近時のフィンテックへの出資・買収の動き
近時、大企業によるFintech(フィンテック)への出資・買収のニュースが世間を賑わせており、この業界が一つの転機を迎えつつある。
たとえば、三菱UFJ銀行は、2024年2月、「長期・積立・分散」の資産運用を提供するロボアドバイザー「WealthNavi」を提供するウェルスナビと資本業務提携を行い、持分法適用関連会社化したと思えば、同年11月には公開買付けを行うと発表し、同社を連結子会社化している注1。また、2025年5月27日には、資産管理サービス「Moneytree」を提供するマネーツリーのすべての株式取得を目指して基本合意書を締結したことを発表している注2。
これに対し、三井住友フィナンシャルグループでは、傘下の三井住友カードが2024年7月に家計簿・資産管理アプリ「マネーフォワード ME」を提供するマネーフォワードとの資本業務提携を行うことが発表され注3、2025年4月16日には、同社と三井住友銀行等との間でBaaS(Banking as a Service)/デジタルバンク領域における新銀行を設立する旨が発表されている注4。これに加え、同年5月には三井住友カードとソフトバンクとの包括的業務提携も発表され、PayPayとの連携も企図されている注5。
一方で、みずほ銀行は、2025年7月29日、法人カード「UPSIDER」や請求書カード払いサービス「支払い.com」を提供するUPSIDER ホールディングスを連結子会社化すると発表し注6、また、SBIホールディングスは、同年6月16日に、三井住友フィナンシャルグループとの間で個人向け資産運用サービスに関する業務提携契約を締結したことを発表し、さらに同年7月31日には、傘下のSBI証券およびSBIマネープラザが家計診断・相談サービス「オカネコ」を運営する400Fとの間で資本業務提携に向けた基本合意をしたことを発表している注7。
金融機関のみならず非金融事業者による出資に目を向けると、NTTドコモが、2025年5月29日、住信SBIネット銀行を公開買付け等の一連のプロセスを通じて連結子会社化することを発表している注8。
このように、近年、フィンテックに関するM&Aが相次いでいるものの、フィンテックは、年々新しいサービスが開発されており、成長余地の大きい金融スタートアップは数多く存在する。そのため、フィンテック業界に関するM&Aは、今後もますます増えていくものと見込まれる。
そこで本稿では、同業界に係るM&Aを進めるにあたっての法務面での留意事項について概説する。
フィンテックへの出資・買収の意義
冒頭の例にあるようなフィンテック事業への出資・買収の意義としては、デジタル技術の進展を背景とした新しい金融サービスへの進出・拡大を可能にするという点が挙げられる。これを紐解いていくと、技術・ノウハウ・人材といった新しいリソースを獲得するとともに、若年層(デジタルネイティブ)を中心とした新しい顧客層を開拓するという点に狙いがあることがわかる。
このような視点は、フィンテック事業に関するM&Aにおいて、資本提携(出資)に留めるか買収(子会社化)にまで及ぶかを検討するにあたって特に重要である。
一般的には、コストとリスクをそこまでかけることなく、進歩的な技術・サービスと、自社事業の技術力や資金力とを掛け合わせることにより、新たな顧客層にリーチし、またはそれぞれのサービスの利用可能性を高めるなどのシナジー創出を図ることを目指すのであれば、資本提携に留めることが望ましいといえる。
一方で、自社において、厳格な金融規制への対応に係る金銭的・人的支援を行いながら、技術・ノウハウ・人材の管理・統制を行うことによって、顧客情報を利活用しつつ、金融サービスを自社事業に適合するようカスタマイズし、自社サービスとの統合を図ることまで目指すのであれば、買収によって子会社化を行うことが選択肢となってくると考えられる。
このようなフィンテック事業に関するM&Aの特殊性を法務的な観点から整理すれば、
・ 厳格な金融規制を遵守する必要がある
・ 顧客の個人情報の保護と利活用のバランスを図る必要がある
・ コンプライアンスを含む内部管理体制を強化しつつ事業・開発部門における裁量やカルチャーを尊重することが重要である
といった点が挙げられよう。
以下では、代表的なフィンテックの事業とそれに係る金融規制を概観しつつ、特に法務デューデリジェンスおよび最終契約に関して、上記で挙げた法務的な特殊性に応じた留意点を述べていきたい。
代表的なフィンテックサービスと金融規制
