西村あさひ法律事務所 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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最先端で求められる価値の実現をサステナビリティ・DX分野で推進

アジア・欧米を中心に世界に18の拠点を持ち、600名以上の弁護士を擁する西村あさひ法律事務所。日本最大の国際法律事務所として国内外の弁護士が緊密な連携をとることで日本国内の案件はもちろん、インバウンド・アウトバウンドに関する案件に対しシームレスにリーガルサービスを提供できる体制を整えている。
“法の支配を礎とする豊かで公正な社会を実現する”を基本使命として掲げてきた同事務所は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の前後で大きく変化を遂げた社会に求められる最先端の価値を提供するため“サステナビリティ”と“DX”をテーマとしたプラクティスグループを立ち上げた。
2020年に新しく執行パートナーに就任した中山龍太郎弁護士は「我々は日本の法律事務所としていち早く「Diversity & Inclusion宣言」を行い、施策を実施してきました。それは、サービスを実施する上で、自らの変革こそが必要と考えたためです。DXは分野横断的な側面があるため、プラクティスグループを作ることで異なる専門分野間の情報交換や研鑽を行いやすい環境を整えています。また、事務所のHPにも手を加え、この2分野に関する情報発信も強化しています」と説明する。

D&I推進会議を設置 多様性を実現・発信できる体制に

通常はプロジェクトファイナンスやPFI/PPP分野の業務を手がける曽我美紀子弁護士は、2020年1月、同事務所内に他の有志と共に“D&I推進会議”を立ち上げ、幹事メンバーを務めている。

「2019年にダイバーシティ推進室を設置し、専属スタッフを配置しましたが、D&Iは法律事務所経営の根幹であるとの理解から、弁護士を中心とする9名のメンバーで構成する会議体“D&I推進会議”を並存する形で立ち上げました。国内法律事務所ではまだ珍しい例かと思います」(曽我弁護士)。

同事務所はDiversity & Inclusion宣言を事務所内外に発信することで、社会全体で性別や年齢、国籍等にとらわれず互いに尊重し合い、自分らしく能力を発揮できる環境の実現を目指している。加えて、ジェンダーやセクシュアルマイノリティ、障がいやクロスカルチャーにおける課題解決に向けた施策も実施中だ。

「2020年にはブロックチェーン技術を使った同性向けパートナーシップ証明書「Famiee」へのアドバイスなど、公益活動としてのプロボノも積極的に実施しています」(曽我弁護士)。

その結果、同事務所はChambers D&I Awards Asia-Pacific 2020(Chambers and Partners)、FT Innovative Lawyers Awards Asia-Pacific 2021(FINANCIAL TIMES)のD&I部門の表彰を受けている。
コーポレートガバナンス・コードの2021年6月改訂で上場企業の中核人材に多様性の確保が明示的に求められるなど、D&Iは日本企業には喫緊の課題の一つだ。

「欧米では米国NASDAQが同取引所の上場企業に対して役員の多様性について情報開示を行うこと、原則として女性やマイノリティから最低1名ずつ取締役を選任するかまたは選任しない場合に理由を説明することが、上場ルールの改訂に盛り込まれました。依頼者からのD&Iに関連する御相談については、先進事例等を踏まえ、具体的にアドバイスができればと思っています」(曽我弁護士)。

日本に通じた専門家がエネルギーファイナンスを支援

同事務所は2020年にエネルギーとインフラに関連した国際的なプロジェクトファイナンスとアセットファイナンスを専門とするエイドリアン・ジョイス外国法事務弁護士をパートナーとして迎えた。ジョイス外国法事務弁護士は「サステナビリティは環境のみを指すものではなく、社会および経済的な側面をも指すもの」と指摘する。
再生エネルギー分野について、参画前から日本を含むアジアパシフィックの案件を数多く手がけてきたジョイス外国法事務弁護士はCOVID-19が社会に大きなチャレンジをもたらし、既存のトレンドを加速させたと考えているという。

