【社内研修】コンプライアンスセンスを鍛えるのぞみの役員・管理職・従業員研修 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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“腹落ちする研修”でコンプライアンス浸透を

1995年の創立以来、クライアントおよび法務業界への情報発信を意欲的に進めてきたのぞみ総合法律事務所。同事務所がコンプライアンス・リスクマネジメント・危機管理の分野において重視するのは、社内研修を通じた企業の役職員のセンスの醸成だ。
2004年に成立した公益通報者保護法の施行前から、コンプライアンスに関する多数の研修を担当し続けてきた結城大輔弁護士は、「コンプライアンスは、法務・コンプライアンス部門等が学ぶ段階から、役職員すべてに浸透すべきステージに達し、研修の必要性が増しています」と語る。
研修では聴講者が“腹落ちすること”を重視している同事務所。研修の時間に“勉強して終わり”とならないよう、事前に社内の関係者と繰り返し打ち合わせを行い、経営陣の意識や現場に即した事例や説明を盛り込み研修内容を作り込む。「手間と時間はかかりますが、コンプライアンスのサイクルの基本はPDCA。単なる法知識の周知のみでは不十分です。問題に直面する対象者の問題意識を想定し、現場で悩みに直面する一人ひとりの対応に向き合ったメッセージを発信しなければ、社員全員のセンス向上は見込めません」(結城弁護士)。

結城 大輔 弁護士

公正取引委員会への出向経験を持ち、独禁法・競争法、下請法、景表法などのテーマを担当する大東泰雄弁護士は「“腹落ち”を目指すため、研修では、現場が実際どのように動けばよいかを具体的に説明するようにしています」と述べる。一方で、効果的な結果を導くには、役職員の階層に分けてメッセージを使い分ける必要があるという。「例えば、経営者には、“コンプライアンスと売上・利益が天秤にかかる場合には、コンプライアンスを優先させるように”と社員へはっきりメッセージを出すようお伝えしています。“売上も重要”と捉えられた場合、談合などに巻き込まれた場合に社員がコンプライアンスより目先の売上を選ぶリスクが非常に高いためです。経営陣が明確な姿勢を本気で示せば、故意による法令違反はほぼなくせるでしょう」(大東弁護士)。

大東 泰雄 弁護士

ルールや明文化されない悩みには研修内の対話で“糸口”の発見を

日本銀行・金融庁への出向経験があり金融分野を得意とする吉田桂公弁護士は、規制動向が複雑かつ変化が早い同分野においては、規制対応部署への情報提供にとどまらず、役員や営業部などの幅広い社員への研修を通じて、全体でリスクを減じる必要性が高まっていると語る。「金融商品は目で見て品質を判断できる“物”ではないため、顧客本位のわかりやすい説明が求められます。そして“顧客に説明をする”ということと“顧客が理解をする”ということは別のものであり、法律上の義務を守っていればそれで大丈夫と安心はできません。近年コンダクトリスクが話題になっていますが、社員一人ひとりが、法規制だけでなく、社会規範に照らして適切な行動をとる必要があります。研修では、ディスカッションを通して気付きを得て、サービスの向上につながることもあります。好循環を生み出すためには、現場を含め多くの従業員を巻き込むことが大事ですね」(吉田弁護士)。

吉田 桂公 弁護士

ハラスメント研修の担当が多いという鳥居江美弁護士は、企業の社外通報窓口を10年以上務めてきた経験を活かした社員研修を実施している。「パワハラ防止法の適用対象が2022年4月から中小企業に拡大し、研修の要望が増えています。ハラスメントは日常的に発生する、すべての役職員に知見が必要な分野です。基本から裁判時のリスク、裁判例からの教訓などのほか、実例に即したアドバイスを心掛けています。特に経営陣への講習は社員からは踏み込みづらい点もあるため、客観的な立場の外部講師を活用していただくとよいと思います。中間管理職に対しては、“どこまで介入すべきか”“パワハラに該当しない業務上必要な範囲は”など悩みやすいポイントを具体的に解説しています」。同分野は、部下から上司へのパワハラ、同性間・女性から男性へのセクハラなど相談の幅が広がっているという。「移り変わるトラブルの傾向については、蓄積した相談経験を反映して解説しています」(鳥居弁護士)。

鳥居 江美 弁護士

各企業に適したコンプライアンス体制の構築を後押しする研修

川西風人弁護士は、総合商社への出向経験を活かし、法務部とのコミュニケーションについてコメントをする機会が多いという。「多くの企業では、いまだ法務部への相談を敷居が高く思われる傾向にあります。法務部はビジネスのブレーキ役のみではなく、サポートする役割でもあると認識されなければなりません。一方で、敷居が低くなりすぎて、判断や作業を丸投げできる存在と思われるのも不適切です。現場の方を対象とした研修では、ヒヤリハット事例やQ&A、問いかけを多く盛り込み、まずは法務部に相談するセンスを育めるように心がけています」。
解説を行うことが多い“ビジネスと人権”のテーマでも具体的かつ定性的なアドバイスが求められるという。「既に上場している企業だけでなく、これから上場する企業にとっても避けられないポイントですが、ビジネスの規模・業種によって実施すべき内容は異なります。基礎的な概念と具体的な事例の両輪で理解を深めていただくようにしています」(川西弁護士)。

