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個性豊かで情熱的なベンチャー企業に併走し共に成長する

「“世の中の課題を解決する新たなサービスを生み出し、さらには日本経済を引っ張っていこう”という気概を持って新たなビジネスに取り組む経営者たちはとても魅力的で、法的にサポートしているつもりが、実は我々のほうが日々、元気をもらい、多くのことを学ばせていただいています」。
弁護士法人北浜法律事務所でスタートアップ企業やベンチャー企業(以下、総称して「ベンチャー企業」という)の法務に携わる三木亨弁護士と日野真太郎弁護士、平野悠之介弁護士はそう口を揃える。もちろん、一筋縄ではいかないことも多い。例えば、ベンチャー企業は一定程度の“攻め”の判断をする場面もあり、曖昧だったり過度に保守的だったりするアドバイスを避けなければならない。また、立ち上げ直後のベンチャー企業であればコストコンシャスであり、弁護士のサポートが必要な業務とそれ以外をどのように切り分けるかを強く意識する必要がある。しかも、法務をはじめとする管理部門の体制が整い、相当程度の業務を内製化している上場企業と比べると、弁護士に求められることは多岐にわたる。しかし、三木弁護士と日野弁護士、平野弁護士ともに、それでもベンチャー法務を手がける理由を一言に集約する――「やりがいがあり、共に成長できるから」。

「まず弁護士の“使い方”から」ベンチャー法務特有の勘所

ベンチャー法務は、投資を受ける側であるベンチャー企業の相談か、投資をする側であるベンチャーキャピタルファンド(以下「VC」)や事業会社など投資家の相談かといったことに加え、シード期やアーリー期と呼ばれる初期段階から、ミドル期やレイター期といったIPOやバイアウトなどイグジットが見える段階までのうち、どの段階の相談か、国際性のある案件か、といった切り口で分けることができる。三木弁護士はベンチャー企業側・投資家側の全般、日野弁護士はベンチャー企業側のシード期以降、平野弁護士は投資家側の国際性のある相談が多く、切り口に応じて求められるリーガルサービスは異なるという。

三木 亨 弁護士

「将来的に上場を目指すのか、そうでないのかというところで大きな違いがあります。もし、上場を目指すのであれば、収益性やコンプライアンス体制など、証券取引所・証券会社の厳格な審査をクリアできるよう、早い段階から細部にわたって目を光らせなければなりません。一方、シード期やアーリー期のベンチャーに企業にとって最も重要なことは資金を有効に活用して事業を開発することであり、コンプライアンス体制の構築に費用や労力をかけすぎた結果、事業開発にブレーキをかけるようなことになってしまっては本末転倒です。コンプライアンスのみでは飯は食えません。成長していくにしたがってアドバイスの仕方を変えていくという、優先順位をつけたメリハリのあるサポートが求められます」(三木弁護士)。

日野 真太郎 弁護士

「例えば、許認可が関係する事業を扱うベンチャー企業の場合は業法上の適法性の検討が問題になり、弁護士のアドバイスの必要性は高いですが、そうでないビジネスを手がけるベンチャー企業にとっては事業を推進するための費用を削ってまで弁護士に依頼する必要がないことも少なくありません。そのため、シード期やアーリー期のベンチャー企業に対しては、コストをかけてまで弁護士に相談すべき内容であるかどうか、弁護士の“使い方”からアドバイスをすることもあります。また、ベンチャー企業は成長するにしたがって体制が整備され、シード期やアーリー期は経営株主、ミドル期は事業部門からコーポレート部門の担当者、レイター期は法務担当者といった具合に、我々に接する方が徐々に変わる傾向があるので、担当者に応じてアドバイスの仕方を変えることもあります」(日野弁護士)。

ベンチャー企業側の依頼が、事業に関わるものを含む広範な相談になるのに対し、投資家側の依頼を手がける際は、投資契約・株主間契約のレビュー、それに伴う種類株式の発行、定款変更など投資実行の際のコーポレートイシューが主となり、投資側がVCであればファンドレイズに必要になる契約書作成や許認可に関する相談などが多くなる。

平野 悠之介 弁護士

「日本企業による海外のベンチャー企業への出資や海外のVCによる日本での資金調達に関する相談を多く受けています。前者については、日本とは異なる現地の商慣習やスピード感に沿う形で案件を進めていく必要があるため、現地弁護士と密にコミュニケーションをとりながら、クライアントの意向が最大限実現されるよう努めています。後者については、例えば、クライアントが国内のVCの場合は、日本のファンド関連法制には精通しておられるケースも多いため、我々が関与させていただくのは投資契約・株主間契約のレビューといったある程度限られた範囲になる場合もありますが、海外のVCによる日本での資金調達を支援する場合は、日本のファンド関連法制を詳細に説明することに加え、日本での適格機関投資家等特例業務の届出のサポートもしたりしています」(平野弁護士)。