「石炭・石油・ガスなど伝統的資源から風力や太陽電池、バイオマス、水素などへの転換が一層進みました。また、私自身もCO₂を削減するサステナビリティ船舶ファイナンスや、伝統的なエネルギーの効率的な輸送を通じたアプローチに関与しています。サステナビリティは法律事務所・クライアント双方に非常に重要な概念であり、日本人・外国人を問わず協働できることに喜びを感じますね」(ジョイス外国法事務弁護士)。

エネルギーやインフラのファイナンス領域は長年欧米の法律事務所がノウハウ面で先行し、日本の法律事務所がサービスをいかに展開するかが課題となっていた。中山弁護士は「ジョイス外国法事務弁護士は、金融の中心地ロンドンで活躍し、長年日本関連のビジネスに携わってきました。国家権益やクライアントの長期的なビジョンに直結する本分野で、価値観を共有する日本の法律事務所がサポートできることは、クライアントにとっても付加価値となるでしょう」と期待を寄せている。

日々関心が高まる人権分野には発想の転換とバランス感覚を

サステナビリティの観点では、法律分野外と考えられていたトピックが法的な要素を多分に帯びるようになったとM&Aや組織再編の分野から近時の労働分野を見てきた柴原多弁護士は語る。

「少子高齢化に伴い、調整弁としての役割を担っていた非正規雇用の雇用形態にも同一労働同一賃金が導入され、フリーランスを労働関係法令の対象とする議論がなされるなど、日本社会に変化が起きています。変化は海外ではより大きく、海外工場の新設の際には雇用契約のみでなく、経済的搾取を防ぐための人権デューデリジェンス(DD)等の概念が生まれました。法律事務所は社会の動きと既存の知見を合わせ、サービスを変革せねばなりません」(柴原弁護士)。

まさに現在進行形で企業が人権DDの実施が求められているミャンマーで、2013年からヤンゴン事務所の代表を務めてきた湯川雄介弁護士は「現在ミャンマーは深刻な人権問題に直面していますが、ビジネスと人権を考える際には、一国の特殊な事例を見るだけでは不十分です。普遍的な“人権”の規範を理解し、グローバルにこの課題がどのように捉えられているかを考慮するステップが必要でしょう」と語る。
ヨーロッパを中心に矢継ぎ早に制定される法律などを含め、人権分野の情報や認識は日本と海外で大きく異なっているという。

「ミャンマーでは2017年頃から既に欧米企業を中心に問題対応が進みました。まだ日本は意識の持ちようの水準が違うと感じます。対応を行うには、担当社員だけでなくマネジメント層の認識の転換も必要です。その点をいかに分かりやすく伝え、実践していただくかに心を砕いていますね」(湯川弁護士)。

加えて、人権に関する対応は、従来の弁護士業務で多かった危機管理業務とは発想が大きく異なっているという。

「NGO等からの指摘への対応には対話が欠かせません。同じ“人権尊重”の目標に立ち、対応を模索することが必要です。そのためにも、現地で直接人権課題に直面している人々に交わり、文化や慣行、考え方を肌で感じ理解することも欠かせず、自前の拠点を持つことを非常に有意義だと考えています」(湯川弁護士)。

また、人権は国際通商における経済安全保障に基づく取引規制として直接的にビジネスに影響を与えるトピックとなった。非米国企業への米国の経済制裁や輸出規制など、経済安全保障の分野の業務に携わる中島和穂弁護士は「米中対立を背景として、従前は技術競争の側面が強かった問題が香港やウイグル等の問題を端緒として人権の側面で規制が発動される事例が多発しています」と語る。
ウイグルの強制労働に関する米国の対中規制は違反すれば即輸入停止措置となるため、ビジネスへの影響が多大だ。日本企業が輸入差止となった事例も既に発生している。一方で、人権問題の疑われる地域の企業がサプライチェーンに入っているか否かや強制労働の有無について、確実に調査結果を得ることは難しいという。

