読者からの質問(景品類規制の対応ポイント)
A 「景品表示法(以下「景表法」)の論点では“表示”が主流であって、“景品類”はそれほど重視されていないように見えるかもしれません。しかし、景品に関する表示の対応を誤ると、“有利誤認に該当する”として表示規制で処分される可能性もあり、実際に確約手続の事例も出ています。消費者庁による「景品に関するQ&A」が充実しているので、まずはこれに即して考えることになりますが、業種や取り扱っている製品の特性などを検討する必要があり、弁護士を交えた丁寧なディスカッションが求められます」。公正取引委員会など規制庁での経験が豊富で、景表法に関しては食品関係の上場会社やECサイトにおける表示に関する案件などを手がけてきた石井輝久弁護士は、景品に対する企業の警戒度の“緩み”を懸念する。
「景品に関して行政処分に至った事例が少ないことは事実です。大阪府によるものは、近時、2019年と2023年に見られますが、消費者庁によるものは2009年の同庁設置以降、2026年4月末時点で0件です。指導も、消費者庁によるものは2023年度に3件、2024年度に2件、2025年度に3件と、多くはありません。しかし、“有料会員になればもれなく景品がもらえるように宣伝したのに、一部の入会者だけしか景品をもらえなかった”という事案が有利誤認であると指摘され、自主的な改善計画の策定による確約手続をとることで、より重い行政処分を回避した事例が2025年にありました。これは、隠れた景品に関する行政処分事案ともいえるでしょう。また、懸賞の場合の売上予定総額の概念を正しく理解することも重要です。景品の総額は“懸賞に係る売上予定総額の2%以内”と定められていますが、企業規模によって“2%”の額は大きく異なります。金額の問題は重要で、近時の指導事案も懸賞の総額制限の超過や最高額の超過、総付景品の限度額違反が目立ちます。まずは同Q&AのQ90~97で示されている考え方をよく理解することです。このほか、“セット販売の考え方”(Q29)、“セット販売か総付景品か”(Q30)、“オープン懸賞”(Q15~24)に関するご質問を多く受けます。オープン懸賞は景表法の規制がかからないので有効な方法ですが、それだけに判断が難しいですし、Q&Aでは細かい要件がいくつかあるので注意が必要です。また、“新しい機能や部品をつけて従前と同じ値段で売ったら景品なのか、それとも製品そのものなのか”という問題も古くて新しく、禅問答のようになってしまいますが、最終的には消費者目線で考えることが大切です。クライアントに回答すると“このスキームもNGなのですか”と驚かれることも少なくありませんが、事例が少ないので、“どこまで攻めるか”は企業の哲学が問われます。だからこそ、事例に精通した我々にご相談いただければと思います」(石井弁護士)。

石井 輝久 弁護士
読者からの質問(医薬品等のプロモーション規制と留意点)
A 「薬機法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)における医薬品等の広告規制において最も注意すべきは、“‘何人も’規制対象”とされていることです。製薬企業だけではなく、広告代理店や、メディアはもちろん、インフルエンサーなども規制対象となり得ます。彼らが何気なく発してしまった一言が薬機法の広告規制に違反し、当人だけでなく広告主が責任を問われることもあります。プロモーションの多様化により、広告規制への違反の可能性の拡がりも招いているため、注意が必要です」。長谷川公亮弁護士は、主に製薬企業をクライアントとし、薬機法の広告規制や「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」(厚生労働省、2018年9月25日)に基づくプロモーション規制の対応などの案件を数多く手がける。
「薬機法の広告規制については、同法66条で“虚偽・誇大広告等の禁止”、68条で“未承認医薬品等の広告の禁止”が定められています。そのうえで、薬機法上の“広告”に該当する要件が、①顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること(顧客誘引性)、②特定医薬品等の商品名が明らかにされていること(特定性)、③一般人が認知できる状態にあること(一般認知性)――の3点です。また、厚生労働省が薬機法の広告規制の解釈適用に関して「医薬品等適正広告基準」を定めるとともに「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」を示しています。この解説では“NG表現の具体例”なども示されていますので、実務上参考になります。なお、2020年7月に発生した実際の摘発事例として、健康食品販売会社が医薬品としての承認を得ていない自社製品について、第三者の体験談を装い、肝機能の改善効果を謳ったウェブ広告を行ったとして、広告主である健康食品販売会社だけでなく、広告代理店や制作会社の従業員も摘発されたものがあります。また、薬機法の広告規制をめぐっては、2021年8月1日施行の改正法によって措置命令制度や課徴金制度が導入されました。虚偽・誇大広告を行った場合には、原則として、違反を行っていた期間中における対象商品の売上額の4.5%に相当する課徴金の納付を命じられることがあります。直近の2025年11月にも、医療機器メーカーが、認証を受けた使用目的・効能以外の疾病にも効果があるかのような虚偽・誇大広告を行ったとして措置命令を受けています。リスクが大きい一方、規制対象が幅広いことも特徴ですので、インフルエンサーやアフィリエイターの記事・投稿内容も広告代理店などに任せきりにするのではなく、自社で事前にきちんと確認・把握するプロセスの構築も重要です」(長谷川弁護士)。

