弁護士法人大江橋法律事務所 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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長年の製薬案件実績を武器にライフサイエンス・グループが活動

国内外の投資・M&A案件、独禁、知的財産、紛争解決および企業再建・再編等で名高い弁護士法人大江橋法律事務所は、1981年の設立以来、発展を続け、西日本最大の法律事務所として活動してきた。現在は、大阪・東京・名古屋、そして中国・上海の4拠点において、全国のクライアントにあらゆる分野のリーガルサービスを提供している。
そんな同事務所がライフサイエンス・プラクティス・グループ(ライフサイエンスPG)を組織したのが、今から約3年前のことである。21世紀は“生命科学の世紀”と言われており、中でもライフサイエンスは、人類を悩ます病の克服や食料・環境問題の解決など、人々の生活に直結したさまざまな領域での貢献が期待されている、いわば人類の希望を実現するための分野である。
「ライフサイエンスに関わる法律は、非常に多岐にわたります。そのため、所内でライフサイエンスPGを立ち上げ、ライセンス、共同研究開発、知的財産、M&A、製造物責任・リコール、個人情報保護などさまざまな分野の実務知を集結し、クライアントのビジネスにより直結したワンストップサービスを提供することを目指して活動しています」(廣瀬崇史弁護士)。
「事務所設立地の大阪は、江戸時代から多数の製薬企業が集まっていた都市で、当事務所がそうした企業に対してさまざまなアドバイスをしてきた実績があります。また、バイオテクノロジーやIT技術を用いた新しい製品・サービス等、先端的な分野に関する案件もご依頼いただくことにより、さらに実績とノウハウを蓄積してきました」(小山隆史弁護士)。
もともと同事務所には、医薬品等に関する製造物責任訴訟、特許訴訟、国際仲裁等の大型紛争案件やライフサイエンス分野のM&A、ライセンス、共同開発、その他の取引案件について多数の実績がある。それらに加えて、独立行政法人医薬品医療機器総合機構のOBのアドバイザー就任や、これまでに連携した弁理士を含む外部専門家や海外の法律事務所との関係強化なども行っている。このように、40年以上の実績に裏づけられた実務知の活用、ビジネスを熟知した多様な分野の専門家が連携したサービス、多くの紛争経験・不祥事対応を踏まえた最善のアドバイスを行うべく、ライフサイエンスPGは活動している。

法律知識だけでは足りない実務慣行を踏まえた対応の重要性

「医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」)は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品を規制対象として、これらの品質、有効性、安全性を確保することなどにより、ヒトの生命、健康を守ることを目的としていることから、他の分野に比べ多くのさまざまな規制が存在する。また、医薬品等の製造販売業や製造業等に関する許可登録制度の運用は、同法を所管する厚生労働省から各都道府県等に移管されているところがあるため、自治体によって対応の詳細が異なりうるという特殊性も併せ持っている。
「規制当局からは、政省令や関係通知、ガイドライン等が出されていますが、基準が必ずしも明確でない場合もあり、行政指導が一定の影響を持ちます。たとえば、“薬機法の対象となる製品に何らかの問題がありそうだ”と当局が考える場合、“自主的に回収した方がよいのでは”と行政指導を受けることがあります。しかし、薬機法に違反しているか否かの明確な判断が示されないこともあり、にもかかわらず自治体の当局から“自主的な回収”を促されることは、特に日本での業務が浅い外資系企業にとってはなかなか受け入れられないことがあります。こうした場合は、“自主的”に従わないことによって発生する当局とのやり取りによって、どのくらいコストや問題が発生するかなどを説明するとともに、当局の担当者にも問題意識をより明確にするよう求めるなどして、当局との円滑なコミュニケーションをサポートしています。また、薬機法の対象となる製品の広告表現等を一つとっても、所管する自治体間で見解が分かれるようなこともあります」(小山弁護士)。
このほかにも、医薬、医療業界にはさまざまな慣習がある。医薬品、医療機器ともそれぞれに業界団体があり、自主的なガイドラインが作成されてもいる。こうした業界事情も踏まえたうえで法的サポートを行うことで、ビジネスの円滑な推進を支えることが重要だという。

