環球法律事務所 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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改革開放後最初の法律事務所

1978年からスタートした市場経済への移行や対外開放を目的とする“改革開放”政策によって、ダイナミックな変化を遂げた中国。中国改革開放後最初の法律事務所として、そうした中国社会の変化とともに歩み、同国のビジネス法務の最前線を走り続けるのが、2022年で創建43周年を迎える環球法律事務所だ。
「専門性を絶えず磨きながら、誠実にクライアントに向き合うことが大切」と事務所のポリシーを語るのは、マネージングパートナーの劉勁容弁護士。北京、上海、深圳、成都と中国国内に四つの拠点を構える同事務所では、ファイナンスや投資、海事、知財、紛争解決、リスクマネジメントといった多岐にわたる領域において、分野をまたぐ総合的なリーガルサービスをワンストップで提供。設立当初からの“グローバルな視野、グローバルなチーム、グローバルレベルの品質をもって、国内外のクライアントにリーガルサービスを提供する”という目標のとおり、現在は手がける案件の半数以上を渉外業務が占めるという、中国を代表するグローバルな大手法律事務所である。
同事務所では、日中平和友好条約の締結から40周年を迎え、冷え込んでいた日中関係の改善の兆しが見え始めた2018年に、日本企業関連の業務を扱う専門部署である日本業務チームを設立。
「日本業務チームの理念は、日系クライアントの企業文化を踏まえた高品質なリーガルサービスの提供と、クライアントのニーズに効率的に応えること。弁護士全員が日本での留学経験を持ち、日本語が堪能な上、日本のカルチャーや日本法にも深い造詣を持つ私たちのチームが、日本企業や日系企業の窓口となってニーズを真摯に汲み取り、所内の専門家と緊密に連携しながら案件に対応しています」。そう話す劉淑珺弁護士は、北京大学を卒業後に東京大学で学び、中国の他の二つの大手渉外法律事務所での執務経験も有する。そんな劉淑珺弁護士と、日中間の法律業務に20年以上携わってきた鮑栄振弁護士の2名のパートナーが、日本業務チームを率いている。

独禁法規制強化への対応

同事務所の日本業務チームでは、大手から中小までの日本企業や在中日系企業を中心に、対日投資を行う中国企業やJETROなど、幅広いクライアントに向けて、中国国内におけるコンプライアンス体制の構築から紛争対応まで、多岐にわたるリーガルサービスを提供する。中でも日本企業や日系企業からの相談が急増しているのが、独禁法関連の問題だ。
中国では独占禁止法が2008年から施行されているが、特に、2020年12月の党中央政治局の声明において、習近平国家主席が“資本の無秩序な拡張”を批判するメッセージを出してからは、独禁法規制がますます強まっている。2021年に入ると、アリババやテンセントをはじめとする中国の大手IT企業が立て続けに処罰され、日系を含む現地企業や世界各国の投資家たちに大きな衝撃を与えることとなった。

「独禁法のさらなる規制強化、資本の秩序なき拡張の防止といったトップの要求を徹底するため、政府機関や裁判所では、取締の強化や裁判における不正競争分野の訴訟案件の審査業務を健全化する動きを強めています」(劉淑珺弁護士)。

まさにいま大きな動きを見せる、そうした中国独禁法や不正競争防止法分野のコンサルティングやコンプライアンスに加え、政府調査への対応についての豊富な経験と知識を持つのも同事務所の強み。前述したとおり、中国大手プラットフォーム企業に対する市場支配的地位の濫用に関する処罰事件が世界的には大きな話題となったが、一方で「現在は事業者結合(日本で言う企業結合)に関わる調査案件が急増しています」とも劉淑珺弁護士は話す。
特に外国資本の投資が厳しく制限されていたITなどの分野において、ある意味では抜け道として発明され、中国で常態化しているのがVIEスキームだ。例えば、中国の規制分野に進出したい外国資本がケイマン諸島などにペーパーカンパニーを設立し、一連の契約で中国企業を間接的に支配する。中国のIT大手や海外投資家の多くが活用するこうしたVIEスキームは、日本企業の中国進出においても10年以上前から活用されてきた。

「そうしたVIEスキームに係る案件の場合、以前の主管当局である商務部では、規制回避のスキームにお墨つきを与えてしまう懸念から、仮に当事者企業が自主的に事業者結合の申告を行ったとしても、すべて受理しないという方針をとっていました。しかし、2020年後半からの規制強化の流れを受け、現在の主管当局である市場監督管理総局が、VIEスキームに係るいくつかの案件を処罰しました。結果、中国のIT企業がこぞって自主的にコンプライアンスの点検を行い、過去に遡って未申告案件の報告を行うという動きが加速しているのです」(劉淑珺弁護士)。

