© Business & Law LLC.

ログイン

表示の適正化に不可欠な“消費者目線”と“最新トレンドの把握”

事業者にとって、表示規制は最も悩ましい問題の一つだ。規制対象となる表現の“適法・違法”の判断基準が必ずしも明確ではないうえ、違反時は措置命令や課徴金納付命令が課されるなど、企業が被るダメージは大きい。「関連法令やガイドラインに適法か違法かという正解が書いてあるわけではありません。不当表示の該当性は、“表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識”を基準に判断されますが、企業は自社商品・サービスについて客観的な視点を欠きやすいため、消費者庁の判断との間に齟齬が生じるのです」。対応の難しさを説明するのは、消費者庁創設前に景品表示法(景表法)を所管していた公正取引委員会(公取委)で審査専門官を務めた、のぞみ総合法律事務所の大東泰雄弁護士。消費者庁表示対策課は公取委の考え方を引き継いでいることもあり、大東弁護士も処分の勘所を心得ている。「明確な判断基準がない中、規制当局の考え方を理解して実務に落とし込むのが重要とはいえ、公表された処分事例を分析しても、的確に捉えるのは容易ではありません。当事務所には消費者庁への出向経験者が複数名在籍しているため、当局の着眼点やいかなる解釈や手順で処分に至るのかについて熟知しています。各人の担当部署も立法から執行まで多岐にわたるため、多様な知見を掛け合わせて、総合的に判断・対応できるのが私たちの強みです」(大東弁護士)。

大東 泰雄 弁護士

近年の“顧客満足度No.1”表示の規制など、執行強化の場面も見受けられるものの、当局による優良誤認表示や有利誤認表示の根本的な判断軸は変わっていないと、消費者庁総務課で法規専門官として案件の事前審査や紛争対応に当たってきた山田瞳弁護士は語る。「ただし、表示媒体が多様化する中で、新たな媒体特有の考慮事項が生じることや、新たに制定されたステルスマーケティング(ステマ)規制のような執行上のトレンドは存在します。時勢により消費者にとって需要の高いものが摘発されやすい傾向も見られ、たとえばコロナ禍には“除菌”に関する不当表示の摘発が増加しました。このような執行の動向を把握することも求められます」(山田弁護士)。
大畑駿介弁護士は、表示対策課から復帰したばかりで、まさに最新の執行ノウハウに通じている。「企業から相談を受ける中で、いまだ“当局の考え方”が浸透していないと感じることも少なくありません。企業は業界の慣習にとらわれ、自社が行う表示の問題点に気づきにくく、また、自社の製品やサービスをアピールしたいばかりに、表示の適法性判断にあたり自社にとって都合のよい解釈をしてしまう傾向があります。広告審査に第三者の視点を取り入れる重要性はそこにあります」(大畑弁護士)。

深い当局理解に基づくリスクの見極めで“攻めの広告戦略”を実現

ヘルスケア分野のように、景表法のみならず特定商取引法、医療法や薬機法など、複数の表示規制法が交錯する領域における横断的な法律知識を活かした助言も光る。
「広告審査の相談は出稿直前に持ち込まれることも多く、限られた時間の中で迅速かつ実践的な助言をするには、豊富なノウハウ蓄積が不可欠です」(大畑弁護士)。
「グレーゾーンの表示については、出向経験に基づく処分の勘所に従い、“多少のリスクはあるが行政処分を受ける可能性は低い”や“指導を受ける可能性はある”など、リスクの濃淡に応じた助言をすることで、攻めの広告戦略を後押ししています」(山田弁護士)。
「当事務所は“のぞみを叶える専門家集団”という理念を掲げており、“依頼者のビジネスを全力で後押ししたい”という想いを共有するメンバーが集まっています。そのため、リスクのある表現に対しては代替案を提示したり、企業の担当者と議論を重ねてアイデアを練り上げたりと、ビジネスを前進させるためのサポートを常に心がけています」(大東弁護士)。
予防法務的なアドバイスにとどまらず、規制当局から不当表示の指摘を受けた際の調査対応や再発防止策に関する助言にも定評がある同事務所。処分内容や調査手続の見通しが利き、企業が適切な対応をとれるよう羅針盤の役割を果たしている。調査の初期段階では消費者庁がどのような表示要素を違法と捉えたのか明らかにされないため、「当局がどの点を問題視しているか見極めたうえで防御戦略を立てる必要がありますが、この見極めができることで、争う余地のある事案であるか否かの判断や、争う場合の適切な防御方法の選択につながります」と山田弁護士は語る。

