弁護士法人北浜法律事務所 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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積み重ねてきた知識と信頼で金融機関のクライアントが増加

事業再生や紛争解決、渉外業務などで豊富な実績を有する弁護士法人北浜法律事務所は、金融関連相談の受任件数が年を追うごとに増加している。その内容はローン取引に、ファンド組成、金融規制、金融取引から派生した紛争処理解決と幅広い。
2018年から3年半にわたり金融庁総合政策局リスク分析総括課リスク管理検査室経営管理等チーム、同フィンテックモニタリング室などへの勤務経験を持つ覺道佳優弁護士は、入所以来、地銀再編、金融規制に関する相談、資金移動業の新規登録や認可取得に向けたサポートなど同事務所の金融関連の案件に対応してきた。
「当事務所は伝統的に事業再生や倒産分野を強みとしてきた事務所であったため、銀行が相手方になる場合もありました。しかし近年は、銀行や信用金庫、金融商品取引業者、資金移動業者などから相談を受任することが多くなっています。その中には、金融機関の子会社等に関するご相談から入り、信頼をいただくうちに、親会社である金融機関の基幹業務についてのご相談も受任するようになったというケースもあります」(覺道弁護士)。
同じく主に金融規制についてのアドバイスを強みとしている太田慎也弁護士も、入所したばかりの頃から地銀再編、金融規制に関する相談、ファンド組成など、詳細かつ深い理解が求められる金融関連法務の相談対応に従事してきた。
「“1年目であろうとプロとして仕事をすべき”という当事務所の理念から、若い弁護士でもクライアント対応の最前線に配置されます。金融分野は法改正が頻繁、かつ、参照すべき法令およびパブリックコメントの量も膨大です。他方で、金融機関は弁護士に求める水準も他業種と比較しても高いという特徴があります。“知らないことがあるのは恥ずべきことだ”と真摯に知識を蓄え、先輩の助けも借りつつ業務に取り組むうちに、ご相談いただく機会が増えてきたように思います」(太田弁護士)。

金融規制法対応で必要とされるのはビジネスに寄り添うアドバイス

金融分野は大別して間接金融と直接金融があり、間接金融では預金者をはじめ資金提供者の保護を、直接金融は投資家の保護および市場の健全性の確保が必要とされる。これらを実現するため、金融商品取引法、銀行法、資金決済法などの金融規制法が詳細な条文形式で制定されており、さらに各法令には政令および内閣府令、監督指針・事務ガイドラインがあり、パブリックコメントへの回答や規制の背景や趣旨についても踏み込んで理解することが不可欠となる。各法に基づき強い規制を受けている金融関連のサービスを提供する事業者に対して、一般的には弁護士のアドバイスも保守的になる傾向がある。しかし、実はクライアントが求めているのは保守的な回答とは限らないという。
「規制対応については、金融機関も内部で熟慮された上で本当に問題がないかをご相談されます。その際に必要とされるのは、リスクだけを見ず、“ビジネスモデルとして何をしたいか”を真に理解し寄り添い、踏み込んだリーガルアドバイスであると考えています。金融規制対応に関する相談については保守的な回答になりがちなのですが、ビジネスモデルやクライアントが真に行いたい事業内容等を踏まえ、前向きな回答をすることができないのか、検討することも必要ではないかと考えています」(覺道弁護士)。

