環球法律事務所 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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中国改革開放後最初の法律事務所

市場経済化・対外開放を目的とする“改革開放”政策が実施されてから44年の間に、中国社会は大きな変化を遂げた。その最前線で活躍し続けてきたのが、2022年に創建43周年を迎えた老舗、環球法律事務所だ。「事務所の収入よりも、クライアントの満足度が大事です」と語る劉勁容弁護士がマネージングパートナーを務める同事務所は、中国改革開放後最初の法律事務所として、ファイナンス、投資、海事、知財、紛争解決、リスクマネジメント、コンプライアンス、刑事といった幅広い分野の法律業務を手がけてきた。渉外業務が過半数を占める同事務所に日本企業関連の業務を取り扱う専門部署が設置されたのは、日中関係改善の兆しが見えはじめ、日中間でのビジネス交流もより盛んになることが予見された2018年だった。
「以前は、日本企業や在中国日系企業からの依頼は、業務内容に応じて各部門に振り分ける形で対応していました。例えば、金融関連の業務なら金融チームに、知財関連の業務なら知財チームに、といったようにです。しかし、このような形だと、日系クライアントの企業文化を踏まえた高品質なサービスを提供することが困難であったため、日本企業関連の業務を一元的に取り扱う日本業務チームを新たに設置することになりました」(劉淑珺弁護士)。
「日本業務チームは我々2名のパートナーと上海に駐在する1名のパートナー・洪庚明を中心として、日中間の法律業務の取扱経験を持つ中国人弁護士と日本人スタッフで構成しています。みな日本語が堪能で、クライアントのニーズを余すところなく読み取ることができます。今後も引き続き、クライアントに満足いただくことを第一に考え、所内の各チームと緊密に連携しながら、北京、上海、深圳、成都を主な拠点として、日中間のビジネス法務、企業支援を中心に業務を展開していく所存です」(鮑栄振弁護士)。

改正独占禁止法等、独占禁止分野での新たな動きへの対応を支援

同事務所の日本業務チームでは、日本企業や在中日系企業、対日投資を行う中国企業やJETRO等、幅広いクライアントに、中国国内におけるコンプライアンス体制の構築から紛争対応といった多岐にわたるリーガルサービスを提供している。中でも日系企業からの相談が急増しているのが、独禁法関連の問題だ。2021年12月に開催された中央経済業務会議では、2020年に引き続き「独占禁止を強化する」というメッセージが出された。これを受けて、2021年末以来、中国の独占禁止法執行機関は従前より一段と法執行に力を入れている。実際に処罰の対象となったのは中国のプラットフォーム企業が大半であるが、医療、教育、物流等の分野において、外資系会社・ブランドを対象とした処罰を行うケースも出てきている。
また、2022年6月には改正独占禁止法が成立し、同年8月1日に施行されるという重要な動きがあった。改正法には、独占協定締結を手配し、または実質的な幇助を提供する行為の禁止、“セーフハーバー”ルールの設置、申告基準に達しない事業者結合も調査の対象になりうること、独占協定の締結に係る個人罰則の新設をはじめとする独占行為への厳罰化等の内容が盛り込まれた。また、改正法の施行に伴い、最高人民法院が独占行為に係る民事紛争事件における独占禁止法運用に関する司法解釈の意見募集稿を公表した。
以上のように、中国の独占禁止法をめぐる環境は、立法、行政機関による法執行、司法といったさまざまな面において激しい変化を見せており、中国市場に進出している日本企業や日系企業にとっては、どのように独占禁止法コンプライアンス体制を構築・更新するかが大きな課題になっている。
「当事務所の独占禁止法・競争法チームには独禁当局での官僚経験者や独禁法分野の元裁判官が複数在籍しており、彼らは独占禁止法に対する深い知見を活かし、企業に対し適切な助言を行っています。これらの弁護士は国家市場監督管理総局(日本の公正取引委員会に相当)から独占禁止関連法案の検討座談会に招待されたり、地方の独禁当局が独占禁止法に関するガイドラインを公表する際に事前に内容について助言を求められたりすることが頻繁にあり、業界内で高い評価を受けています。また、日本業務チーム所属の弁護士もみな独占禁止法に精通しており、これまでに交通、医療、教育、建材、電信、自動車、娯楽等さまざまな分野において、独禁法調査への対応や事業者結合届出の実施といった業務を数多く取り扱うとともに、クライアントの目線に立って、的確なコンプライアンスコンサルティングサービスを提供してきました。事業者結合の届出資料作成や調査への対応等においては当事会社の業務状況を迅速かつ正確に把握すること、行政当局とのコミュニケーションにおいては適切な内容を適切な言葉で表現することが特に重要となりますが、深い専門知識を有する独占禁止法・競争法チームと知識に加え高い言語能力を持つ日本業務チームが一体となってサービスを提供することでこの点をクリアし、クライアントの独占禁止法上のリスクを最小限に抑えています」(劉淑珺弁護士)。

