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中国政府によるリスト制度の全体像

中国商務部が2026年2月24日に日本企業20社を輸出管理コントロールリストに、20社を監視リストに掲載し、更に6月29日には各リストに20社を追加したことで、中国のリスト制度に注目が集まっている。中国政府が外国企業や個人をリストに掲載し、一定の制限を与える手法は2022年から始まった。これは、特に第一次トランプ政権において、米国の商務省産業安全保障局(BIS)が公表するEntity List、Denied Persons List、およびUnverified Listや財務省外国資産管理局(OFAC)が公表するSDN List等において中国企業等が掲載され、個別の企業等がさまざまな経済的な制約を受けた流れと無関係ではない。
現時点での中国のリストは図表1のとおりである。

図表1 中国政府が制定する企業等を名指しするリストの一覧

リスト名称

根拠法

リストの制定・公布部門

反制裁リスト

反外国制裁法

外交部、商務部

信頼できないエンティティリスト

信頼できないエンティティリスト規定

商務部

輸出管理コントロールリスト

輸出管理法
両用品目輸出管理条例

商務部

監視リスト
悪意のあるエンティティリスト

反外国不当域外管轄条例

不明

各リストの2022年以降の公表件数の推移は図表2のとおりである。傾向としては、2025年以降は輸出管理コントロールリストや監視リストが多用されており、一方で反制裁リストや信頼できないエンティティリストの公表頻度は低下している。これは中国政府が輸出管理を外国企業に対する締め付けの手段として重視していることを示唆する。とはいえ、リストごとの意味合いや法的な効果は異なっており、反制裁リストも今後も引き続き運用されると思われる。

図表2 各リストの公表数の推移※

 

2022

2023

2024

2025

2026
(9月末まで)

累計

反制裁リスト

1

2

12

5

3

23

信頼できないエンティティリスト

0

1

2

10

0

13

輸出管理コントロールリスト

0

0

0

6

5

11

監視リスト

0

0

0

0

2

2

悪意のあるエンティティリスト

-

-

-

-

0

0

※ アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業の調査結果による。公表ベースの数値であり、他に特に2022年等反外国制裁法の運用の初期には公表されていないリストも存在する(本稿における各種データも同様)。撤回・暫定停止されているリストを含む。悪意のあるエンティティリストは2026年4月公布の反不当域外管轄条例に基づくものであるため、施行前は「-」と記載している。


輸出管理法・両用品目輸出管理条例に基づく監視リストは、2026年になって運用が開始されたが、本稿執筆時点において2件のみで、対象は日本企業のみである。監視リストにはさまざまな業種の企業がリストされており、掲載理由が不明な企業も多い。結果として、監視リストの「予備軍」たる日本企業も多いはずであり、日本企業に対する潜在的な圧迫的効果が強いといわざるを得ない。

反外国制裁法注1)

規制の概要

2021年6月10日に公布・施行された反外国制裁法は、外国の政府・企業・組織や個人が中国の安全・利益を侵害する場合を念頭に、対抗措置を幅広く規定した基本法である。同法のポイントは次のとおりである。

・ 中国政府は、外国の国家が国際法と国際関係の基本準則に違反し、各種の口実または当該国の法律に基づき中国に対して抑制と圧迫を行い、中国の公民、組織に対して「差別的な制限措置」をとり、中国の内政に干渉する場合、相応する「反制裁措置」を講じることができる(3条2項)。

・ 中国政府は、差別的な制限措置の制定、決定、実施に直接または間接的に関与した個人、組織を「反制裁リスト」に掲載することができる(4条)。

・ 中国政府は、外国国家による差別的な制限措置に対してのみならず、外国組織や個人が「中国の主権、安全、発展利益を損なう行為を実施、協力、支持」する場合も反制裁措置の対象とする(15条)。

・ 中国の組織や個人は、「反制裁措置」を実行する義務を負い、これに違反した組織や個人は処分の対象となる(11条)。

・ 中国の組織や個人は、外国の差別的制限措置を実行しまたは協力した組織や個人(外国企業を含む)に対して、権利侵害を理由に反外国制裁法に基づき中国の人民法院に直接提訴し、損害賠償請求や侵害行為の停止を求めることができる(12条)。

