個々の弁護士の能力を最大化する“ワンチーム”という理念
大手法律事務所で研鑽を重ねた5名の弁護士が、2016年に設立したT&K法律事務所。依頼者にとっての最適解を導き出すため、常にワンチームで個々の案件に力を尽くす。そうした理念が幅広い依頼者層に支持され、7周年を迎えた2023年には、職員含め約90名(同年12月時点)の組織に発展を遂げた。
同事務所では創業メンバーを含め、異なるキャリアを積んだ弁護士達が一体となり、国内外を問わずさまざまな分野を横断する課題に対し、依頼者が求めるニーズに応じてアドバイスを提供してきた。規模の拡大に伴い、数千億円規模のM&Aから複数の国をまたぐ国際紛争、大規模な第三者委員会・調査案件等、企業の命運を左右するような依頼も増え続けている。
「大型案件の受任が増える中、それと同時に、ご依頼者様からの信頼を得たことによる、取締役会・株主総会運営に関するアドバイス、広告規制や労務、契約書のレビュー等、日常業務に関するご依頼も増加し続けております。また、ご依頼者様の業務の進め方やニーズを理解した“よき伴走者”として、近年では企業の法務部や一般社団法人等から、事業のあらゆる場面でのご相談を受けることも増えています」。そう話す瀬川哲弘パートナー弁護士は、6人目の弁護士として2017年に同事務所に加入した。
「創立から7年を経て、国内外のご依頼者様との間で培った広範な実績・経験が事務所に蓄積されていることに加え、さまざまな経歴のシニアカウンセルや顧問から、知見に基づくアドバイスを日常的に受けられる環境を整えています。このような基盤を有する総合法律事務所として、弁護士間の機動的な情報共有と最適なチーム組成を活かし、幅広いご依頼者様からのさまざまな依頼にワンストップで対応するのが当事務所の特長です。多くのご依頼者様に繰り返しご依頼いただいていることも、当事務所が提供するサービスの質にご満足いただいていることの表れだと思っています」(瀬川弁護士)。
数々の強みを活かした独占禁止法分野や不祥事対応
ワンチームで依頼者のニーズを捉えた最適な解決策を導くために、同事務所はどのように日々の案件対応に取り組んでいるのか。同事務所において特に近年依頼が増えている分野を担当する弁護士にそれぞれ話を聞いた。
「当事務所では設立以来、海外の競争法対応を含め独占禁止法分野に関するアドバイスを幅広く行ってきましたが、最近では特に企業結合に関するご相談の他、景品表示法に関するご相談案件が急増しており、ご依頼者様の関心の高まりを感じています」。岡田侑子弁護士は、M&Aからコーポレート、金融レギュレーションやファイナンスまで、さまざまな分野における豊富な経験を有する。中でも独占禁止法、下請法、景品表示法等の領域を得意とする。
「独占禁止法分野の規制は、企業買収、アライアンス等のディール案件から、広告や販促キャンペーン、日常の取引契約等、多様な場面で論点となるケースも多く、問題の所在を正しく把握して対応をしないと、事業上の思わぬ落とし穴となることもありますし、逆に交渉材料として利用できる場面も多々あります。そして、法令の解釈に関しては、法令の形式文言や文献に記載されているような杓子定規な対応はワークせず、ご依頼者様の業界における取引実態や利益状況等を深く理解したうえで、条文の制定趣旨をはじめ、公正取引委員会や消費者庁等の運用実務、事案ごとの特殊性等を踏まえた、より実践的な対応が求められます。その点、当事務所には近時の審査実務や景品表示法の改正においても豊富な経験と知見を有する公正取引委員会のOBが顧問として参画しており、たとえばご相談を受けたその日に具体的な事案に即して当局運用を踏まえた意見交換を顧問と行い、迅速に回答することができます。そうした知見と機動力を活かし、実践的なアドバイスがご提供できるのも、独禁法分野における当事務所の強みです」(岡田弁護士)。
数々の危機・不祥事対応や調査、コンプライアンス案件等を手がけるのは根鈴久志弁護士。昨今、企業における不祥事が社会的に大きな注目を集めるケースも増えているが、そうした中で同事務所では、大手金融機関や上場企業、プロスポーツ団体や独立行政法人等の調査委員会や危機対応・社内調査等を数多く受託。特に多くの調査委員会で、委員会全体をリードする役割を担ってきた。
