弁護士の“のぞみ”に向き合うことでクライアントの“のぞみ”を叶える
「クライアントの望みをかなえる専門家集団であること。しかし親しみやすくあること。“のぞみ総合法律事務所”という名前には、こんな創立者の願いがありました」。1995年に5名で発足した同事務所は、現在、所属弁護士40名を超え、2024年には業容拡大のため事務所を移転する。「実は、弁護士や事務局などメンバーの“のぞみ”、“将来こうなりたいという思いを伸ばせる事務所”という意味でもあるんです」。大東泰雄弁護士は、その名の“真の意味”を明かす。
たとえば弁護士が、“この分野の力を伸ばしたいから、官公庁に出向したい、留学したい”と希望すれば、事務所は後押ししてくれる。「私自身も、“独禁法の専門性を深めたい”と思い、“公取委に出向したい”と希望を述べたとき、先輩弁護士に背中を押してもらいました」(大東弁護士)。そして、“その分野なら自分だ”という自負を各弁護士が胸に抱く。「こうして、パートナーからその分野の事件を多く任されるようになるのです」。大東弁護士は自身のキャリアを振り返る。
各弁護士の興味関心を応援することは、高い専門性を持った質の高いサービス提供を行うための取組みだと、大手法律事務所での執務経験を経て同事務所へ合流した川西風人弁護士は指摘する。
「大規模事務所では同じような業務を取り扱う弁護士が多数いることも少なくありませんが、中規模事務所である当事務所では専門分野を異にする弁護士も多く、若手のうちから興味のある分野があれば、当該分野で多くの案件を担当することができるので、早く専門性を高められます」(川西弁護士)。
その過程で、専門性を有する分野と親和性の高い周辺業務も自分の強みとなる。それもまた魅力なのだという。
鳥居江美弁護士はエンタメ業界に造詣が深いが、「顧問になってみると、著作権法などの知財分野の相談だけでなく、たとえば従業員の労務問題や経営者の相続問題など、知財分野以外の相談が案外多いと感じます」と、専門分野だけでなくベースとなる多様な業務を経験するメリットを指摘する。一方で、業界最前線の課題も移り変わる。「昨今は独禁法が絡む問題が増えてきました。“これは気をつけた方がよい”というアンテナは、当事務所で広く経験してきたからこそのものだという実感があります」(鳥居弁護士)。
「確かに最近は、相談の内容が多角的・立体的になっています」と語るのは劉セビョク弁護士だ。「たとえば、新規事業の初期段階でざっくりとした相談が来る場合がありますが、そこからゼロベースでどのようなリスクがあるかを調べ始めるようなレベルでは顧客のスピードに応えられません。多様なアンテナを持てばこそ、複合的な案件の見立ても可能になるのです」(劉弁護士)。
男性弁護士も育休取得 ダイバーシティ感覚を法的サービスへ還元
「“ファーストインプレッションとして何が答えられるのか”、それが弁護士としての“総合力”です」と語る小林敬正弁護士は、週2回、企業の法務部に出向している。「法務は事実上、社員と私の2人だけ。ありとあらゆる契約書から、独禁法、労務に至るまで、幅広い案件をこなしますが、当事務所内のプラクティスグループで最新の情報交換をしているので心強いです」(小林弁護士)。弁護士各人の研鑽や所内の情報交換によるアンテナの共有によって、クライアントに高レベルの法律サービスを還元できるという。
小林弁護士は男性の育休取得者だ。同事務所では育休規定が整備されており、必要があれば期間も延長できる。「当事務所では初めての男性育休取得者となりましたが、私の仕事はパートナー弁護士はじめ、所員が快く引き受けてくれました。当事務所には、鳥居弁護士のように複数回育児休暇を取りつつ素晴らしいキャリアを築いている先輩がいますので、安心して育休を取得し、育児に注力することができると考えています」(小林弁護士)。
「“弁護士は法律だけを知っていればよい”という時代ではありません。育休は男女問わずキャリアにマイナスなものではなく、ダイバーシティの重要性を肌で感じ、多様な考え・経験を持つことで、クライアントに対するサービス品質向上につなぐことができます。実際、子育ての中で社会の動向を感じる場面もあり、社外役員を務める際にも役立っています」(鳥居弁護士)。
劉弁護士は「所員の結びつきを強めることは、所員の心理的安全性の確保だけでなく、弁護士育成の観点から意識的にそうしている側面もあります。弁護士の仕事は、現場での論理的思考やアプトプットだけでなく、日常的なインプットによる研鑽が肝要です。コミュニケーションコストを抑え、素早く先輩からナレッジやノウハウを吸収する、示唆を与えられる環境が大切です」と強調する。劉弁護士のこの言葉は、同事務所の人的資本への考え方を端的に言い表している。