反制裁リスト掲載の組織・個人に対する具体的な「反制裁措置」の種類としては、以下の措置がありうる(6条)。運用としては、個別の決定において、いかなる具体的措置を講じるか個別に列挙されている。

● 反制裁リスト掲載組織・個人に対する具体的措置の種類

① ビザの発給拒否・取消、入国禁止、国外追放

② 中国の動産・不動産およびその他各種財産の差押え・押収・凍結

③ 中国の組織・個人との関連取引・提携等の活動の禁止または制限

④ その他必要な措置

2025年3月24日に「反外国制裁法の実施に関する規定注2)」が国務院により公布・施行された。同規定は反外国制裁法の実施に関して詳細な内容を定めるものであり、上記の「(4)その他必要な措置」に次の措置が含まれるものとして具体化した(9条)。

●「(4)その他必要な措置」の内容

・ 中国に関連する輸出入活動の禁止または制限

・ 中国における投資の禁止または制限

・ 関連品目の輸出禁止

・ データ・個人情報の提供の禁止または制限

・ 中国における就労許可・滞在・居留資格の取消または制限

・ 過料

更に、同規定では反制裁措置の実施義務を遵守しない者に対して次の措置を講じることができるとされている(同規定13条)。

● 反制裁措置を遵守しない者に対する措置

・ 政府調達、入札・応札の禁止または制限

・ 関連する貨物・技術の輸出入またはサービス貿易等の禁止または制限

・ データ・個人情報を中国外から受領し、または国外に提供することの禁止または制限

・ 中国からの出国、中国での滞在・在留の禁止または制限

反制裁リストの運用動向

反制裁リストは2022年末の運用開始以降、活発に運用され、特に2024年に運用が急増したが、その後、輸出管理法等に基づくリストの運用が活発化したことにより、反制裁リストの掲載企業等の数は相対的に減少している(図表3)。

図表3 反制裁リストに掲載された組織・個人数の推移※

※ 後述のハンファオーシャンに対する商務部公告2025年第6号については子会社も含め1件5社とカウントし、また、外交部令が公表されていないが2024年1月7日付けで外交部スポークスマンが公表している米国企業5社に対する反制裁リストを1件5社としてカウントしている。

反制裁リストに掲載された組織および個人の大部分は、米国企業および人権組織やその関係者である。対象となった企業・組織・個人を国籍別にみると、本稿執筆時点では以下のとおりであり、米国が圧倒的多数を占める(図表4)。日本については、これまで企業や組織はリストに掲載された例はないが、国会議員を含む個人が3人、2025年9月以降掲載されている。

図表4 反制裁リストに掲載された企業・組織・個人の国籍

反制裁リストに掲載された組織や個人にはいくつかの類型があるが、全体としては政治色が強い傾向がある。たとえば台湾に武器を売却したメーカー、台湾の「分裂活動」に関与したとされる者、チベットや新疆ウイグル自治区に関連する活動を行った者、ロシアに対する制裁を実施したとされる企業、また個人では、これらの企業や組織の関係者、外国政治家、政府高官、規制当局関係者等である。
反制裁リストに関して特徴的であったのは、2025年10月14日に公表された韓国ハンファオーシャン(以下「ハンファ」という)の米国子会社に対する制裁注3)の実施である。同措置は、米国による中国の海事・物流・造船業に対する通商法301条に基づく調査への対抗措置であることを商務部が明言したものであり、ハンファの米国子会社5社が調査に協力および支持したとして反制裁リストに掲載された。その結果、当該5社に対して、中国の組織・個人との関連取引・提携等の活動が禁止された。ハンファの米国子会社としては米国政府の調査に協力せざるを得なかったことは想像に難くなく、米中対立の板挟みになった典型的事案と思われる。
企業に対する具体的な反制裁措置の内容としては、中国の組織・個人との関連取引・提携等の活動の禁止の他、中国の動産・不動産およびその他各種財産の差押え・押収・凍結もありうる。中国企業との取引が少ない米国の軍事企業であれば痛手ではないかもしれないが、中国ビジネスを行う日本企業に対する措置が出た場合には、極めて厳しい効果が生じることとなる。
日本政府は現状防衛産業強化へ向けた各種政策を推進しており、中国がこれに強く反発する状況が続いているが、その中で日本企業が何らかのきっかけで反制裁リストに掲載されることが懸念される。