フィンテックサービスは我々の日常生活にも深く浸透しており、さまざまな分類方法があるが、金融規制の観点から分類すれば以下のように整理することができる。
決済サービス
決済サービスには、①前払決済・送金(プリペイド)サービスとして、前払式支払手段発行業(チャージ式支払)、資金移動業(送金等)、収納代行業(決済代行業)などが挙げられ、主に資金決済に関する法律(以下「資金決済法」という)によって規制される。
②後払決済(ポストペイ)サービスとして、包括信用購入あっせん業(クレジットカード発行)、個別信用購入あっせん業(個別クレジット)、BNPL(Buy Now Pay Later)、クレジットカード番号等取扱契約締結事業(アクワイアラー)などが挙げられ、主に割賦販売法によって規制される(なお、BNPLについては同法の規制を受けない設計とすることも可能である)。
また、③即時払いサービスとして、デビットカードやネットバンキングが挙げられ、これらは預金および為替取引の組合せとして主に銀行法によって規制され、④家計簿サービスとしては、電子決済等代行業が挙げられ、主に銀行法によって規制される。
我が国の決済サービスのライセンスおよび規制法令の概観については、次の図表1のとおりである。
図表1 決済サービスのライセンス・規制法令の概観
前払い |
前払式支払手段発行(払戻制限有)(資金決済法/利用先につき加盟店有なら登録制または自社のみなら届出制) ・交通系・流通系電子マネー ・残高型のQRコード決済 |
|||||
収納代行 ・PSP、コンビニ決済、代金引換 |
||||||
為替取引(資金決済法/登録制、銀行法/免許制) ・割り勘アプリ等一定の収納代行も含まれる |
||||||
第三種資金移動業(資金決済法/登録制) 5万円 |
第二種資金移動業(資金決済法/登録制) ・残高型のQRコード決済 100万円 |
第一種資金移動業(資金決済法/登録制および認可制) |
||||
暗号資産(資金決済法/売買・交換等または管理について登録制) ・ビットコイン |
||||||
即時払い |
預金+為替取引(銀行法/免許制) ・デビットカード ・インターネットバンキング |
|||||
電子決済等代行業(銀行法/登録制) ・アプリ上で銀行口座からの引落しの指図を伝達するサービス |
||||||
後払い |
少額包括信用購入あっせん案(割賦販売法/登録制) 10万円 |
包括信用購入あっせん(割賦販売法/登録制) ・クレジットカード(携帯キャリア決済、ID決済、QRコード決済等にて登録する場合) |
||||
クレジットカード番号等取扱契約締結事業(割賦販売法/登録制) ・加盟店とカード番号等での決済を可能とする契約を締結する最終判断権限を有する者(アクワイアラー) |
||||||
BNPL(個別信用購入あっせん・マンスリークリア)(割賦販売法の登録は不要) | ||||||
支払いなし | ポイント(景品表示法/総付景品規制の適用の可能性) |
暗号資産サービス
暗号資産サービスとしては、①暗号資産の取引所・販売所や暗号資産カストディ業などが挙げられ、現在は資金決済法によって規制される。
②暗号資産デリバティブ取引を提供する場合は、金融商品取引法によって規制される。
また、③NFT(Non Fungible Token)も挙げられることがあるが、一般的には金融規制を受けない設計とすることが可能である。
融資・投資サービス
融資サービスとしては、①貸金業については、貸金業法または銀行法のほか、利息制限法や出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)の規制を受けることになる。
さらに、②ソーシャルレンディングとなると、貸付けを行うファンド事業者(匿名組合の営業者)には貸金業法が適用され、ファンドの持分である匿名組合持分の募集を行うプラットフォームの運営者には第二種金融商品取引業(金融商品取引法)の規制が適用されることとなる。
一方で、③貸金の媒介・取次ぎを行うには、貸金を提供する主体等に応じて、銀行代理業(銀行法)、貸金業(貸金業法)または金融サービス仲介業(金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律(以下「金融サービス提供法」という))の登録が必要となる。
投資サービスとしては、たとえば、
① 投資型クラウドファンディングのプラットフォームを運営するためには金融商品取引業(少額電子募集取扱業)の登録
② STO(Security Token Offering)を行うためには通常は第一種金融商品取引業(電子記録移転権利)の登録
