サイバーセキュリティ法務と人事労務法務を一体化 PDCAサイクルでビジネスと並走する
“ヒト・情報・資産を守る”——こういったビジネスにおける法務の役割を、弁護士法人レオユナイテッド銀座法律事務所では“管理法務”と位置づける。この“管理法務”に強みを持つブティック事務所として、同事務所は使用者側の人事労務、営業秘密、個人情報、知的財産、風評管理(IT法務)、危機管理(リスクマネジメント)を専門的かつ重点的に取り扱ってきた。2019年11月11日開設以来、4年ほどの年月で携わった案件の数はゆうに数百件にものぼる。
同事務所が現在最も注力しているのが、サイバーセキュリティ法務と人事労務法務を一体的に組み合わせて部署をまたいだ社内体制と運用方法を構築し、PDCAを回していくという“法務+コンサルティング”のサービスだ。「顧問先が増えてくるに従い、“人”にまつわる案件、それから営業秘密管理、個人情報管理といった情報セキュリティに関する案件が増えてきました。企業の規模が大きくなればなるほど、“人”の問題は人事部が、情報セキュリティの問題は情報システム部が担当する…というように、縦割りの組織構造になる傾向があります。そして、こうした個別組織ごとの対応は、社内での分断を生んでしまう可能性があります。私の強みは、そのような分断が生じないよう、一体化させて有機的なコンプライアンスを実現できることにあると考えています」(大木怜於奈弁護士)。
大木弁護士がこれまでしくみ作りに携わってきたクライアントは、企業規模もさまざまであり、業種も多岐にわたる。「幅広くさまざまな業界・業種で得た知識や経験は相互に活かすことができますし、数多くの現場を見てきたからこそ、“この企業にとってどんな体制を整えることが望ましいのか”など、目の前のその企業にとって現実的でベストな対策を講じることができるのです」。
大木弁護士は、「サイバーセキュリティ法務と人事労務法務の一体化は、人の側面とシステムの側面、両方向からのアプローチが重要」と語る。その顕著な例が、コロナ禍で増大した“テレワーク”、働き方改革で注目されている“兼業・副業”、そして新たに法制化された経済安全保障などの“社会変革”である。
「たとえば、少しうがった見方をすると、“情報を奪い取ってしまおう”と思えば、テレワークは出社勤務の場合よりもチャンスが生じてしまいます。このリスクに対する対策が十分にできていないにもかかわらず、テレワークの技術だけはどんどん進歩してしまいました。システム面からのアプローチでは、営業秘密の管理をどのように徹底していくかが重要です。まずは問題点を洗い出し、各リスクの度合い、対応の優先度を加えた課題リストを作成し、これに基づいて“最適のシステムは何か”を検討します」。
そして、システムの導入後は、“人”の側面からのアプローチとして、適正にシステムが使用できるような、その企業に即したマニュアルの作成と社員一人ひとりへの落とし込み(教育)を実施する。当然、モニタリングも欠かせない。四半期に一度、問題や課題がないかを確認し、必要に応じて修正をしていくのである。
「兼業・副業については、会社が貸与しているパソコンの管理を徹底しなければなりませんし、社員の“教育”も重要です。特に“競合関係にある企業との兼業を認めるかどうか”等については、企業にとってリスクがあるだけではなく、それを行う社員側にもリスクが生じる可能性があることを、社員自身にしっかりと理解させる必要があります」。
また、大木弁護士は、「今後は、経済安全保障の観点でも同様にサイバーセキュリティ法務と人事労務法務の一体化は重要になる」と語る。国内の先端技術の輸出管理を徹底するなど、経済力競争のため安全保障上の課題に対応する必要があり、特に海外ビジネスを展開する企業への影響が大きい。自社は経済安全保障推進法の対象事業者でないとしても、当該事業者のサプライチェーンに関与する企業であれば、サイバーセキュリティリスク管理措置に対応する必要があるからだ。とはいえ、先端的な法律であっても、コアになるサイバーセキュリティ法務における対応は共通だといえる。