長谷川 公亮 弁護士
読者からの質問(No.1表示の実務対応)
A 「“No.1表示”をすることは禁止されていません。ただし“合理的な根拠”が必要です。消費者をターゲットとするBtoCビジネスにおいて、“競合他社より先んじたい”“自社製品・サービスのほうがより優れていることを示したい”という気持ちはよくわかります。しかし、功を焦って安易な調査結果を公表したものの、根拠が不十分であるとして行政指導を受けてしまうようでは逆効果です。消費者が適切に判断できるようにするための調査方法の記載について、紙面や画面上のスペースから“できるだけ短い文言で簡潔に記載したい”というクライアントの意向に沿えるよう、時間をかけたヒアリングを心がけています」。岡田美香弁護士は、社会人としてのキャリアを広告代理店でスタートし、今は新たなビジネスモデルの構築に試行錯誤するスタートアップ・合弁会社の戦略的かつ伴走型のリーガルアドバイザーとして豊富な経験を有する。
「消費者庁が2024年9月、No.1表示に関する措置命令の増加を踏まえ、実態調査報告書(消費者庁表示対策課「No.1表示に関する実態調査報告書」(2024年9月26日))を公表していることなどからも、行政がNo.1表示を問題視していることがわかります。実際、“競合他社に見劣りしないようNo.1表示を行いたい”という広告主の動機につけ込み、不適切な調査を廉価で行う調査会社も存在し、広告主自身は調査内容の合理性を確認することなく安易にNo.1表示を行い、法的に問題となるケースが増えています。消費者庁は、No.1表示についてその根拠が合理的と認められる判断基準として、①比較対象となる商品・サービスが適切に選定されていること、②調査対象が適切に選定されていること、③調査が公平な方法で実施されていること、④表示内容と調査結果が適切に対応していること――の4点を明示していますが、いずれも当たり前のことでありながら概念的であり、判断に迷う広告主も少なくありません。No.1表示は、競合他社との比較において“優良性”“有利性”を示すものであり、“No.1である”とした根拠が合理的なものでなければ不当表示に該当してしまいます。“No.1表示の根拠の合理性を担保する”という観点からは、調査方法の記載はできるだけ具体的かつ詳細にすることが望ましいのですが、それによって見た目の情報量が膨大となり、消費者が離脱してしまうかもしれないというビジネス上のリスクも考慮しなければなりません。一方、消費者庁から“No.1表示の根拠の記載が不十分で、景表法違反のおそれがある”として、修正・削除など是正を求められるケースもあります。是正を求められた事業会社は、消費者庁と相談しつつすみやかに調査方法の記載をより詳細なものに変更するといった対応をとることになります」(岡田弁護士)。

岡田 美香 弁護士
読者からの質問(ステマ規制の対象行為)
A 「“ステマ規制”というと、近年のSNSの発展に伴う“わかりにくいもの”と思われがちですが、必要以上に恐れるものではありません。SNSの発信のケースでは、“プロモーションを含みます”“ハッシュタグ+PR”など、発信時において事業者の広告であることを明示さえしていれば、ステマ規制違反とはならないのです。それよりも問題となるのは、口コミサイトへのサクラ投稿など、古くから続く手法です。それも、“謝礼を支払うので投稿してほしい”といった、投稿内容を指定するような明確なものでなくとも、投稿内容の指示がなくても高評価を投稿せざるを得ないような高額の謝礼を提示するなど、“暗に匂わせる”ようなものも目につきます。すべてに共通する平準化された判断基準はないため、個別にご相談いただきたいと思います」。保坂理枝弁護士は、ECサイト・プラットフォームを運営する事業者をクライアントとして数多くの案件に携わり、サイト上で取り扱われる多種多様な商品群、特に食品関連やペットフード関連をはじめとする効能効果訴求に関わる表示案件について豊富な知見を有し、優良誤認表示該当性の判断や表示の適正化に関するアドバイスについての表示対応を通じ、幅広い商品分野にわたる実務経験を蓄積する。
「“ステマ規制”とは、一般消費者が事業者の表示であることの判別が困難である表示を対象とします。従来の表示規制では、商品・役務の内容や取引条件の表示そのものと実体の乖離の有無が判断されてきましたが、ステマ規制はその“表示主体”自体の誤認を生じさせる行為を規制するものであり、一般消費者が事業者による表示であることを知らずに“第三者による投稿である”と誤認することによって、表示内容に誇張が含まれることを考慮せずに合理的な選択が阻害されることを防止することを目的としています。ステマ規制は2023年10月に施行され、2023年度は指導2件、2024年度は措置命令5件、2025年度については公表されている3件すべてが確約手続の対象となっています。ステマ規制についての法的措置事例の多くは、Instagramなどでのインフルエンサーによる投稿を自社サイト上に“利用者の声”のような形で掲載しているものであり、法執行事案の一定の傾向と見ることもできるかもしれません。重要なのは、“消費者に対して誠実に表示しているか”ということです。実際に使用した人の口コミの影響力を正しく捉え、広告の発信に至るまでの過程について振り返ることが重要でしょう」(保坂弁護士)。