ベンチャー企業にとっても、投資家にとっても、ベンチャー法務特有のイシューが多く、経験を積んで“勘所”を有する弁護士でないと難しいことも多いという。

「必ずしも顧客本位とはいえない確立された慣習がある伝統的な業界に対し、顧客本位の発想に根付いた新たな風を吹き込むことを目指して参入されたベンチャー企業から、従来の業界側企業とのトラブルに発展しかけた事態の解決を求められたことがありました。従来の業界側企業の主張に分がある面もあったことから、その面については真摯に認める一方、将来の事業拡大の足枷にならないような形で話を進め、円満に収まったことがありました。先に進んでいこうというベンチャー企業に対して一旦は諫めるような形になってしまいましたが、結果的にそのベンチャー企業は着々と成長し、いまもクライアントとしてサポートさせていただいています。攻め一辺倒ではない、適切な押し引きのサポートをすることが弁護士の役割であると考えています」(三木弁護士)。

「シード期やアーリー期のベンチャー企業は、さまざまなリソースが足りない中で突き進んでいくものですから、法的には万全とはいえない契約を締結したり、必要な手続を見落としたりすることがあります。そして、そのような事象が、事後的に判明し、リカバリーのために奔走する必要が生じることもあります。弁護士の役割は、そのような事象が生じないように予防に努めるのが第一ですが、ベンチャー企業の場合、さまざまな理由で予防しきれないこともありますから、リカバリーにおいても法的に可能な限りのサポートをしたいと考えています。また、私自身は、このあたりは、投資家がベンチャー企業と協働し、またはサポートをすることも期待されるところと考えています。そのため、投資家側をサポートする場合には、投資家としてベンチャー企業をどのような点においてサポートすべきであるかや、いかなる姿勢で臨むのが望ましいかをアドバイスすることもあります」(日野弁護士)。

「イスラエルの法律事務所で研修していた縁で、現地のVCが日本企業から資金調達をする際の支援をすることがあります。イスラエルは軍需技術や大学での研究成果を利用した先進的な技術を持つベンチャー企業が活発に活動しており、世界中の投資家からの注目を集めています。近年は、イスラエルの有望なベンチャー企業への投資機会や将来的な協働の機会を得たい日本企業が現地のVCに出資するケースが増えています。また、日本企業が海外のベンチャー企業へ投資する際の手法としては、コンバーティブルエクイティなど、日本では比較的新しい投資手法が用いられることも多くあり、そのような案件の対応を通じて、我々は国際的なベンチャー法務ならではの経験・ノウハウを蓄積しています」(平野弁護士)。

ベンチャー企業と上場企業双方の考え方を理解することの大切さ

これまで挙げてきたとおり、ベンチャー法務特有の考え方や実務があることは確かであるが、企業法務全般に関する総合力なしには対応できないという。契約書レビュー、労務相談や資金調達から、知財戦略、業法に対する理解、M&A、IPO、ときには紛争案件や、海外向けにサービスを販売したりサービス開発を海外企業に委託したりするときには国際法務まで、ゼネラリスト的能力とスペシャリスト的能力が求められる分野である。同事務所のプロパー弁護士は全員、若手の頃に数年をかけてさまざまな種類の案件を通してゼネラリスト的能力を磨いた後、スペシャリスト的能力を身につけるキャリアプランに沿っており、三木弁護士と日野弁護士、平野弁護士ともにゼネラリスト的能力を磨いた上で、三木弁護士はM&A・会社法やIPO、日野弁護士はコーポレートや国際法務、平野弁護士はファンド業務や国際法務といったスペシャリスト的能力を身につけつつ、ベンチャー法務を取り扱うようになった。加えて、同事務所は、総合法律事務所として上場企業をクライアントとしていることから、これら3名の弁護士は、ベンチャー企業だけでなく上場企業の業務も広く扱っており、上場企業の考え方に精通していることも強みである。

「双方の考え方に日々触れていることは、例えばベンチャー企業への投資を検討している上場企業に契約書のレビューを求められた際、“このような項目を記載すると反発されかねない”といったことも感覚として判断できます。また、豊富に蓄積された上場企業に対する知見は、ベンチャー企業の経営にも役立つはずです。ベンチャー企業の経営者や事業は個性豊かな独自のものであるべきですが、その管理部門は、リスクを回避し、ビジネスを前進させる役割の点で、上場企業でもベンチャー企業でも求められることに大きな違いはありません。実際、上場企業の管理部門はどのような体制になっているのか、ベンチャー企業から質問されることが多くあります。上場を目指すベンチャー企業は、管理部門のあるべき姿として上場企業をお手本にしようとすることも多く、我々がそのゴールの形を理解している点も重宝されています」(三木弁護士)。

