金融・租税中心のブティック型から多様な専門性を持つ総合事務所へ
設立から6年を迎える和田倉門法律事務所。当初は会社法、租税法分野を主軸とする体制だったが、他の専門性を持つ弁護士の参画や、若手弁護士の専門性の獲得によりその業務分野を着実に広げてきた。
2020年にパートナーに就任した加藤伸樹弁護士は「保険業法・銀行法など金融規制法を専門とする山本啓太弁護士が入所するなど、ワンストップでご相談を承れる総合法律事務所の形になってきたかと思います」と語る。
所属弁護士は日常の企業法務に関する相談はもちろん、訴訟に至るまで一通りの実務を担当できる能力を前提として、専門性を身につけるという同事務所。2021年にパートナーに就任した鄭一志弁護士は「クライアントのご相談内容は多分野にわたるため、逆に分野特化しすぎた知見では、不十分でしょう」と語る。
「租税法とコーポレートの両分野に通じた弁護士が所属する点、小さな規模でも派生する専門分野の弁護士が強力なチームアップで対応できる点は大きな特徴ですし、信頼をいただいている点かと思います。議論は上下関係なく実施し、どの弁護士の業務内容も把握できる環境なので、日々声かけによる知見の共有も行っています」(鄭弁護士)。
瞬発力が問われる調査・内紛事案も 豊富な経験でスピーディーに対応
事業提携や新規事業支援、M&Aや組織再生など主に大型事案に携わる鄭弁護士は、鳥飼総合法律事務所在籍時代から不祥事における社内調査や調査委員会の経験を重ねてきた。ニュースとなる大規模なもの、訴訟に発展するもの、社内調査で完結するものまでさまざまな案件に関わり、企業の内紛事案の対応実績も豊富だ。
「不正調査、第三者委員会、内紛事案等については、経験がものを言う分野です。案件を重ねることで、ご縁を呼び、多数の事案に関与してきました。現在も大型調査案件のメンバーとして参加しています」(鄭弁護士)。
内紛事案は一つの事象に対し訴訟や仮処分など法的手続が一斉に行われ、多い時には数十件を一度に処理することもあるという。
「手続を一気に行いながらシナリオを描き、株主総会での対応等なども含めてプランニングし、メリットやリスクをあわせてクライアントに提案します。内々にご依頼をいただくことが多い分野ですが、訴訟系を強みとしている専門性や、瞬発力が問われる案件に好んで関わってきた経緯から、一度ご依頼いただいた方に再度お声がけをいただくことも多いですね」(鄭弁護士)。
労働分野の専門家として日々の業務で“信頼”を重ねる
労働分野のエキスパートとして専門性を高める我妻崇明弁護士は、入所後間もなくデューデリジェンス案件における労働分野を任され、以後、同分野に注力してきた。
近年はコロナ禍による在宅勤務がきっかけの従業員のメンタルの問題や、業績悪化によるパフォーマンス不良の社員の処遇の問題が多いという。また、合同労組・ユニオンとの争議の案件も増加傾向にある。
「労働紛争は企業側の準備の時間がありません。労働審判の場合は期日が通常の訴訟より1~2週間早く慌ただしくなる傾向にあります。紛争化していない平時のときから備えることが望ましいですね」(我妻弁護士)。
クライアントから非常に信頼を得ている同事務所の他のメンバーの説明手法やサポートの姿勢に学び、自身も研鑽を積む。
「労働分野の日々の備えについても、ご相談や日常のコメントで、私も結果に残る“信頼”を得られるよう努めていきたいと思います」(我妻弁護士)。
顧客への手厚い支援が専門性に情報法改正対応も分かりやすく
加藤弁護士は、株主総会指導,企業間取引や特許、商標、著作権などを基本業務としながら、個人情報・マイナンバー対応をはじめとする情報法分野を新たな専門性として獲得し、情報処理安全確保支援士の資格も取得した。
「クライアントに通販事業者やWebサービスを実施する企業が多いことから、データ関連の情報法、広告まわりの景表法について実務を通じて身に着けていきました。2022年4月には改正個人情報保護法の施行が控えており、新設された個人関連情報にも目配りしなければなりません。データの流れを法律上どう位置付け、いかに同意を得るかについては、ウェブサイト組成のアドバイスまで必要です。関連する技術情報も含めて最新の知見を得て活かすようにしていますね」(加藤弁護士)。
共に案件を手がけることも多い我妻弁護士が「とにかくクライアントへの対応が丁寧」だという加藤弁護士。通販・Webサービス事業者の顧問先が増えたきっかけの多くは、トラブルによる駆け込み相談だったという。
「”退職者に秘密を持ち出された”“譲り受けた事業にトラブルがある”等のご相談をいただき、そのまま顧問となることも多いですね。当事務所は私以外にもさまざまな専門領域を持つ弁護士がおり、入り口はトラブル対応でも、その後幅広なご相談を承れることも大きいと思います。また、以前お付き合いのあった企業の担当者が、ご転職・ご起業後に、再度ご依頼をくださる場合もあり嬉しく感じています」(加藤弁護士)。
加藤 伸樹
弁護士
Nobuki Kato
03年京都大学法学部卒業。06年学習院大学法科大学院修了。07年弁護士登録(第一東京弁護士会)、YNM法律事務所入所。10年小岩井・桜木・櫻井法律特許事務所入所。16年和田倉門法律事務所入所。20年パートナー就任。株式会社ノンピ社外監査役。主な取扱分野はコーポレート、知的財産法、情報法など。
鄭 一志
弁護士
Kazushi Tei
02年早稲田大学法学部卒業。07年早稲田大学大学院法務研究科卒業。09年弁護士登録(第二東京弁護士会)、鳥飼総合法律事務所入所。16年和田倉門法律時事務所入所。21年ジュニアパートナー就任。主な取扱業務はコーポレート、タックス、情報法・知的財産法など。
我妻 崇明
弁護士
Takaaki Agatsuma
15年一橋大学法学部卒業。16年弁護士登録(第二東京弁護士会)、和田倉門法律事務所入所。主な取扱業務はコーポレート業務のうち、会社関係訴訟をはじめとする民事訴訟全般、労働法(労務デューデリジェンス,就業規則等の規程整備,労働組合対応を含む労使紛争など全般)、知的財産権など。
著 者:山本啓太 ほか[著]
出版社:一般社団法人金融財政事情研究会
価 格:3,850円(税込)
著 者:山本啓太・関口尊成[著]
出版社:保険毎日新聞社
価 格:2,420円(税込)
著 者:酒井克彦[編著]、内田久美子・石井亮[著]
出版社:ぎょうせい
価 格:3,520円(税込)