「当事務所には、元高裁長官や元高検検事長をはじめとして、調査委員会委員の経験を有する不祥事対応に詳しい弁護士が複数在籍しています。マンパワーが必要な案件にも対応できる事務所の体制に加え、公正取引委員会や金融庁のOBをはじめとする各種の専門家との連携も当事務所の強み。また、会社側の代理人を務める場合は、当局対応や開示対応、調査委員会の経験を活かした委員会への対応や広報に至るまで、一貫して対応しています」(根鈴弁護士)。
不祥事の当事者や株主、監査法人や監督官庁、金融商品取引所や捜査機関等、多くのステークホルダーが存在する企業の不祥事に真の意味で対応するためには、幅広い経験や知識が不可欠だ。
「会社側の立場であれば、原因究明のための調査はもちろん、調査結果を踏まえた不正行為者への労務対応や損害賠償請求等の紛争対応、当局を含むステークホルダーへの説明等、さまざまな観点からの検討が必要になります。いわゆる“不正調査”のみを専門とする事務所もある中で、当事務所ではコーポレート、労務、知財、紛争、渉外業務等のノウハウや知見を結集したチームを組成して総合的な支援を行っています」(根鈴弁護士)。
不確実な法的リスクから企業や経営者を守るために
近年、日本の株式市場に参入するアクティビストやその株主提案数は増加の一途であり、企業と買収者との対話を促進する「企業買収における行動指針」が2023年8月に策定された。アクティビストの活動は今後より一層活発になることが予想され、企業側のアクティビストへの対応が急務になっていることに加え、企業と向き合う株主側からの相談も増加している。
そうしたアクティビスト対応等で豊富な実績を有する田畑早紀弁護士は、「企業の立場では、コーポレートガバナンスの観点で株主から指摘を受ける対象となりうる点がないか検討することに加え、平時から定期的に実質株主の調査を行い自社の株主構成や属性を把握しておくことや、自社の不採算事業の状況やPBR等を踏まえ、自社がいかにアクティビスト活動の対象となりやすいかを把握しておくことが大切」と、近時の傾向を踏まえた企業の留意点について説明する。
「たとえばアクティビスト株主の提案を受けた企業側では、弁護士が経営陣と今後の対応を網羅的に協議し、提案内容の個別具体的な検討をすることに限らず、当該アクティビストの個別の性質や実績等を踏まえ、相手の次の手や、プロキシーファイトやキャンペーン活動、株主総会での動議、さらにはTOBの可能性といった、株主提案に限らない今後の展開を睨みながら、迅速に対応策を講じる必要があります。同分野における数多くの実績に加え、多様な分野で研鑽を積んだ個々の弁護士の知見をワンチームで活かすという当事務所のカルチャーも、そうした複眼的な対応の検討が求められる場面で大いに活かすことができています」(田畑弁護士)。
同時に、企業により透明性が求められ、株主からの関心が高まっている昨今では、取締役の善管注意義務違反についての相談も同事務所には多く寄せられる。
「経営陣には積極的な経営判断が求められる一方で、裁判所から事後に善管注意義務違反と認定される事態は避けなければなりません。とはいえ、事業経営にはリスクがつきものであり、積極的な経営判断の結果として会社に何らかの損害が生じたからといって、取締役の善管注意義務違反が容易に認められるようであれば、経営の萎縮等につながり結果として会社や株主の利益になりません。さまざまな経営判断上の失敗について“どこまで許容されるのか”といった基準は判例上不明確であることも多く、事業面・法律面双方に関する深い調査・分析を経てようやく具体的な内容が見えてきます。特に善管注意義務違反の問題では、関連する法律のみならず当該事業や業界の常識に精通していることが重要です。当事務所では、事業面についても背景事情等から十分に理解できるよう、常に新しい情報を収集して業界知識をフォローし、またご依頼者様と事業面の議論をすることも厭いません」。葛西悠吾弁護士は、紛争からコーポレートまで会社法に関する相談に広く対応し、企業側のみならずアクティビスト側からの相談にも豊富な経験を有する。
