池田・染谷法律事務所 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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設立5周年を迎え提供サービスはより幅広く手厚い体制に

2023年10月に設立5周年を迎えた池田・染谷法律事務所。独禁法・消費者法・情報法を軸としたリーガルサービスを提供するブティック事務所として体制強化しており、所属弁護士19名、事務局7名となった。
「人数規模でも大手法律事務所の独禁法チームと遜色のない体制になりました」と語るのは、同事務所パートナーの川﨑由理弁護士。2023年5月には同ビルの別フロアに事務所を移転しオフィス面積を広げ、さらなる人員増にも対応できる環境を整えた。
「夏には2度目の開催となる“ブティック法律事務所合同インターンシップ・プログラム”を開催し、定員を上回る非常に多数のご応募をいただいたうえ、盛況に終えることができました。専門性の高い少数精鋭型のブティック事務所の実践について学生や司法試験受験生の皆様に知っていただけるよい機会として定着しつつあると感じています」(川﨑弁護士)。
10月に開催した5周年記念セミナーには、東京大学の白石忠志教授ほか法曹界の著名人が参加し、活発な議論が交わされた。2024年3月25日には、独禁法と消費者法が交錯する実務課題に関するセミナー(経団連ホール)も予定されている。また、同事務所の専門家による体系的かつ効率的な講義が好評だった「景品表示法務検定試験対策講座」に引き続き、2023年2月より「下請法務検定試験対策講座」についても通年で開講。同事務所ではさまざまな形で独禁法・消費者法の最新トピックスを発信し続けている。
2022年5月に設置した大阪オフィスについてもクライアントから非常に好評だという。
「今はオンラインで全国からご相談を受けやすくなりましたが、大阪オフィスを開設することで、改めて直接顔を合わせて関係性を構築する重要性を実感しています。そのため、今後はクライアントが多い中京地域にも拠点を設けることを検討しています」(川﨑弁護士)。

多様な人材がその能力を主体的に発揮できる場

同事務所に集う人材は、法分野の大家や省庁勤務経験者、他分野の業務から転身した弁護士など、幅広いバックグラウンドを持つ。そうした弁護士を惹きつけるのは、著名ブティック事務所として案件対応レベルの高さはもちろん、各弁護士が主体性を持ちつつ自由なワークスタイルで勤務する環境を整えている点だ。
“互いに嫉妬しない協働システム”は、同事務所の働き方を端的に表したキーワードである。案件を弁護士個人ではなく事務所で受託することで、等しい品質でサービスを提供できるチーム作りを行う。この方式をとることでチーム内に助け合う姿勢が自然に生まれ、結果として個々人の自由度が高まるという。
「時短勤務を行う弁護士は複数いますが、代替性の効く業務を割り振られることはありません。リモートワーク等も活かし、主体性をもって案件に取り組める環境です」と語る川﨑弁護士自身も4児の母であり、元検事・元消費者庁勤務という経歴を持つ。
「“業務時間が限られる人に配慮する”というよりは、いつどんなときでもクライアントの要望に高いレベルで応えるためのチーム制なのです」(川﨑弁護士)。
このチーム制を安定的に維持するため、同事務所は若手の育成にも力を入れる。週1回の所内勉強会で最新法令のキャッチアップを行うほか、積極的に若手弁護士に案件の主任を担当させて経験を積ませる。

川﨑 由理 弁護士

相談者もハイレベルな独禁法対応は知見の幅と厚みでニーズを満たす

「独禁法分野については、近年インハウスの増加などで、外部弁護士には、より専門的な視点が求められるようになりました」と語るのは安井綾弁護士。
「たとえば、将来の協業に向けて競合他社と意見交換する場合は、その具体的な話題について細かく可否の判断を求められますので、エンジニアと面談し、その技術的な内容まで確認することもあります。業務提携のスキームを検討する際には、“海外弁護士に各国の規制について英語で確認してほしい”というご依頼もあります。独禁法規制は、各国の法令についてある程度の知識がなければ効率的に内容や運用について質問ができません。私は前職の自動車メーカーで欧州の社内弁護士とともに欧州競争法を中心にグローバルな競争法対応を担当していましたので、その際の経験が役立つ場面も多いですね」(安井弁護士)。
安井弁護士によると、いま企業が注視しているのは、①海外のM&Aや業務提携、②国内の優越的地位の濫用規制、③垂直的制限における再販売価格制限の3点だという。
「①は企業結合案件の届出制度に関して、欧州や米国で最近動きがありました。②は国内の取引に関する紛争に近い事案において、交渉材料、攻撃材料となるか否かというご相談が増えています。事案は公表されないものも多いのですが、さまざまな業種や場面で問題となることがあります。③はパナソニックの指定価格制度導入で関心が高まる分野です。“小売店への流通の様態に応じて、独禁法上問題とならないルール作りを支援してほしい”というメーカーからのご相談は多いですね」(安井弁護士)。
安井弁護士は個人情報・データ保護分野や不正調査の業務にも対応する。
「情報法分野については、総務省でデータ保護の実務を経験した弁護士が中心となって取り組んでいます。違反すれば大事に至るので、ご相談は多くあります。データの国外移転に関しては、場合によってはハードルが高いため“域内に留める”との判断をする場合もあり、いかにニーズに応えるか、提案力が試されます。不正調査については独禁法違反に関する社内調査が多いですね。不正が発覚した場合には、背景を含めた再発防止も考える必要があります。フォレンジックや面談を通じて事態を迅速に把握し対応しています」(安井弁護士)。

