広がる各専門分野への対応 時流に即した柔軟な法的サービス
1942年の創立で昨年80周年を迎え、関西を中心としたあらゆる規模のクライアントにリーガルサービスを提供してきたきっかわ法律事務所。2009年には首都圏に営業所や支店を持つクライアントの利便性を向上するために東京事務所を開設し、クライアントに近い距離での助言を行ってきた。
同事務所は、事務所として手がける業務においては通常3名で取り組む複数受任制で対応し、顧客に対して迅速かつ丁寧な対応を心がけている。複数名で担当することで互いにフォローし合うだけでなく、若手弁護士の育成を図るとともにクライアントに対するサービスの品質とスピードも担保する体制を採用している。
創立者が民事保全分野のパイオニアであったことから、伝統的に訴訟・紛争解決案件に取り組んできた同事務所だが、近年は顧客のビジネスのグローバル化や法的ニーズの多様化に合わせて所属弁護士の海外留学や官公庁、企業への出向を実施しており、よりビジネスの現場の需要に即したサービスの充実を図っている。
「近年は、新聞を賑わすような企業不祥事案件のほか、第三者委員会の依頼も増えてきました。M&Aや事業再生、事業承継案件も多いです。渉外案件、労働案件の比率も高まっています」と語るのは、事務所代表の田中宏弁護士。
新型コロナウイルス感染症の流行初期の事業再生案件においては、裁判所と相談の上Webを利用した債権者説明会を開催するなど緊急事態に即した運用を工夫する必要に迫られたという。「倒産手続のIT化は現在議論が進められているところですが、倒産手続は定型の書類が多数提出され、関係者数も多いなどIT化と親和性が高いため、今後も議論の行方を注視していきたいと思っています」(田中弁護士)。
先を見越した対応と柔軟さでスムーズな案件進行とアドバイスを
企業の倒産・事業再生などを専門分野とする森拓也弁護士は、年々複雑化する案件について粘り強いアプローチで取り組んでいる。「倒産・事業再生分野においては、近年は法的整理が減り私的整理が中心になりました。金融機関との話し合いでまず私的整理を行い、行き詰まったら法的整理に移行しますが、ある程度法的整理を見据えた上で私的整理を進めなければうまく解決はできません。また、この分野では、債務者だけでなく債権者やスポンサーといった利害関係人が多く登場します。そのため、それぞれの利害関係人が置かれた立場を正確に理解し、法律やガイドラインといった武器を駆使して適切な調整を行わなければ手続が頓挫することになります。事実と理論を素早くつなぎ合わせて難しい局面を打開するという点で、弁護士としての腕が試されていると感じますね」(森弁護士)。
新型コロナウイルス感染症の流行が続く中、法律相談に前例のない問題が持ち込まれることもいまだ多い。「中国のロックダウンの影響は、新型コロナウイルスによる不可抗力なのか、中国によるカントリーリスクなのかなど、前例のない事象の解釈についてご相談をいただくことが多いですね。判例もないため判断に迷うところもありますが、自身の経験を踏まえ、これまでの裁判所の考え方に基づいたアドバイスをしています」(森弁護士)。
クライアントのニーズに最適な国際案件サポート体制を構築
ニューヨーク州弁護士であり、一般の企業法務案件のほか国際法務などを手がける高田翔行弁護士は、外国企業の代理や日本企業の海外進出、海外ベンチャー企業への投資、国際M&Aなどを多く扱う。日本企業のビジネスがグローバルに広がる中で、対象国は欧米とは限らない。「以前担当したのは中東のクライアントの案件で、日本と現地では法体系がまったく異なりました。日本の裁判所の判断と日本法を理解いただくことが難しい場面もありましたが、現地法と先方の文化を踏まえて、噛み砕いた説明を行うことでご納得いただきました」(高田弁護士)。
日本企業の海外進出の際には、現地事務所との協力関係が必要になるが、同事務所は世界各国の法律事務所のネットワークであるTERALLEXに加入しており、適切な法律事務所と協力体制を築くことができる。「インバウンド案件などの紹介があることはもちろん、普段つながりがない国の案件でもTERALLEXに加入している弁護士事務所を通じて協力することができます。世界の各地域をカバーしているのでスピーディーに確実に海外案件のご相談対応が可能です」(高田弁護士)。
幅広い案件への対応力を持つ次世代の若手弁護士育成を
入所3年目の吉岡沙映弁護士は、同事務所と顧問契約を結ぶ企業の契約書のチェックや、紛争案件、第三者委員会の調査など幅広い分野の案件に携わっている。「以前から関心のあった国際法務にも、少しずつ挑戦しています。原則として複数名で受任するため、経験年数の異なる弁護士間で多角的な視点から議論を重ね、よりよい解決を探究できる点が強みかと思います。若手の弁護士も主体的に案件に関わることができる環境です」(吉岡弁護士)。
田中 宏
弁護士
Hiroshi Tanaka
81年東京大学法学部卒業。83年弁護士登録(大阪弁護士会)。同年吉川綜合法律事務所(現・きっかわ法律事務所)入所。21年大阪弁護士会会長、日本弁護士連合会副会長。
森 拓也
弁護士
Takuya Mori
95年関西大学法学部卒業。02年弁護士登録(大阪弁護士会)。08年森法律事務所開設。09~18年立命館大学法科大学院非常勤講師(情報法)。11年きっかわ法律事務所入所。15年甲南大学法科大学院教授(倒産法)。
高田 翔行
弁護士
Shogo Takada
09年京都大学法学部卒業。11年京都大学法科大学院修了。12年弁護士登録(第二東京弁護士会)。17年New York University School of Law修了(LL.M.)。18年ニューヨーク州弁護士登録。18年大阪弁護士会登録、きっかわ法律事務所入所。
吉岡 沙映
弁護士
Sae Yoshioka
16年京都大学法学部卒業。18年京都大学法科大学院卒業。19年弁護士登録(大阪弁護士会)。20年きっかわ法律事務所入所。