中国市場における日系企業のデータコンプライアンス体制構築を強力にサポート

2017年施行のサイバーセキュリティ法に加え、2021年にはデータセキュリティ法と個人情報保護法が、2022年にはデータの越境移転に関する細則が施行されるなど、中国ではインターネットやデータ関連の規制もますますその厳しさと複雑さを増している。
「データセキュリティ法と個人情報保護法では企業や責任者に重い責任を課しており、適切な対応を行わなければ数億人民元もの過料を科されたり、責任者が個人として責任追及を受けたりする可能性があります。一方で、行き過ぎた対応をとってしまうと多くのコストがかかり、企業にとっては大きな負担となります。このため、“データコンプライアンス体制はどの程度細かいものを構築するのが現実的なのか”という質問が、日系企業から数多く寄せられました。そこで日本業務チームでは、30名以上の専門家を擁する所内のデータコンプライアンスチームと連携し、企業の規模、業務内容、保有するデータの状況等に合わせて、AI等の最新技術も駆使しながら、チェックリストの作成やデータマッピングの実施、社内データ取扱規則の整備、越境移転に係る安全評価申告業務の代理、従業員教育等を実施し、各日系企業にとって最適なコンプライアンス体制の構築をサポートしています」(劉淑珺弁護士)。

高い専門性が求められる知的財産権関連のリーガルサポートも提供

中国では近年、民法典や専利法(特許法)、商標法、不正競争防止法等、知的財産権関連の法令の改正が続々と行われている。また、司法面でも、知的財産権の保護は年々強化されており、2021年には裁判所における知的財産権案件の新受、既済件数がいずれも60万件を突破し、過去最高を記録している。何かと模倣品等の問題が取り沙汰される中国ではあるが、現在では世界的にも知的財産権案件(とりわけ特許案件)の取扱いが最も多く、また審理に要する期間も最も短い国の一つとなっている。
「現代社会では、企業が競争を勝ち抜き、発展を遂げていくためには、何よりイノベーションが必要です。ただし、単にイノベーションを生み出すだけでは、同業者にあっという間に模倣され、優位性を失ってしまいます。だからこそ、特許や商標という形で、知的財産権としてイノベーションを保護する必要があるのです。言い換えれば、知的財産権の管理が、企業の行く末を左右する重要なファクターとなるわけです」(鮑栄振弁護士)。
「知的財産権に関する業務では、弁護士に極めて高い専門性が求められます。知的財産関連の法令や制度の内容を熟知していることはもちろん、各案件で取り扱う知的財産権そのものについても深い理解が必要となるため、さまざまな分野の専門知識を持っていなければなりません。当事務所では、こうした高難度な知的財産権案件を取り扱う専門チームを設置し、日系企業を含む幅広い国・地域の企業に知的財産権に関するリーガルサービスを提供しています。専門チームには長年にわたって北京の裁判所で裁判官として知的財産権案件の審理に携わってきた専門家や、国家知的財産権局での20年近い勤務歴がある専門家、知的財産権訴訟に10年以上携わってきた弁護士等が複数在籍し、特許、商標、著作権、ドメイン名といった知的財産権に関する訴訟やコンサルティング業務に幅広く対応しています」(劉淑珺弁護士)。
「当事務所が取扱った知的財産権案件の中で最も社会的反響を呼んだのが、有名エナジードリンク「レッドブル」の商標をめぐる案件です。当事務所はタイTCPグループの代理人として、同社と中国企業との「レッドブル」をめぐる一連の紛争に対応したのですが、本件は訴額が商標に関する民事事件としては当時(現在でも)最高額の37億人民元に上ったこともあり、高い関心を集めました。結果として、訴訟では全面的な勝利を収め、「レッドブル」の商標を守ることができました。本件は「中国2020年知的財産権案件Top10」に選出されたほか、最高人民法院(日本の最高裁判所に相当)の記者会見において“国内事業者と海外事業者を問わず、その合法的権益を平等に保護するという精神が表れている”と言及される等、高く評価されています」(鮑栄振弁護士)。
「中国に進出している日系企業の中にも、特許、商標、著作権等、知的財産権関連の悩みを抱える企業が数多くあります。日本業務チームはそういった企業と知的財産権チームの橋渡しとなり、知的財産権チームと一体となってクライアントが必要とするサービスを的確に提供することで、日系企業の中国における知的財産権管理をサポートしています」(劉淑珺弁護士)。

