緻密かつ大胆な戦略と行動で早急な名誉回復を実現
加藤・轟木法律事務所は、消費者問題や大規模紛争等で著名な加藤博太郎弁護士と、スタートアップの支援から米国上場対応を含む幅広い業務を扱う轟木博信弁護士の事務所が合併し、2024年7月に設立された。開所間もない同事務所の大きな成果の一つが、サッカー日本代表・伊東純也選手が準強制性交等罪などで刑事告訴された事件の不起訴による名誉回復である。
「本件では、伊東選手の名誉を早急に回復し、練習や試合に出続けられるようにすることが最大のポイントでした。時間が経てば経つほど“不確かな疑惑”が膨らんでしまう。メディアに“1”書かれてしまったら、“10”打ち返すぐらいでなければイーブンにはなりません」(加藤弁護士)。
加藤弁護士が描いた戦略は、虚偽告訴罪で逆告訴することと、速やかに損害賠償請求訴訟を提訴することであった。この逆告訴は、「スラップ訴訟だ」などの非難を浴びることとなる。弁護士としては相当の覚悟がなければできないことである。一方、轟木弁護士は収集した証拠をもとに“法的にどこまで主張できるのか”を緻密に検討し、警察・検察の対応にあたった。その結果、捜査機関が被害者側の供述を軸に犯罪事実を構成して起訴に至るケースが大変多い性犯罪において、不起訴による名誉回復を成し遂げたのである。
伊東選手は9月5日の代表復帰戦で1ゴール2アシストを記録。多くのサポーターから伊東選手に贈られた暖かい拍手は、まさに同事務所の戦略の正当性を如実に物語っている。「日本サッカー協会のスタッフや伊東選手の関係者から感謝の連絡をもらったときは、本当にやりがいを感じました」(轟木弁護士)。
社会問題を契機とした二つの法改正
一見、異なる専門分野の事務所合併のようだが、大学時代の憲法学のゼミ(小山剛ゼミ)で同期であった両弁護士は、“社会正義のための法律家”という共通項で結びついている。それはスルガ銀行不正融資問題、かぼちゃの馬車事件、熱海土石流問題などに見出すことができる。
「私たちの訴訟を契機として、二つの法改正を成し遂げました。一つは、スルガ銀行不正融資問題による“金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律”、もう一つが熱海土石流問題による“宅地造成及び特定盛土等規制法”です」(加藤弁護士)
スルガ銀行不正融資問題の発生後、2020年6月に“賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律”が成立し、賃貸住宅を所有する不動産オーナーから不動産の管理を受託する賃貸管理会社が同法の定めに従って業務を行う義務が課され、“サブリース”に関する規制が盛り込まれた。また、熱海土石流問題による法改正では、土地の用途(宅地、森林、農地等)にかかわらず、危険な盛土等が包括的に規制されることとなった。
「集団訴訟は、一人当たりの訴訟費用を安く抑えることができます。しかし、訴訟が長期化すると原告同士の利害対立が生じて全体がバラバラになってしまうこともある。そうならないために早期に解決することを常に考えます。“裁判”だけが法的紛争の解決手段ではありません。むやみに訴えても仕方がない事件では、そうではない解決策を適切に助言し、“真の紛争の解決”に務めています」(加藤弁護士)。
スタートアップの経営に裏打ちされた法務力と実務力
同事務所のもう一つの柱は、スタートアップ・中小企業支援である。轟木弁護士を中心に、スタートアップ企業の最初の資金調達からエグジットまで、多数の依頼に対応してきた。現時点において日本企業では数少ない米国上場支援も、米国法律事務所と独自に提携して対応しているのも大きな特徴である。その源泉となっているのが、轟木弁護士自身のスタートアップの起業経験である。
「スタートアップ自体、何が成功するかはまったく予見できず、社会の変化に応じたピポットも常にありえます。法律事務所を新たに立ち上げること自体、スタートアップと同じであり、スポーツ選手の弁護から集団訴訟、そして米国上場支援まで、あらゆる案件の対応を行い、膨大な行動量の中から自ずと道が開かれてくるという信念があります」(轟木弁護士)。
轟木弁護士が常に意識しているのが、“自分たちは挑戦者である”ということだ。「常に変化していく社会においては、柔軟に自らが変化し、“自分たちにしかできないこと”に常にフォーカスすることが重要だと考えています。加藤弁護士が専門とする“社会問題発生時のメディア対応”も特筆すべき強みの一つですし、集団訴訟や米国上場といった分野も同様です。その他、試験的にChatGPTを徹底的に使った準備書面の起案や効率的なプロンプトの作成に取り組むなど、常に現状に満足せずに、何か改善点はないか、新しく取り組むべき分野はないかを考え、行動しています」(轟木弁護士)。
同事務所の今後の方向性について、轟木弁護士は「それぞれの弁護士の強みを活かして互いの業務をバックアップし、相乗効果を生んでいく事務所を作っていく」とし、一方で加藤弁護士は「我々にしかできないサービスを、常にクライアントの期待を超えて提供していきたい」と語る。5年後、10年後を見据えて、さらなる飛躍を遂げていくつもりだ。
加藤 博太郎
弁護士
Hirotaro Kato
07年慶應義塾大学法学部単位取得退学(飛び級のため)、10年慶應義塾大学法科大学院修了。14年弁護士登録(東京弁護士会)。大手監査法人勤務弁護士を経て、24年~加藤・轟木法律事務所共同代表。多くの上場企業等の顧問弁護士を務めるほか、不動産投資、投資被害の救済を専門としている。「ガイアの夜明け」「クローズアップ現代」「ワールドビジネスサテライト」「グッド!モーニング」「スッキリ」「バイキング」など、テレビ・メディア出演多数。
轟木 博信
弁護士
Hironobu Todoroki
08年慶應義塾大学法学部卒業。11年慶應義塾大学法科大学院修了。13年弁護士登録(第一東京弁護士会)、柳田国際法律事務所入所。15年株式会社ELEMENTS経営管理部長就任。19年株式会社ティアフォー法務責任者就任、轟木法律事務所設立。24年弁護士法人加藤・轟木法律事務所に合併し共同代表を務める。新規事業の立ち上げや株式上場に向けたガバナンス強化に手腕を発揮。