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はじめに

2025年初頭、シンガポールの投資ファンドである3Dインベストメント・パートナーズが、NTT都市開発リート投資法人および阪急阪神リート投資法人に対して、同意なき公開買付けを開始したことは記憶に新しい。これらの公開買付けは、いずれも買付け予定数の下限に達せず不成立となったが、上場するJ-REITのNAV倍率は1倍を下回っている例が多く、引き続き、投資や資産規模の拡大・効率化等を目的とした買収・再編のニーズがあろう。また、我が国における私募REITの投資法人数は60に増加しており注1、こちらについても、今後、統合や再編が進む可能性がある。
ここでは、こうした不動産REITスキームに用いられる投資法人(以下、「不動産投資法人」という)のM&A(買収や事業再編)を取り上げる。

不動産投資法人と資産運用会社、スポンサーの関係

そもそも投資法人は、投資信託及び投資法人に関する法律(以下、「投信法」または「法」という)に基づき設立された、投資のためのビークルである(投信法2条1項および12項)。資産の運用以外の行為を営業として行うことはできず、本店以外の営業所を設けたり、使用人を雇用したりすることもできない(法63条1項および2項)。
また、資産の運用に係る業務を自ら行うこともできず、それを金融商品取引業者である資産運用会社に委託しなければならない(法198条1項、199条)。

J-REITにおいては、投資法人から資産運用業務を受託する資産運用会社の株主が、「スポンサー」として、不動産投資法人の資産運用に主導的に関与することも多い。
このスポンサーは、資産運用会社および不動産投資法人との間でスポンサーサポート契約を締結し、不動産投資法人に対する物件のパイプラインとなるとともに、物件情報や人材の提供、資金調達支援等を合意していることが一般的と理解される。また、スポンサーは、投資主と利害を共有すべく、不動産投資法人の投資口の一定割合を保有している場合も多い(セイムボート出資)。

図表1 REITスキームの概念図

不動産投資法人のM&A

スポンサーチェンジ

不動産投資法人の買収や事業再編に係る手法としては、その資産運用に主導的な役割を果たすスポンサーの交代(いわゆる「スポンサーチェンジ」)が挙げられる。既存のスポンサーとの合意に基づき、資産運用会社の株式を取得してスポンサーチェンジすることにより、不動産投資法人の運営を掌握できる場合が多い(完全にスポンサーが交代する場合のみならず、株式の一部を譲り受けてスポンサーに加わる例や、一部のスポンサーが株式を譲渡して退出する例も見られる)。

近時の上場投資法人におけるスポンサーチェンジの事例としては、以下のようなものがある。

図表2 近時の上場投資法人におけるスポンサーチェンジの事例

時期 投資法人 スポンサーチェンジの内容
2022年4月 産業ファンド投資法人 スポンサーであった三菱商事株式会社およびユービーエス・アセット・マネジメント・エイ・ジーが、その保有する三菱商事・ユービーエス・リアルティ株式会社(資産運用会社)の株式をKKR&Co.Inc.に譲渡。
2022年11月 日本リート投資法人 スポンサーであった双日株式会社が、その保有する双日リートアドバイザーズ株式会社(資産運用会社)の株式のすべてをSBIファイナンシャルサービシーズ株式会社に譲渡。
2023年12月 大江戸温泉リート投資法人(現日本ホテル&レジデンシャル投資法人) スポンサーであった大江戸温泉物語株式会社が、その保有する大江戸温泉アセットマネジメント株式会社(資産運用会社)の株式のすべてをアパホールディングス株式会社に譲渡。

合併

投信法は、投資法人どうしの合併に関する定めを置いており(法145条~150条)、経営状態の改善や成長機会の確保等を目的として合併が行われることがある(なお、会社分割や株式交換、株式移転に相当する制度は設けられていない)。
近時では、森トラスト総合リート投資法人と森トラスト・ホテルリート投資法人の合併(2023年3月1日効力発生)、ケネディクス・オフィス投資法人、ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人およびケネディクス商業リート投資法人の合併(2023年11月1日効力発生)、三井不動産ロジスティクスパーク投資法人とアドバンス・ロジスティクス投資法人の合併(2024年11月1日効力発生)等の事例がある。