日系企業における税関・貿易コンプライアンス体制の構築を支援

2020年から2022年にかけて、中国では輸出管理法、反外国制裁法等、税関・貿易関連の法令が複数公布、施行された。これらの法令は内容が複雑である上に、違反者に対し厳しいペナルティを設定しているため、日系企業、とりわけ日中間貿易事業を営む日系企業は、その内容を細部まで正確に理解する必要がある。また、税関・貿易分野では昨今、複数の当局が連携して違法行為の摘発にあたることが多く、グループ内の一社が何らかの処罰を受けると、グループ内の他の企業も巻き込まれる(グループ全体が当局の注視対象になったり、芋づる式に処罰されたりする等)ケースが散見される。このように、中国における税関・貿易コンプライアンスの重要性は日増しに高まっている。
「国際情勢が目まぐるしく変化する今日では、税関・貿易関連法令の条文だけでなく、その背後にある立法の背景や目的を正しく理解するとともに、関係当局の動向をつぶさに観察し、規制の方向性を見極めない限り、万全なコンプライアンス体制を築くことはできません。そこで当事務所では、深い専門知識を有する20名以上の弁護士からなる貿易・税関チームを設置し、企業における貿易・税関コンプライアンス体制の構築をサポートしています。チームリーダーは、複数の「フォーチュングローバル500」掲載企業に貿易・税関コンプライアンスサービスを提供してきた、その分野の先駆者とも呼ばれる弁護士が務め、チームメンバーも多くが政府機関での勤務経験を有し、税関、輸出管理等について豊富な経験・知識を持っています。日本業務チームは貿易・税関チームと連携しながら、貿易救済措置(アンチダンピング、補助金相殺関税およびセーフガード)調査への対応、輸出入貨物の品目分類、移転価格の関税評価、国内外の輸出規制コンプライアンス体制の構築等のリーガルサービスを日系企業に提供しています」(鮑栄振弁護士)。

中国市場における日系企業のコンプライアンス体制確立を支援

中国では近年、サイバーセキュリティ法や外商投資法、民法典、輸出管制法といった、外国企業の中国での活動に大きな影響を及ぼす法律が次々と成立し、既存法令の改正が頻繁に行われ、行政当局も市場での違法行為の取り締まりを活発に展開している。このような中、中国に進出している日系企業が最も注意すべきはコンプライアンスだと劉淑珺弁護士は語る。
「中国では、事件や不祥事を起こした企業に対し厳しい対応がとられており、各種“ブラックリスト”に掲載される可能性があります。ブランドイメージに大きな傷がつくことも珍しくなく、場合によっては直接責任者の個人責任を追及される可能性もあります。このため、外資系企業にとってはコンプライアンスの徹底が中国事業の存亡に関わるほど肝心となるのですが、法整備が急速に進む中国では、一部の担当者だけでなく、上層部や従業員一人ひとりが法律の内容を正しく理解し、実務状況を把握して、“してはいけないこと”と“すべきこと”をしっかり認識しておかなければ、リスクを最小限に抑えることはできません。私たちは日系企業向けの社内コンプライアンス規程の制定・改訂や社内コンプライアンス研修、自主的社内コンプライアンス調査、社内通報への対応等を数多く手がけてきましたが、どのクライアントからもご好評をいただき、“中国におけるコンプライアンス徹底は現地化が重要であり、日本本社のやり方をそのまま用いるだけでは不十分”とのご意見をいただいています。今後もコンプライアンスの重要性がますます高まると予想されますので、既存のクライアントにサービスを提供するだけでなく、公開セミナーや座談会という形で、より多くの日系企業のコンプライアンス体制構築に貢献していければと考えています」(劉淑珺弁護士)。
今後もますます複雑化することが予想される中国の法実務。そこでビジネスを行う日本企業の成功への道は、彼らのような弁護士の存在なしには拓けない。

→『LAWYERS GUIDE 2023』を「まとめて読む」
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 DATA 

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所在地・連絡先
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所属弁護士等:パートナー140余名、アソシエイト500余名(2022年12月現在)