小山 隆史 弁護士

進化する技術への対応 テクノロジー×ライフサイエンス

近年、健康や予防医療への意識の高まりと、AIを含むIT技術や科学技術の発展とが相まって、さまざまなライフサイエンスに関係する製品やサービスが開発・提供されている。当該事業には、従来ヘルスケア事業を行っていなかった企業やスタートアップ企業も参入している。これらの製品やサービスには、ライフサイエンスに関するさまざまな法規制が関わり、中には法律の条文や裁判例だけでは対応できない事項も多く存在することから、従来からこれらの事業に取り組み、一定の知見のある企業に加え、過去の取組みやノウハウの蓄積が多くない企業を法的にサポートすることも重要である。
「たとえば、ヘルスケアに関するプログラムやサービスを提供する場合、“規制対象となる医療機器に該当するか、医行為に該当するか”等が問題になり得ます。関連法規の条文や裁判例の文言は抽象的な基準にとどまるため、判断が容易でないことがしばしば生じます。たとえば、“医行為”については、裁判例に加え、通達、ガイドライン、グレーゾーンの解消制度の活用事例や、その他の政府の公表資料を考慮し個別に判断することになります。“医療機器”の該当性についても、政府の通知、ガイドライン、プログラムの医療機器該当性判断事例、医療機器プログラム事例データベース、グレーゾーン解消制度の事例等を参考に判断していくことになりますが、いずれにおいても該当性の判断が明確にならず規制当局とのコミュニケーションが必要になる場合があります。また、ライフサイエンスに関する製品・サービスの研究開発においては、ヒトを対象とする生命科学・医学系研究に関しての倫理指針等への準拠や倫理委員会の審査等も考慮する必要もあるでしょう。
ベンチャー企業をはじめ、社運をかけた製品やサービスの開発や上市を速やかに行いたいクライアントに対して、どのようにすれば円滑な事業推進ができるか知恵を絞るよう心がけています」(廣瀬弁護士)。
「新しい技術については自治体でも容易に回答することは難しく、厚生労働省との調整になることも多いです。ただ、明確な回答を得ることが難しい場合が生じることにも留意が必要です。また、同業者の動向や類似のサービス、製品の状況を考慮することも重要です。仮に、規制当局の承認が必要になる場合には、相当の期間や費用が必要になります。規制事項に該当しないように製品をデザインするか、それとも正面から承認を取得する前提で動くのかといった判断が重要になる場面も存在します」(小山弁護士)。
「製品の開発が進んでからだと後戻りがしにくいので、早めの段階で弁護士やその他の専門家にご相談いただき論点を整理することも重要です。初期段階でも、“こんな感じのことをやりたいのですが”とのイメージや、実施したいシステムのしくみなどを持って相談いただくことも増えています。先端技術を持っていらっしゃるクライアントをサポートするためには、前述の法分野のみならず、知的財産法、独禁法、個人情報保護法、会社法など広い知識がないと、論点の抽出や適切なアドバイスをすることができません。自分の守備範囲を広げつつ、それぞれに強みを持つライフサイエンスPGの同僚と協力しながら、総合力を発揮して対応することが重要だと感じています。また、当事務所では新人弁護士時代にさまざまな分野の案件を経験できるようにしており、そこで培われた広い視野も役立っていると思います」(廣瀬弁護士)。

