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総勢3,500名の体制でグローバルサービスを実施

世界150か国以上の国・地域で約30万人の専門家が活躍する総合プロフェッショナルファームであるEY。その日本におけるメンバーファームであるEY弁護士法人は2022年で設立10年目を迎える。

木内 潤三郎 弁護士

同事務所のマネージングパートナーである木内潤三郎弁護士は、「EYの法律事務所ネットワークは現在90か国以上をカバーし、弁護士数は2,400人にのぼります。加えて、世界全体で1,100人ほどのパラリーガル・法律専門職も在籍しており、総勢で3,500名ほどの体制で企業のグローバル活動を支援しています」と説明する。
一般的な企業法務に属する業務としてはM&Aや組織再編、人事労務、税務関連の依頼が多く、2021年はノンコア事業を切り離して売却するカーブアウトの案件も多く扱ったという。「コロナ禍もあり、企業による事業の取捨選択が加速し、子会社や部門を切り離す企業が増える一方で、それを買収する側に回る企業も増えましたね」(木内弁護士)。
EY税理士法人との共同案件として取り組む税務紛争も年々増加しているという。「コロナ禍で国税当局の立入調査が止まったりはしましたが、世界的な税収悪化から各国が課税を強化しており、それに備えたタックスプラニングや、無駄なグループ法人の削減のためのグループ再編などに関連するアドバイスは増加しています」(木内弁護士)。
グローバルな弁護士ネットワークだけでなく、多様な資格や専門領域を持つ専門家とも協働して包括的なサポートを提供できる点もクライアントから評価される点だ。「法務や税務、IT等を縦割りにし、部署ごとに独自のアドバイザーを起用して助言を受ける体制では、“抜け・漏れ”が生じてしまうようなプロジェクトが増えています。法務については、EYのような総合ファームという選択肢がいまだ乏しいため、私たちにとってはそれが差別化要因となっています」(木内弁護士)。
問い合わせの多い海外法令の調査についても、EYならではのメリットを提供できるという。「インド等にいる、比較的フィーが安価なパラリーガルが下調べを行い、世界各地の弁護士が仕上げるという体制が整っており、コスト削減に貢献しています。新規参入のための調査のほか、法務リスク管理の前提となる“レギュレーション・マッピング”も提供しています」(木内弁護士)。

総合ファームならではの法務機能コンサルティング “LFC”で法務の地位向上を

同事務所は、一般的な法律事務所が提供していないLFC(Legal Function Consulting;企業の法務機能強化のためのコンサルティングサービス)を行っており、従前からの責任者であり、国際的金融機関の社内弁護士としての勤務経験が豊富なマイケル・ブロック外国法事務弁護士に加え、2020年に室伏康志弁護士を迎え、2022年からは日本企業での社内弁護士の経験も長い前田絵理弁護士が加わるなどチームを拡充している。

