大阪オフィスを窓口に全弁護士の知見を西日本へ
独禁法、消費者法、情報法の3分野を軸にサービスを提供する池田・染谷法律事務所。同事務所は2022年5月に大阪オフィスを新たに開設し、西日本のクライアントに対してより密接なサービスを提供する体制を整えた。
「まだまだ若い事務所ですので、“こちらから会いにいく”というコンセプトで大阪オフィスを設立しました。“リモート全盛の時代に必要なのか”という意見もありましたが、リモートが普及した“今”だからこそ直接お会いして話す価値は上がっていると思っています。公正取引委員会による調査の事件は最近西日本の企業がターゲットになっていますし、西日本は首都圏と比較して法務やコンプライアンスに割く人員が限られる企業が多い傾向もあります。これまで独禁法や消費者法の専門家と会うことができなかったクライアントにも“直に”アドバイスできればと思っています」と語るのは、代表パートナーで独禁法分野を専門とする池田毅弁護士。
大阪オフィスには、2022年に入所し、これまで大手渉外法律事務所で国内外の企業の訴訟・紛争対応案件を中心に幅広い企業法務案件を数多く手がけてきた山本宗治弁護士が常駐している。
「大阪オフィスは東京から遠方のクライアントが訪れやすい場所として設けられていますが、業務には東京と一体で取り組んでいます。“大阪オフィスだけの案件”という区分けがあるわけではなく、私自身も事務所全体の業務の一部として携わっています。所内の弁護士は、時間や場所に縛られることなくスムーズに連携がとれる環境にあります。大阪オフィスが窓口となってお客様と直接顔を合わせつつ当事務所の法的サービスを提供するとともに、スピード勝負である独禁法案件などで緊急対応が必要な際に迅速に現場に向かう体制を用意しています」(山本弁護士)。
6名の弁護士加入で国内最大の独禁法・消費者法ブティックファームに
同事務所には2022年に新たに6名の弁護士が加入し、独禁法・消費者法・情報法の分野で国内最大規模のブティックファームとなった。直近の同年12月にも、公正取引委員会出身の林紳一郎弁護士、海外経験が豊富な新進気鋭の李明媛弁護士が新たに参画したばかりだ。林弁護士を含めると、同事務所の弁護士は公正取引委員会出身者が5名、消費者庁出身者が3名となる。他にも、総務省総合通信基盤局出身で、電気通信事業における個人情報保護や通信の秘密に精通する弁護士も在籍している。
「規模は追っていませんが、顧客のニーズに応えるうち、想定よりも早く仲間が増えており、今後もさらなる人員拡大に対応するため、2023年に現事務所の2.5倍のスペースに移転を検討しています。“独禁法・消費者法・情報法の3分野を極める”という理念に賛同してくれるメンバーが集まるのは嬉しいですね」(池田弁護士)。
同年9月には検事や公正取引委員会委員を務めてきた小島吉晴氏が入所し、「独禁法の調査対応や危機管理の対応力が増強された」と語るのは、もう一人の代表パートナーで消費者法分野を専門とする染谷隆明弁護士だ。
「我々は公正取引委員会・消費者庁をはじめとする官公庁の調査対応をよく手がけており、広報対応を含めた危機管理の全体的なコンサルなども行っています。“危機管理”といえば検事としての経験が非常に活きる分野ですし、元公正取引委員会委員として当局の判断過程を知る小島弁護士が入所することで対応能力がより強化され、各種調査委員会の依頼にもお応えしやすくなりました。また、若いメンバーが多く所属する事務所ですので、小島弁護士の豊富な経験をアドバイスとして得られることは大きなメリットだと思っています」(染谷弁護士)。
検事・公正取引委員会委員の知見をクライアントと所内弁護士へ提供
34年の検事生活を経て、公正取引委員会委員として独禁法・下請法関連の案件に従事し、独禁法改正業務にも関与してきた小島弁護士は、同事務所で景表法を専門とする川﨑由理弁護士と検事時代の同僚であった縁がきっかけとなり、同事務所に入所した。
「川﨑弁護士が福井地検の検事だった際の検事正が私でした。その後、公正取引委員会委員時代に目にした書類に川﨑弁護士の名前が載っており、当事務所のことを知りました。池田弁護士とも公正取引委員会の研究機関での発表等で交流があり、事務所の自由闊達な雰囲気に共感したことも入所を決めた理由です」(小島弁護士)。
