2024年10月 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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第1週

日記を書くことになりました。
9月にBusiness and Lawのwebinarでお話する機会を頂いたのですが、夜の懇親会に一緒に参加していたLegalチームのマネージャーがBusiness and Lawの上條さんと「菊池に日記を書かせてみたらどうだろう」という話をしたというのがきっかけです。お酒の席での思いつきを企画として通されたとは、大胆だなあ。

10月に入り上條さんと打合せを行ったのですが、私が普段CLOとして考えていることや、取り組んでいること、他社法務部門の方々との交流などを書けば良いとのこと。簡単そうに聞こえますが、私は契約書のレビューは早いけど夏休みの絵日記は9月1日にまとめて書くタイプなので、これは困ったと思いました(なお、締切りは当月末なのですがこれを書いているのは11月第2週です。上條さん、本当にごめんなさい)。

困っていても仕方ないので、ひとまず書いてみます。
まず今週は、10月1日に内定者との懇親会に出席しました。Legalチームの内定者の方とも久しぶりにお目にかかりましたがお元気そうで何より。入社まであと半年、健康に留意されつつ、実りある日々を送ってほしいなと思っています。チームメンバーも仕事も、入社される日を心待ちにしています。

第2週

今週は前々職でお世話になった先輩のご紹介で他社の法務部門の方々にメルカリオフィスにお越しいただき、意見交換を行いました。
メルカリの法務組織や最近の活動についてご説明したのですが、中でも一番興味を持っていただけたのはAIの利活用に関する話でした。

私は現在Legal and Governance Divisionというチームを率いているのですが、このDivisionには昨年秋にNew Reg, Tech and Regionsというチームを作り、新たな法令や新たなテクノロジーに関する規制等、またメルカリが進出する可能性がありそうな国の法令の調査を担ってもらっています。現在はフォーカスをAIガバナンスに定め、政策企画チームのメンバーと一緒に日々色々な観点でメルカリのAI利活用を後押しする活動に取り組んでいます注1。Chat GPTやGeminiなどを利用して情報収集・社内発信を行ったりAI利活用ガイドラインをアップデートしたりしていますが、そうしたことに加えて、自らの経験に基づき簡単なプロンプトを紹介する社内イベントを開催したり、と他のメンバーの背中をそっと押すような取組みも行っています。

また、Legal内にKnowledge and Operation Managementというチームを2月に立ち上げ、その名のとおりLegalチームにおけるナレッジマネジメントや業務改善に取り組んでもらっています。このチームもAI利活用に正面から向き合い、社内に蓄積した情報をもとに事業部側からの法務相談への一次対応を自動化するなど、事業推進のスピードを加速させるうえで重要な課題に取り組んでいます。他にも新しいツールの社内トライアルを仕切ってくれるなど、webinarでお話したメルカリのLegal Operationsの中心となっています。

管理部門が新たな技術に対してリスクを指摘するに止まらず、むしろ積極的にこれを取り入れ自らの業務改善・価値創造に取り組んでいるというのは、一般にはまだまだ珍しいのかも知れません。お越し頂いた方々に両チームのマネージャーが自分たちの活動を楽しそうにかつ誇らしげに語るのを見ていると、私も嬉しくなりました。

なお、この原稿も一通り書いてからGeminiに不適切な部分やわかりにくいところがないかレビューしてもらいました。
第1週のところで書いた「お酒の席での思いつき」とか「締切りは当月末なのですがこれを書いているのは11月第2週」というのは軽率な印象を与えプロとしては失格なのだそうです。厳しいなあ。。。

第3週

「CLO日記」というタイトルからいきなり外れますが、週末に東京レガシーハーフマラソンに参加するため半休をいただいてその受付を済ませ、あわせて実施されていたガイドランナー(視覚障害のあるランナーに伴走するランナーです)の体験教室に参加しました。

こういった体験教室に参加するのは2度目で、いつかはガイドランナーとして活動できたらと思ってます。しかし、自分が伴走してランナーに怪我させたりしないかと怖くなってしまい、なかなかもう一歩実践に踏み出せず。講師の方々によると視覚障害のあるランナーは練習や軽いジョギングに付き合ってくれる伴走者を探すのも大変苦労されているとのことですので、ジョギングの楽しみを味わうサポートができるなら、今年こそ勇気を振り絞ってみようかな。

第4週

弁護士ドットコム株式会社の法務部門の方々と交流会を開催しました。
法務分野で革新的なサービスを提供されている会社も近年増えていますが、その草分けとも言える存在。メルカリでも契約書の捺印には同社のクラウドサインを使っています。

生成AIや施行間近のフリーランス新法注2対応など、短時間で色々なテーマについて情報交換させていただきました。新規事業開発における法務部門のサポートなど似通った分野で同じような悩み(たとえば、ルールが不明確な場合にどうやって問題を解消していくか、とか)があるかと思えば、事業部側とのコミュニケーション方法にちょっとした違いがあるなど、新たな気づきのタネも。

こういう社外との接点は、新たな情報を仕入れるだけでなく自分たちの日々の活動を客観視して振り返る良い機会になりますので、ぜひ継続して実施したいと思っています。そのためには力を入れすぎずに開催できるようにする必要がありますので、まずは内容が陳腐にならない程度に仕組み化していこうかと。

第5週

久しぶりの出張。
移動時間は週末の試験に向けてAML/CFTに関する勉強をちょこっとして、あとは積ん読になっていた本を読みました。デロイト・トーマツ リスクアドバイザリーの『リスクマネジメント 変化をとらえよ』注3という本で、2年前ぐらいに出版されています。内容から、おそらく大企業のリスクマネジメント担当者が想定されている読者じゃないかなと思いますが、読みやすいリスクマネジメントの教科書的な感じです。

→この連載を「まとめて読む」

 

[注]
  1. 「全社員が安心してAI活用するために。メルカリグループが目指す、AIガバナンスのあり方とは」[]
  2. いわゆるフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法))は11⽉1⽇から施⾏されている。[]
  3. デロイト トーマツ リスクアドバイザリー『リスクマネジメント 変化をとらえよ』(日経BP,2022)[]

菊池 知彦

株式会社メルカリ 執行役員 CLO

01年株式会社小松製作所入社。その後、日産自動車株式会社、三菱商事株式会社にて主に海外法務を担当。18年グーグル合同会社入社。シニアカウンセルとして個人情報保護法・電気通信事業法コンプライアンス、クラウドサービスに関する契約案件に従事。23年メルカリ参画。米国ニューヨーク州弁護士。

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