“紛争からの逆算”で作る予防法務
サイバーセキュリティや人事労務の分野で訴訟などの紛争リスクが顕在化した場合には、金銭面だけではなく企業イメージの失墜や社会的信用の喪失などの甚大な影響を及ぼす可能性が高い。そこで、同事務所が取り入れているのが“紛争からの逆算”である。
「訴訟における企業側の主な不安点は、“この段階ではどのような主張をされるのか”“落としどころとして裁判官は何を考えているのか”といったような、かなり“感覚知”に近い内容がほとんどです。そうしたときに役に立つのが、豊富な訴訟案件の蓄積です。まったく同じ内容でなくとも、場面ごとに類似した経験をもとにクライアントの不安を解消するとともに最適な対応を検討していきます。
また、紛争が発生するリスクを“ゼロ”にすることはできません。実際に紛争のリスクが顕在化して“100”になりそうだという状態から、どれだけ“ゼロ”に近づけていくかが重要です。特にサイバーセキュリティ法務と人事労務法務の分野においては、“人から情報が漏洩する”という前提のうえでどのような具体的な予防フローを描くかが予防法務の肝になると思います」。
これまで数多く扱ってきた紛争事例をいわばデータベースとして、紛争となりうるポイントを抽出し、平時においては紛争を生じさせないフローを描く。そして、有事においてはリスクを可能な限り縮減し、クライアントの利益の最大化を図る。それが、同事務所が提唱する“‘紛争からの逆算’で作る予防法務”であるといえよう。
ビジネスはスピードが命 法務サポートも迅速に対応
では、こうした“法務+コンサルティング”サービスはどのようにして生み出されてきたのか。その源泉は、同事務所が掲げる事務所理念の“スピード”“コミュニケーション”“パッション”“バランス”の四つにみることができる。
「ビジネスで最も重要なもの、それは“Time is money”の格言が言い表しているとおり、“スピード”であると考えています。せっかくよいアイデアがあっても、スピードが遅いと他社に後れをとってしまいます。ビジネスをサポートする弁護士として、案件を溜め込まないこと、クライアントとのコミュニケーションを密にすることで案件のコアとなる部分をできるだけ“速く”把握することを心がけています」。
スピードを重視するあまり拙速な対応になることはもちろん許されないが、無意味なこだわりに時間をかけすぎることもまた有害でしかない。大木弁護士は、70点が合格ラインであれば、1か月後の95点よりも明日の90点を目指すことを最重要視するという。
「“コミュニケーション”については、根気よく、時にはしつこいくらいに依頼者とのやり取りを重ねることが不可欠」と大木弁護士は語る。スピードあるやり取りを実現するには、クライアントとの信頼関係が必要であり、そのために密なコミュニケーションが欠かせないからである。
また、大木弁護士は、熱いハート、“パッション(情熱)”もなくてはならないと語る。「困難な事案では、依頼者の気持ちや状況をくみ取れるまで粘るパッションこそが依頼者の利益を最大限実現するための基盤となります。現在、法律分野にもどんどんAIが導入されはじめていますが、パッションはAIには決して持ちえないものです」。
さらに、必ずしも白黒がはっきりしないケースも多いビジネスの世界において、たとえば、クライアントのビジネス上の選択肢としてAとBという対立構造があったとき、短期的には結論が明白だとしても、片側だけを見ていたのでは独善的になってしまう。クライアントの長期的な成功を後押しするためにも、広い視野で対処していく“バランス感覚”も非常に重要だと大木弁護士は指摘する。
こうしたビジネスに寄り添うリーガルサポートの礎になっているのが、大木弁護士の事業会社での勤務経験だ。ビジネスの当事者感覚を理解できる大木弁護士だからこそ、前述の四つの事務所理念を実現できるのである。
