最先端分野の法務でも発揮される分厚い経験値と弁護士としての基礎体力
ネーミングパートナーである3名の弁護士を中心に、1989年に発足した桃尾・松尾・難波法律事務所。“真に依頼者から信頼される法律事務所であること”という理念の下、各弁護士が最大限に能力を発揮できる中規模法律事務所としての体制を維持しつつ、コーポレート、渉外業務をはじめ、労働、独禁、知財、倒産、紛争(訴訟・仲裁)など、多岐にわたる分野において良質なリーガルサービスを提供している。
「当事務所は幅広いクライアント層を持ち、伝統的な産業分野から、IT・テクノロジー分野であれば、エレクトロニクスやバイオ、ITベンチャー、自動車関連、プラットフォーム、フィンテックまで、依頼者も相談内容も広範囲の業界・業態に及びます。日頃からそういった依頼者の相談に対応し、かつ国内外の幅広い案件に対処していることによる分厚い経験値が当事務所の強みです」。そう話すのは内藤順也弁護士。特に昨今のコロナ禍では、AIなどの先端技術を活用した新しいテクノロジーの分野における法務業務が急速に拡大。同事務所でも、従来の依頼者が新規事業として乗り出す先端技術を使ったビジネスの支援に加え、AIやVRなど、新たな分野における新規顧客の事業立案や起業のサポートを行うケースも増えている。
「そうした新しい分野においては、早くからテクノロジーに触れてきた若い弁護士たちの力が不可欠。事務所としても若い弁護士を育て、彼らが十分に力を発揮できる場を作るためにさまざまなバックアップを行っています」。内藤弁護士がそう語るように、新人教育、所内での勉強会や国内外での研修などによる知見の共有・醸成はもちろん、新人弁護士に多様な現場経験を積ませるオン・ザ・ジョブ・トレーニングなど、同事務所では中規模法律事務所のメリットを活かした育成方針で多くの優秀な弁護士を育ててきた。
「当事務所では全員がゼネラリストとしての仕事をこなしながら、個々に興味のある分野の専門性を高めています。また、若手時代から、依頼者との面談・交信や、尋問を含む法廷活動に直接関与し、弁護士としての“現場”を経験することにより、単なる法律論にとどまらず、知恵を振り絞って目の前の問題点を解決し、依頼者のニーズを満たすという姿勢が、すべての弁護士に根付いています。新たなテクノロジーに関する法務においても、そうした弁護士としての足腰の強さは大いに活かされていると思います」(内藤弁護士)。
また、テクノロジーの発展でビジネスがよりボーダレスになっている近年では、多くの事業が国内に限定されず、海外の取引先との契約や海外規制の検討をスピーディに行うことも重要だ。コロナ禍で海外との往来が制限されている昨今では、なおさらweb会議等を活用して、海外の弁護士事務所とタイムリーに連携を取る必要がある。同事務所は世界で150都市を超える、約80の独立したローファーム、7,000名の弁護士が参加する国際的なネットワークであるINTERLAWに日本で唯一加盟。海外メンバーファームのネットワークを駆使し、あらゆる国や地域でのプラクティスに、適切かつ迅速に対応できる体制を整えている。
テック分野におけるM&Aの成否を握る 特殊性を踏まえたデューデリジェンス
同事務所には手厚い留学支援制度があり、ほとんどの弁護士が海外留学経験を有している。2020年には塩川真紀弁護士が、留学先のロンドンから帰国して復帰。塩川弁護士はロンドンの大学で学んだ後、企業法務やM&Aに強い現地法律事務所で執務経験を積んだ。「高度なテクノロジーを有する企業同士のM&Aによる知財の集約、重要データの独占などについては、現地の規制当局もより厳しく見るようになっています。英国ではコロナ禍でM&Aの数が大きく減ってしまいましたが、日本企業は内部留保が多く、むしろ新たな投資先を探す企業が増えている印象です。とはいえ、例えば投資先の技術を活用して共同開発を行う場合、そこで新たに創出された知財を商品化する際の権利関係や利益の配分まで、きちんと見据えた契約が結べておらず、後々トラブルになるケースも見られます。また、思っていたほどの利益が上がらなかった場合など、うまくいかなかったケースでどのようにイグジットするかを考えた上で契約書を作成することも大切です」(塩川弁護士)。
特に最近では、新しいテクノロジーの分野への投資の機会を探る日本企業が増えている。そうした場面でより重要になるのが、それぞれの技術やビジネスの特殊性を踏まえたデューデリジェンスだ。
