に近い金額で買取りされると認識すると考えられる。
そのため、自社が実際に買い取ることを想定した場合の金額(過去の買取実績や、直近における買取市場の相場を踏まえた金額)を大きく上回る金額を「買取参考価格」として表示し、表示している商材を当該価格よりも著しく低い価格で買い取る場合には、有利誤認表示となる可能性がある。
なお、一般消費者に誤解を生じさせないという観点からは、それだけでなく、「買取参考価格」の意味についてわかりやすく具体的に示すことが望ましい(たとえば、未使用の状態で買い取る場合の上限の買取価格や、標準的な状態で買い取る場合の平均的な買取価格)。

次に、「買取実績価格」という表示を見た一般消費者は、表示されている商材が当該価格で実際に買取りされたことがあると認識すると考えられる。
そのため、買い取った実績のない金額を「買取実績価格」として表示しないようにする必要がある。

(2) 「買取価格アップ」(報告書第3の2(2))

「買取価格アップ」という表示を見た一般消費者は、通常の買取価格からアップされた価格で買い取ってもらえると認識すると考えられる。
そのため、「買取価格アップ」を表示する際には通常の買取価格からアップした金額で買い取る事実が必要となり、また、その際には、「通常の買取価格」の存在が前提となる。通常の買取価格からアップしない場合には、有利誤認表示となりうる。
なお、一般消費者が安心して買取サービスを利用できるようにするという観点からは、一般消費者から買取価格の根拠を問われた場合にはどのような基準で算出した額であるのかを説明するなど、一般消費者にわかるように示すことが望ましい。

上記のほか、期間限定の買取価格アップキャンペーンを継続的に行う場合は別途有利誤認表示となるので注意が必要である(前述のゲオストアに対する措置命令はこの類型である)。

(3) 「買取価格保証」(報告書第3の2(3))

「買取価格保証」という表示から、一般消費者は、必ず当該保証価格以上で買取りされると認識するものと考えられる。
そのため、表示する「保証価格」を下回る金額で買い取る場合には、有利誤認表示と判断される可能性がある。汚れがないことなどの条件を設定する場合は、それを明示する(打消し表示を適切に示す)必要がある。

(4) 「何でも買取り」(報告書第3の2(4))

「何でも買取り」という表示を見た一般消費者は、特段の条件なく、どのような状態であっても買取りされると認識すると考えられる。
そのため、「何でも買取り」と表示しながらも一般消費者が持ち込んだ物品等について一部または全部を買い取らない場合には、有利誤認表示と判断される可能性がある。美品であることなどの条件を設定する場合は、それを明示する(打消し表示を適切に示す)必要がある。

(5) 「どこよりも高く買取り」

「どこよりも高く買取り」という表示を見た一般消費者は、他社と比較して当該事業者の買取価格が最も高いと認識すると考えられる。そのため、どこよりも高く買い取る旨の表示をしながら、事実と異なる場合には、有利誤認表示となりうる。
表示に際しては、どこよりも高く買い取るといえる例外的な事情があるかどうかの確認が必要である。もっとも、通常はそのような確認は不可能であり、「どこよりも高く買取り」の表示自体は困難と考えられる。

2025年1月~2026年3月における措置命令及び確約計画認定事例の概観

表示類型ごとの整理

2025年1月~2026年3月の措置命令および確約計画認定事例を表示類型ごとに整理すると、下表(ⅰ)〜(ⅳ)のとおりである。

(ⅰ) 優良誤認表示事例

事業者名

年月日

概要

①

イースマイル

2025.3.14

不実証広告規制※1適用

②

スマイルコミュニケーションズ

2025.3.14

不実証広告規制適用

③

P&Gジャパン

2025.8.1

不実証広告規制適用

④

イングリウッド

2025.9.19

【確約】優良誤認表示(支持率等No.1表示)((ⅲ)⑥も参照)

⑤

テレビ新広島

2025.10.15

「広島初の表示」

⑥

SB C&S

2025.12.18

不実証広告規制適用

※1 消費者庁「不実証広告規制」参照。

(ⅱ) 有利誤認表示事例

事業者名

年月日

概要

①

caname

2025.2.26

【確約】期間限定表示

②

長谷川産業

2025.2.28

「通常価格」を併記する二重価格表示

③

ユニットコム

2025.3.27

期間限定表示

④

LAVA International

2025.8.28

【確約】HOT PEPPER Beautyクーポンの二重価格表示((ⅲ)③も参照)

⑤

ジャパネットたかた

2025.9.12

将来価格を比較対照価格とする二重価格表示

(「将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示」に関する指針公表後初めての措置命令)

⑥

創健

2025.9.22

期間限定表示(「好評につき期間延長」)

