渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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サステナビリティの先駆け的存在 委員会設置で対外的に伝えやすく

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業では、従前から女性や外国人をはじめさまざまなバックグラウンドの弁護士・外国弁護士が活躍できる環境を積極的に整えており、サステナビリティに関しては業界をリードしてきたとの自負がある。さらに2023年1月には、近年のこの分野への関心の高まりを受け、サステナビリティ委員会を立ち上げて、取組みの“見える化”を図るとともに、さらなる活動の拡充を目指している。
「“サステナビリティ宣言”を事務所のホームページに掲載するとともに、トランジション戦略、現代奴隷法に係る声明、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の尊重の詳細を伝えるページを設置しています。また、1年の活動を踏まえたアニュアルレポートを作成することとし、2023年のレポートを近々公開する予定です」と鈴木由里弁護士は説明する。さらに海外における“ビジネスと人権”やESGの分野の情報も、ニューズレター等で発信を進めている。

従前のESGの取組みを時勢の変化に合わせ強化

同事務所のサステナビリティへの取組みは、大別すれば①女性活躍、②外国人活躍、③法の支配、④環境課題解決になる。「当事務所は従来から女性比率が高く、女性パートナーも多い傾向にあります。これは、国内はもちろん、海外の法律事務所一般よりも高い比率です。この点は、2015年の第1回第二東京弁護士会ファミリーフレンドリーアワードをはじめとする数々の受賞歴にも表れています。コロナ禍前からリモートワーク環境を整備しカスタマイズ可能な勤務形態にしていることが、多様なバックグラウンドの弁護士が継続して働き続けることができる一因でしょう。フレキシブルな勤務形態を選択しても、もちろん不利益はありません」(鈴木弁護士)。
「女性弁護士が積み上げた実績が後進のキャリア形成を後押ししている」と語るのは丹生谷美穂弁護士。
「子育てなどで時間の制限があっても成果を出す先輩や同僚の存在が、同様の状況にある弁護士を支える大きな力になっています」(丹生谷弁護士)。
同事務所は外国弁護士の比率も高い。
「当事務所は外国弁護士との協業の先駆け的存在で、2005年の法改正で外国法共同事業の制度が始まった際の登録第1号です。外国弁護士と対等な関係を結び、パートナーとして実力を発揮し売上を増やすことを奨励する国内法律事務所は実はあまり多くありません。当事務所では国籍に隔てなく日本人同様に業務に取り組むことが当然の環境です」(鈴木弁護士)。
「英米のみならず東・東南・南アジア・欧州・豪州などの弁護士が所属しており、多方面のネットワークを有し、情報にアクセスできることも強みとなっています」(丹生谷弁護士)。
同事務所では法の支配の普及にも努める。
「企業の職場環境の改善、労使問題、下請企業の保護、組織のガバナンス、不正防止の取組み等に対する弁護士による支援は、今後ますます重要となるでしょう」(丹生谷弁護士)。
「ビジネスと人権等へのアプローチのほかに、力による現状変更や根拠のない身体拘束について批判をしていくことも肝要です。民主主義国家の弁護士としてリーガルサービス等を通じて世界へ価値観を共有していきたいですね」(鈴木弁護士)。
環境課題解決については、企業の環境案件、環境インフラ整備、国等から受託した調査を扱うほか、所内でも環境負荷軽減の取組みを行っている。
「紙の印刷の削減や環境負荷の低い資材の導入を始めています。外国弁護士からボランティア活動の情報なども入手し、“よい”と思ったことは積極的に導入しています」(鈴木弁護士)。

福岡での拠点設立で東京並みのサービスを九州へ

2022年、同事務所の提携事務所であるA&S福岡法律事務所弁護士法人が設立された。古くからの大企業・中小企業や多くのベンチャー・スタートアップ企業が生まれる福岡でのリーガルニーズを現地で満たすことがその目的だ。
「福岡をはじめとする九州地方には規模の大きな会社も多く、高度なサービスへの需要もありますが、これまでは東京・大阪の弁護士に依頼される企業も多かったかと思います。こうした東京・大阪並みの対応が福岡で可能であれば喜んでいただけると考えたのです」と語るのは、A&S福岡法律事務所弁護士法人の代表弁護士である臼井康博弁護士だ。
所属する弁護士等は日本の弁護士が4名と台湾弁護士(外国法事務弁護士の登録はない)が1名。取り扱う分野は企業法務全般で、スタートアップ支援や金融レギュレーション、クロスボーダー投資、合弁、M&A、紛争処理など幅広い。提供するサービスは東京で第一線の弁護士が担当する場合と遜色がないレベルだ。
「当事務所に所属する弁護士の多くは、東京を拠点とする顧客からの依頼も扱っています。私はコロナ禍をきっかけに福岡に移住し、福岡で当事務所を開設しましたが、現在も、リモート環境を利用するなどして、東京に拠点を有する顧客からの依頼を問題なく扱うことができています。この環境は、顧客にとっては全国どこにその拠点があっても良質のサービスが受けやすくなり、弁護士にとっても、業務内容によっては事務所の所在場所に顧客の範囲が縛られにくいという利点をもたらしました」(臼井弁護士)。