③ ロボアドバイザーのサービスを提供するには、投資助言・代理業または投資運用業の登録
が必要となり、いずれも金融商品取引法の規制を受けることになる。
また、
④ 有価証券の販売の仲介を行うには、金融商品取引業のほか、金融商品仲介業(金融商品取引法)または金融サービス仲介業(金融サービス提供法)の登録
が必要となる。
保険サービス
保険業界についても、InsurTech(インシュアテック)という用語があるほど、フィンテック技術を用いたリスク分析等や商品開発が盛んであるが、フィンテックに関連して挙げられる業態としては、少額短期保険業や保険代理店(保険募集人)等が挙げられ、いずれも保険業法によって規制される。
フィンテック事業に対する法務デューデリジェンスのポイント
一般に法務デューデリジェンスにおいて、業種によって大きな違いが出る調査項目は、許認可・コンプライアンスと業務・契約である。フィンテック事業についても例に漏れず、規制業種であることや、そのビジネスモデル・商流の特殊性からして、この2項目において他の業種にはない特殊性がある。
金融規制の遵守
(1) 許認可を要するサービス
対象会社の事業が、金融規制に基づく許認可(たとえば、金融商品取引業の登録)を要するものである場合、最も重要なポイントは、許認可の取消事由が存在せず、出資または買収後も許認可を維持できることを確認することである。
許認可の拒否事由は取消事由にもなるため、拒否事由に相当する事由がないかという点も確認する必要がある。
特に体制整備については、業務管理やコンプライアンスの確保に向けた実効性を伴っているかという観点のほか、拒否事由に該当していないかという観点からも重要となる。たとえば、金融商品取引業の登録においては、「政令で定める使用人」(金融商品取引法施行令15条の4第1号)を登録申請書に記載しなければならず、また、「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成」として審査対象になっていることから、仮にこの使用人が変更することが想定される場合は、登録時の当局の問題意識や対応方法を含む審査状況を確認しておくべきである。そのため、登録申請時の提出書面や当局からの質問への回答内容等の提出を求めることも考えられる。
最終契約においては、許認可について取消等のおそれがないことを表明保証させることが一般的であるが、仮に具体的な法令違反等が判明している場合は、その是正をクロージング前の誓約事項とするか、表明保証の除外事由としたうえで特別補償の対象とすることが一般的である。
次に、
① 業務運営や行為規制等に関する法令等の遵守状況
② 法令等に基づく手続の履行状況
を確認する必要がある。ここでいう法令等には、法令に限らず、当局が公表するガイドラインや監督指針も含まれる。
まず、①業務運営や行為規制等に関する法令等の遵守状況については、業務管理・コンプライアンス体制が整備され、かつ実効性を伴う形で運用されていることを確認することが必要であり、その方法として、社内規程の整備状況や各規程の遵守状況、内部監査体制やその運用の充実度を、監査役会やコンプライアンス委員会等の議事録、内部監査計画書・報告書等の書面の確認やヒアリング等を通じてチェックしておくことになる。特にスタートアップなどでは規程の整備はできているものの、運用が間に合っていない例が多く見られるため慎重に検証することが求められる。
次に、法令等の違反の有無・程度を検討するうえで、内部監査や当局の検査における指摘事項を確認することが必要である。具体的には、内部監査報告書で顕出された、または、当局検査に係る検査結果通知等で指摘された問題の内容・程度、問題の是正・改善の状況、内部監査の責任者または当局への報告の有無・内容、同種事案の有無・内容等を確認していくことになる。
②法令等に基づく手続の履行状況については、登録事由に変更があった場合の変更届出や、毎事業年度の終了時に提出が求められる事業報告書の提出の有無を確認し、その写しの提出を求めることにより、当該許認可に関する最新の対応状況を記録しておくべきである。仮にこれらの体制整備や法令遵守状況等に不備があることが発見された場合は、最終契約において、一定期限を定めたうえで、当該期限までに是正・改善することや買主側のモニタリングを受け入れることをクロージング前または後の誓約事項として規定する場合もある。
最後に、許認可に関して、出資・買収に伴い必要となる手続の有無・内容を法令等に照らして確認しておくことが必要である。