「直接の取引先のみならず、2次、3次請けの企業も含めてどの範囲まで調査するかについて判断する必要があります。また、ウイグル自治区の強制労働問題は中国政府の統制が厳しく、調査が難しい面があります」(中島弁護士)。

米国の規範に沿うことで中国政府から市場撤退を要求する対抗措置を受けるリスクがあり、板挟みとなる日本企業も多い。

「対立する法規制や米中ビジネスのバランスをとることが難しい分野ですが、個別具体的な事実関係に基づき、リスクを分析し、その軽減策を考えながら、取引の実行の可否や手法を判断していくことが必要です」(中島弁護士)。

多様なバックグラウンドを持つ専門家が高度で持続可能な医療の実現を法的側面から支援

分野そのものが“サステナビリティ”の要素を持ち、近年“DX”が急激に進展してきたのが、葛西陽子弁護士が率いるライフサイエンス・ヘルスケアプラクティスグループの業務分野だ。同グループには薬学部出身の葛西弁護士のように医薬関連技術のバックグラウンドを持つ弁護士や、ライフサイエンス領域のM&Aやスタートアップ支援、技術ライセンス取引の豊富な経験を有し、同業界の実務慣行にも精通した経験弁護士など多様な専門性を持った弁護士が所属している。
近年はCOVID-19を契機にワクチンや治療薬に関する各国規制についての相談や、オンライン診療など非接触型の医療ソリューションの提供に関するアドバイスのニーズが急激に高まったという。

「ヘルスケア以外の異業種からの参入や協業が加速しており、ライフサイエンス領域特有の規制や技術への深い理解と複数の法分野との柔軟な連携が必要な案件が増えています」(葛西弁護士)。

2018年に次世代医療基盤法が施行され、創薬や新規の治療法の開発に医療ビッグデータを利活用する取り組みが進められてきたが、COVID-19により日本の医療分野のDX化はいまだ途上にあることが改めて明らかになったと葛西弁護士は語る。

「例えば、医療情報を活用したグローバルな医薬品開発においては、各法域における個人データの域外移転や被験者からの同意取得、データセキュリティに関するコンプライアンスをどう確保するかが世界的な課題となっています。法改正の早い分野でもあるため、各国の最新の状況をキャッチアップできるようにしておくことが重要です」(葛西弁護士)。

本分野は研究開発の初期段階から、研究開発実行の法的側面をサポートする専門家の関与が不可欠であるという。

「最先端の医療関連技術に深い理解を持って、的確かつ迅速に課題解決策を導き出すことが求められる本分野においては、多様な背景を持つ弁護士の協業は必須です。D&I推進は多様な人材を集める魅力的な組織作りを行う上で不可欠だといえるでしょう」(葛西弁護士)。

→『LAWYERS GUIDE 2022』を「まとめて読む」
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 DATA 

ウェブサイトhttps://www.nishimura.com

所在地・連絡先
〒100-8124 東京都千代田区大手町1-1-2 大手門タワー
【TEL】03-6250-6200(代表)【FAX】03-6250-7200【E-mail】info@nishimura.com


所属弁護士等:パートナー/外国法パートナー/法人社員202名、アソシエイト/法人アソシエイト442名、オブカウンセル9名、カウンセル/外国法カウンセル61名、税理士/弁理士/アドバイザー21名(2021年12月現在)

主な取扱い業務分野:▽M&A▽コーポレート▽ファイナンス▽リアルエステート▽事業再生/倒産▽争訟・国際仲裁▽知的財産法/情報法/データ保護▽危機管理▽独占禁止法/競争法▽税務▽労働/人事▽消費者法▽通商法/投資法▽国際関係法務▽ウェルスマネジメント▽公益的活動▽インフラ/エネルギー・再生可能エネルギー/資源▽アグリフード▽ライフサイエンス/ヘルスケア▽IT/メディア/エンタテイメント▽テクノロジー▽デジタルトランスフォーメーション(DX)/デジタルイノベーション▽アジア▽中東▽ヨーロッパ/ロシア▽北米▽中南米▽アフリカ▽オセアニア