反外国制裁法に基づく訴訟

上述のとおり、反外国制裁法では、中国の組織や個人は、外国の差別的制限措置を実行等した外国企業等に対して、中国の人民法院に直接提訴し、損害賠償請求や侵害行為の停止を求めることができるものと定められている(12条)。
この点に関する裁判例は、複数存在する。この内、最高人民法院が2026年6月に公表した事例注4)は注目に値する。
2022年に香港の荷送人がシンガポールの海運会社(運送人)に対して電子製品を上海からパナマに運送することを委託したところ、貨物の船積後、荷送人が某国の制裁リストに掲載された。その後、運送人は船荷証券の発行を拒絶し、またパナマへの運送を取りやめ上海港に返送した。これに対して荷送人は上海海事法院に提訴し、損害賠償を請求した。判決では、反外国制裁法が強行規定として当事者の合意に優先するものとし、運送人が外国の差別的制限措置の実行やその協力を行うことを禁止する反外国制裁法12条に違反し、外国の制裁措置の遵守が違約責任を免れさせないと認定し、損害賠償責任を認めた。
本件は、最高人民法院が当該判決を「模範」的な典型事例であるとして公表したことに意味があり、また、最高人民法院が「産業チェーン・サプライチェーンの安定性と予見可能性を実質的に維持した」事案であると評価している点も注目に値する。また、香港法人も反外国制裁法による保護を受けることを明確にした点も留意を要する。

信頼できないエンティティリスト規定注5)

規制の概要

「信頼できないエンティティリスト規定」は、反外国制裁法よりも早く、2020年9月19日に公布・施行された法令であり、外国組織や個人をリストに掲載することを内容とする最初の法令である。同規定は、2019年の米国のウイグル人権政策法や香港国家安全維持法制定に対する米国の制裁措置等に中国が反発する中で公布された経緯がある。反外国制裁法が国務院レベルの法令(行政法規)であるのに対して、信頼できないエンティティリスト規定は商務部の部門規章であり下位規定にあたる。同法のポイントは次のとおりである。

・ 中国政府は、以下の行為に対して、相応の措置を講じる。

① 中国の国家主権、安全、発展利益に危害を及ぼす行為

② 正常な市場取引原則に違反し、中国企業等との正常な取引を中断し、または中国企業等に対して差別的措置をとり、中国企業等の合法的な権益に深刻な損害を与える行為

・ 中国政府の管轄機関は、中国の国家主権、安全、発展利益に対する損害の程度、中国企業その他の組織または個人の適法な利益に対する損害の程度、国際的に通用している経済貿易ルールとの合致の有無等の要素を考慮し、外国組織や個人を、信頼できないエンティティリストに掲載する(7条)。

信頼できないエンティティリストに掲載される組織・個人に対して講じられることのある措置は、次のとおりである(10条)。

● 信頼できないエンティティリスト掲載組織・個人に対する具体的措置の種類

① 中国に関連する輸出入活動の制限または禁止

② 中国国内における投資の制限または禁止

③ 関係者・交通輸送手段等の入国の制限または禁止

④ 関係者の中国国内における就労許可・滞在または居留資格の制限または取消

⑤ 情状の軽重に基づく相応な金額の過料

⑥ その他必要な措置

上記のとおり、信頼できないエンティティリスト規定では過料(行政罰)の賦課が可能とされているのに対して、反外国制裁法に基づく反制裁措置では過料の賦課についての言及はなかった。ただ、2025年の「反外国制裁法の実施に関する規定」において、反外国制裁法に基づいても過料を科すことができるものと明言され、リスト掲載の効果についての実質的な相違はほぼ解消された。

信頼できないエンティティリストの運用動向

信頼できないエンティティリストの公表数の推移は以下のとおりである(図表5)。2025年には10件の公表で合計76社が掲載されたが、2026年は本稿執筆時点までに公表がなく、運用が沈静化しているようにみえる。

