インハウス×弁護士 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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二足の草鞋を履きこなす兼業型ロールモデル

—弁護士を志して現在に至るまで、多彩な経歴でいらっしゃいますね。
関原 もともと理学部物理学科出身で、学生時代はバドミントンに熱中していました。就職活動は行わずに、しばしフリーター生活を送っていましたが、ふと法曹界に強い関心を持ち、法科大学院を経て司法試験に合格しました。有名TVドラマの影響を受けて、検事や相続・日常生活上の紛争などを扱う一般民事に興味を抱き、まずは都内の法律事務所に入所し、一般民事と企業案件を主に担当。2年ほど勤務した後に、総務省・総合通信基盤局(電気通信事業部)に2年弱出向しました。任期満了後、別の法律事務所で4〜5年ほど勤め、2019年に縁あってLINE株式会社と現事務所に入りました。LINEでは、セキュリティ・センターに所属し、個人情報保護法やGDPR等のデータ保護規制を専門とするインハウス・カウンセルとして同社ビジネスの最前線で業務に従事しながら、兼業で、法律事務所でプライバシー関連の企業案件を中心に受任しています。

—弁護士として、情報通信の分野を選ばれた理由は何でしょうか。また、兼業のきっかけについても教えてください。
関原 弁護士数が急増し、競争が激化していましたので、自分の武器・専門性を身につけたいと考えていました。総務省への出向は、IT関連の法令が今後充実すると見込み、これらの業界を所管する監督官庁で法制度を学びたいと自ら志願して飛び込んだものですが、正解だったと思います。任期満了の時点で弁護士としては3〜4年目であり、早く自分の名前で仕事ができるようになりたいと思っていたところ、アソシエイト・クラスで企業法務と一般民事のいずれも自由裁量で個人案件を受任できる事務所に偶然出会うことができました。インハウスと外部弁護士の両方とも体験してきて、本当に違ったおもしろさがあると感じますし、今後も外部弁護士としての活動を続けていきたいですね。

—インハウスのおもしろさや、インハウスとして心がけるべき点を教えてください。
関原 総務省で勤務している間に、インハウスの数が増加する様子を見て関心が高まっていました。実際にLINEに入社してみると、自社のプロダクトに近い場所でITサービスの深い内容まで理解しながら、会社の全体像を見て、意思決定のプロセスにも携わることができています。これは、法的な論点分析を部分的に請け負う外部弁護士ではなかなか得られないおもしろさがあると実感しています。
なお、インハウスとして就職する場合、40歳を過ぎると企業側はマネジメント(管理職)候補として採用することも多いでしょうから、実務のプロフェッショナルを目指すのであれば決断は早い方がよいかなと思います。私もLINE入社時は38歳でした。ただ、インハウスと法律事務所勤務の弁護士との人材交流は盛んになり、両者や企業間のハードルは下がってきているので、進路を決めかねている方には追い風だといえます。いま所属する法律事務所にも前職が金融のインハウスだった方がいますし、LINEにも、コンサル・グループや大手法律事務所の所属弁護士だった方がいます。

—海外案件や、海外の法律事務所と関わりたいという学生さんも多いと思いますが。
関原 大手法律事務所や海外の法律事務所も候補としてよいと思いますが、LINEのようなグローバル企業であれば、通常業務として英文契約の作成・レビューなど海外案件に毎日接することができます。その企業におけるインハウスの所掌業務にもよりますが、海外向けにサービスを提供する日系企業であれば、外部弁護士と比べても遜色なく海外業務があると考えてよいと思います。

—インハウスと弁護士の二刀流のメリット・デメリットは何でしょうか。また、ワーク・ライフバランスはいかがですか。
関原 デメリットは簡単で、ワークが増えるだけライフが削られることです(笑)。一方で、メリットはたくさんあります。まず、会社以外の仕事、会社員では体験できない仕事も数多く体験し、視野を広げることができることです。データ関連の企業案件を受任した場合は、インハウスの実務で得られた知見を活かして、必要以上のフィーをかけずに解決に導きやすくなります。
二刀流は、インハウスとして生きていくか、法律事務所に所属しながら自分の看板で仕事を続けるか、はたまた独立するか…と、進路を悩む方にはお勧めです。また、経済的な魅力も大きいです。兼業によって、うまくすれば法律事務所勤務の弁護士と遜色のない年収を狙えます。一般論として、インハウスでも、特にデータ関連規制の専門家は不足していますので、以前よりも給与も上昇していると思います。

法科大学院生の皆さんに向けて

—法科大学院生の皆さんに、仕事論を含めてメッセージをお願いします。
関原 昨今の外部弁護士には、広く法令知識を身につけた上で特定の法律・分野の専門家(エキスパート)として成長することが求められます。幅広い業種・分野を手がける中で、自分の得意としたい分野を先輩の専門家に学びながら磨いていくことが可能です。
一方、インハウスは、外部弁護士などの協力を得ながら会社の事業目標を達成していくプロジェクト・マネージャーの役割が大きく、ゆえにコミュニケーション能力がとても重要になります。社内規程に従った調整能力や、自社サービスの機能・仕組みの知識に基づいて、的を捉えた結果を出すことがインハウスの醍醐味です。なお、インハウスも自社の提供するサービスに係る特定の業法には精通する必要があります。
どちらから進んでも、その後自分次第で道は選べるので、まずは自分が「おもしろそうだな」と思える業界・業種で進んでみることもよいと思いますよ。

→『RECRUIT GUIDE 2022』を「まとめて読む」

関原 秀行

LINE株式会社
インハウスハブ東京法律事務所 弁護士

2009年 LS卒業。2010年弁護士登録(東京弁護士会)、都内法律事務所勤務。2012年総務省出向。2014年都内法律事務所勤務。2019年LINE株式会社・インハウスハブ東京法律事務所。国内のプライバシー関連法令(個人情報保護法、通信の秘密など)や海外のデータ保護法制(GDPR、CCPAなど)の規制対応を専門としている。著書『Q&Aで学ぶ 企業におけるパーソナルデータ利活用の法律実務-令和2年改正個人情報保護法と実務対応-』(日本加除出版、2021)『ストーリーとQ&Aで学ぶ 改正個人情報保護法』(日本加除出版、2017)など。

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