「善管注意義務違反の問題では、裁判所の示す基準が不明確だからこそ、過去の裁判例や文献を隅々までチェックするだけでは不十分な面もあります。抽象的な基準の中で取締役が莫大な損害賠償請求を追及されるといったケースも見られますが、当事務所では顧問として在籍する裁判官経験者や法学者等とも個別に議論を重ねて検討を行うことで、ご依頼者様をそうした司法の不確実性リスクから守る努力を行っています」(葛西弁護士)。
海外法律事務所や各専門家と連携しワンストップでサービスを提供
同事務所では知的財産全般に対するリーガルサービスを提供し、アートやファッション等をはじめとした国内外で増加する模倣案件等にも強みを持つ。
「不正競争防止法等の知的財産権に関わる法分野では、まだ確立した答えのない最新の論点が多々あります。当事務所には、経済産業省で模倣対策専門官を務めた弁護士も在籍し、知的財産を専門とする法学者や知財部の元裁判官等知財分野における多くの専門家との連携も有しています。見解の割れる最先端の論点についても、知財分野で経験のある弁護士が各専門家と連携し、深い調査や議論を尽くしてご依頼者様のために最善のアドバイスを提供できることが、当事務所の知財分野における強みとなっています」(大野徹弁護士)。
最近も、先例がないに等しい先進的なアート作品が海外で模倣された事案において、日本企業の委任を受けて複数の海外事務所を統括して全体の戦略検討から具体的な書面作成まで指揮をとり、侵害会社の著作権侵害を認める勝訴判決を得たという。
同事務所は多くの日本企業がブランドを展開する中国や米国をはじめ、世界各国に協力関係を有する現地法律事務所を持つ。「バックグラウンドの異なる各国事務所との協議を通じて、ご依頼者様が自社のブランドを守るためのベストな方法や、権利侵害等の問題に対する最良の解決方法のご提案が可能です」(大野弁護士)。
知財案件に限らず、同事務所では設立当初から多くの海外案件を扱ってきた。
「顧問先企業様からのご依頼では、国内のみならず海外の業務を支援することも多く、広く外国語を用いる業務を海外案件とすると、当事務所で扱う案件のうち3割から4割の業務を海外案件が占めています」。三上貴弘弁護士は一般企業法務の他、国際仲裁等の紛争事案からM&Aや国際取引、コンプライアンス対応等を得意とする。
「海外事業で使用される契約書の作成やリーガルチェックから国際的な著作権侵害に関する紛争、インバウンド、アウトバウンドM&A、各国の個人情報保護法対応等、幅広くサービスを提供しており、対象地域についても北米からEU、アジア、オセアニア等、特定の地域や国の偏りなく対応しています」(三上弁護士)。
さらに、フィリピンで現地日本人弁護士の先駆けとして約6年の駐在経験を有する岡﨑友子弁護士等、東南アジアをはじめとする特定の国や地域を得意とする弁護士が在籍するのも特徴だ。
「現地での実務経験を踏まえて海外に進出した日系企業様が求める日本クオリティのニーズにも応えられるのが当事務所の強みです」(岡﨑弁護士)。
同事務所には、米国人弁護士や中国人弁護士も在籍しているうえ、日本人弁護士もさまざまな国への駐在経験や留学経験を持ち、また現在、オーストラリア、シンガポールの法律事務所にも所属弁護士が駐在している。このように多彩なバックグラウンドを持つ人材がチームを形成し、現地事務所と連携して幅広く海外案件を取り扱っている。
「外為規制やIT関連法令、環境関連法令等、海外では現地法令の改廃も多く、新興国においては法令と実務にギャップがあることも珍しくありません。だからこそ、事務所内の知見や調査の充実に加え、現地の実務を理解した優れた法律事務所と協働する体制の確立が不可欠。当事務所では各国、各地域において、それぞれ複数の信頼できる法律事務所と良好な関係を築いており、案件の内容や対応にかけられるコスト等、ご依頼者様のニーズに応じて最適な事務所と連携して海外案件に対応しています」(三上弁護士)。
2022年には、日本企業の海外進出や海外企業の対日投資、クロスボーダーのM&A等を幅広く支援した実績を持つ山本卓典弁護士も加入。