室伏 康志 弁護士

室伏弁護士は、外資金融機関のジェネラルカウンセルを17年にわたり務め、また、日本組織内弁護士協会の理事長を6年務めた経験を持ち、企業内における法務・コンプライアンス業務に精通している。
LFCは、企業の法務機能とガバナンスを強化するための現状分析や諸施策・体制構築のコンサルティングを行うサービスだ。「よく誤解をされるのですが、LFCはリーガルテックを販売するサービスではありません。コンサルティングをする中でクライアントの課題に応じたツールの選定や導入の支援を行うことはありますが、主眼はあくまでも当該クライアントの法務機能とガバナンスの強化のための施策・体制の提案と実装の支援です」(木内弁護士)。
室伏弁護士は、日本企業の法務部は優れた点も多いことも踏まえた上で「日本企業では法務部の役割に対する期待が必ずしも高いとはいえず、人員数も予算も少ない場合が多く、できることが限られていることが最大の課題」と指摘した。
欧米企業などでは、大規模なリーガル部門に多数の弁護士が所属することが一般的だ。そのため、日本企業が海外進出する際の買収や子会社設立の際に、法務の体制や文化の差異により問題が発生することが多いという。「“PMI(M&A後の統合)がうまくいかない”“現地のグループ会社に法務業務を任せきりにしている”などはその例です。本社が十分に一元的なグローバルでの法務ガバナンスを実行する体制を整備できていない、それでいて対外的には本社の法務を所管する役員が責任を負っている場合が多いのです」(室伏弁護士)。
「日本では、経営者だけでなく社会全体が、さまざまなリスクに充分に敏感でないように感じる」という室伏弁護士。海外では大規模訴訟や大きなレピュテーションリスクへの警戒が強いが、日本では訴訟も多くは小規模で、レピュテーションリスクは法務と切り離されがちだという。「ESGのような例を見ても、近年は取り上げられるようになりましたが、まだ日本社会は他人事のように捉えている人も少なくないのではないでしょうか」(室伏弁護士)。
この状況の中、室伏弁護士はLFCを通じて日本企業の法務機能の強化に貢献したいと語る。「海外企業の仕組みがすべて素晴らしいとはもちろん思っていませんし、現在は成功事例として語られる海外での企業法務の仕組みや体制も当初からうまく機能していたわけではありません。試行錯誤の積み重ねだったことを、現場でまさに長年にわたって体験してきた私やブロック外国法事務弁護士は、よく知っています。電話やメールを通じた手作業で海外子会社の情報を取得するプロセスよりも、その情報が適切・迅速な形でレポーティングされ、本社のダッシュボードで一元管理される仕組みの方が望ましいことには誰も異を唱えないでしょう。上場企業に連結財務諸表の作成が義務化されている財務分野と比較してみても、日本における法務分野のグループ管理はとても遅れています。諸外国で機能するに至った事例については、よいアイデアであれば積極的に取り入れていただきたいと考えています」(室伏弁護士)。

コロナを契機とした変化で日本の法務は強化できるか

新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、昨年はペーパーレスや捺印の省略に脚光が当たり、契約書の電子化や電子署名の導入に関心が高まった。しかし、これらのツールの実装において検討すべき課題は複数の部署にわたり、「ITベンダーだけでは包括的なソリューションは得られず、法律事務所に相談しても局所的なアドバイスにとどまり、せっかくのツールも“ポイントソリューション”に終わってしまいがち」と木内弁護士は指摘する。
同事務所では、EYの他の部門との協働により、ITツールの導入・実装に伴う内部統制やリスク管理などのオペレーションの知見を提供しているため、2021年は社内の契約書管理などを構築するプロジェクトマネジメントについての相談を受けることが多かったそうだ。

マイケル・ブロック 外国法事務弁護士

ブロック外国法事務弁護士は、リモートワークの活用は競争力強化のために不可欠である一方で、それに伴うリスクの管理には十分注意を払う必要があると語る。「社外からのリモートアクセスを可能にすることは、新たなリスク領域を生みます。今後、感染症対策や働き方の多様化の観点から、リモートワークは常態化していくでしょう。その状況下で適切なリスク管理を行い、かつ生産性を高めるためには、法務部が経営者や他部署と緊密に対話をしながら新しい統制環境とプロセスを作るしかありません」(ブロック外国法事務弁護士)。
一方で、法務部の機能が限定的であることが多い日本企業では法務部が経営者と対話し、大きな変革を起こしにくい環境にあると室伏弁護士は指摘する。「リーガルテックは“きっかけ”の一つです。こうした変革を機に、法務部が関与したからこそ紛争やトラブルを回避できた事例、余計なリスクを取らずにビジネスが進化・拡大した事例など経営側に伝え、両者が共有する成功体験を積み重ねていくべきでしょう。企業価値の保護と向上の両面において法務機能は重要であり、したがって法務部門に十分な予算を割かねばならないという判断を経営陣にしていただくことが重要です。あらゆる企業のバリューチェーンやサプライチェーンが海外に拡大している現在、“これまで大丈夫だったから今後も大丈夫”という保証はまったくありません。法務部の強化あってこそのビジネスの成功だという経営陣の認識が会社全体の発展のために不可欠なのです」(室伏弁護士)。
室伏弁護士はビジネスと法務の関係について、企業内弁護士の増加や、経済産業省の「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」、リーガルリスクマネジメントに関する国際規格であるISO31022の発行など、後押しとなる社会環境が十分あると語る。「法務のグローバル・ガバナンスの実現が簡単ではないことは、我々もよく承知しています。しかし、日本企業の法務の状況は、諸外国に比べてかなり特異です。多くの日本企業が、海外グループ会社に所属する現地弁護士との間で法務リスクに対する認識のずれはない、という確信を持てないでいるのではないでしょうか。私やブロック外国法事務弁護士が海外企業で培った経験も活かして、当面の課題解決だけでなく、中長期の目標に向けたロードマップの作成や経営陣への法務機能のプレゼンスの示し方について具体的なステップをお伝えすることで、法務部の地位向上の力になれればと思います」(室伏弁護士)。