投資口の譲渡・公開買付け

投資法人の投資口は、株式会社の発行する株式と同様に譲渡可能であり、上場投資法人においては、公開買付けを通して投資口の買付け等が行われることもある。
冒頭に述べたとおり、2025年初頭には、シンガポールの投資ファンドである3Dインベストメント・パートナーズが、NTT都市開発リート投資法人および阪急阪神リート投資法人に対して、同意なき公開買付けを開始した(いずれも買付け予定数の下限に達せず、不成立)。
このほかにも、2021年4月に開始された、スターウッド・キャピタル・グループによるインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人への公開買付け(スポンサーグループによる対抗公開買付けの情報開示を受けて、買付予定数の下限に達せず不成立となった。その後、スポンサーグループによる公開買付けおよび非公開化が行われている)、2022年5月および9月に開始された日本再生可能エネルギーインフラ投資法人およびタカラレーベン・インフラ投資法人に対する非公開化を前提とした公開買付け(いずれも成立し、非公開化された)等の事例がある。

不動産投資法人の買収や事業再編にあたっては、こうしたスポンサーチェンジ、合併、投資口の取得等の手法から、目的等に応じて適切なものを選択することになる。以下では、それらの概要および法的留意点を解説する。

資産運用会社の株式取得によるスポンサーチェンジ

スポンサーチェンジの方法

既に述べたとおり、不動産投資法人は、その資産運用業務を資産運用会社に委託しているところ、そうした資産運用会社の株式の全部または一部を既存の株主(スポンサー)から譲り受けることにより、新たにスポンサーの地位を得て、不動産投資法人の運営を掌握し、資産運用に主導的に関与することができるようになることをスポンサーチェンジという。
一般に、資産運用会社は、会社法に基づき設立された株式会社であり、非上場の譲渡制限会社であるため、新たにスポンサーとなろうとする者は、資産運用会社の取締役会による譲渡承認決議を経て(会社法136条)、既存のスポンサーから資産運用会社の株式を取得することになる。

法的留意点 - 契約や許認可等の関係

スポンサーチェンジが行われる場合、新スポンサーと不動産投資法人および資産運用会社の間で、新たなスポンサーサポート契約を締結することが考えられる。また、既存のスポンサーと新スポンサーがともに資産運用会社の株主となる場合には、これら複数のスポンサーの間で、資産運用会社の株式の譲渡制限や運営等に関する株主間契約の締結を検討することになろう。

不動産投資法人が資金調達にあたりレンダーと締結した契約において、いわゆるチェンジ・オブ・コントロール条項が定められている場合、企図されるスポンサーチェンジがそれに該当するかを確認し、必要に応じてレンダーの承諾を取得する等の対応をとることになる。

資産運用会社は、投資運用業の登録をしていることから、スポンサーは金商法の主要株主規制を受ける(金商法32条1項)。すなわち、新スポンサーが、資産運用会社の主要株主(原則として、総株主等の議決権の100分の20を保有している者をいう。金商法29条の4第2項)となった場合には、新スポンサーは対象議決権保有届出書を、遅滞なく、管轄財務局長等に提出しなければならない(金商法32条1項、金融商品取引業等に関する内閣府令(以下「金商業等府令」という)36条)注2。既存のスポンサーが主要株主でなくなった場合にも、届出が必要である(金商法32条の3第1項)。

