法務部長が語る 求める“弁護士”像 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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早川 拓司 氏(カゴメ株式会社 東京本社 法務部長)

外部で伴走してくれる弁護士へ

新しい外部弁護士起用にあたっては、セミナーや論考(SNS等を含みます)を参考にする場合と、法務担当者や弁護士の知り合いからの紹介の場合があります。前者において、特定分野の法律の専門性を基にビジネス視点を踏まえた適格な問題提起のある情報発信をされる方は非常に魅力的です。実際にそういった方にお願いすると、法務部門の向こう側の経営陣や事業部の意向も含めたクライアントの状況を理解したうえでの合理的な案を示していただけることが多く、我々としても学びや気づきがあり満足度が高いです。時には、企業内でどのように意思決定がなされるか、たとえば取締役会での議論などを想定し、法律論にとどまらず、社内では気づかないような論点についても問題提起いただける弁護士は心強いです。

内部で力を発揮してくれる弁護士へ

所属組織の一員として、弁護士資格を持ったビジネスパーソンであるという意識を持っていただくとよいと思います。案件は待つだけでなく、自ら問題意識を持ってコミュニケーション(雑談などを含みます)を図ることで、引き寄せるくらいの気構えがあるとよいです。限られたリソースで案件をさばくことが求められる場合もありますので、日頃から優先度判断とメリハリづけを意識するとよいのではないかと思います。企業内の案件を俯瞰的かつ客観的に観察・分析しつつ、我が事として、全社最適、時には社会最適の視点でリーガルリスクマネジメントの解を考え出し、適宜、経営陣や事業部等を説得し、納得させることができることが求められます。

早川 拓司 氏

青谷 賢一郎 氏(株式会社ニトリホールディングス 上席執行役員 法務室 室長)

外部で伴走してくれる弁護士へ

(1) 資質

● 当社の各事業および企業理念を理解し、共感を持っていただけること

● 自らの専門分野に関する深い経験、見識があること

(2) 心構え

● 自らの見解をわかりやすく伝えようという心構え

● 自らの提供する法務サービスにつき、Q(Quality・品質)、C(Cost・費用)、D(Delivery・納期)の3点のバランスを常に意識するという心構え

内部で力を発揮してくれる弁護士へ

(1) 資質

● 当社の各事業および企業理念、企業文化を理解、共感し、そこから生じる法的、企業倫理的課題につき、幅広く関心を持つことができる

● 社内・社外を問わず、対面・非対面を問わず、他者と円滑にコミュニケーションできる

(2) 心構え

● 一事業にとどまらず、グループ全社を取り巻く主要な利害関係者を意識し、全体最適を踏まえた経営判断への貢献をしようという心構え

● 自ら把握した事実関係や、自らの考えを、できる限りわかりやすく伝えようという心構え

青谷 賢一郎 氏

菊池 知彦 氏(株式会社メルカリ 執行役員 CLO)

これから弁護士として法律事務所に入られる方・インハウスローヤーとして働かれる方に共通することですが、クライアント(社内なら上司や依頼元部署)がどういう状況にあり、何をどんな理由で求めているのか、それを把握することにまずは注力されるとよいと思います。
リクエストに対して何も質問されず、時間が経ってから要望に合わないものが届くと依頼主も困ってしまいます。それを避けるには初期段階のすり合わせが極めて重要です。当たり前のことのように聞こえるかも知れませんが、実際こうした問題の発生は珍しいものではなく、無駄や遅れのもととなっています。
まずは色々な質問の仕方を試して、得られた情報をもとにできるだけ早く素直に回答していく、ということを繰り返していけば、きっとクライアントと良い関係を築くことができます。頑張ってください。

菊池 知彦 氏

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早川 拓司

カゴメ株式会社 東京本社 法務部長
Takuji Hayakawa

97年カゴメ株式会社入社。営業部門を経て、02年法務部門に異動。以後、総務、法務、コンプライアンス、コーポレート・ガバナンス体制の構築、内部監査等に従事。23年10月から現職を務める。主著として『企業法務入門テキスト―ありのままの法務』(共著、商事法務、2016年)『今日から法務パーソン』(共著、商事法務、2021年)などがある。

青谷 賢一郎

株式会社ニトリホールディングス 上席執行役員 法務室 室長
Kenichiro Aoya

弁護士、経営学修士(MBA)。富士フイルム株式会社での勤務(マーケティング、セールス、経営企画等)を経て、11年に弁護士登録。法律事務所、株式会社LIXILでの執務の後、17年に、株式会社ニトリホールディングスに入社。18年より、法務室長として法務、ガバナンス、コンプライアンス、知財、リスクマネジメント等に幅広く従事。21年より執行役員、22年より上席執行役員。

菊池 知彦

株式会社メルカリ 執行役員 CLO
Tomohiko Kikuchi

米国ニューヨーク州弁護士。01年株式会社小松製作所入社。その後、日産自動車株式会社、三菱商事株式会社にて主に海外法務を担当。18年グーグル合同会社入社。シニアカウンセルとして個人情報保護法・電気通信事業法コンプライアンス、クラウドサービスに関する契約案件に従事。23年株式会社メルカリ参画。