川西 風人 弁護士

入所3年目の福塚侑也弁護士も、結城弁護士と共に2020年に改正され、2022年6月に施行された公益通報者保護法等の情報発信に取り組んでいる。「いわゆる大企業は体制が整っていますが、中小企業のうち、今回の改正で義務化対象となった従業員300人超の企業にとって、いきなりベストプラクティスへの対応はハードルが高い。まずは企業のリソースに配慮したミニマムな対応を考え、研修に落とし込む必要があります」(福塚弁護士)。
特に中小企業については、個別の相談の場でもかかりつけ医のような丁寧な“処方”が必要だと語る福塚弁護士。「今後は義務化対象ではない従業員300人以下の企業でも窓口の設置がスタンダードになるでしょう。一方で、規模が小さければ小さいほど情報共有の難易度が上がる点には注意が必要です。社外窓口を活用するなど、企業規模に適した対応についても発信していきたいと思います」(福塚弁護士)。

福塚 侑也 弁護士

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所在地・連絡先
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結城 大輔

弁護士

1996年東京大学法学部卒業、1998年弁護士登録、のぞみ総合法律事務所入所。2000~2002年日本銀行、2008~2013年韓国ソウル及び米国ロサンゼルス・ニューヨークの法律事務所に出向。2010年米国University of Southern California(LL.M.)修了、2012年ニューヨーク州弁護士登録。2015年リーガル・リスクマネジメント研究機構設立・2019年より代表理事、2016年日本公認不正検査士協会理事。2019~2020年国際法曹協会(IBA)贈賄防止委員会アジア地域代表委員、2021年〜同委員会コンプライアンス小委員会副議長。
【主要取扱業務】企業コンプライアンス、不祥事対応・調査委員会、危機管理、内部通報・改正公益通報者保護法対応、国際紛争、海外当局捜査対応等。エンターテインメント・スポーツ・ゲーム・広告・IT・メディア関連、飲食関連等。米国・韓国その他国際法務。

大東 泰雄

弁護士

2001年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、2012年一橋大学大学院国際経戦略研究科経営法務専攻修士課程修了、2002年弁護士登録、同年都内法律事務所入所、2007年のぞみ総合法律事務所入所、2009年~2012年公正取引委員会審査局審査専門官(主査)として独占禁止法違反被疑事件の審査・審判実務に従事、2012年当事務所復帰。2019年~慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)非常勤講師(経済法BP・WP担当)。
【主要取扱業務】独占禁止法・競争法(事業活動に関する助言、研修を含むコンプライアンス体制整備、社内調査・リニエンシー申請、当局の調査対応、企業結合規制対応、民事訴訟対応)、下請法(事業活動に関する助言、研修を含むコンプライアンス体制整備、当局の調査対応)、景品表示法等の消費者法(事業活動に関する助言、研修等を含むコンプライアンス体制整備、当局の調査対応)、その他企業法務全般。

吉田 桂公

弁護士

2003年東京大学法学部卒業。2004年弁護士登録、のぞみ総合法律事務所入所。2006年~2007年日本銀行決済機構局(決済企画担当)に出向。2007年~2009年金融庁検査局(専門検査官)に出向。2009年のぞみ総合法律事務所復帰。
【主要取扱業務】金融レギュレーション対応(銀行法、金融商品取引法、保険業法、信託業法等)、銀行・証券会社・保険会社・保険代理店・保険仲立人等のコンプライアンス態勢(内部規程、組織体制等)の構築支援、内部監査の支援、業務全般に関する法的助言、意見書作成等、訴訟対応・金融ADR対応、不祥事に係る調査委員会活動、M&A(法務監査を含む)、法律顧問業務。

鳥居 江美

弁護士

2001年慶応義塾大学法学部卒業、2007年弁護士登録、のぞみ総合法律事務所入所、2015年~厚生労働省関東信越地方年金記録訂正審議会委員、2019年~イオンモール株式会社社外監査役。
【主要取扱業務】企業コンプライアンス、不祥事対応、コーポレートガバナンス、内部通報・改正公益通報者保護法対応、エンターテインメント、名誉毀損、労務、紛争解決。

川西 風人

弁護士

2005年京都大学法学部卒業。2007年弁護士登録、大江橋法律事務所入所。2014年University of California Los Angeles School of Law卒業(LL.M.)。2014年-2015年Oon&Bazul LLP(シンガポール)訴訟・国際仲裁チーム(出向)。2017年ニューヨーク州弁護士登録。2016年-2019年双日株式会社法務部(出向)。2021年のぞみ総合法律事務所入所。
【主要取扱業務】M&A・企業再編・事業提携 、コーポレートガバナンス、株主総会指導、コンプライアンス・企業不祥事、ベンチャー支援、SDGs・ESG、海外取引先との契約交渉・契約書作成クロスボーダーM&A、日本企業の海外進出支援・インバウンド法務、紛争解決(国際仲裁含む)。

福塚 侑也

弁護士

2016年大阪大学法学部法学科卒業。2018年中央大学法科大学院法務研究科法務専攻修了。2019年弁護士登録、のぞみ総合法律事務所入所。
【主な著作】「《インボイス制度下に独禁法・下請法違反とならないための》免税事業者との取引における実務対応」(Profession Journal 共著)、「2022年6月施行 改正公益通報者保護法の内容をわかりやすく解説」(朝日新聞社運営サイト「ツギノジダイ」2022年2月22日寄稿 )等。