実際に執務すると、若手弁護士が非常にのびのびと意見や質問をする姿が見られ、非常に風通しがよいと感じているという。
「大部屋に全弁護士と事務員が集まっていて、若手弁護士が池田弁護士や染谷弁護士に頻繁に相談をしに訪れます。若手弁護士同士で議論する姿もよく目にします。刑事関係の案件は私にも気さくに相談が持ちかけられますし、消費者法関係であれば元国民生活センター理事長の松本恒雄弁護士のもとに相談が寄せられます。“先輩に聞きにくい”という雰囲気がまったくなく、非常に仕事がしやすい環境で、クライアントへのアドバイスにも活きているところかと思います」(小島弁護士)。
今後は公正取引委員会委員の経験から得られた教訓を企業に提供していきたいと小島弁護士は語る。
「公正取引委員会が取り扱う案件は、いわば“企業が対応に失敗した案件”です。通常、企業はそうした失敗の経験がないため、他社事例から学ぶことは多くあるでしょう。元公正取引委員会委員として見てきた失敗事例から、回避策をお伝えできる点は多くあるかと思います」(小島弁護士)。
訴訟での豊富な経験を独禁法・消費者法・情報法分野へ
大阪オフィス常駐である山本弁護士は、これまで訴訟に積極的に取り組んでおり、米国の法制度にも明るい。
「独禁法・消費者法については、当事務所は官公庁勤務や出向経験がある人材が多く在籍しているため、制度や運用面での的確なアドバイスをもらい、私の強みとして、“訴訟が関係する案件の見立てやその帰結から逆算して考える”という点で貢献できていると思います。各業務の中で役割分担がうまくできているのではないでしょうか」(山本弁護士)。
米国のロースクールに1年在籍して磨いた英語力は独禁法・消費者法分野でも活きているという。
「業務において英語でご相談いただいた場合の対応や、英語文献や資料の確認、レポーティングなどに英語力が活きるところかと思います。また、米国の法制度等についても、切り口を考えつつ今後発信できる機会を持てればと思っています」(山本弁護士)。
法令に関する知見と実務経験で独禁法分野の対応力を強化
2022年に小島弁護士、山本弁護士とともに同事務所に入所した伊藤沙条羅弁護士は、公正取引委員会に6年勤務し、その間に経済産業省の通商法部門への出向も経験した。公正取引委員会では立入検査や事情聴取対応を含む事件審査に携わったほか、独禁法の令和元年改正も担当した。
「キャリアを積みつつ、経験を得るたびにできることが増えていく働き方をしたいと考えていました。前職の経験を活かすのであれば、独禁法のブティックファームである当事務所が最適と考えました」(伊藤弁護士)。
独禁法の令和元年改正に携わった経験は、これまで1947年の成立以来、改正を繰り返してきた独禁法の成立する経緯について知悉することにつながったという。
「独禁法に限らず、法改正をする際には、これまでどのような経緯で法律が成立・改正されてきたかについて詳しく調べて理解しなければなりません。独禁法の解釈にあたりそのような知見が頭に入っていることは、クライアントへのアドバイスに活かせるところです」(伊藤弁護士)。
伊藤弁護士は入所以降、経験の幅が広がるとともに、対応可能な範囲が増えたと感じるという。
「独禁法関係の業務はもちろん、省庁にいた時代には直接関わりがなかった分野の案件も経験できています。働き方としても、時間に縛られず効率的かつ合理的に働ける点は非常にやりやすく感じています。対クライアントという点では、Webコミュニケーションを主とする手法は、所属弁護士がどこにいても対応でき、クライアントの希望の時間帯に柔軟に対応することができるという意味で大きなメリットに感じています」(伊藤弁護士)。
ブティックにおける多様な専門家がニーズに直結したサービスを提供
「当事務所は官庁経験者の割合が非常に多いことが特徴です。これらのメンバーはそれぞれ異なる部署に在籍していたため、独禁法・消費者法のさまざまな側面の専門性を持ち寄ることができています。これは、官庁出身者に限らず、インハウス経験を有する複数の弁護士を含め、他の弁護士の経験についても同様で、クライアントに多様な視点からのアドバイスを提供できるという点は当事務所の強みだと考えています」と池田弁護士は語る。