たとえば、株式取得の場合、①対象会社側からすれば一定比率の株式を保有する株主が変更することに伴って届出等が必要になることがあり(たとえば銀行法52条の2の11第1項、52条の9第1項、保険業法271条の3、271条の10等)、また、②株式を取得する側が銀行、保険会社、第一種金融商品取引業者(それぞれ持株会社を含む。)等の金融規制業種であり、新たに子会社や関連会社を取得した場合は、株式取得側において届出や承認等の手続が必要になることがある(たとえば、金融商品取引法50条1項8号、金融商品取引業等に関する内閣府令200条4号)。
また、株式ではなく事業の承継・譲渡である場合は、当該事業を規制する許認可は承継されず、再取得を要する場合が多い。
さらに、出資・買収後に対象会社の取締役を変更する場合は許認可の変更届出を要することが通常である。
これらの手続の履行については、最終契約においてPMIとして規定する場合もある。
(2) 許認可を要しないサービス
金融事業の中には、許認可なしに提供できるサービスも存在する。
たとえば決済代行業などの収納代行サービスについては、資金決済法2条の2に定める行為であって資金移動業者に関する内閣府令1条の2に規定する要件に該当するものが為替取引に該当するとされているため、少なくとも当該要件を満たさない範囲でサービスの設計をする必要がある。
そのため、対象会社のビジネスモデルを検証する際には、規制当局への照会録や弁護士意見書の提出を求め、その記載内容を確認すべきである。
その際、
① 実際に提供されているサービスの内容が照会録・意見書の前提事実の範囲内の業務にとどまっているか
② 照会録・意見書に記載されている当局または弁護士の見解や理由が、出資または買収後に想定している事業の制約にならないか
という観点から慎重に検証することが必要である。
最終契約においては、対象会社において現に提供されている具体的なサービスが金融規制の要件を満たさないこと等を表明保証させる場合もある。
金融規制以外の重要な規制(AML/CFT、個人情報保護)
金融事業者については、各種許認可の根拠法令のほか、いわゆるマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策に関する規制への対応も重要である。
具体的には、金融事業者(正確には、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯罪収益移転防止法」という)2条2項1号から38号までの金融機関等)やクレジットカード業者(同項40号)は、犯罪収益移転防止法上の「特定事業者」に含まれ、一定の業務や取引を行う際には、
① 取引時確認(4条)
② 確認記録の作成・保存(6条)
③ 取引記録等の作成・保存(7条)
④ 疑わしい取引の届出(8条)
⑤ 取引時確認等を的確に行うための措置(11条)
等の義務が課されている。
また、金融庁は、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(クレジットカード業については、経済産業省が「クレジットカード業におけるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」)(以下「マネロンガイドライン」という)を公表しており、同ガイドラインは、犯罪収益移転防止法上の義務を包含しつつ、より広範な要求や内部管理態勢の構築を求める内容となっている。
法務デュー・デリジェンスにおいては、犯罪収益移転防止法のみならず、マネロンガイドラインの遵守状況についても確認する必要がある。
確認方法としては、1.(1)で述べた業務管理・コンプライアンス体制の状況の確認方法がここでも妥当するが、リスクの程度に応じて、
① 組織に関する資料(マネロンに関与する組織の組織図・人員構成表、マネロン(コンプラ)プログラム・関連会議体の構成・関連会議体の議事録等)
② 規程・マニュアル等(リスク評価手続、顧客受入方針・顧客管理手続、取引モニタリング手続・フィルタリング手続、疑わしい取引の届出手続、記録保存ルール等)
③ リスク評価・態勢評価に関する資料(リスク評価書、マネロンガイドラインとのギャップ分析等)
④ 疑わしい取引に関する資料(検討対象件数、届出件数・内訳等)
の提出を求めることがある。
金融庁は、2024年12月26日に、イオン銀行に対して、マネロン・テロ資金供与対策に係る不適切な業務運営やその背景にある経営姿勢および態勢上の問題が認められたとして銀行法に基づく業務改善命令を発出しており注9、厳格な姿勢で臨むことを鮮明にしているため、規制の遵守状況に不十分な点がないかを慎重に検証する必要がある。