企業法務の専門分野のスペシャリストにもジェネラリストにもなれる強み
同事務所は、企業以外にも、医療法人や宗教法人といった各種法人、個人事業主といったクライアントの経済活動に関するリーガルサービスの提供も実施している。ブティック型法律事務所でありながら、専門特化した分野だけでなく、“顧問法務”として会社の法律問題全般に対するリーガルサービスも提供していることは、法務部を置かない、もしくは少人数法務の企業にとって嬉しいサポートだ。「珍しいところで例を挙げると、駐車場経営や通信販売などを収益事業として手がける宗教法人からのご依頼などもあります。この場合、宗教法人法だけでなく、著作権法や個人情報保護法などの適用の可能性もありますので、そうしたアドバイスもしています」。
日々の定常的な契約書のリーガルチェック、新規事業立ち上げにおける各種規定類の作成はもちろん、将来的なIPOを見据えた各種制度設計の際の意見収集、具体案の共有も行う。「契約書や規程に関する業務としては、機密保持契約書、派遣契約書、請負契約書、準委任契約書といった契約書等の締結書類の見直しから、労働法令改正における変更点等の就業規則類への反映、インセンティブプランの構築やそれに伴う賃金規程の見直し等、細かいところまで検証し、企業の規程類や契約書などの法律文書における信頼性の向上を目指すことも、法務の全体的な見直しにつながります」。
このほか、不正調査や研修にも対応する。こうした同事務所の“かゆいところに手が届く”リーガルサービスに対して、クライアントから信頼の言葉が多く寄せられている。
自社の専門技術的なことについては磨きをかけ続けられる反面、法務やコンプライアンスまでは手が回らないという企業も多い。同事務所では、そのような企業に対して“何がその企業に不足していて、何が必要か”の洗い出しを適時に協議し、順次に必要なコンプライアンス整備を進めていくという“司令塔”ともいうべきプロジェクトマネジメントの役割も兼ねることもあるという。遠方でも、電話やメールでこまめに迅速なコミュニケーションを欠かさず、ストレスを感じさせないこともポリシーの一つだ。そのため、同事務所のクライアントには、東京以外に拠点を置く企業等も多い。
同事務所の法務サービスを受けたクライントからの口コミによって、IPOを目指すベンチャー企業やIPO準備段階の伸び盛りの企業から大企業まで、企業規模に関係なく新しいクライアントが増えていく。その源泉は、やはり“スピード“”コミュニケーション“”パッション”“バランス”という事務所理念のもと、クライアントに丁寧に寄り添い、利益を最大限実現しようとする真摯な対応にあるといえよう。
同事務所では、クライアントにとってのコストパフォーマンスも重要視しており、事案ごとに提携弁護士とのチーム制をとる。幅広い法分野での対応が可能でありながらも無駄のない依頼プロジェクトごとの人員配置は、リーガルサービスを必要とする企業が費用面で二の足を踏まないようにとの配慮でもあり、ひいては日本企業の成長への助力でもある。「今後の方針も、“プロフェッショナルとして恥じない仕事をし続ける”ということに尽きます。そして、そのための準備と努力を怠らない。当たり前のことを当たり前にやり続けたいと考えています」。
大木 怜於奈
弁護士
Leona Ohki
早稲田大学国際教養学部、中央大学法科大学院卒業。都内株式会社勤務、上場企業を含む企業法務を取り扱う都内法律事務所での執務を経て、弁護士法人レオユナイテッド銀座法律事務所開設。東京社会保険労務士会登録。東京弁護士会所属。
著 者:東京弁護士会法友全期会[編著](共著者として大木怜於奈が執筆に参加)
出版社:日本法令
価 格:4,510円(税込)
著 者:東京弁護士会法友会[編](共著者として大木怜於奈が執筆に参加)
出版社:ぎょうせい
価 格:3,630円(税込)
著 者:東京弁護士会法友全期会破産実務研究会[編](共著者として大木怜於奈が執筆に参加)
出版社:ぎょうせい
価 格:5,170円(税込)