中国に進出する日本企業や在中日系企業の中には、こうした動向がIT分野に限ったものと見る向きも多い。しかし、「現在の実際の実務を見ていると、IT企業やVIEスキームに係るもの以外でも、未申告などの違法な事業者結合の問題については、当局が厳しく法執行を行う状況になっています」と劉劉淑珺弁護士は指摘する。

「過去に中国で事業者結合を行ったすべての日本企業が摘発の対象となりえる上、審議が進んでいる改正独禁法では、課徴金の上限が従来の50万人民元から、事業者の前年度売上の1〜10%にまで大きく引き上げられることも予想されます。また、競争相手や消費者、従業員やディーラーなどからの通報も以前より頻繁に発生しており、特に再販売価格の拘束のような問題では、当局は告発を受けると市場競争に影響があるかどうかといった問題を精査することなく、原則としてただちに当該企業を処罰します。つまり、独禁法コンプライアンスの確保は中国でビジネスを行うすべての企業にとって急務となっており、我々のチームではそうしたコンプライアンス体制の構築から新規取引における事業者結合申告、歴史的な未申告案件の補充申告や、独占協定や市場支配的地位の濫用行為などに関する政府調査や訴訟への対応まで、多くの日系企業のサポートを行っています」(劉淑珺弁護士)。

データ三法への対応を強力に支援

一方、2017年に施行された従来のサイバーセキュリティ法に加え、2021年にはデータセキュリティ法と個人情報保護法が施行されるなど、中国ではインターネットやデータ関連の規制も、ますますその厳しさを増している。

「グローバルに事業を展開する日本企業ではほぼすべて、世界で最も厳しい個人情報保護法であるGDPR(EU一般データ保護規則)に対応する体制が整備されています。中国の新しいインターネット・データ規制に対応するためには、そうしたGDPRに対する成果などを活用しつつ、中国の現地法に合わせたローカライズのための現体制のレビューや、新たなコンプライアンス体制の構築や推進作業が必要になります。そこで日本業務チームでは、30名以上の専門家を擁する所内のデータコンプライアンスチームと連携し、チェックリストやデータマッピングの実施や、社内データ取扱規則の整備、従業員教育などを実施。日本企業を含む外資系企業の多くが懸念するデータの越境移転の問題など、サイバーセキュリティ法とデータセキュリティ法、個人情報保護法のデータ三法に対応した日系企業のデータコンプライアンス体制構築を、AIなどの最新技術も駆使しながらクリティカルに行っています」(鮑弁護士)。

さらに2020年9月には、中国政府が“2030年までに二酸化炭素排出量を減少させ、2060年にはカーボンニュートラルを実現する”といった方針を発表し、中国ではクリーンエネルギー関連の投資が活発化。そうした投資案件や、増加傾向にある対日投資案件など多くで同事務所の弁護士がコーディネーター役を務める上、コロナ禍で増える日系企業の紛争事案では、所内の紛争専門チームと共に、より日本企業のカルチャーを知る劉淑珺弁護士ら日本業務チームのメンバーが深く案件に関わるケースも増えている。

「中国の法律がますます複雑になる中で、日系企業のニーズや文化を理解しながら、効率やコストパフォーマンスを含めて総合的にご満足いただけるリーガルサービスを提供するのが私たちの役割。今後もクライアントの満足度を第一に、日系企業のビジネスを強力にサポートしていきたいと考えています」(劉淑珺弁護士)。

「中国のサイバーセキュリティ法や輸出管理法などにはすべて域外適用がある上、2021年月には外国の制裁に対する反外国制裁法も施行されました。今後、中米対抗が厳しくなるにつれ、日本企業が米中の間で板挟みにされ、どちらかの規制に従えばどちらかに罰せられるといった状況も予想されます。そうした懸念をお持ちの企業の皆さまもぜひ我々にご相談ください」(鮑弁護士)。

今後もますます複雑化することが予想される中国の法実務。そこでビジネスを行う日本企業の成功への道は、彼らのような弁護士の存在なしには拓けない。

→『LAWYERS GUIDE 2022』を「まとめて読む」
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所属弁護士等:パートナー140余名、アソシエイト500余名(2021年11月現在)