⑦

ビッグローブ

2025.9.26

【確約】期間限定表示

⑧

LH

2025.10.10

「通常価格」を併記する二重価格表示

⑨

NOVAランゲージカンパニー

2025.10.17

二重価格表示

⑩

ツルハグループマーチャンダイジング

2025.11.28

「通常価格」を併記する二重価格表示

⑪

SOELU

2025.12.16

【確約】「全部受け放題」「月々1,980円~」の表示

⑫

千葉ロッテマリーンズ

2025.12.23

【確約】ファンクラブ特典表示

⑬

ソシエ・ワールド

2026.3.3

【確約】HOT PEPPER Beautyクーポン期間限定表示

⑭

シェイプアップハウス

2026.3.25

HOT PEPPER Beautyクーポン期間限定表示

⑮

ミス・パリ・ジェイピーエヌ

2026.3.25

HOT PEPPER Beautyクーポン期間限定表示

⑯

スリムビューティハウス

2026.3.25

HOT PEPPER Beautyクーポン期間限定表示

(ⅲ) ステルスマーケティング事例

事業者名

年月日

概要

①

スマイルスクエア

2025.3.17

特定内容の投稿を条件に利益提供

②

ロート製薬

2025.3.25

「事業者の表示」に該当する投稿のウェブサイト掲載

③

LAVA International

2025.8.28

【確約】HOT PEPPER Beauty口コミについて特定内容の投稿を条件に利益提供、従業員なりすまし投稿((ⅱ)④も参照)

④

味の素

2025.9.19

【確約】「事業者の表示」に該当する投稿のウェブサイト掲載

⑤

イングリウッド

2025.9.19

【確約】「事業者の表示」に該当する投稿のウェブサイト掲載

⑥

イングリウッド

2025.9.19

【確約】「事業者の表示」に該当する投稿のウェブサイト掲載((ⅰ)④も参照)

(ⅳ) 原産国表示事例

事業者名

年月日

概要

①

アイリスプラザ

2025.11.5

「国内」と示し日本が原産国のように示した(対象は101商品)

②

ダイユーエイト

2025.11.5

「国内」と示し日本が原産国のように示した(対象は113商品)

若干の検討

前記1.のとおり、表示類型ごとに見ると、対象期間中では有利誤認表示事例が多かった。具体的には、二重価格表示事例と、いわゆる期間限定表示事例が多い。また、具体的な理由は明らかではないが、「HOT PEPPER Beauty」サイトの表示が多く取り上げられた。

実務対応に際し、(ⅰ)〜(ⅳ)の各事例の概要はそれぞれご確認いただきたいが、意識する必要のある事例の一例として、(ⅱ)の事例⑦を確認する。
消費者庁リリース(2025年9月26日公表)では、違反被疑行為概要の一つとして、以下の内容が記載されている。

・ ビッグローブ社は、同社が提供する「ビッグローブ光」(光回線インターネット接続サービス)について、

・ 2021年10月1日~2024年9月30日、自社ウェブサイトにおいて、例えば、「開催中のキャンペーン情報」、「ビッグローブ光新規&乗り換え特典」、「期間 2024年8月1日~2024年9月30日 ※継続実施する場合あり」等と表示することにより、

・ あたかも、表示されている期間内に対象サービスの提供を申し込んだ場合に限り、当該ウェブサイトに表示されているキャンペーンの各種特典の適用を受けることができるかのように表示していたが、

・ 実際には、表示していた期間後に対象サービスの提供を申し込んだ場合であっても、同種又は類似のキャンペーンの各種特典の適用を受けることができるものであった。

実際の表示上では、上記のように、「対象期間 2024年8月1日~2024年9月30日」のすぐ隣に視認できるサイズで「※継続実施する場合あり」と示されていたが(前記消費者庁リリース別紙2〔PDF5頁〕)、上記の「あたかも」表示のとおり認定された。

「継続実施する場合あり」を見た一般消費者は、キャンペーンが継続して実施される可能性を認識しうるとは考えられる。しかし、消費者庁リリースでは明示されてはいないものの、継続実施する場合があることを示すにとどまり、その場合がないことも認識するため、期間を明記したキャンペーン表示から受ける、「特定期間限定で特典を得られる」という認識を打ち消しきれないと判断された可能性がある注18)。そうであるとすると、今後、期間を示すキャンペーンを行う際に、「継続実施する場合あり」や、同様の「延長する可能性がある」「延長する場合がある」といった注記を行うとしても、打消し表示としての機能が認められない。その場合には、継続実施や延長に伴い有利誤認表示と判断される可能性があり、当該注記以外の対応も併せて検討することが必要となる。