次に、フィンテックを含む金融事業は、個人情報を含む大量の顧客情報を収集・利活用している場合が少なくない。
特に個人情報をデータベース化して事業の用に供している企業は、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)に定める個人情報取扱事業者(同法16条2項)として、同法の規律に服することになる。同法の規制の概要については、紙幅の関係から、「事業分野別に見るM&Aの勘所 第9回 IT/デジタル」における「Ⅱ 留意すべき主な法律」の「1.個人情報の保護に関する法律」の記載を参照されたい。
業務・契約
フィンテック事業に関する契約としては、大きく、主要取引先との契約と利用者との利用規約に分けられる。
前者については、たとえば、金融サービス仲介業等の仲介業に関する委託元金融事業者との委託契約、資金移動業・前払式支払手段発行業に関する包括代理加盟店との加盟店契約や残高チャージに係る銀行との口座振替委託契約等、事業の根幹をなす極めて重要な契約である場合が多い。これらの契約については、一般に契約相手方の方が交渉力が強く、変更が難しい場合が多いため、中途解約条項やチェンジオブコントロール条項の有無など、どのようなリスクを負う可能性があるかを慎重に見極めることが重要となる。
後者の利用者との利用規約については、消費者契約法における不当条項規制や民法における定型約款規制の観点からの遵守状況を確認し、仮に違反がある場合は最終契約において是正を求めることが必要となる。
これらの規制の概要については、紙幅の関係から、「事業分野別に見るM&Aの勘所 第9回 IT/デジタル」における「Ⅲ 法務デューデリジェンスのポイント」の「2. 対象会社の事業・契約」「(1) サービス利用規約」の記載、および、「事業分野別に見るM&Aの勘所 第10回 Eコマース」における「Ⅲ Eコマース事業のM&Aに関する法的留意点」の「1.契約に関する主な留意点」「(1) 消費者との間の販売契約(利用規約)」の記載を参照されたい。
最後に、金融当局は、すべての金融事業者に対して顧客本位の業務運営に向けた取組みをさらに高度化することを求めており、このような要請はM&Aを経たとしても変わるものではない。出資または買収をしたフィンテック事業のサービスが真に顧客本位といえるか、特に買主が金融事業者である場合は、自社の顧客本位の業務運営に関する取組みのレベルにまで対象会社の取組みを高度化させることが可能かという観点でも調査・検証することが望ましい。
→この連載を「まとめて読む」
- 「株式会社三菱UFJ銀行によるウェルスナビ株式会社(証券コード:7342)の株券等に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」[↩]
- 「マネーツリー株式会社の株式譲渡に向けた基本合意書締結について」[↩]
- 「マネーフォワードと三井住友カード、個人向け事業における資本業務提携に関する基本合意書の締結について」[↩]
- 「株式会社マネーフォワードとのBaaS/デジタルバンク領域における基本合意書の締結について」[↩]
- 「三井住友カードとソフトバンク、デジタル分野における包括的な業務提携に合意」[↩]
- 「みずほ銀行によるUPSIDER ホールディングスの株式取得について」[↩]
- 「株式会社SBI証券、SBIマネープラザ株式会社、株式会社400Fによる資本業務提携に向けた基本合意のお知らせ」[↩]
- 「住信SBIネット銀行株式会社の普通株式に対する公開買付けの開始、及び資本業務提携契約の締結に関するお知らせ」[↩]
- 「イオン銀行に対する行政処分について」[↩]

澤井 俊之
弁護士法人大江橋法律事務所 パートナー弁護士・ニューヨーク州弁護士
06年京都大学法学部卒業。08年京都大学法科大学院終了。17年University of Michigan Law School卒業。17~18年Pillsbury Winthrop Shaw Pittman LLP (New York) 勤務。18年~20年金融庁市場企画局市場課専門官。主な取扱分野は、フィンテックその他の金融規制への助言・スキーム構築支援、クロスボーダー案件を含むM&A(公開買付けその他の上場株式取引、グループ内再編、事業会社によるベンチャー投資等)、コーポレート対応(株主総会、会社訴訟、会社非訟、アクティビスト対応等)等。
弁護士法人大江橋法律事務所のプロフィールページはこちらから