廣瀬 崇史 弁護士

ライフサイエンス分野特有の多様な考慮事項への対応

前述のとおり、ライフサイエンス分野の企業をサポートするには、薬機法だけではなく、会社法、M&A、知的財産、個人情報保護、製造物責任など多様な法分野の知見を、有機的に組み合わせて提供することが不可欠である。M&Aや知的財産の取引一つをとっても、特有の考慮事項がある。
「たとえばM&Aの場面では、医薬品・医療機器に関する許可や承認の取扱いを意識したスキームの選択、スケジュールの検討等が必要になります。また、M&Aの対価の設定の仕方(金額調整)や在庫の取扱いについても規制のしくみや業界の慣行を考慮した工夫が必要です。ライセンス契約においても、開発過程、承認制度やその他の規制を考慮した対価の設定、開示する技術情報等の調整、ライセンサー・ライセンシー間の協力内容やライセンシーの活動の内容、在庫の取扱いを含むライセンス終了時の対応等に関する条項に工夫が必要となります」(廣瀬弁護士)。
知的財産に関しては、特に医薬品について、製品における特許の重要性が大きいことから、ライバル企業同士の間で、特許無効審判や特許侵害訴訟が起こされることも珍しくなく、知的財産に関する紛争の事業活動への影響も大きくなる傾向にあり、知財戦略も重要である。
「医療機器と医薬品では、特許の持つ価値が異なる場合があります。たとえば、医薬品の場合は、一つの強い物質特許で化合物等をカバーすることが多く、特許を保有することで、他社による実施品の製造・販売を防止して独占的に販売することができます。また、自らの商圏ではない外国の企業にライセンスをして収益を上げることもあります。一方、医療機器、特に機械装置の場合には、複数の多くのパーツで構成されることが多いため、複数の特許で一つの製品をカバーすることもあり、特許の活用方針は必ずしも一様ではありません。また、プログラム医療機器については、プログラムの特許やプログラムと装置の組み合わせによるシステムの特許を取得することにより、他社の参入を排除する戦略があります」(小山弁護士)。
「特許紛争をはじめとする知財の案件では、外国の弁護士や日本の弁理士と協働する案件も少なくないため、外部の専門家とのネットワークも大事にしています」(廣瀬弁護士)。
ライフサイエンス業界は、製品やサービスの研究開発においてヒトを対象とする情報収集が一般的に多く、また、上市後も情報収集が行われるほか、それらの情報を活用した新しいビジネスやサービスが模索されているため、個人情報の適切な管理、活用も重要である。
「健康情報の取扱いは、個人情報保護法やその他の法令、各種のガイドライン・ガイダンスに従う必要があります。たとえば、個人の氏名や患者ID等を削除した健康情報が個人情報に該当するか否かの判断は、医療機関側と受領企業側とで異なる場合があります。また、医療機関から個人データを企業が受領する場合、本人の同意を得る場合以外の方法もありますが、実際上の運用は容易でないことがあります。さらに、海外に駐在する人に診療相談サービスを提供するような場合、欧州であればGDPRの規制も考慮する必要があります」(小山弁護士)。
「共同研究や開発の場合も、協働者間でのデータの移転等が問題になることがあります。なお、アジア諸国ではGDPRを参考とした個人情報保護法を制定する国が増えつつあり、注意が必要です」(廣瀬弁護士)。
また、ライフサイエンス分野は、ヒトの生命・身体に関する製品・サービスを扱う以上、万が一にも健康被害が生じた場合、多数の利用者から多額の損害賠償を求められるリスクがある。また、多額の研究開発投資が必要となるような医薬品などのライセンス契約や共同研究開発では、紛争時の対象額も大きくなりうることにも注意が必要だ。
「当事務所には、大型訴訟や仲裁案件の経験を有する弁護士が多数所属しており、紛争解決の視点を持ちながらアドバイスをすることができます。なお、リコールの場合、当局から命令を受けてすることはほぼなく自主的に行うのが通常ですが、そのようなリコール対応に豊富な経験を有する弁護士も所属しています。実務的視点を踏まえ、慎重かつスピード感を意識した対応やアドバイスができるよう心がけています」(廣瀬弁護士)。

