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インドデスクによる継続的な法務支援

120年以上にわたり、多くの企業の法務支援を担っている岩田合同法律事務所。同事務所はインド法務ニーズの高まりを受け、2026年1月、インドデスクを立ち上げた。
「インドに子会社や合弁会社を有する日本企業にとって、現地で生じる法的課題は一過性のものではなく、子会社管理の一環として恒常的に対処すべき事項であるケースも多くあります。当デスクでは、労務、税務、コンプライアンス体制の構築・運用(贈賄・腐敗防止、競争法、輸出管理、外国為替規制等)、データプロテクションやサイバー対応などの広範な分野について、個別案件へのスポット対応にとどまらず、継続的に支援する体制を整えています」(田子真也弁護士)。

田子 真也 弁護士

「インドにおける法務支援は、単なる現地対応にとどまらず、日本本社のガバナンスとの接続を踏まえた統合的な視点が不可欠です。当デスクでは、インドの大手法律事務所の協力のもと、日本法弁護士とインド法弁護士が緊密に協働して日印双方の知見を結集し、現地の実務感覚を踏まえつつ、最新の法令動向や実務慣行に即した助言やサポートを提供します」(松田章良弁護士)。

松田 章良 弁護士

“日本の常識”は通用しない

日本企業がインドに事業進出する形態は、大きく分けて①現地に100%子会社を設立するパターンと、②現地企業と合弁会社(JV)を組成するパターンとがある。しかし、どちらのパターンであっても日本国内の親子会社関係やビジネスパートナーとの信頼関係を前提とした、いわゆる“日本の常識”は、通用しない。
「まず、①では“日本本社からの管理が行き届かない”という問題がしばしば発生します。インドでは取引慣行やコンプライアンスの運用面において日本とは異なる部分も多く、現地に常駐の駐在員を置かず、会計周りのチェックも疎かにしたまま遠隔で管理しようとすると、不正や損失の発覚が大幅に遅れることがあります。“何かあれば子会社の方から報告してくるだろう”と考えるのは、非常に危険です。インドの商慣習を理解し、現地の従業員を育成しながらオペレーションを軌道に乗せるまで10年程度を要するケースが多いため、専門家を起用するなど、長期的な目線で体制を整えることが重要です」(山田康平弁護士)。

山田 康平 弁護士

「一方、②は一見、リスクが低そうに思えますが、デューデリジェンス(DD)や契約書の精査を怠ったがために、後日インド側パートナーが非協力的となり、業務の遅延・拒否や会社経費の私的流用、さらには日本側に無断で取締役を選任するなどの事態となったケースもあるようです。(a)事前にDDを実施して法令面を含むさまざまな角度から調査を行うこと、(b)合弁契約書においてパートナーの契約違反やデッドロックに陥った場合の対処方法について明確な条項を設けておくことの2点が重要です」(池田美奈子弁護士)。

池田 美奈子 弁護士

「どのような進出形態であれ、日本国内の常識のみに依拠した判断ではなく、現地の専門家のアドバイスを踏まえて着実に進めることで、リスクを最小限に抑えることが可能です。インド進出を企図する企業のみなさんには、ぜひお気軽にご相談いただければと思います」(別府文弥弁護士)。

別府 文弥 弁護士

インドにおける子会社管理の留意点

インド子会社の管理においては、インド特有の制度・実務運用に起因する難しさもある。
「日本本社では、“法的に可能”という整理ができれば、その前提でスケジュールや社内承認プロセスを組み立てることが多いと思いますが、インドでは、登記実務や当局対応での提出書類の形式、署名方法、提出タイミング、さらには担当官庁ごとの運用差異によって実際の進捗が変わるため、想定していたスケジュールどおりに進まないケースも少なくありません」(池田弁護士)。
また、インドでは、会社法、外為規制(FEMA)、税務、労務といった複数の規制領域が相互に密接に関連している点にも注意が必要だ。
「たとえば、増資や株主構成の変更を行う場合でも、会社法上の手続だけで完結するわけではありません。FEMA上の報告やバリュエーション対応、税務上の影響分析までを、一体として整理する必要があります。それぞれを個別に進めてしまうと、形式上は問題がなくても、後日の監査やDDで整合性の問題が顕在化することがあります」(山田弁護士)。
加えて、日本本社側の厳格な稟議や正式な取締役会決議を前提とした、いわゆる“日本的な決裁システム”との関係でも、実務上の困難が生じやすいという。
「インドでは、ビジネスに即した迅速な意思決定や実行を求められる場面が少なくありません。その結果、現地の“本社の承認を待っていると実務が進まない”という声と、日本本社の“統制を緩めることが難しい”という意向の板挟みになりがちです。重要なのは、どこを厳格に統制し、どこに実務上の柔軟性を持たせるのか、現地の実務をよく理解し、整理しておくことです」(別府弁護士)。