図表5 信頼できないエンティティリストに掲載された組織数・個人数の推移※

※ 2025年10月9日の信頼できないエンティティリストに掲載されているTechInsights社はグループとしては1社であるが、本統計では日本を含む10社を個別に計算に入れている。

信頼できないエンティティリストの最初の掲載事例は、2023年2月16日のロッキードマーティン社およびレイセオン社をリストに掲載した件である注6)。同案件では、対象企業に対し、①中国に関連する輸出入活動の禁止、②中国国内における新規投資の禁止、③高級管理職の入国禁止・中国国内での就労許可・滞在・居留資格の不許可および取消に加え、④同規定が施行された2020年9月19日以降に対象企業が台湾軍への販売額の2倍の過料を科した。同規定に基づいて金銭的な過料を科した事案は、同事案以降、見られない。
同リストに掲載された企業はほぼ米国企業であるが、中には、カナダのテックインサイツ(TechInsights)社の日本、韓国、EUなど10の法域の子会社が指定されたケースもある。大部分は軍事関連または軍事転用技術を有する企業であるが、米国のアパレル大手PVH社や遺伝子検査機器メーカーのイルミナ社も含まれている。PVH社については新疆関連製品での中国企業に対する差別的取扱いが原因となったようであり、軍事関連のみではなく、いわゆる人権問題でのビジネス上の対応を行った企業も対象とされたことは注目に値する。
反制裁リストと信頼できないエンティティリストの使い分けは、概念的には中国に対する外国政府による制裁に関与した企業や個人に対しては反制裁リストが、ビジネスにおいて中国企業に対して市場取引原則に反する差別的取扱いを行った企業に対しては信頼できないエンティティリストが適用される。すなわち、前者は政治性が高いが、後者は商取引やサプライチェーンへの圧力として働きやすい関係にある。ただし、実際には対象とされる企業が重複することも多く、実例としても、防衛・通信・半導体・監視技術に関する産業等では重複掲載されている企業も数多く存在する。両リストは効果も類似しているため、重複掲載による実際的な影響は限定的なことも多い。

日本企業は、これまでのところ上記の反制裁リストや信頼できないエンティティリストに掲載されたことはないが、今後の動き、例えば日本政府が2026年12月に改訂を想定しているいわゆる安保3文書を踏まえた中国政府の動きには、特に防衛装備品事業を行う企業は注視が必要であろう。

→この連載を「まとめて読む」

  1. 反外国制裁法(反外国制裁法)、主席令第90号、2021年6月10日公布・施行。[↩]
  2. 「中華人民共和国反外国制裁法」の実施に関する規定(实施〈中华人民共和国反外国制裁法〉的规定)、国務院令第803号、2025年3月24日公布・施行。[↩]
  3. 「ハンファオーシャンの五つの米国関連子会社に対する反制裁措置の決定(关于对韩华海洋株式会社5家美国相关子公司采取反制措施的决定)、商務部公告2025年第6号、2025年10月14日発表。[↩]
  4. 最高人民法院が2026年6月24日に発表した「2025年の全国海事審判典型案例」案例6(反外国制裁法を適用して一方的制裁を阻止し、国際海上貨物輸送の秩序を維持した事例)。[↩]
  5. 「信頼できないエンティティリスト規定(不可靠实体清单规定)」、商務部令2020年第4号、2020年9月19日公布・施行。[↩]
  6. 「Lockheed Martin Corporation及びRaytheon Missiles & Defenseを信頼できないエンティティリストに列挙する公告(关于将洛克希德·马丁公司、雷神导弹与防务公司列入不可靠实体清单的公告」、商務部公告2023年第1号、2023年2月16日発表。[↩]

中川 裕茂

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 東京オフィス 弁護士・ニューヨーク州弁護士

クロスボーダーでの企業法務を幅広く取り扱っており、特に中国メインランド・台湾・香港その他アジア各国に関連する投資案件、経済安全保障分野、独禁法、企業不祥事対応、各種調査事案、内部通報対応、アンチダンピング等の通商問題、国際仲裁及び訴訟に関する助言について豊富な経験を有する。日本経済新聞「企業が選ぶ弁護士ランキング」にも頻繁にランクインしている。

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