その他、投資法人が上場している場合や、スポンサーが上場会社である場合には、適時開示や臨時報告書の提出等が必要となるときがあり、留意が必要である注3

不動産投資法人の合併

吸収合併と新設合併

投資法人の合併には、株式会社の合併と同様、消滅する投資法人の権利義務の全部を存続する投資法人が承継する吸収合併(法147条1項)と、合併に際して新たに法人を設立し、当事者の権利義務の全部を新設法人に承継させる新設合併(法148条1項)がある。 吸収合併の場合、存続する投資法人は、一般に設立に関する届出(法69条1項)や資産運用に関する登録(法187条)を終えていることから、改めてこれらを行う必要がないのに対し、新設合併の場合は、新設される投資法人にて、これらの手続が必要である。 また、吸収合併の場合、存続する投資法人が既に上場していれば、基本的には吸収合併後もその上場が維持されるのに対し、新設合併の場合には、当事者である投資法人が上場している場合にも、新たに設立される投資法人を上場させるための手続が必要となる(上場規程1207条、テクニカル上場)。 よって、吸収合併の方が手続的な負担は小さい場合が多いといえよう。

以下では、原則として吸収合併を念頭に置いて、その手続等について述べる。

図表3 吸収合併と新設合併

形態 設立届出・資産運用
に関する登録
上場関係
吸収合併 消滅する投資法人の権利義務の全部を存続する投資法人に承継させる 手続不要 上場維持
新設合併 消滅する投資法人の権利義務の全部を新たに設立する法人に承継させる 手続必要 テクニカル上場の手続必要

吸収合併の手続

(1) 吸収合併契約の締結と投資主総会による承認

吸収合併にあたっては、法定事項(当事者の商号および住所、消滅法人の投資主に対して交付される存続法人の投資口の口数またはその算定方法等)を定めた吸収合併契約を締結しなければならない(法147条)。
吸収合併契約には、合併の本質や強行規定に反しない限り、その他の事項を規定することもできる。たとえば、吸収合併の効力発生に先立って投資口の分割または第三者割当等が行われる場合や、吸収合併に関してレンダーや業務受託者等の承認を要する場合、吸収合併に伴って規約の変更等を要する場合等には、それらに関する事項が定められることがある。
吸収合併の当事者は、効力発生日の前日までに、吸収合併契約について投資主総会の承認を受けなければならない(法149条の2第1項、法149条の7第1項)。
存続法人においては、簡易合併の手続により、投資主総会における承認決議を省略することができる場合があるが(法149条の7第2項)、消滅法人ではそれを省略できない。

(2) 反対する投資主の買取請求権

存続法人は、吸収合併の効力発生日の20日前までに、その投資主に対して、吸収合併する旨ならびに消滅法人の商号および住所を通知または公告しなければならない(法149条の8第2項および第3項)。消滅法人も、同じ時期までに、①その投資主および新投資口予約権者に対しては、吸収合併する旨および存続法人の商号および住所を、②その登録投資口質権者および登録新投資口予約権者に対して吸収合併する旨を、通知または公告(保管振替口の場合には公告)しなければならない(法149条の2、149条の3および149条の3の2の各2項および3項、社債、株式等の振替に関する法律(以下、「振替法」という)233条2項)。
吸収合併に反対する投資主は、投資主総会に先立って反対する旨を通知し、かつ、投資主総会において反対することにより、自己の有する投資口を公正な価格で買い取るよう請求することができる(法149条の3第1項、法149条の8第1項)。ただし、存続法人において簡易合併が行われる場合には、買取請求権は認められないと考えられている注4
効力発生日から30日以内に協議が調わない場合には、投資主または投資法人は裁判所に対して価格決定の申立てをすることができる(法149条の3第4項、会社法786条第2項)。価格決定申立事件の過去事例としては、東京地決平成24年2月20日(金判1387号32頁)があり、そこでは、買取請求前の1か月間の投資口価格の終値による出来高加重平均値をもって算定するのが相当とされている。