企業の“法務パートナー”として

田子弁護士と松田弁護士は、それぞれ締め括りとして、インド事業における日本本社側の対応のポイントと同事務所の企業支援に根差した理念を、以下のように総括する。
「インドでの事業に際して生じる法的課題は、現地法制度の複雑さに加え、実務慣行や行政対応の不透明さも相まって、日本本社にとって全体像を的確に把握することが容易ではない場面も多く見られます。また一方で、現地弁護士からの助言をそのまま日本の経営陣や取締役会に提示しても、意思決定の材料としては十分に機能しない場面も少なくありません。本社法務部門としては、日本法との比較を踏まえた整理に加え、多岐にわたる論点の中から経営判断に影響を及ぼしうるリスクを峻別することが重要となります」(田子弁護士)。
「当事務所は、“信頼関係”“長期的”“課題解決”“健全”“事務所一丸”の五つを理念に掲げ、クライアントとの長期的な関係構築を通じて、事業環境や組織風土、意思決定の構造を深く理解したうえでの支援を重視しています。インドデスクもこの理念のもと、現地弁護士の助言の伝達にとどまらず、日本企業の意思決定プロセスに適合した支援を提供する“法務パートナー”として、インド事業における課題解決を担う存在でありたいと考えています」(松田弁護士)。

読者からの質問(海外弁護士との連携で注意すべき点)

Q 海外弁護士との連携にあたって注意すべきポイントを教えてください。
A 海外弁護士との協働にあたっては、当該弁護士の実績・専門性に加え、日本企業の意思決定プロセスへの理解、タイムリーなレスポンス、費用面での柔軟性が重要なポイントとなります。
社内にこうした対応に精通した担当者がいればよいのですが、そうでない場合には、日本語対応が可能で、なおかつ信頼できる海外弁護士への依頼や、海外弁護士とのコーディネーション業務を取り扱う外部専門家との協働が不可欠です。当事務所でも、TerraLexやPrivacyRulesといったグローバルネットワークを介し、本稿で紹介したインドをはじめ、各国の信頼できる弁護士との協働など、さまざまなサポートを提供しています。

→『LAWYERS GUIDE 企業がえらぶ、法務重要課題2026』を 「まとめて読む」
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所在地・連絡先
〒100-6315 東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング15階
【TEL】03-3214-6205(代表) 【FAX】03-3214-6209

ウェブサイトhttps://www.iwatagodo.com/

主事務所の所属弁護士会:第一東京弁護士会

田子 真也

弁護士
Shinya Tago

93年弁護士登録(第一東京弁護士会)。25年~岩田合同法律事務所代表パートナー。主に、コーポレート、国際関係法務、訴訟・紛争解決、危機管理を取り扱う。趣味の登山ではキリマンジャロ登頂、エベレストBC到達を達成。

松田 章良

弁護士
Akira Matsuda

08年弁護士登録(第一東京弁護士会)。クロスボーダーM&A、大規模かつ複雑な係争・不正調査案件およびデータ・テクノロジー、デジタル金融に係る案件を専門とする。インドでのヨガによるデトックスを目標とする。趣味はアジアのグルメ&リゾートを巡る弾丸トラベル。

別府 文弥

弁護士(シンガポール駐在)
Fumiya Beppu

11年弁護士登録(第一東京弁護士会)。米国留学・研修、外務省への出向を経て現在シンガポールのDrew & Napier法律事務所に駐在し、コーポレート・M&A、日本企業のASEAN各国・インドへの展開案件を取り扱う。趣味は茶道、語学(仏・伊語)、運動。

池田 美奈子

弁護士
Minako Ikeda

13年弁護士登録(東京弁護士会)。海事専門事務所を経て、岩田合同法律事務所入所。コーポレート案件、クロスボーダーの取引案件を中心に、データ・プライバシーやヘルスケア分野の案件を多く手がける。趣味はヨガ(インストラクター資格(RYT200)保有)・ピラティス。

山田 康平

弁護士
Kohei Yamada

14年弁護士登録(第一東京弁護士会)。M&A・コーポレート分野を主に取り扱うほか、シンガポールのDrew & Napier法律事務所での駐在経験を活かし、日本企業の海外進出・展開のサポート等を行う。趣味は野球観戦。