「日本と海外では、法律や商慣習等も異なるうえ、言語の壁もあります。渉外案件で重要なのは、まずはコミュニケーション。ご依頼者様の意図や各案件特有の事情を、いかにうまく海外の法律事務所に伝えて彼らの力を引き出せるかがポイントです。その点、当事務所では、まずは日本と海外の双方の法実務で多くの経験や知見を持つ弁護士がご依頼者様の“真のニーズ”を捉えた方針を立て、そのうえで所内の外国法事務弁護士や各方面で傑出した知見を有するシニアカウンセルや顧問とも協働して戦略を練ります。その過程で海外法律事務所ともシームレスに連携しており、この一体感がスピード感をもってご依頼者様にご満足いただける解決策をお届けすることにつながっていると感じています。現地法律事務所とも案件の特徴や獲得目標の理解を共有して各自の力を結集し、案件ごとの最適解を目指す。こうしたワンチームで一丸となり取り組むスタイルが、海外案件でも当事務所の大きな強みとなっています」(山本弁護士)。
現地法律事務所等と連携した、ワンストップでの質の高いリーガルサービスを提供する同事務所は、各国に進出する日系企業の頼もしいパートナーとなるだろう。
三上 貴弘
弁護士
Takahiro Mikami
00年中央大学法学部卒業。04年弁護士登録。04年外立総合法律事務所(現弁護士法人外立総合法律事務所)入所。10〜22年弁護士法人外立総合法律事務所パートナー。22年T&K法律事務所入所。第一東京弁護士会所属。
岡田 侑子
弁護士
Yuko Okada
08年東京大学法学部卒業。10年東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。11年弁護士登録。11〜16年貞友義典法律事務所。16〜17年日産化学株式会社。17年T&K法律事務所入所。東京弁護士会所属。
瀬川 哲弘
弁護士
Tetsuhiro Segawa
12年東京大学法学部卒業。14年東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。15年弁護士登録。15〜17年本杉法律事務所。16〜19年東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会。17年T&K法律事務所入所。東京弁護士会所属。
根鈴 久志
弁護士
Hisashi Nerei
14年京都大学法学部卒業。16年京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了。17年弁護士登録。17〜19年弁護士法人匠総合法律事務所、19年T&K法律事務所入所。第一東京弁護士会所属。
山本 卓典
弁護士
Takunori Yamamoto
08年東京大学法学部卒業、10年東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了、11年弁護士登録。11〜22年中川・山川法律事務所、17〜19年特定非営利活動法人ビュー・コミュニケーションズ監事、22年T&K法律事務所入所。第一東京弁護士会所属。
岡﨑 友子
弁護士
Tomoko Okazaki
04年早稲田大学社会科学部卒業。07年弁護士登録。07〜13年外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ。13〜19年Gatmaytan Yap Patacsil Gutierrez & Protacio(C&G Law)(フィリピン)ジャパンデスク。17年T&K法律事務所入所。東京弁護士会所属。
葛西 悠吾
弁護士
Yugo Kasai
14年京都大学法学部卒業。16年京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻修了。17年弁護士登録。18〜19年小島国際法律事務所。19〜22年OMM法律事務所。22年T&K法律事務所入所。第二東京弁護士会所属。
大野 徹 弁護士
弁護士
Toru Ohno
15年東京大学法学部卒業。17年東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。18年弁護士登録。19〜20年インフォテック法律事務所。20年T&K法律事務所入所。第一東京弁護士会所属。
田畑 早紀
弁護士
Saki Tabata
15年千葉大学法経学部法学科卒業。17年早稲田大学大学院法務研究科修了。19年弁護士登録。19〜21年佐藤総合法律事務所。21年T&K法律事務所入所。第二東京弁護士会所属。