「テック企業を買収する際のデューデリジェンスでは、AIやクラウド、仮想通貨など、関連する先端技術について理解することはもちろん、買収対象企業がライセンス契約を受けている場合なら、そのライセンス契約が買収後もきちんと継続するかどうかなど、事前にしっかりチェックしておかなければなりません。さらには知財と同様にコアな技術や人材への関心もより高まっており、そうした技術や人材を適切に引き継ぐことを意識したデューデリジェンスや契約交渉も重要になっています。また、特にSaaS関連領域のM&Aでは、クラウドに保存された個人情報の取扱主体など、複雑な個人情報の問題が絡む場合も多く、また、依頼者が海外の場合は、最近の外為法改正による海外法人からの出資規制などが論点になるケースもあります。そうした最新の専門的な知見が必要な分野については、例えば独禁法関連なら杉本亘雄弁護士、個人情報なら松尾剛行弁護士というように、高い専門性を持つ弁護士とチームを組みながら対応します。若手パートナーを中心とした弁護士同士が連携し、柔軟な体制でサービスをご提供できるのも、当事務所の強みだと思います」。そう話す山田洋平弁護士自身も、会社法やM&A、紛争解決などの分野で強みを持つ。
さまざまな法や規制が絡み合うからこそ より依頼者の真意を汲んだ対応が必要
「当事務所では、日本企業が海外企業を買収する際のデューデリジェンスや交渉をサポートすることもよくあります。特に新しいテクノロジーの分野では、必ずと言っていいほど事業活動が何らかの形で海外に及んでいるため、日本企業同士のM&Aであっても、海外の規制にかかってくるようなケースも少なくありません。そうした場合は、最新の海外の法規制のリサーチや、海外規制当局の動向を踏まえたアドバイスも必要になるため、当事務所では弁護士同士の定期的な情報交換会を行うなど、国内外の最新の情報をキャッチアップすることも大切にしています。また、クロスボーダーな案件ではINTERLAWのネットワークも大いに役に立っており、何か相談をすると世界各地域の弁護士が迅速に答えを返してくれるなど、新しいテクノロジー関連やM&Aを含め、日本企業の海外でのビジネスについても、幅広くスピーディにサポートできる体制ができています」(杉本弁護士)。
デジタル市場における巨大プラットフォーマーによる寡占の問題をはじめ、各国での規制強化の動きが注視される独占禁止法・競争法の分野でも、同事務所では、的確にアドバイスできる体制が整っており、2019年には公正取引委員会で事務総局審査局長を務めた南部利之氏をアドバイザーに迎えるなど、その陣容を更に充実させている。
特にテック企業をめぐる近年のM&Aの傾向について、杉本弁護士は「依頼者や対象会社の置かれた状況などについて、より深く理解することが重要になっています」と語る。「例えば企業結合審査について言えば、売上だけを見ると合併等の届出要件にかからないものの、重要なデータや技術を持っていたために公正取引委員会が審査を行うなど、イレギュラーな案件も出てきています。また、特に新たなテクノロジーを使ったビジネスでは、その競争力や成長力の源泉がどこにあるのかが外からは見えづらく、真の法的問題点に簡単には気付けないことも多いのではないかと思います。そうした点では、当事務所は、依頼者と綿密にコミュニケーションをとる中で、対象会社の行うビジネスの真の価値や、依頼者が抱える問題意識をしっかりと理解した上で、法律問題を検討していくことを大切にしています」。
誰も考えたことのない未知なる領域でビジネスを前進させるために
アフターコロナを見据え、最近も国内外で、画期的なプロダクトやサービスが続々と登場している。ITやICT、AIにVR、さらにはFacebookが約100億ドルの投資を行うと発表して話題になったメタバース…。テクノロジーが進化する速度はどんどん加速し、いまや最新のトピックが1年も経たず時代遅れになってしまうような状況だ。そうした中で、先端技術を使ったビジネスの勘所を、弁護士が真の意味で理解することは決して簡単なことではない。
同事務所でそれが可能になるのは、各弁護士の能力はもちろん、すべての弁護士に共通する“依頼者に粘り強く寄り添う”という姿勢に加え、弁護士がチームを組んでテクノロジー関連をはじめとする分野で、まさに日本最先端の案件で経験を積み上げ続けていることである。
日本では、ムーンショット型研究開発事業として“2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から開放された社会を実現する”ことが一つの目標とされる。簡単に言えば、人が頭で考えるだけでバーチャルな世界のアバターを通じてコミュニケーションをしたり、遠く離れた場所のロボットを動かせるようになるという、今から見ればSFのような世界を実現するための研究だ。
「最先端の技術を使ったプロジェクトにおいて、法的・倫理的にどこまでが限界となるのかという指針を示すことが必須です。私もチームに入って、法や倫理の側面からサポートをしています」。そう話す松尾弁護士は、これまでも数々の最先端分野の研究開発や事業化に関わってきた。