山田 瞳 弁護士

さらに、無視できないのが出向経験に基づく“人脈”だと大東弁護士は付言する。「もちろん手加減してもらえるわけではありませんが、信頼関係が構築されているのでコミュニケーションが円滑に進み、結果として依頼者にとって納得感のある解決につながりやすいというメリットを感じています」。

時代の変化に対応した“表示コンプライアンス”体制構築の重要性

ネット広告やSNSなど表示媒体が多様化する中で、今後も消費者を騙し討ちにするような表示を規制する法整備が進むだろうとの見通しを示す大畑弁護士は、平時の広告審査におけるポイントについて、「たとえば、商品全体の印象を左右するような強調表示に対して、その一部に対する打消し表示を施しても限定的な効果しかありません。表現全体から消費者が受ける印象をフラットな目線で評価し、自社に都合のよい解釈に陥らないよう確認体制を構築することが大切です」と述べる。

大畑 駿介 弁護士

同事務所は、事業者における表示管理体制の構築も数多く手掛けており、マニュアル作成から研修実施まで一貫したサポートを提供している。大東弁護士は、企業がとるべき具体的な対応策について次のようにまとめる。「膨大な数の広告表示を法務部だけで審査するのは現実的ではありません。ある程度は現場の判断に任せられるようマニュアルやフローチャートを整備し、判断に迷う案件は法務部や弁護士に相談するという流れを作っておくことが理想的です。もちろん、広告媒体の変化やステマ規制といった新たなルールに対応するため、定期的なアップデートは欠かせません」(大東弁護士)。

読者からの質問(同じような表現でも、当局から指摘される表示とされない表示がある。どのように備えるべきか)

Q 同じような表現でも、表示規制当局から指摘される表示とされない表示があると思います。どのように峻別して備えるべきでしょうか。
A 商品の性質や表示媒体によって違いはありますが、景表法の基本的な考え方として、“一般消費者の自主的な選択を阻害するような表示”がその規制対象となるため、消費者に与える誤認の程度によって指摘を受ける可能性は変わってきます。重要なのは、打消し表示の有無などの細部にとらわれず、“全体的な広告表現から消費者がどのような印象を受けるか”という視点を持つことです。景表法の運用基準に関するガイドラインや過去の処分事例を読み解き、その背後にある消費者庁の“考え方”を理解したうえで執行リスクを見極める必要があります。企業は自社製品・サービスに関して、なかなか客観的な視点を持ちにくい傾向がありますので、省庁経験が豊富な専門家のアドバイスを得ることも有益です。

→『LAWYERS GUIDE 企業がえらぶ、法務重要課題2025』を 「まとめて読む」
他の事務所を読む

 DATA 

所在地・連絡先
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-16-1 平河町森タワー11階・12階(受付)
【TEL】03-3265-3851(代表) 【FAX】03-3265-3860(代表)

ウェブサイトhttps://www.nozomisogo.gr.jp/

主な所属弁護士会:第二東京弁護士会

大東 泰雄

弁護士
Yasuo Daito

01年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。02年弁護士登録(第二東京弁護士会)。09~12年公正取引委員会事務総局審査局審査専門官(主査)。12年一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻修士課程修了(修士〔経営法〕)。19年~慶應義塾大学大学院法務研究科(法科大学院)非常勤講師(経済法BP・WP担当)。23年公認不正検査士(CFE)登録。

山田 瞳

弁護士
Hitomi Yamada

02年中央大学法学部法律学科卒業。08年東京大学法科大学院卒業。09年弁護士登録(第二東京弁護士会)。19~21年消費者庁総務課・法規専門官(訟務)。

大畑 駿介

弁護士
Shunsuke Ohata

15年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。17年慶應義塾大学大学院法務研究科卒業。18年弁護士登録(第二東京弁護士会)。22~25年3月消費者庁表示対策課。