アジャイルな課題解決へのアプローチと交渉のメソッドを活用した戦略的な解決を
課題ごとに小さなサイクルで計画、設計、実装テストを繰り返し、開発した機能の集合体として一つの大きなシステムを形成する“アジャイル開発”の発想による課題解決を理念に掲げるアジャイルプラス法律事務所。その根底には、ビジネス環境の変化が目まぐるしい現代においては、相談段階で出口が見えないオープン・エンドなクライアントの課題に真摯に向き合うため、暫定的に設定した仮説を実行段階で検証しつつ、環境変化も変数に加えながら適宜アプローチを修正して解決に近づいていくことが必要不可欠との考えがある。
「1時間の面談の場合、法律の話題は15分程度。残りは課題解決の実現手法立案の時間です」と語るのは事務所代表の木下和博弁護士。法律の解釈にとどまらず実現ルートまでを設計できる法務エンジニアとして企業に深く関与し、アジャイル開発の手法を法務の分野で実践している。この手法を活用し、マスメディア対策を含む危機管理、PR戦略までを意識したビジネススキームの構築から、M&Aの戦略立案、カスハラ対策まで、企業のあらゆるニーズに対応しているという。
その効果がとりわけ発揮されるのは“交渉”の場面だ。ただし“交渉”の捉え方は独特で、“今ある状況を変化させるためにエネルギーを与える行為”だという。「弁護士の役割は、解決に向け状況を変えるエネルギーを与えること。課題を解決する工程で変化を促す対象はクライアントや相手方などさまざまです。そのために“どのような対象にどのような情報を提供すべきか”を分析し、交渉のプロセスを構築します」(木下弁護士)。
同事務所が駆使する交渉のメソッドはクライアントにも共有され、実践される。当初は半信半疑のクライアントも、実際にメソッドの効果を体感するうちに理解が進み、成果を実感できるようになるという。「例えば、中小企業の経営者の方はビジネスでの交渉のご経験が多く、ご自分なりの成功体験を持っておられます。しかし、それはあくまでサンプル数“1”の話。運や個性の要素も多分に含んでいます。我々は自身が当事者ではないさまざまな交渉を数多く経験しているからこそ、交渉を構成する要素とその構造を客観化し、体系化しています。クライアントの抱える課題は、当事務所のメソッドを活用すればより普遍的な形で分析・整理でき、出口戦略や交渉戦術の意味を具体的に理解できます。あらかじめ交渉のプロセスを予測し可視化するため、のちに交渉が想定どおりに動きはじめると、メソッドの価値を実感していただけます」(木下弁護士)。
課題の明確化と因数分解で真に得るべき成果を具体化
多くの相談者は“交渉をしなければならない”という前提で相談をするが、まずは“交渉しない”選択肢を具体的に検討することが必須だと木下弁護士は語る。「“交渉しない選択肢”を具体的に検討する過程ではじめて“この交渉の獲得目標=価値”が明確になります。獲得目標は精緻化し、交渉しない場合にはどの程度の負担やリスクがあるかについても、できる限り定量化して見える化します。これはどこまで交渉すべきか、どこで交渉をやめるべきかの指標になります」(木下弁護士)。
労務をはじめとする企業法務案件のほか、渉外家事事件、難民案件などに取り組む大橋さやか弁護士も「交渉や訴訟が必要か否かの検討は欠かせない」と語る。「企業や担当者、当事者にとって“今最も大事なこと”が有耶無耶になっているケースは珍しくありません。労務案件では、整理すると重要なことが関係者のメンタルの健康である場合も多くありますね」(大橋弁護士)。
交渉の場面では、相手方の感情を踏まえた上で課題を解決することも重要だという。「クライアントと相手方の当事者に対し、認識と現状がどの程度離れているかを理解していただくことを大事にしています。特に労務や個人の案件などでは、感情のこじれや関係性の歴史的経緯がトラブルに大きく影響するケースが多くあるため、このプロセスが必要です。私ではなく人事担当者がやり取りの前面に立つことも多いので、この手法をお伝えして対応していただくことも多くあります」(大橋弁護士)。
債権回収や日韓の国際取引・国際相続、企業法務案件に取り組む徐英教弁護士は、交渉ではいかにイニシアチブをとるかを第一に考えるという。「これは、何も難しいことに限られるものではありません。例えば“時間を守る”などの当たり前のことも、イニシアチブにつながります。“相手に引け目を感じる要素を持たないこと”は、初歩的ですが重要なポイントです」(徐弁護士)。
獲得目標についても、具体的な目標の背景を明確にすることが存外忘れられがちなポイントだという。
「債権の回収一つをとっても、“今すぐ必要なのか”、“数年後でよいのか”でアプローチが異なります。回収を優先する場合は、交渉と裁判だけが手段ではなく、場合によっては周囲の人にアクセスすれば事態が好転することもあります。目標を整理することでクライアントが想定した内容ではない結論に至ることもありますが、“本当の意味で課題を解決できた”と喜んでいただけます」(徐弁護士)。
「法務への体系的アプローチは、仮説立案から実行、成果の蓄積とフィードバックの過程でノウハウが洗練されるため、今始めた企業と1年後に始めた企業では、その差は単純な“1年分”にとどまりません。ノウハウの複利効果を意識して先んじてよいサイクルを生み出すためにも、ぜひ早期にご相談いただきたいですね」(木下弁護士)。
木下 和博
弁護士
Kazuhiro Kinoshita
03年弁護士登録(東京弁護士会)、八重洲総合法律事務所入所。06年東京フレックス法律事務所入所。09年同事務所パートナー弁護士。20年アジャイルプラス法律事務所設立、同事務所代表。
大橋 さやか
弁護士
Sayaka Ohashi
04年弁護士登録(第二東京弁護士会)、アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。15~16年翻訳家・同時通訳者として活動。16~17年McDermott Will & Emeryパリ事務所勤務。18年都内法律事務所入所。20年アジャイルプラス法律事務所設立。
徐 英教
弁護士
Yeonggyo Seo
18年弁護士登録(第二東京弁護士会)、東京神谷町綜合法律事務所入所。21年アジャイルプラス法律事務所参画。