沿革:1979年前身となる中国国際貿易促進委員会(CCPIT)法律顧問処が設立。1984年司法部の認可を受けて「中国環球法律事務所」に名称変更し、中国改革開放後最初の法律事務所として発足。1995年「環球法律事務所」に名称変更。2000年上海支所設立、独立した民間のパートナーシップ制法律事務所に体制改革され、「北京市環球法律事務所」に名称変更。2011年と2020年深圳支所と成都支所をそれぞれ設立。2018年日本業務チーム発足、税関分野のリーディング・ロー・ファーム「昊理文法律事務所」を統合

受賞歴:2021,Top Tier,IFLR1000、2021, Guide to the Top Tier Employers,HRTier、 2020, nominated in Client Service Law Firm of the Year— China, Chambers and Partners、2012 & 2018, Client Service Law Firm of the Year—China, Chambers and Partners、2020, Client Service Excellence: The highest rated lawyers to work with, Asialaw、2020, Clients Most Favoured Chinese Law Firm of the Year, LEGALBAND、 2019, Beijing Top 100 List of Innovative Business Service Brands & International Brands, Lawyers Association、ALB Japan Law Awards nominated as Japan Practice Foreign Law Firm of the Year, 2019(日本業務チーム)

所属弁護士等による主な著書・論文(共著含む):環球法律事務所として『外商投資監督管理新時代の実務ガイドブック」(日中英)(LexisNexisと共同発行、2020)、「環球ライフサイエンス及び医療法律速報」「環球労働法律速報」等各種ニュースレター(中国語、オンライン配信)、環球法律事務所日本業務チームとして「環球中国法速報」(日本語、オンライン配信)、鮑栄振「弁護士が見る 時代と歩む中国法」(人民中国2019年1月号~、連載)、鮑栄振「労働紛争に対する中国司法・行政の新たな取組み」(共著)NBL No.941(2010)、鮑栄振『中国進出企業再編・撤退の実務』(共著、商事法務、2012)、劉淑珺「中国における過去の独占禁止法執行体制の回顧と現行体制の概要」(環球法律事務所パートナー万江との共著)公正取引2019年3月号)、劉淑珺『入門中国法〔第2版〕』(共著、弘文堂、2019)

劉 勁容

中国弁護士
Liu Jinrong

吉林大学卒業、法学修士。カナダブリティッシュコロンビア大学卒業、法学修士。02年環球法律事務所パートナー。08年同事務所マネージングパートナー就任。キャピタルマーケッツ、M&A、PE/VC、独占禁止法、税法に関する業務等、幅広い業務を取り扱っている。LEGALBAND 2021においてTop 15 Managing Partnersに選出されたほか、01年から20年まで連続でChambersのBand 1 lawyers in Corporate /M&A and Capital Markets practicesに選出されるなど、受賞歴多数。

劉 淑珺

中国弁護士
Liu Shujun

北京大学法学部卒業、法学修士。東京大学法学政治学研究科卒業、法学修士。森・濱田松本法律事務所中国室(東京オフィス)にて研修経験あり。他の二つの中国Red Circle※法律事務所の会社証券チームおよび独占業務チームでの勤務を経て、18年~環球法律事務所パートナー。環球法律事務所日本業務チーム責任者、独占禁止法業務チーム主要メンバー。外商投資やデータコンプライアンス、反商業賄賂、EHS等の分野でも経験豊富。LEGALBAND 2021においてClient Choice: Top 15 Female Lawyers、Client Choice: Top 15 Compliance Versatile Practitioners、LEGALBAND 2020においてHighly Recommended Lawyerin Anti-trust、The Legal 500 Asia-Pacific 2020においてRecommended Individuals in Antitrust and Competitionに選出。

※ Red Circle(レッドサークル)法律事務所:法律専門評価機関により選出された8大中国渉外法律事務所のこと。

鮑 栄振

中国弁護士
Bao Rongzhen

東京大学法学部大学院卒業。中華人民共和国司法部、中国法学会勤務。日系法律事務所や他の中国Red Circle法律事務所を経て、18年~環球法律事務所パートナー。日中間法律業務に20年以上従事。特に会社再編・解散・清算、労務人事、電信事業、コンプライアンス等の分野で経験豊富。中国海峡両岸法律問題研究会理事・副秘書長、北京日本科学文化研究センター秘書長、中華全国弁護士協会外事委員会委員、中日民商法研究会副秘書長等を歴任し、現在は中国政法大学国際環境法研究所研究員、中国政法大学法碩学院客員教授、中国法学会弁護士法研究会理事長等を務める。

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