近時の受賞歴:▽The Asia Legal Awards 2021にてAsian Law Firm of the Year受賞▽ALB Japan Law Awards 2021にてJapan Law Firm of the YearおよびJapan Deal Firm of the Year受賞▽FT Innovative Lawyers Awards Asia-Pacific 2021にて本拠地が非英語圏の法律事務所として唯一最優秀賞のトップ10選出およびDiversity and inclusion部門受賞▽Chambers Asia-Pacific Awards 2021にてJapan Domestic Law Advisers of the YearおよびOutstanding Firm for Pro Bono - Asia Pacific受賞▽Chambersなどにおいて多岐に渡る分野で事務所・所属弁護士が最高評価となるBand 1獲得

中山 龍太郎

弁護士
Ryutaro Nakayama

95年東京大学法学部卒業。99年弁護士登録(第一東京弁護士会)。06年New York University School of Law卒業(LL.M.)。09年ニューヨーク州弁護士登録。21年~執行パートナー。

柴原 多

弁護士
Masaru Shibahara

96年慶應義塾大学法学部卒業。99年弁護士登録(東京弁護士会)。

湯川 雄介

弁護士
Yusuke Yukawa

98年慶應義塾大学法学部卒業。00年弁護士登録(東京弁護士会)。07年Stanford Law School卒業(LL.M.)。13年~ヤンゴン事務所代表。

曽我 美紀子

弁護士
Mikiko Soga

98年東京大学法学部法学部卒業。01年弁護士登録(第二東京弁護士会)。06年Georgetown University Law Center卒業(LL.M.)。

中島 和穂

弁護士
Kazuho Nakajima

01年東京大学法学部卒業。02年弁護士登録(第一東京弁護士会)。06年Columbia University School of Law卒業(LL.M.)。10年ニューヨーク州弁護士登録。16~19年ドバイ駐在員事務所代表。

エイドリアン・ジョイス

外国法事務弁護士
Adrian Joyce

93年The University of Sheffield(B.A.)、98年早稲田大学(MBA)、99年The University of Law(PGCE; LPC)。96~98年東京大学(文部省研究奨学金)。03年イングランド・ウェールズ弁護士登録。14年外国法事務弁護士登録(東京弁護士会)。

葛西 陽子

弁護士
Yoko Kasai

05年東京大学薬学部卒業。08年東京大学法科大学院卒業。09年弁護士登録(第二東京弁護士会)。16年Stanford Law School卒業(LL.M. in Law, Science and Technology)。

『コーポレートガバナンス・コードの実践〔第3版〕』

著 者:武井一浩[編著]、安井桂大[著]([その他の著者]井口譲二氏・石坂修氏・北川哲雄氏・佐藤淑子氏・三瓶裕喜氏)
出版社:日経BP
価 格:3,080円(税込)

『バーチャル株主総会の法的論点と実務』

著 者:太田洋・野澤大和・三井住友信託銀行ガバナンスコンサルティング部[編著]、石川智也・辰巳郁・菅悠人・瀧口晶子[著]
出版社:商事法務
価 格:4,840円(税込)

『アジアビジネス法務の基礎シリーズ ミャンマーのビジネス法務』

著 者:西村あさひ法律事務所[編]、原田充浩、湯川雄介、伴真範、今泉勇、高山陽太郎、鈴木健文、村田知信、安部立飛、服部啓、宮﨑貴大、山本壮、田代夕貴、数井航、チー・チャン・ニェイン、八木智砂子、齊藤良平[著]
出版社:有斐閣
価 格:3,630円(税込)

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