日本企業の考え方を尊重した法務のプレゼンス強化を提案

LFCで行うコンサルティングは、企業の特性に合わせて千差万別であるとブロック外国法事務弁護士は語る。「法務機能コンサルティングにおいては、最初に“リーガル・ヘルスチェック”という調査を実施します。基本的には、法務部の現状の問題点や当事者の悩みやうまくいかない点を把握し、経営陣や事業部など他部署の方にもお話を伺いながら、法務機能の改善・向上のステップを作成していきます。その上で、当該企業の考え方やうまく機能しているところを尊重し、さまざまな機能を修正・追加するという観点で提案することが基本です。最終目的は、日本企業における法務機能の強化ですので、リーガルリスクを低減するために仕事を効率的に実施できるよう整備するだけでなく、ビジネスへの貢献を経営陣に説明できるようアドバイスをしています」(ブロック外国法事務弁護士)。
「日本でも“リーガルオペレーションズ”の概念が少しずつ認知を得てきました。法務部の中に、法務アドバイスを提供する人員のほかに、法務に関する経営情報の集約・活用やリーガルテックの導入、法務人材の育成など法務機能の運営(オペレーション)を専門とする人員を置くものです。企業の法務機能をいかに運営すべきかについては、EYは海外での知見やアドバイス事例も豊富にあるため、積極的に発信していきたいと思っています」(木内弁護士)。
最近では発信の一環としてマシュー・ウォーリー(EYロンドン)とクリス・グゼリアンの著作である『リーガル・リスク・マネジメント・ハンドブック』(日経BP、2021)を翻訳・加筆して出版した。
「書籍内では、企業がさまざまな事象をリーガルリスクに関するフレームワークにいかに具体的に当てはめ、対応し、管理するかという観点で解説しています」(木内弁護士)。
「この書籍から学ぶべき点は、法務部が経営者と対話を行い新しいプロセスを作ることです。その結果として、企業のガバナンスが機能すれば、ビジネスだけでなく社会全体へも良い影響が出る、好循環が生まれると思っています」(ブロック外国法事務弁護士)。

→『LAWYERS GUIDE 2022』を「まとめて読む」
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 DATA 

ウェブサイトhttps://www.ey.com/ja_jp/people/ey-law-co

所在地・連絡先
〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷日比谷三井タワー
【TEL・FAX】 03-3509-1661(代表)


所属弁護士等:弁護士16名、外国法事務弁護士2名(2022年1月現在)

沿革:2013年設立

取扱分野:▽国内外のM&A取引・組織再編、人事労務、独禁法、各種コンプライアンス商取引・不動産取引、税務紛争、その他の法務サービス▽法務機能コンサルティング、Legal Managed Services

木内 潤三郎 氏

弁護士
Junzaburo Kiuchi

EY弁護士法人代表・マネージングパートナー。99年弁護士登録(第一東京弁護士会)。17年The Legal 500にて日本のコーポレート・M&A第一人者(Leading Individual)評価。

室伏 康志 氏

弁護士
Yasushi Murofushi

EY弁護士法人シニアカウンセル。85年弁護士登録(第二東京弁護士会)。国際金融機関の日本におけるジェネラルカウンセルおよび日本組織内弁護士協会理事長等を務めたのちEYに参画。

マイケル・ブロック 氏

外国法事務弁護士
Michael Brock

EY弁護士法人アソシエイト・パートナー。01年イングランドおよびウェールズ弁護士登録。20年外国法事務弁護士登録(第二東京弁護士会)。法務機能コンサルティングを行い、Legal Managed Serviceの普及に尽力。

『リーガル・リスク・マネジメント・ハンドブック―ビジネスを法的損失から守るための国際的ガイド』

著 者:マシュー・ウォーリー、クリス・グゼリアン[著]、EY弁護士法人[訳]
出版社:日経BP
価 格:3,630円(税込)