ハイレベルサービスを実現する人材が集まる九州の拠点に

A&S福岡法律事務所弁護士法人には、元検察官や省庁勤務経験者、金融機関のインハウス経験者など、多様かつハイレベルな人材が所属する。臼井弁護士も証券会社や外資系メーカー、官民ファンド等への出向経験があり、英語対応も可能だ。「Web会議の普及で場所を選ばなくなったとはいえ、九州で“距離の近さ”を求めるニーズは存在します。加えて、事業承継M&Aや福岡の国際金融都市構想に関連した事業への金融商品取引法の英語でのアドバイスなど、知見が活きる余地も非常にあります。当事務所は高いスキルを持つ弁護士が九州で活躍する受け皿にもなりうると考えています」(臼井弁護士)。
九州は台湾企業・TSMCの進出で半導体関連産業の案件の増加が見込まれている。「九州には中国の弁護士が多少はいますが、台湾の弁護士は非常に珍しい。より的確な対応のため、台湾の理律法律事務所から傅嘉鈴外国弁護士(外国法事務弁護士の登録はない)の出向を受け入れ、ニーズに合致したサポート体制を整えています」(臼井弁護士)。

東南アジア地域の法的支援を密接なネットワークで広くカバー

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業は日本企業の進出が活況の東南アジア諸国でのリーガルサービスにも力を入れている。「労働法など法分野ごとの海外ネットワークに複数所属し、会合等を通じて直接顔を合わせたことのある現地の弁護士とネットワークを作ってサービスを提供しています。この手法で主要国地域以外もカバーできる体制を作っています」(鈴木弁護士)。
また、常に数人の弁護士を海外に駐在させ、現地での法制度やその運用の把握、ネットワーク作りにも努める。
「主要国については駐在経験がある弁護士が必ず所属しています。私もインドネシア・シンガポール・マレーシアに駐在経験があり、案件に取り組む際は個人的なネットワークも活用しています」(三澤充弁護士)。
「私はインドネシアに幼少期に3年滞在し、弁護士としても3年弱現地事務所に出向していました。現在は日系企業のインドネシア進出や撤退のサポートが多いのですが、現地の経験があるからこその機微もお伝えできればと思っています」(柿原達哉弁護士)。

注目を集めるベトナムに集中的に弁護士を派遣

東南アジアプラクティスにおいて同事務所が特に力を入れているのがベトナムだ。
「近年、日系企業によるビジネスが活況です。当事務所からは約15年にわたって継続して弁護士を派遣しており、東京事務所での知見をバックグラウンドとして持つ弁護士と現地の各分野の専門家との提携を生むことでさまざまな業種や分野の日系企業の課題に柔軟に対応したいと考えています」(上東亘弁護士)。
「将来的には拠点を設立し、現地弁護士を自前で採用することでスムーズかつリーズナブルにサービスを提供する体制も整えたいですね。相談しやすい環境を整えて現地でのビジネスをより進めていただきたいですし、日本・ベトナムの双方が稼働するコストも拠点があれば抑えられます」(入江克典弁護士)。
ベトナム案件へのさらなる注力の第一歩としてマイ・ティ・ゴック・アイン外国弁護士(ベトナム社会主義共和国。外国法事務弁護士の登録はない)も入所した。
「13年間、日本の顧客や弁護士と業務に取り組んできました。“規制や制度が不完全でグレーゾーンが多い”と言われる実務について、法務と市場に対する深い理解と現地ネットワークの活用でビジネスを高い水準で支援することが可能です」(マイ外国弁護士)。

外国法事務弁護士と一丸となり海外PFをきめ細やかにサポート

島﨑哲弁護士とダニエル・ジャレット外国法事務弁護士(連合王国法)は同事務所の海外プロジェクトファイナンス案件を牽引する存在だ。
同事務所のプロジェクトファイナンスチームには17名が所属し、海外案件に関しては11名が業務に携わる。積極的に採用活動を行っており、今後も増加する予定だ。その特色は外国法事務弁護士の所属比率が高いこと。ジャレット外国法事務弁護士のほか、デビッド・タン外国法事務弁護士(連合王国法)、デレック・シモンズ外国法事務弁護士(連合王国法)をはじめ、英米系の事務所で多数のプロジェクトファイナンス案件に携わった外国法事務弁護士がチームとなって日本の弁護士とともにアドバイスを提供する。
「中心となっている3名のパートナー外国法事務弁護士に加え、さまざまな地域でのプロジェクトファイナンス案件の経験を持つ各国の弁護士が所属しています。所内の外国法事務弁護士の比率は高く、風通しのよい組織なので、チームとして一丸となってアドバイスを提供できています」(ジャレット外国法事務弁護士)。
「日本国内のクライアントに対して海外のプロジェクトファイナンスに関するアドバイスをすることが大半です。海外の事務所並みのリーガルサービスを外国法事務弁護士や外資系法律事務所に所属した経験のある日本人弁護士が提供し、日本語で細かいニュアンスの解説やきめ細やかなサポートを行う点が当事務所の特色といえますね」(島﨑弁護士)。