(3) 債権者保護手続

吸収合併の当事者は、効力発生日の1か月前までに、吸収合併する旨、相手方の商号・住所、債権者が一定期間内に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ知れたる債権者に個別に催告しなければならない(法149条の4第2項、149条の9)。株式会社における「W公告」と同様、規約に定める公告方法が日刊新聞または電子公告の場合であって、官報とあわせてこれらの方法による公告を行うときには、個別催告を省略できる(法149条の4第3項、149条の9)。
債権者が期間内に異議を述べた場合には、その債権者に対して、原則として、弁済もしくは相当の担保の提供、または信託会社等に相当の財産を信託しなければならない(法149条の4第5項、149条の9)。

(4) その他の手続

事前および事後の備置書類についても、株式会社の合併と同様の規律が置かれている(法149条、149条の6、法149条の10)。
また、存続法人または消滅法人が上場している場合、合併契約の締結等については、直ちにその内容を適時開示しなければならない(上場規程1213条2項1号a(d))。また、東京証券取引所に対しては、関連書類の提出が必要である(上場規程1214条1項、上場規程施行規則1230条2項3号)。振替機構に対しても、所定の手続を行わなければならない(振替法228条、138条1項等)。
行政庁への届出として、消滅法人は、効力発生日から30日以内に、管轄財務局長等へ廃業届出を、国土交通大臣にはみなし宅建業者の廃業届出をしなければならない(法192条1項1号、宅建業法77条の2第2項、11条1項2号)。

法的留意点

(1) 合併対価の柔軟化

株式会社が合併する際には、いわゆる合併対価の柔軟化が認められており、存続会社は、消滅会社の株主に対して、金銭のみを交付することも可能である。これに対して、投資法人の合併に際しては、合併対価の柔軟化は認められておらず、合併比率の調整に伴い、投資口の交付に付随して金銭の交付を行うこと等はできるものの、金銭のみを交付する合併を行うことはできない(2009年1月20日付金融庁「パブリックコメントの概要及びパブリックコメントに対する金融庁の考え方」44頁参照)。

(2) 端投資口の取扱い

投資法人の合併により、消滅法人の投資主に交付される存続法人の投資口に端数が生じた場合、その端数の合計数に相当する口数の投資口を所定の方法で売却し、その端数に応じて売却代金を交付することになり、存続法人が上場しているときには、その売却方法は取引所金融商品市場における売却となる(法149条の17、同法施行規則199条1号)。株式会社の場合には、売却日の終値による売却も可能であるが(会社法施行規則50条2号)、投資法人においては、この方法は認められていない。
吸収合併の結果として端投資口が大量に発生し、市場での売却を要する場合には、投資口価格の下落要因となると考えられ、吸収合併に際して投資口を分割したり、合併交付金を用いたりするといった方法により、端数の発生を回避または抑制することが考えられる。

(3) 規約の変更や資産運用会社との資産運用委託契約の解約

吸収合併において、消滅法人のポートフォリオに含まれている不動産に、存続法人の投資対象とされていない種類の物件が含まれているような場合、存続法人の規約や資産運用会社のガイドラインの変更を要することがある。存続法人の規約の変更には、その投資主総会の特別決議による承認が必要となる(法140条、93条の2第2項3号)。
また、吸収合併前には、存続法人および消滅法人が、それぞれ資産運用会社と資産運用委託契約を締結しているところ、吸収合併により存続法人が消滅法人の当該契約およびそれに付随する権利義務を承継してしまうと、存続法人は二つの資産運用会社との間で資産運用委託契約を併存させることになってしまう。これを回避するため、一方の資産運用委託契約の解約を要する場合があり、それは、原則として投資主総会の決議を経て行う必要がある(法206条1項)。
また、資産運用に必要な資料やデータ等が存続する資産運用会社に承継されるよう、適切なアレンジを行う必要があろう。近時の合併事例のうち、三井不動産ロジスティクスパーク投資法人(存続法人)とアドバンス・ロジスティクス投資法人(消滅法人)の合併に際しては、消滅法人の資産運用会社から存続法人の資産運用会社に対して、資産運用事業の会社分割(吸収分割)が行われ、当該事業に係る権利義務が存続法人の資産運用会社に包括的に承継されている注5