安井 綾 弁護士

3省庁での経験を活かし不競法でビジネスを推進

「不競法は知財法の一つと位置づけられていますが、その名のとおり競争法の分野の一つであり、景表法に似た条文もあります。独禁法・景表法・不競法の知見を融合することで新たな方策にもなり得ます」と語るのは土生川千陽弁護士。
土生川弁護士は、任期付職員として公正取引委員会、消費者庁表示対策課、経済産業省知財室の3省庁で行政による取締りや問題解決のアプローチを実際に目にしてきた。
「景表法や独禁法の場合は消費者庁・公正取引委員会が措置を実施しますが、不競法では、同じような条文に抵触する場合に事業者同士の請求や差止めで問題を解決するアプローチが可能です。このため、管轄官庁に働きかけても手応えが薄い場合の打開策として使い勝手がよい法律だといえます。経済産業省知財室では、実際に事業者間の請求を行うための法体制をどう整えているかを目にしてきました」(土生川弁護士)。
不競法の活用は、企業にとって選択肢を増やすことができるという。
「不競法の活用は初手としてはあまり挙がりませんが、首尾よく進まなかった場合の第二の手としては有用です。複数解決手段を提示することで手段や効果の違いを明示できるため、クライアントが選択をするうえでの納得感にもつながるのではないかと思っています」(土生川弁護士)。
近年では、不競法を活用した著名な広告表示差止訴訟も起こった。
「大手家電メーカーの広告表示差止訴訟は多くの事業者に不競法の使い方を理解していただけるきっかけになったと思います。“競合を訴える”という手法は日本の事業者にはあまりなじまないかもしれませんが、今後増えるのではないかと考えています」(土生川弁護士)。

土生川 千陽 弁護士

サステナビリティ・消費者法分野に報道・広報の力を活かす

「前職までは一貫して広報・コミュニケーション分野の職種に就き、専門的な内容を噛み砕いて一般の方にわかりやすく情報を伝えるように努めてきました。消費者法はB to C、つまり一般の方を対象とするビジネスを扱う分野ですので、従前から消費者法については関心をもっていました」と、新聞社、PR会社、外務省、大使館等での勤務経験を持つ福島紘子弁護士は語る。
「業務としては広告規制を扱うことが多く、“商品やサービスの利点を可能な限り表現したい”という要望に対し、予測される消費者庁からの措置を踏まえてアドバイスをしています。ご希望の表現が難しい場合はバリエーションを提案するなど、これまでの経験も大いに活きるところです」(福島弁護士)。
近年企業の関心が高まるサステナビリティ分野も、景表法をはじめとする消費者法分野に関連性が高い。
「企業・消費者双方にとって関心が高い分野だからこそ、環境への貢献を強く打ち出した表示になりがちです。一方で、企業が環境対応を謳いながら実際には環境へ貢献しない取組みや表示は“グリーンウォッシュ”として世界中で規制の対象となっています。日本でも、2022年12月に消費者庁が十分な根拠がない表示に対して措置命令を下しています。現在の日本では、表示について根拠をもって合理的な説明ができれば問題はありませんが、制度や取組みが先行する欧州では、科学的根拠は前提として、環境に不利なことを表示していない点を不当表示として規制する国・地域もあります」(福島弁護士)。
福島弁護士は、欧米を中心とするグローバルなレギュレーション策定について、外務省時代の経験を活かしながら先端の議論を注視している。
「“各国の当局がどういった関心をもってレギュレーション策定に至っているか”“欧州や米国の思惑を踏まえたうえで日本の規制はどう進むか”など、常に大局的な視点からその動向を把握するように努めています」(福島弁護士)。