沿革:1979年前身となる中国国際貿易促進委員会(CCPIT)法律顧問処が設立。1984年司法部の認可を受けて「中国環球法律事務所」に名称変更し、中国改革開放後最初の法律事務所として発足。1995年「環球法律事務所」に名称変更。2000年上海支所設立。独立した民間のパートナーシップ制法律事務所に体制改革され、「北京市環球法律事務所」に名称変更。2011年深圳支所、2020年成都支所をそれぞれ設立。2018年日本業務チーム発足、税関分野のリーディング・ロー・ファーム「昊理文法律事務所」を統合。

受賞歴:2022, nominated in 8th Annual Benchmark Litigation Asia-Pacific Awards —Firm of the Year —China、2020, nominated in Client Service Law Firm of the Year—China, Chambers and Partners、2012 & 2018, Client Service Law Firm of the Year—China, Chambers and Partners、2020, Client Service Excellence: The highest rated lawyers to work with, Asialaw、2020, Clients Most Favoured Chinese Law Firm of the Year, LEGALBAND、2019, Beijing Top 100 List of Innovative Business Service Brands & International Brands, Lawyers Association、ALB Japan Law Awards nominated as Japan Practice Foreign Law Firm of the Year, 2019(日本業務チーム)

所属弁護士等による主な著書・論文(共著含む):環球法律事務所として『中国データ関連法制度が成熟に向かう2022年—規制動向のまとめ及び今後の動向の予測』(日中英)(2022)、環球法律事務所『外商投資監督管理新時代の実務ガイドブック』(日中英)(LexisNexisと共同発行、2020)のほか、劉淑珺の『中国のデジタル戦略と法』(第5章 情報分野における中国競争法の動向—プラットホーム関係を中心に―)(共著、弘文堂、2022)「中国データ三法の解説と企業対応の要点」(共著、ビジネス法務2022年3月号所収)、「中国における過去の独占禁止法執行体制の回顧と現行体制の概要」(環球法律事務所パートナー万江との共著、公正取引2019年3月号所収)、『入門中国法〔第2版〕』(共著、弘文堂、2019)、鮑栄振の「弁護士が見る 時代と歩む中国法」(人民中国2019年1月号~、連載)ほか多数。環球法律事務所日本業務チームとして「環球中国法速報」(日本語)を配信中(連絡先:GLO-JPNewsletter@glo.com.cn

劉 勁容

中国弁護士
Liu Jinrong

吉林大学卒業、法学修士。カナダブリティッシュコロンビア大学卒業、法学修士。02年環球法律事務所パートナー。08年同事務所マネージングパートナー就任。キャピタルマーケッツ、M&A、PE/VC、独占禁止法、税法等、幅広い業務を取り扱っている。01~22年まで連続でChambersのBand 1 lawyers in Corporate / M&A and Capital Markets practicesに選出される等、受賞歴多数。

劉 淑珺

中国弁護士
Liu Shujun

北京大学法学部卒業、法学修士。東京大学法学政治学研究科卒業、法学修士。森・濱田松本法律事務所中国室(東京オフィス)にて研修経験あり。他の二つの中国「レッドサークル」(Red Circle。法律専門評価機関により選出された8大中国渉外法律事務所)法律事務所の会社証券チームや独占業務チームでの勤務を経て、18年~環球法律事務所パートナー。環球法律事務所日本業務チーム責任者、独占禁止法業務チーム主要メンバー。外商投資や反商業賄賂、EHS等の分野でも経験豊富。20~22年まで連続で世界有数の評価機構The Legal 500 Asia-PacificやLEGALBANDで独占禁止法や競争法分野の特別推薦弁護士に選出。21年LEGALBANDコンプライアンス業務ベスト15年および21年度中国女性弁護士ベスト15に選出。

鮑 栄振

中国弁護士
Bao Rongzhen

東京大学法学部大学院卒業。卒業後、中華人民共和国司法部、中国法学会勤務。日系法律事務所や他の中国「レッドサークル(Red Circle)」法律事務所を経て、18年~環球法律事務所パートナー。日中間法律業務に20年以上従事。特に会社再編・解散・清算、労務人事、電信事業、コンプライアンス等の分野で経験豊富。かつて中国海峡両岸法律問題研究会理事および副秘書長、北京日本科学文化研究センター秘書長、中華全国弁護士協会外事委員会委員等を歴任し、現在は中国政法大学国際環境方研究所研究員、中国政法大学法碩学院客員教授、中国法学会弁護士法研究会理事、中日民商法研究会副秘書長等を務める。