  1. 消費者庁ニュースリリース「caname株式会社から申請があった確約計画の認定について」(2025年2月26日)。)[↩]
  2. 日本弁護士連合会「サプリメント食品に関する法規制の早急な整備を求める意見書」(2025年7月17日)。)[↩]
  3. 東京地判令和7年7月25日(令和6年(行ウ)第141号)。国は控訴したが棄却された(東京高判2026年6月10日(令和7年(行コ)第263号)。)[↩]
  4. 環境省報道発表資料「「環境表示ガイドライン」の改定について」(2026年3月31日)。)[↩]
  5. 「刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和4年法律第68号)」の2025年6月1日施行に伴い「懲役」が「拘禁刑」に改められたが、企業法務において大きな変更ではないだろう。また、確約手続の導入等を内容とする「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(令和5年法律第29号)」は大部分が2024年10月1日に施行された一方で、2026年5月15日に、公示送達に準じた弁明の機会の付与の通知を、インターネットを用いて行えるようにする景品表示法15条2項の改正部分が施行された。これにあわせて同法施行規則も改正されている(不当景品類及び不当表示防止法施行規則の一部を改正する内閣府令(案)に関する意見募集の結果の公示について)。 [↩]
  6. COCoLiS(消費者団体訴訟制度)ポータルサイトでは、対象期間における景品表示法に関する差止請求事例として、以下の5件が公表されている。
    ・ 2025年02月13日(終了)「消費者支援ネット北海道と足うら屋との間の差止請求に関する協議が調ったことについて」
    ・ 2025年03月06日(終了)「埼玉消費者被害をなくす会と株式会社HALとの間の差止請求に関する協議が調ったことについて」
    ・ 2025年03月28日(終了)「消費者機構日本と医療法人社団サカイクリニック62との間の裁判上の和解について」
    ・ 2025年09月10日(終了)「消費者ネットおかやまと株式会社市民葬儀との間の差止請求に関する協議が調ったことについて」
    ・ 2025年11月27日(終了)「消費者支援機構関西とJNTLコンシューマーヘルス株式会社との間の差止請求に関する協議が調ったことについて」[↩]
  7. 第13回スタートアップ・イノベーション促進ワーキング・グループ議事次第。[↩]
  8. 優良誤認表示等の疑いのある表示等をした事業者が「是正措置計画」(景品表示法27条1項)や「影響是正措置計画(同法31条1項)を申請し、内閣総理大臣から認定を受けたときは、当該行為について、措置命令および課徴金納付命令の適用を受けないこととすることで、迅速に問題を改善する制度。[↩]
  9. 古川昌平「景品表示法に関する2023年・2024年(11月中旬まで)の動向概観」Ⅴ2。[↩]
  10. 馬渕綾子・古野豊「冷凍宅配食の販売事業者2社に対する景品表示法に基づく確約計画の認定及び株式会社イングリウッドに対する景品表示法に基づく確約計画の認定について」(公正取引906号)79頁。[↩]
  11. 事例(6)の違反被疑行為の概要:「あたかも、表示されている期間内に本件役務①(注:光回線を用いたインターネット接続サービス)の提供を申し込んだ場合に限り、当該ウェブサイトに表示されているキャンペーンの各種特典の適用を受けることができるかのように表示していたが、実際には、表示していた期間後に本件役務①の提供を申し込んだ場合であっても、同種または類似のキャンペーンの各種特典の適用を受けることができるものであった」。[↩]
  12. ビッグローブ株式会社「消費者庁から認定を受けた影響是正措置計画に基づくお知らせ」(2025年9月26日)。[↩]
  13. 2026年5月以降、「受付終了のお知らせ」のみが表示されている。[↩]
  14. 事例(5)について、違反被疑行為のうち優良誤認表示の疑いのあるNo.1表示を2021年(令和3年)6月16日から2024年(令和4年)8月9日まで行っていたとされている一方で、返金の対象者は「令和3年6月16日から令和7年2月9日までの間に本件商品を購入した一般消費者」とされ、対象表示行為終了以降の一定期間内に対象商品を購入した者も返金の対象者とされている。この点は、「一般に、不当表示をとりやめた後も、当該行為によって生じた一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置をとらない限り、当該行為により惹起された一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれが存続する」ことを踏まえ(前掲注10・馬渕ほか79頁)、景品表示法8条2項かっこ書を意識して、対象表示行為終了後6か月間の購入者も返金対象者に含めたものと考えられる。[↩]
  15. 前掲注10・馬渕ほか80頁。[↩]
  16. 古川昌平「景品表示法に関する2023年・2024年(11月中旬まで)の動向概観」Ⅳ。[↩]
  17. 消費者庁「買取サービスに関する実態調査報告書(概要)」2頁にて、「リユース市場データブック2024」を主典元として本文の内容が示されている。[↩]
  18. 日本経済新聞ウェブサイト「ビッグローブ「期間限定」キャンペーン表示で有利誤認疑い」(2025年9月26日23時17分)では、「ウェブサイトには「継続実施の場合あり」との注釈があったが、消費者庁は『対象期間の表示と矛盾するうえ、どのような場合に継続するのか不明で、消費者に分かりにくい』としている」との記載がある。[↩]

古川 昌平

弁護士法人大江橋法律事務所 パートナー弁護士

03年立命館大学法学部卒業。06年同志社大学法科大学院修了。07年弁護士登録。大江橋法律事務所(大阪事務所)。14年4月~16年3月任期付職員として消費者庁にて勤務し、景品表示法改正法の立案や同法施行準備業務等を担当。同年4月~大江橋法律事務所(東京事務所)。景品表示法に精通し、表示規制や景品規制に対応したコンサルティングや消費者庁の調査対応で多くの企業をサポートするだけでなく、数多くのセミナー、著作を手がける(主な著書:『法律実務家のための広告・表示関連法務の基礎知識』(共著)(有斐閣、2026)、『実務担当者のための景表法ガイドマップ』(商事法務、2024)、『エッセンス景品表示法』(商事法務、2018))。

この記事に関連するセミナー