不動産投資法人の投資口の譲渡・公開買付け

投資口の譲渡

投資法人の投資主は、その保有する投資口を譲渡することができ、投資法人は、投資口の譲渡について、役員会の承認を要件とする等の制限を設けることができない(法78条1項および2項)。

公開買付け規制

株券等について有価証券報告書を提出しなければならない発行者の株券等について、一定の買付け等を行う場合には、金商法による公開買付けが強制される(金商法27条の2第1項)。投資証券および新投資口予約権証券も、公開買付けの対象となる「株券等」に含まれる(金商法施行令6条1項3号)。
公開買付けが強制される買付け等とは、60日間で10名超の相手方から市場外取引による買付け等により、買付け等の後の株券等所有割合が5%を超える場合(金商法27条の2第1項1号)、市場外における買付け等により、買付け等の後における株券等所有割合が3分の1を超える場合(同項2号)などである。なお、今般の金商法改正(令和6年法律第32号、同年5月22日公布)により、市場内取引(立会内)が公開買付け規制の適用対象に加わるとともに、公開買付けが強制される議決権割合が30%に引き下げられることとなっており、これは2026年5月1日に施行される予定である。
公開買付けを行う場合、公開買付け者は、公開買付開始公告を行ったうえで(金商法27条の3第1項)、公開買付価格、買付予定の株券等の数、公開買付期間その他の条件、公開買付の目的等を記載した公開買付届出書を関東財務局長に提出しなければならず(金商法27条の3第2項)、それはEDINETを通じて公開される。対象者である投資法人は、公告の日から10営業日以内に、公開買付けに関する意見の内容および根拠を記載した意見表明報告書を提出しなければならない(金商法27条の10第1項)。
そのほか、不動産投資法人の投資証券に対する公開買付けにも、株式会社の株券に対する公開買付けと同様の規制が及ぶ。

法的留意点

(1) 対象投資法人役員の利益相反

上場投資法人のスポンサーが、当該投資法人の非公開化を目指して公開買付けを行うような場合、スポンサー側は極力安い価格で投資口を取得したいのに対し、投資主は極力高い価格で投資口を売却したいという意向を持つ。
特に、対象投資法人の役員がスポンサーまたはその傘下にある資産運用会社の役職を兼任しているような場合には、当該投資法人の役員は投資主の利益の最大化を図るべきという要請と、スポンサーの利益の最大化を図るべきという要請の両方を帯び、対象投資法人および投資主との間で利益相反状態が生じることになる。
また、第三者が上場投資法人の投資口について同意なき買収を行う場合にも、投資法人の役員は自己の地位(さらには、スポンサー、その傘下にある資産運用会社および投資法人の地位)を守るインセンティブが働きやすく、利益相反状態が生じることがある。

特に、前者のような構造的利益相反を踏まえた対応としては、対象投資法人においては、経済産業省が公表した「公正なM&Aの在り方に関する指針」(2019年6月28日付)の内容等も踏まえ、投資主の利益を保護するための公正性担保措置をとったうえで、十分な交渉を行うことが重要となろう。

株式会社における一般的な実務と同様、独立した法務アドバイザーの助言を得たり、独立した特別委員会を設置して答申書を得たりするといった方法も考えられる。たとえば、スポンサーによる非公開化を目指し公開買付けが行われた日本再生可能エネルギー投資法人およびタカラレーベン・インフラ投資法人の例では、各対象投資法人から独立した特別委員会の設置および当該委員会からの答申書の取得、第三者算定機関からの投資口価値算定書の取得等の公正性担保措置が講じられている。
不動産投資法人においては、保有資産の鑑定評価に基づくNAV(Net Asset Value)が公表されているところ、不動産投資法人は純粋な投資のためのビークルであるため、NAVを超える価格での買付けに反対の意向を示す場合には、その根拠や論理について、一般の事業会社における事案以上に十分な検討が必要となろう。
他方で、NAVに満たない買付価格については、その公正性には一定の疑義が生じることになり、対象投資法人による賛同の意見表明には慎重な検討を要するという指摘もある注6

