形式主義を超えた実践解 機能するグローバル内部通報制度へ
設立6周年を迎える弁護士法人GIT法律事務所。“Passion for Real Legal Solutions”を理念に掲げ、グローバル内部通報制度の構築支援、ヘルスケア分野のコンプライアンス、不正調査、国際訴訟・仲裁などの紛争解決を中心に、上場企業へ幅広いソリューションを提供している。
「内部通報分野でクライアントの関心が高いのは、令和7年公益通報者保護法改正による立証責任の転換と刑事罰の導入です」と語るのは、同事務所代表の西垣建剛弁護士だ。
「解雇されそうなときに通報して、“内部通報をしたから解雇された”と労働者が主張する場合があります。会社がこの推定を裁判で覆すことは難しい。濫用的な事例が増えてくることが危惧されます」(西垣弁護士)。
特に、通報を受けた法務部が不正調査を実施しているときに人事部が通報者を不用意に解雇すると、このような事象に至る危険がある。法務部と人事部のコミュニケーションが不可欠な局面だが、一体化しすぎると、逆に“通報による解雇”とされる危険性がある。対応策としては、部門間の独立性を確保すべくファイアウォールを敷くなど、個別事案の状況に応じた対応が必要だ。「労働者が通報制度を濫用する場合、ローパフォーマーに対応する場合など、ケースメソッドを提案しています。客観証拠を積み上げ、弁護士の意見を聞きながら非常に慎重に対応していかなければなりません」(西垣弁護士)。
グローバル内部通報制度の構築については、多くの企業が悩みを抱えている。「制度導入の最大のメリットは“海外拠点での揉み消し防止”です。現地完結型の通報制度では、重大な不正が発生しても現地で揉み消されやすくなります。海外拠点は国内よりも目が届きにくいため、重要な不正情報を本社が吸い上げるシステムがないこと自体、ガバナンス上致命的な問題なのです」(西垣弁護士)。
導入の法的課題として、現地の公益通報者保護法制との整合性をとった制度設計が必要なこと、GDPR等における個人情報の域外移転規制が挙げられる。また、運用面でも留意点があるという。「グローバル内部通報でも軽微な問題が通報されることが多いため、基本的には、本社の指示で現地で調査・処理できる体制も整えるべきです。一方で、本社が直接調査すべき重大事案では現地の法律や言語、情報収集が壁となります。現地の法律事務所と連携する体制が欠かせません」(西垣弁護士)。
グローバル内部通報制度を導入しても、運用に悩む企業は多い。「運用段階ではケースバイケースの経験値や肌感覚が重要です。現地法律事務所とのネットワークや海外案件の実践的知見を提供することで、依頼者をサポートできればと思っています」(西垣弁護士)。

西垣建剛 弁護士
費用対効果の重視で国際仲裁の活用を促進
同事務所が力を入れて企業に活用を促しているのが国際仲裁の分野だ。“Cost-Effective Arbitration”を掲げて、一般的に“費用が高額で活用シーンが限られている”と捉えられがちな国際仲裁の活用の幅を広げている。
ジョエル・グリアー外国法事務弁護士は、20年近く国際仲裁に携わってきたプロフェッショナルだ。「高品質な仲裁関連サービスを最適なコストで提供したいと思っています。一般的に、仲裁のコスト割合は仲裁機関が5~10%程度、仲裁人が15~20%程度、弁護士が80%程度です。弁護士費用をいかに合理化するかがポイントです」(グリアー外国法事務弁護士)。
国際仲裁の分野では、円安の影響もあり1時間数十万円の弁護士費用も珍しくない中、同事務所は定額制などAlternative Fee Arrangement(代替的報酬体系)を用意し、合理的な金額設定を実現している。この柔軟さを可能にしているのが、仲裁経験の豊富さだ。仲裁で有利な判断を得て仲裁後の執行をも繰り返すことで効率的かつ効果的に案件を進め、合理的な費用設定を可能にしている。「仲裁は確かに費用はかかりますが、相手方に支払能力があり、勝訴すれば弁護士報酬についても75%~100%を相手に請求できます。要は、勝てばクライアントの負担は減らせるのです」(グリアー外国法事務弁護士)。
単に“取引相手が代金を支払わない”という事例は、日本企業に仲裁を活用してほしい典型的なものだという。
「“海外企業が分割払いの最後の1回だけ難癖をつけて払わない”という話はよくあります。従来は仲裁コストを考慮して諦めがちでした。しかし、我々ならば採算が合う形でサポートできます」(グリアー外国法事務弁護士)。

ジョエル・グリアー 外国法事務弁護士
FCPA対応の実務的アプローチ ヘルスケア業界のコンプライアンスを支援
医薬品・医療機器分野では、米国海外腐敗行為防止法(FCPA)を含む贈収賄防止への対応が重要だ。製薬・医療機器メーカーの顧客である医療従事者が“公務員”とみなされ、接待や贈答が賄賂として摘発対象になるリスクがある。トランプ政権下で一時的にFCPAの執行停止が声明されたものの、現場の対応は変わっていない。
「米国上場の製薬会社の日本子会社が公務員の医師に要求されて贈賄行為を行うとFCPAが適用されます。FCPAは賄賂を払わないための内部統制構築義務も求めています」と説明するのは、大手製薬会社でグローバル契約ディレクターを務めた経験を持つアンドリュー・マリオット外国弁護士だ。
マリオット外国弁護士は体制構築のポイントを“ポリシー”“カルチャー”“トップの姿勢”“モニタリング”と指摘。日本企業に残るいわゆる“ムラ社会”的な文化は、少なからずコンプライアンス意識に影響を及ぼすという。「組織内での風土や方向性が少しずれれば、大きく不正に偏る傾向があります。不正を行わないためには、トップの正しい行動が不可欠です」(マリオット外国弁護士)。

アンドリュー・マリオット 外国弁護士
西垣建剛
弁護士
Kengo Nishigaki
98年東京大学法学部卒業。00年弁護士登録(東京弁護士会)、東京青山法律事務所(現・ベーカー&マッケンジー法律事務所)入所。04年ニューヨーク大学ロースクール修了(LL.M.)。05年ニューヨーク州弁護士登録。08年同事務所パートナー。20年弁護士法人GIT法律事務所設立。
ジョエル・グリアー
外国法事務弁護士
Joel Greer
85年コーネル大学卒業(B.A.)。88年プリンストン大学修了(M.A.)。00年イエール法科大学修了(J.D.)。01年Gilbert Heintz and Randolph LLP入所。03年Hughes Hubbard & Reed LLP入所。06年White & Case LLP入所。07年外国法事務弁護士登録。15年ベーカー&マッケンジー法律事務所(東京)入所。19年法律事務所ZeLo入所。24年弁護士法人GIT法律事務所入所。
アンドリュー・マリオット
外国弁護士
Andrew Marriott
99年グリフィス大学卒業(法学士LL.B./文学士B.A.)、ミンターエリソン法律事務所入所。00年豪州ニューサウスウェールズ州弁護士登録。01年ベーカー&マッケンジー法律事務所(東京)入所。05年アレン・アンド・オーヴェリー外国法共同事業法律事務所(東京)入所。09年英国(England & Wales)弁護士登録。大手製薬企業などを経て24年弁護士法人GIT法律事務所入所。