「海外留学から戻って事務所に復帰した2016年以降、情報法を中心に最先端案件のご依頼を多くいただきました。その中で、当事務所として、AI・AR・MR・VR(メタバース、Vtuber等)、eSports、リーガルテック、ODR(オンライン紛争解決)等、誰も考えたことのない事案について、ビジネスモデルのアドバイスや契約書のドラフトやレビューを行う仕組みが整いました」(松尾弁護士)。
特に情報関係の法制度や実務は、それそのものがクライアントのビジネスの前進や後退を決める大きな要因となるケースが多い。そこで同事務所では、大規模な個人情報保護法違反事件における個人情報保護委員会との折衝や最先端のビジネスモデルを有する企業のグレーゾーン解消制度利用のサポート、AI企業の上場を支援する意見書の作成等の、予防法務から事後対応までクライアント企業を幅広くサポート。巨額の身代金の要求に企業が悩まされる事件が多発するランサムウェア攻撃への対応については、2021年の情報ネットワーク学会で、松尾弁護士が豊富な経験に基づく実務対応の発表も行っている。
「最新の問題でも、別の問題に関する過去の議論が応用できることは多く、徹底的なリサーチを基に、この部分はこの議論を応用することができる等、という判断をしてアドバイスをし、もし古い法律が新しいビジネスを阻害していれば、法改正等を含む公共政策法務対応を行う等、当事務所ならではの強みを活かして最先端の問題に対応しています。私たち弁護士が最先端のよい仕事をできるのも依頼者があってこそ。可能な範囲でプロダクトやモックアップ等に実際に触れさせてもらい、依頼者と目線を合わせながらクライアントファーストで対応をしています」(松尾弁護士)。
内藤 順也
弁護士
Junya Naito
89年東京大学法学部卒業。91年弁護士登録(第一東京弁護士会)。95年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)、Weil,Gotshal &Manges(ニューヨーク)勤務、96年ニューヨーク州弁護士登録。司法研修所教官(民事弁護)、司法試験および同予備試験考査委員(商法)、東京地方裁判所委員会委員のほか、現在は、筑波大学ロースクール非常勤講師(商法)、第一東京弁護士会の民事訴訟問題等特別委員会委員長、国際仲裁に関する委員会委員長等を務める。
杉本 亘雄
弁護士
Nobuo Sugimoto
02年東京大学法学部卒業。05年弁護士登録(第一東京弁護士会)、桃尾・松尾・難波法律事務所入所。09年ワシントン大学ロースクール卒業(LL.M.)、Dewey & LeBoeuf, LLP(ニューヨーク)勤務。10年ニューヨーク州弁護士登録。15年桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー就任。
山田 洋平
弁護士
Yohei Yamada
05年東京大学法学部卒業。06年弁護士登録(第一東京弁護士会)、桃尾・松尾・難波法律事務所入所。11年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)、Davis Polk & Wardwell LLP(ニューヨーク)勤務。12年ニューヨーク州弁護士登録。16年桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー就任。
松尾 剛行
弁護士
Takayuki Matsuo
06年東京大学法学部卒業。07年弁護士登録(第一東京弁護士会)、桃尾・松尾・難波法律事務所入所。13年ハーバード大学ロースクール卒業(LL.M.)。14年ニューヨーク州弁護士登録。15年中国北京大学ロースクール卒業。18年~慶應義塾大学非常勤講師。19年桃尾・松尾・難波法律事務所パートナー就任。20年北京大学博士(法学)。
塩川 真紀
弁護士
Maki Shiokawa
10年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。12年慶應義塾大学法科大学院卒業。13年弁護士登録(第一東京弁護士会)。14年桃尾・松尾・難波法律事務所入所。18年ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン卒業(LL.M.)。19年Cleary Gottlieb Steen & Hamilton LLP(ロンドン)勤務。20年Trowers & Hamlins LLP勤務。
著 者:松尾剛行・西村友海[著]
出版社:法律文化社
価 格:未定(2022年刊行予定)
著 者:松尾剛行・胡悦 ほか[著]
出版社:日経BP
価 格:3,190円(税込)
著 者:松尾剛行 ほか[著]
出版社:コロナ社
価 格:4,180円(税込)