ライフサイエンス・プラクティスの基礎 大江橋法律事務所の若手育成力

既に見たように、ライフサイエンス分野を法的にサポートしていくためには、法に対する総合的な知識と理解、そして応用する力が不可欠である。
「当事務所では、若いうちから、訴訟、倒産、会社法、知財、コンプライアンス、取引案件等に関する事案に広く関わるよう指導されます。このことは、ライフサイエンス分野の実務でも非常に役に立ちます。たとえば、ライセンス契約などでも“倒産したらどうなるのか”“紛争予防のために何が重要か”などを考えたうえでアドバイスができます。また、一つの分野にとどまらない広い視点が、企業の経営層との対話にも役立ちます。しっかりした基礎力が、個々の弁護士や事務所自体の力を伸ばすことにつながると考えています」(廣瀬弁護士)。
「契約書の文言をレビューするときでも、なぜこの文言が入っているのか、その理由や背景を経験上も理解していると、クライアントへのアドバイスに説得力が出ると思います。たとえば、“この条項はどうでしょうか”と聞かれた場合に、“過去にこのような紛争になったことがあるため削除した方がよいですよ”とその先のリスク度合いについても具体的な説明をしながらアドバイスをすると、クライアントも裏づけが理解できて納得されやすくなりますね」(小山弁護士)。
同事務所の幅広な経験蓄積が、後に経営層との対話、法律実務の対応の入口においての広い論点整理、適切なチーム編成を行うことなどにつながり、クライアントへ質の高いサービスを提供することを可能としている。

→『LAWYERS GUIDE 2024』を「まとめて読む」
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 DATA 

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所属弁護士等:弁護士158名、弁理士5名、外国法事務弁護士6名(2023年12月現在)

沿革:1981年1月「石川・塚本・宮﨑法律事務所」を設立。1983年1月名称を「大江橋法律事務所」に変更。1995年5月上海事務所開設。2002年8月「弁護士法人大江橋法律事務所」設立。2002年9月東京事務所開設。2015年9月名古屋事務所開設

小山 隆史

弁護士(日本・NY州)・弁理士
Takashi Koyama

97年神戸大学大学院法学研究科修了。99年弁護士登録。03年Franklin Pierce Law Center修了(LL.M. in Intellectual Property)。04年ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校修了。05~07年外務省経済局経済連携課(経済連携協定交渉官、主に知的財産、投資、競争政策等を担当)。15~20年外務省経済局知的財産室室長兼内閣官房TPP等政府対策本部交渉官(知的財産分野)。一橋大学大学院非常勤講師。東京弁護士会所属。

廣瀬 崇史

弁護士(日本・CA州)
Takashi Hirose

06年東京大学教養学部総合社会科学科卒業。07年弁護士登録。14年Harvard Law School卒業(LL.M.)。14~15年Paul, Weiss, Rifkind, Wharton & Garrison LLP(NewYork Office)勤務。15年カリフォルニア州弁護士登録。16年東京外国語大学非常勤講師(ビジネス法の知財法担当)。21年~AIPPI(国際知的財産保護協会)/Standing Committee Commercialization of IP Vice Chairman。第一東京弁護士会所属。

『テーマ別 ヘルスケア事業の法律実務』

著 者:田中宏岳・古庄俊哉・小山隆史・廣瀬崇史・小森悠吾・吉村幸祐・山田真吾・黒田佑輝[著]
出版社:中央経済社
価 格:4,950円(税込)

『類型別 スポーツ仲裁判例100―仲裁判断のポイントと紛争解決の指針』

著 者:宮本聡・細川慈子・佐藤恵二・上原拓也・簑田由香[著]
出版社:民事法研究会
価 格:4,400円(税込)

『ゼロからわかる ESG・サステナビリティ法務Q&A』

著 者:弁護士法人大江橋法律事務所 ESG・サステナビリティ プラクティスチーム[編]、澤井俊之・平井義則・佐藤恵二・十河遼介・橋本小智・石田明子・土岐俊太・山本大輔・国本麻依子[著]
出版社:一般社団法人金融財政事情研究会
価 格:3,300円(税込)(2024年1月刊行予定)