注目が高まるエネルギー分野には経験豊富な弁護士等が在籍

同事務所のプロジェクトファイナンスによる資金調達は、資源開発事業、電力事業、インフラ整備事業、プラント建設事業、船舶事業など幅広い。中でも近年投資先として注目を集める再生可能エネルギー分野やこれまで日本企業の大きな投資先であったLNG関連分野に関しては、島﨑弁護士は政府系金融機関、ジャレット外国法事務弁護士は大手総合商社に出向経験があり、多数の案件を経験してきた。
「今後さらに盛んになると見込まれるCCS・CCUSへの投資については、私は主に北米案件のプロジェクトファイナンスを経験しています。各弁護士の経験に基づいて、高度なものから噛み砕いた基礎的なものまで柔軟に的確なアドバイスを実施していきたいと思います」(島﨑弁護士)。

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 DATA 

ウェブサイトhttps://www.aplawjapan.com/

所在地・連絡先
〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル
【TEL】03-5501-2111(代表) 【FAX】03-5501-2211


法人名:渥美坂井法律事務所弁護士法人

事務所名称:渥美坂井法律事務所・外国法共同事業

所属弁護士会:第二東京弁護士会

グループ所属弁護士等:パートナー108名、オブ・カウンセル19名、アソシエイト92名、顧問/コンサルタント10名、客員3名、公認会計士/税理士等8名※(2023年12月現在)
※ 弁護士資格を有するパートナーおよびアソシエイトを含む

沿革:1994年設立、2005年4月外国法共同事業開始、2014年8月ベルリン提携オフィス開設(2015年12月フランクフルトへ移転)、2015年1月ロンドンオフィス開設、2021年2月ニューヨーク提携オフィス開設、2022年9月福岡提携オフィス開設

鈴木 由里

弁護士
Yuri Suzuki

シニアパートナー弁護士。97年早稲田大学法学部卒業。01年弁護士登録。05年New York University School of Law修了(LL.M. in Corporation Law)。06年ニューヨーク州弁護士登録。第二東京弁護士会所属。

丹生谷 美穂

弁護士
Miho Niunoya

シニアパートナー弁護士。91年一橋大学法学部卒業。93年弁護士登録。97年Northwestern University School of Law修了(LL.M.)。東京弁護士会所属。

臼井 康博

弁護士
Yasuhiro Usui

パートナー弁護士。04年慶應義塾大学法学部卒業。06年上智大学法科大学院卒業。07年弁護士登録。14年Queen Mary College, University of London修了(Diploma in Intellectual Property Law)。15年University of Pennsylvania修了(LL.M.)。22年A&S福岡法律事務所弁護士法人設立、同法人代表弁護士就任。福岡県弁護士会所属。

三澤 充

弁護士
Mitsuru Misawa

パートナー弁護士。00年早稲田大学法学部卒業。05年弁護士登録。11年Northwestern University, School of Law修了(LL.M.)。13年Georgetown University, McDonough School of Business修了(MBA)。東京弁護士会所属。

上東 亘

弁護士
Wataru Kamihigashi

パートナー弁護士。06年一橋大学法学部卒業。09年大阪大学大学院高等司法研究科修了。10年弁護士登録。19年Georgetown Law Center修了(LL.M. in International Legal Studies with International Arbitration & Dispute Resolution Certificate)。第二東京弁護士会所属。

入江 克典

弁護士
Katsunori Irie

オブ・カウンセル弁護士。02年慶應義塾大学経済学部卒業。07年慶應義塾大学法科大学院修了。09年弁護士登録。15年University of East Anglia修了(An Introduction to Key Issues in Developing Studies)。東京弁護士会所属。

柿原 達哉

弁護士
Tatsuya Kakihara

オブ・カウンセル弁護士。05年九州大学卒業。10年明治大学法科大学院修了。13年弁護士登録。東京弁護士会所属。

マイ・ティ・ゴック・アイン

外国弁護士(ベトナム社会主義共和国)
Thi Ngoc Anh Mai

オブ・カウンセル弁護士。07年Ho Chi Minh City University of Law卒業(LL.B.)。12年ベトナム社会主義共和国弁護士登録。Ho Chi Minh City Bar Association所属。外国法事務弁護士登録はない。

島﨑 哲

弁護士
Akira Shimazaki

パートナー弁護士。05年上智大学法学部卒業。08年上智大学法科大学院修了。09年弁護士登録。18年University College London修了(LL.M.)。19~20年Atsumi & Sakai Europe Limited(London)。第二東京弁護士会所属。

ダニエル・ジャレット

外国法事務弁護士(連合王国法)
Daniel Jarrett

パートナー弁護士。09年University of Cambridge卒業(LL.B.)。10年The University of Law修了(LPC)。13年イングランドおよびウェールズ事務弁護士(ソリシター)登録。16年外国法事務弁護士登録(連合王国法)(渥美坂井法律事務所弁護士法人はイングランド及びウェールズのソリシターズ・レギュレーション・オーソリティによる規制の適用を受けていない。)。東京弁護士会所属。