(2) 導管性の維持

投資法人は、一定の要件を満たせば、課税所得の計算上、投資主へ支払う配当等の額を損金に算入することができる(「導管性」と呼ぶ。租税特別措置法67条の15)。
この導管性を維持するためには、当該事業年度終了時において、投資主の1人およびこれと特殊な関係のある者が有する投資口(または議決権)が50%を超えないことが要件となっており(同条1項2号ニ)、公開買付けの実施後、当該事業年度終了時に、公開買付者およびそれと特殊の関係のある者が有する投資法人の投資口が50%を超えていた場合には、導管性を失う可能性があると考えられる。これは、投資法人の財務状況や投資主への配当等に重大な影響を与える事情であり、留意が必要である。

→この連載を「まとめて読む」

[注]
  1. 一般社団法人不動産証券化協会「私募リート・クォータリーNo.39(2025年6月末基準)」(2025年7月31日)[]
  2. 株式取得の結果、資産運用会社の総株主等の議決権の過半数が他の一の法人その他の団体によって保有されることとなった場合には、資産運用会社は、遅滞なくその旨の届出書を、金融庁長官等に提出しなければならない(金商法50条1項6号、65条の4、金商業等府令201条6号、1条4項4号)。新スポンサーが、資産運用会社の親法人等に該当した場合にも、同様にその旨の届出が必要である(金商法50条1項8号、金商業等府令199条3号)。[]
  3. スポンサーチェンジ後の資産運用会社の運営について、金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」III-3-2(4)では、「当該金融商品取引業者若しくは持株会社の役員や重要な使用人の構成、事業内容、経営方針または事業の決定方法等に重要な変更が生じ、または生じるおそれがあると認められるときは、当該金融商品取引業者または持株会社の事業の実態を踏まえつつ、深度あるヒアリングや、必要に応じて、金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めること等を通じて、事業の内容や業務執行体制等の変更の有無を把握し、業務を適切に遂行するための人的構成や体制が引き続き整備されているかについて登録審査と同様に検証することとする」とされている。また、有価証券上場規程(以下、「上場規程」という)1218条1項1号b(f)では、「当該資産運用会社の親会社の異動が生じた場合であって、当該異動が生じる前における当該投資法人の資産の運用に係る業務の運営体制が当該異動が生じた後において実質的に存続していないと当取引所が認める」場合には、上場を廃止する旨が定められている。これらの規定への該当性が懸念されるような事案においては、金融庁または東証との事前相談において十分に説明等を行う必要があろう。[]
  4. 新家寛ほか編『REITのすべて』525頁(民事法研究会、第2版、2017年)[]
  5. 「資産運用会社である三井不動産ロジスティクスリートマネジメント株式会社及び伊藤忠リート・マネジメント株式会社の吸収分割契約締結、並びに三井不動産ロジスティクスリートマネジメント株式会社における主要株主の異動に関するお知らせ」(2024年8月5日)(2025年11月6日閲覧)[]
  6. 新家寛ほか編・前掲注4)572頁[]

髙田 真司

弁護士法人大江橋法律事務所 パートナー弁護士・ニューヨーク州弁護士

04年京都大学法学部卒業。06年京都大学法科大学院修了。16年Vanderbilt Law School(LL.M.)卒業、同年Holland & Knight LLP(ロサンゼルスオフィス)勤務。主な取扱い分野は、会社法・M&A、労働法、危機管理・コンプライアンス関連。著書として、『新型コロナウィルスと企業法務-with corona / after corona の法律問題』(共著、商事法務、2021年)『事業譲渡の実務-法務・労務・会計・税務のすべて』(共著、商事法務、2018年) など。

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