福島 紘子 弁護士

大型カルテル対応を主導する若手人材が成長する土壌

同事務所には日々多くの案件が持ちかけられるが、その中には世間の耳目を集める大型のものも多い。複数の大型案件を抱えながら対応の質を担保する体制について、伊藤沙条羅弁護士は次のように語る。
「当事務所では、私をはじめ比較的年次が若い弁護士にも重要な役回りが割り振られます。現在、私も大型のカルテルの案件において、主任として業務に当たっていますが、大きな責任とやりがいを感じて取り組んでいます」(伊藤弁護士)。
スキルの蓄積が豊富な若手が存在することはクライアントにとっても利点が多い。
「カルテルの案件に限ったことではありませんが、ご相談内容によっては、24時間の対応が求められるスピード勝負の面もあります。そのような場合、経験豊富なベテラン弁護士の見立ても必要ですが、窓口対応を行う弁護士のレスポンスの早さや、その際の初期的な回答が非常に重要なポイントとなります。当事務所ではカルテル案件以外でも常にチームとして対応する習慣が身についているため、一人の弁護士のみが対応するのではなく、クオリティを担保したうえでフォローし合えるチーム体制が整っています」(伊藤弁護士)。
省庁や企業での勤務経験などを通じて高い専門性を持つ人材が集まる同事務所。伊藤弁護士も公正取引委員会で事件審査や独禁法の改正などに携わったほか、経産省でWTO協定に基づく紛争解決手続やアンチ・ダンピング(AD)分野に関するEPA交渉等の通商法業務に携わってきた。
「個性的な経歴と高い専門性持つ弁護士同士でチームを組んで日々議論をしており、知見を蓄積しやすい環境であるように感じます。代表の池田はよく“この事務所だからと頼んでくださった期待に応えるように”と話します。独禁法・消費者法・情報法のブティック事務所ならではの回答の質とスピードは日々意識しているポイントです」(伊藤弁護士)。

伊藤 沙条羅 弁護士

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 DATA 

ウェブサイトhttps://www.ikedasomeya.com/

所在地・連絡先
■東京オフィス
〒100-0006 東京都千代田区有楽町2-7-1 有楽町イトシア16階
【TEL】050-1745-4000 【FAX】03-6261-7700
■大阪オフィス
〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1-8-17 大阪第一生命ビルディング15階
【TEL】050-1745-4000 【FAX】03-6261-7700


所属弁護士等:弁護士19名、事務局7名(2023年12月現在)

沿革:2018年10月1日設立、2020年5月1日事務所移転、2022年5月大阪オフィス(弁護士法人池田・染谷法律事務所の従たる事務所)開設、2023年5月東京オフィス移転

川﨑 由理

弁護士
Yuri Kawasaki

04年慶應義塾大学法学部卒業。08年中央大学法科大学院卒業。09~11年東京地方検察庁検事。11~13年福井地方検察庁検事。15~16年消費者庁表示対策課課長補佐。19年弁護士登録、池田・染谷法律事務所入所。東京弁護士会所属。

安井 綾

弁護士
Aya Yasui

96年上智大学法学部卒業。03年弁護士登録。03~04年Dorsey & Whitney LLP Tokyo Office。04~16年シティユーワ法律事務所。10年コロンビア大学ロースクール修了(LL.M.)。17~19年三菱自動車工業株式会社(法務部担当部長)。20年池田・染谷法律事務所入所。東京弁護士会所属。

土生川 千陽

弁護士
Chiharu Habukawa

04年中央大学法学部卒業。06年京都大学法科大学院修了。09~14年都内法律事務所。14~15年消費者庁表示対策課。18~19年年経済産業省経済産業政策局知的財産政策室。19~21年公正取引委員会審査局。21年弁護士再登録、池田・染谷法律事務所入所。東京弁護士会所属。

福島 紘子

弁護士
Hiroko Fukushima

00年東京大学教養学部卒業。02年東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。02~03年共同通信社。05~07年外務省経済協力局(当時)・在モロッコ日本国大使館。08~09年共同PR海外事業支援室。09~12年外務省総合外交政策局。16年東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。20年弁護士登録、池田・染谷法律事務所入所。第一東京弁護士会所属。

伊藤 沙条羅

弁護士
Saera Ito

10年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。13年一橋大学法科大学院修了。15~21年公正取引委員会事務総局。18~20年経済産業省通商政策局通商機構部国際経済紛争対策室出向。22年弁護士登録、池田・染谷法律事務所入所。第二東京弁護士会所属。

『ビジネスを促進する 独禁法の道標〔全訂版〕』

著 者:白石忠志[監]、池田毅・籔内俊輔・秋葉健志・松田世理奈・実務競争法研究会[編著]
出版社:第一法規
価 格:4,950円(税込)