「実務では、将来的な共同技術開発だったり業務提携だったりを前提にベンチャー企業に出資しようという事業会社が、経済的には種類株式や新株予約権を利用するのが明らかに合理的であるにもかかわらず、普通株式にこだわってしまうようなことがあります。上場企業にとってベンチャー企業への投資額は他の事業に比べて小さく、弁護士の意見を求めることが少なくなりがちですが、ときに大企業同士での取引とは異なる最適解もあるため、ぜひご相談いただきたいですね。一方、近年は、ベンチャー企業で働くことの普遍化が進んだことで、会社勤めを経ずに起業する方も少なくなく、会社組織の論理に慣れていない方もいらっしゃいますが、ビジネスパートナーとして上場企業と接するからには、相手の考え方を理解することが必須です。上場企業とベンチャー企業の両方をクライアントとする我々だからこそ提供できるリーガルサービスが、結果として両者の橋渡しの一助となればと願っています」(日野弁護士)。

「大阪は中小企業の町と呼ばれることもあり、ベンチャー企業の動きも活発です。将来的には、大阪のベンチャー企業の海外進出支援から、海外企業による大阪のベンチャー企業への出資の支援まで手がけ、大阪を国際都市とするような取り組みに携わっていきたいと考えています」(平野弁護士)。

資金調達のしやすさや、シェアオフィスといったインフラなど、日本のベンチャー企業の“生態系”は世界的に見ても素晴らしいものになってきているという。2021年11月8日の「新しい資本主義実現会議」において、岸田総理も、イノベーションを担うスタートアップがより資金調達を行いやすくなるような支援策を打ち出す意向を表明している。ベンチャー・スタートアップ企業がさらなる成長を遂げられる環境が整うことは、支援する上場企業にとっても、ひいては日本経済にとっても大きなプラスとなる。
北浜法律事務所は、これからもベンチャー・スタートアップ企業と共に走り続ける。

→『LAWYERS GUIDE 2022』を「まとめて読む」
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所属弁護士等:弁護士90名、外国法事務弁護士2名、中国法弁護士1名、司法書士1名(2021年10月現在)

沿革:1973年創設。2002年東京事務所開設。2006年福岡事務所開設

過去の主要案件:企業法務全般、事業再生案件、国内外のM&A・組織再編案件、労務(使用者)関係紛争処理、株主総会対応等会社法関連案件、行政訴訟(行政側)、独禁法違反、不当表示、国内外の企業不正調査対応およびコンプライアンス対応、税務訴訟、知的財産関連訴訟、国際仲裁を含む海外紛争処理

三木 亨 氏

弁護士
Toru Miki

04年京都大学法学部卒業。06年弁護士登録(大阪弁護士会)、北浜法律事務所入所。10~12年東京証券取引所勤務。ベンチャー法務では、シード期以降のスタートアップの相談全般を取り扱い、特に上場準備会社の相談を多く取り扱う。国内ベンチャーキャピタルや事業会社、エンジェル投資家等の投資側の相談も取り扱い、他にはM&A・会社法を多く取り扱う。

日野 真太郎 氏

弁護士
Shintaro Hino

09年東京大学法学部卒業。11年東京大学法学政治学研究科法曹養成専攻修了。12年弁護士登録(第一東京弁護士会)、北浜法律事務所入所。20~21年外資系企業にて勤務。ベンチャー法務では、シード期以降のスタートアップの相談全般を取り扱い、他には紛争解決、コーポレートのほか、中国帰国子女の経歴を活かして中華圏(中国大陸・台湾・香港)を中心とした国際法務を多く取り扱う。

平野 悠之介 氏

弁護士
Yunosuke Hirano

09年大阪大学法学部卒業。11年大阪大学大学院高等司法研究科修了。12年弁護士登録(大阪弁護士会)、北浜法律事務所入所。19年コーネル大学ロースクール(LL.M)修了、イスラエルの法律事務所で勤務。21年ニューヨーク州弁護士登録。ベンチャー法務では、主に投資側の相談について、クロスボーダー案件も含めて取り扱い、他には国際法務及び国内外のM&Aを多く取り扱う。

『企業法務で知っておくべき税務上の問題点100』

著 者:米倉裕樹・中村和洋・平松亜矢子・元氏成保・下尾裕・永井秀人[著]
出版社:清文社
価 格:4,180円(税込)

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