同事務所の勉強会は各人のバックグラウンドを活かし充実したものになっていると小島弁護士は説明する。
「どの弁護士も非常に忙しく業務をする中で、勉強会用に論文に近い資料をまとめて発表しています。“よく時間がとれた”と思うほど、それぞれの弁護士の専門領域に適った内容で毎回驚いています」(小島弁護士)。
各弁護士の知見を提供する場として、今後セミナーなども豊富に提供される予定だ。第1回対策講座が好評であった「景品表示法務検定試験対策講座」は第2回試験対策講座が2022年も開講され、年間を通しての講座申込も可能となった。また、2023年より、公正取引協会主催で、公正取引委員会の後援を得て実施予定といわれる下請法務検定の対策講座も開講準備が進んでいる。
「試験対策講座については、毎年行われる試験であるため、最新動向を取り入れることを基本にアップデートを行っています。“現在景表法で何が起きているか”“実務の基本的なポイントとは何か”について情報をコンパクトにまとめて提供できるように準備を進めています」(染谷弁護士)。
試験対策講座ではあるものの、“景表法について基本を体系的に理解したい”という根強いニーズや、“ある程度まとまった人数の従業員に景表法を勉強させたい”というニーズに応えるものでもあるという。
対面・Webのセミナーについても、2023年に経団連後援のセミナーが開催されるほか、さまざまにテーマを設定し、順次実施される予定だ。
「Webセミナーではテーマとポイントを絞り、最先端の情報を提供するとともに、直接お会いすることを重視した対面セミナーも各地で開催予定です。“Webでは質問がしづらい”という方も多いと思いますので、セミナー終了後に対面でお話をしながら当事務所と各法分野に親しんでいただければと思います」(染谷弁護士)。
池田 毅
弁護士
Tsuyoshi Ikeda
02年京都大学法学部卒業。03年弁護士登録(現在、第一東京弁護士会)。05~07年公正取引委員会事務総局審査局勤務。08年カリフォルニア大学バークレー校ロースクール(LL.M.)修了。09年ニューヨーク州・カリフォルニア州弁護士登録、森・濱田松本法律事務所入所。18年池田・染谷法律事務所設立。22年日本経済新聞の2022年「今年活躍した弁護士ランキング」独禁・競争法分野で総合第2位(企業票第3位)選出。
染谷 隆明
弁護士
Takaaki Someya
09年専修大学大学院法務研究科修了。10年弁護士登録(東京弁護士会)。12年株式会社カカクコム入社。14年消費者庁消費者制度課・課徴金制度検討室課長補佐。15年消費者庁表示対策課課長補佐。16年弁護士法人内田・鮫島法律事務所入所。18~20年日本組織内弁護士協会理事。18年池田・染谷法律事務所設立。
小島 吉晴
弁護士
Yoshiharu Ojima
81年東京大学法学部卒業。83年東京地方検察庁検事。04~05年東京地方検察庁特別捜査部副部長。07年東京地方検察庁特別公判部長。10年最高検察庁検事。11年福井地方検察庁検事正。12年公安調査庁次長。15年神戸地方検察庁検事正。16年名古屋地方検察庁検事正。17~22年公正取引委員会委員。22年池田・染谷法律事務所入所、弁護士登録(第一東京弁護士会)。
山本 宗治
弁護士
Muneharu Yamamoto
12年京都大学法学部卒業。14年京都大学法科大学院修了。15年弁護士登録(現在、大阪弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。22年カリフォルニア大学ロサンゼルス校ロースクール(LL.M.)修了、池田・染谷法律事務所入所。
伊藤 沙条羅
弁護士
Saera Ito
10年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。13年一橋大学法科大学院修了。15年公正取引委員会事務総局入局。22年弁護士登録(第二東京弁護士会)、池田・染谷法律事務所入所。
著 者:内田清人・石井崇・大東泰雄・籔内俊輔・池田毅[編]
出版社:青林書院
価 格:6,930円(税込)
著 者:中田邦博・鹿野菜穂子[編]、染谷隆明 ほか[著]
出版社:日本評論社
価 格:3,080円(税込)