保坂 理枝 弁護士
読者からの質問(欧州DSAの規制・事例と適用対象)
A 「欧州委員会は2025年12月、デジタルサービス法(Digital Services Act:DSA)に基づく透明性義務違反として、米国のX社(旧Twitter社)に1億2,000万ユーロの罰金を科し、また、2026年2月には、中国発の動画共有アプリTikTokの中毒性のあるデザインについて、“未成年者を含む利用者の心身の健康を損なうリスクがある”として、DSAに違反するとの暫定判断を下しました。このような罰則を受けているのは世界的なサービスプロバイダが中心であることもあり、“必要以上に警戒しなくともよいのではないか”と考える日本企業も少なくないようです。しかし、現地で活動する弁護士によると、当局ではなく市場参加者や国際的なサプライチェーンを通じて遵守を求められる事例や、影響を受ける当事者がDSAを根拠に企業にクレームを入れることにより、企業として対応せざるを得ない状況に追い込まれる事例が目につきはじめているそうです。EU域内で対象となるサービスを提供する場合は、誰もが当事者となりうることを念頭に置くべきです」。塚元佐弥子弁護士は、World Law Groupなど、互いに信頼関係を築いている国際的なネットワークを活かし、EU諸規則の適用の有無についての複雑な判断を提供する。
「DSAにおける特徴的なものが、ダークパターンに対する規制です。ダークパターンとは、ユーザーに気づかれないよう、意図に反して特定の行動を促すしくみ・設計のことです。DSA25条に基づき、オンラインプラットフォームを提供する企業がダークパターンを使用することは禁じられています。この規則は、すべてのデジタルサービスに対する一般的な義務ではなく、オンラインプラットフォームの提供者に適用されるものです。ここでのオンラインプラットフォームとは、利用者の要請に応じて情報を保存し、一般に公開するホスティングサービスを指しますが、小規模企業については一部の義務が免除されています。“どのような行為がNGなのか”は例示的には示されているものの、問題は、そもそも“自社がDSAの適用対象となるのか”や“自社のウェブサイトやアプリの設計のどの部分がNGなのか”についての判断が難しいことです。今後、企業がとるべきダークパターン対策は、①サービスがDSA適用対象か否かを確認すること、②適用対象である場合には、サービスがオンラインプラットフォームに該当するかを検討すること、③EU域内における法定代理人選任等の共通の義務を履行すること、④DSA25条に基づく禁止行為を行っていないかを確認すること、⑤DSA26条以下に基づく広告の透明性義務の履行等に関する見直しを行うこと――といったことですが、自社が何らかのEU規則の適用対象になる可能性を把握しつつも、どの規制が関係し、具体的にどのような義務を負うのかについての判断に難しさを感じているクライアントが多い印象です。我々は現地の専門家と協働し、日本のクライアントのニーズや要望をきめ細やかに反映した的確な対応が行われるようにサポートしています」(塚元弁護士)。

塚元 佐弥子 弁護士
石井 輝久
弁護士
Teruhisa Ishii
99年弁護士登録(第一東京弁護士会)。08年ニューヨーク州弁護士登録。証券取引等監視委員会事務局および公正取引委員会・企業結合課での勤務経験を有し、主に独禁法、景表法、取適法および上場会社のコンプライアンス関係の事案を担当。筑波大学大学院等で非常勤講師を務める。
長谷川 公亮
弁護士
Kosuke Hasegawa
10年弁護士登録(第一東京弁護士会)。17年デューク大学ロースクール修了(LL.M.)。18年ニューヨーク州弁護士登録。製薬・ヘルスケア分野に精通し、同分野における広告・プロモーション規制について豊富な知見に基づいた助言を提供。また、M&A、人事労務分野にも高い専門性を有する。
岡田 美香
弁護士
Mika Okada
広告代理店勤務を経て、99年弁護士登録(東京弁護士会)。01年ユーワパートナーズ法律事務所(現 シティユーワ法律事務所)入所。スタートアップ・合弁会社の支援に豊富な経験を有し、消費者向けのプラットフォームビジネス、テーマカフェなど、新たなIPビジネス等の景品表示規制、広告規制についても精通。
保坂 理枝
弁護士
Rie Hosaka
07年弁護士登録(東京弁護士会)。Eコマースを中心とするインターネットビジネス分野の表示規制・広告規制等に精通し、また、複数の専門領域が複雑に絡み合うビジネスの法務サポートについて幅広い実務経験を有する。
塚元 佐弥子
弁護士
Sayako Tsukamoto
11年弁護士登録(第二東京弁護士会)。ドイツを中心にEU諸国の企業の日本進出や日本子会社の法務、またEU市場へ展開する日本企業の法務サポートを幅広く取り扱う。海外の法律事務所との豊富なネットワークを活かし、現地の最新の法規制や実務・判例動向を踏まえた助言を提供。