同事務所の女性弁護士は12名。これは全弁護士のうち約25%に当たる数字である。2年目の守屋沙織弁護士は、事務所を選ぶにあたり、“女性弁護士も働きやすい環境であるか”を慎重に確認したという。「実際に入所してみると、女性も活躍できる環境があり、多様性を持つ先輩方から手厚いフォローをいただけるメンター制度も備わっており、気軽に相談できる環境がとてもよいと思っています」(守屋弁護士)。
こうした取組みが評価され、同事務所は第二東京弁護士会が先進的なワークライフ・バランスを実施している法律事務所を表彰する「第9回ファミリー・フレンドリー・アワード」を受賞した。業務のIT化・効率化を含め、各弁護士の働き方を事務所がバックアップするという体制整備の賜物といえよう。
弁護士がワークライフ・バランスを実現して笑顔になる。そのことが、実はクライアントの利益に直結し、クライアントの笑顔につながる。
のぞみ総合法律事務所の“のぞみ”は、こうして叶う。
大東 泰雄
弁護士
Yasuo Daito
01年慶應義塾大学法学部卒業。02年弁護士登録(第二東京弁護士会)。09~12年公正取引委員会事務総局審査局審査専門官(主査)。12年一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻修士課程修了(修士〔経営法〕)。19年~慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)非常勤講師(経済法BP・WP担当)。23年公認不正検査士(CFE)登録。
鳥居 江美
弁護士
Emi Torii
01年慶應義塾大学法学部卒業。07年弁護士登録(第二東京弁護士会)。15年~厚生労働省関東信越地方年金記録訂正審議会委員。19年~イオンモール株式会社社外監査役。
川西 風人
弁護士
Kazato Kawanishi
05年京都大学法学部卒業。07年弁護士登録(大阪弁護士会、15年東京弁護士会へ登録換え)。14年University of California, Los Angeles School of Law卒業(LL.M.)。14~15年Oon & Bazul LLP(シンガポール)訴訟・国際仲裁チーム勤務。17年ニューヨーク州弁護士登録。16~19年双日株式会社法務部勤務。
劉 セビョク
弁護士
SaeByok Yu
08年早稲田大学法学部卒業。12年早稲田大学大学院法務研究科修了。13年弁護士登録(第一東京弁護士会)。14年~ 早稲田大学法務研究科アカデミック・アドバイザー。15年音楽著作権管理者試験合格。21年東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会プロボノサービス手続代理人。21~22年金・張法律事務所(韓国)にて執務。22年~KOTRA(大韓貿易投資振興公社)東京RCEP海外活用支援センター諮問委員。
小林 敬正
弁護士
Takamasa Kobayashi
09年東京大学法学部卒業。11年東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻卒業。12年弁護士登録(第二東京弁護士会)。17年~19年日本銀行政策委員会室法務課出向。20年University of California, Los Angeles School of Law(LL.M.)卒業。20~21年Covington & Burling LLP(米国)にて研修。21年Smith, Gambrell & Russell, LLP(米国)にて執務、ニューヨーク州弁護士登録。22年公認不正検査士(CFE)登録。
守屋 沙織
弁護士
Saori Moriya
18年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。20年慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。22年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
著 者:中原健夫・結城大輔・横瀬大輝・福塚侑也[著]
出版社:一般社団法人金融財政事情研究会
価 格:3,300円(税込)
著 者:吉田桂公[著]
出版社:一般社団法人金融財政事情研究会
価 格:1,760円(税込)
著 者:村上政博・矢吹公敏・多田敏明・向宣明[編](共著者の一人として大東泰雄が執筆に参加)
出版社:中央経済社
価 格:8,800円(税込)