覺道 佳優 弁護士

変わりゆく銀行業務に関する規制も踏み込んでアプローチ

銀行は銀行法に基づく規制の下にある。同事務所に持ち込まれる依頼も、特定の業務を、銀行またはその子会社において銀行法に基づき営むことができるかを確認するものが多い。
「銀行が新規ビジネスを検討する際、そのビジネスが銀行法で認められている業務であるか、特に“付随業務”に該当するのか、確認・検討をする必要があるケースが多いです。この点に関しては、直近で言いますと、令和3年度銀行法改正など、法改正および監督指針の改正等がよく行われており、また、付随業務として認められる範囲が金融業界を取り巻く環境、時代の変化等に応じて流動的な面もあるため、今後も重要な検討事項といえます」(覺道弁護士)。
また、地域活性化事業会社への出資や、銀行などが保有する不動産活用に際してのTK-GKスキーム、TMKスキームにおける銀行法・監督指針等への抵触に関する案件も増えている。
「弁護士に対して銀行内の見解の補強を求める場合と、銀行内でも結論が出ていない案件についての見解・判断を求められる場合があります。前者・後者を問わず、銀行法・監督指針はもちろん、施行規則・監督指針等の改正が問題になっている場合には改正に関するパブリックコメントをも確認した上でお答えすることも多いです」(太田弁護士)。
「銀行法の条文の中には、ある程度解釈に幅を持たせているような規定内容になっているものも存在するので、ビジネスを検討している銀行側としても判断がしづらい点は多いです。条文だけでは掴み切れない部分があるからこそ、体系立てて納得感が得られるような説明を心がけています。また、前述の銀行の業務範囲規制および子会社の業務範囲規制に反しないか等の銀行法に関する論点について、我々には豊富な案件経験がありますので、より説得的なアドバイスができる面もあると思います」(太田弁護士)。
銀行法から離れた内容に関していえば、銀行に求められる商習慣上の守秘義務に関する問題、顧客の個人情報の保護に関する問題の相談を受けることも多い。
「銀行が保有する顧客の個人情報のデータベースの活用については、“系列の証券会社において活用できるのか”、さらに“データ分析をどういった形でできるのか”という相談が、近年増加しています。この点は当事務所内で個人情報などの専門分野を持つ弁護士と連携しながら対応しています」(太田弁護士)。
銀行は、窓口で販売した投資信託や保険などの金融商品について損失が生じた場合には、顧客から金融ADRの申し立てを受ける場合もある。この場合、顧客が弁護士を選任していないことも多く、顧客の主張を法的に整理しつつ、適切な対応を組み立てることが重要になるという。
「金融ADRについては、係争金額自体は多額ではないケースも多いですが、窓口での対応や勧誘方法に問題があった場合には、メディアを巻き込んだレピュテーションに関わる問題に発展しかねません。こうした紛争へのサポートについては、大半のメンバーが紛争処理について専門性を持っている当事務所が特にお役に立てるところかと思います」(太田弁護士)。

太田 慎也 弁護士

黎明期の資金移動業に態勢整備も 事業者の規模に合わせて柔軟に

資金移動業者が依頼者になることも多い。資金移動業者は資金決済法による規制下に置かれるものの、規制遵守のための人手が豊富な銀行などの金融機関とは状況が異なるという。
「資金移動業者の規模は大企業から中小企業までさまざまです。法務担当者が十分に在籍している場合もあれば、法務担当とコンプライアンス担当が各1名だけという場合もあります。そのうえ、国内における資金移動業の登録事業者が80社程度と新しい分野で、また、資金決済法自体も金融関連法令の中では比較的新しい法律ということもあり、資金決済法について専門的知識を有している弁護士が必ずしも多くないため、金融規制対応に困っている事業者が多い印象を受けます」(覺道弁護士)。
覺道弁護士は2021年には金融庁総合政策局リスク分析総括課フィンテックモニタリング室に在籍し、資金決済法に精通しているため、資金移動業者の態勢整備の依頼を受けることが多いという。
「資金移動業者は未達債務についての資産保全義務、利用者の送金資金についての滞留規制等、資金決済法に基づく各種義務を負っています。特に近年、資金決済法・内閣府令・事務ガイドラインの大きな改正がなされたこともあり、改正対応についての相談も増えています。また、資金決済法および事務ガイドラインに基づいた法令遵守(コンプライアンス)体制の構築に関するご相談も多いです。対応の際には事業者の規模に応じて回答することが必要となりますが、利用者への影響が大きいサービスであるため、金融庁が納得する体制を構築する必要もあります」(覺道弁護士)。
まだ黎明期ともいえる資金移動業界では、コンプライアンスの担当者となる金融とコンプライアンス両方の知見がある法務人材が不足しており、企業のみでコンプライアンス体制を構築することが難しい場合も多いという。
「資金移動業者として登録はしているので、形式的には体制が整えられている場合でも、実質が伴っていない場合もあります。最たる例がマネーロンダリング対策ではないでしょうか。検査対応も見越し、“体制整備としてまず何をするのか”から事業者のみなさまと話し合いながら作り上げています」(覺道弁護士)。

金融分野への新規参入事業者へ着実な一手となるアドバイスを提供

金融関連事業に新たに参入する事業者(既存事業者が新たなサービス形態への参入を検討するケースもある)からの相談も多く寄せられている。
「資金移動業の新規登録・認可取得に向けた手続のサポート業務も行っており、各種申請書類の作成・レビュー、資金決済法上求められる各種態勢整備に関するアドバイスを行っています」(覺道弁護士)。
銀行業・資金移動業者として免許・登録を受けていない一般事業者からの“為替取引”の該当性についての相談も増加しているという。
「自分たちが行うビジネスの中で、利用者・顧客などから資金を受け入れ、第三者にその資金を交付する取り組みを行う場合に、為替取引の該当性が問題となります。特に収納代行を利用したスキームに関する案件が多いです。第三者から資金を受け取り、別の第三者にその資金を支払う場合は、為替取引に該当する可能性があるため、金融サービスを行っていない一般の事業会社からも広くご相談を受ける分野でもあります」(覺道弁護士)。
多様なサービスが実施されている資金決済の分野だが、法制度が交錯するところでもあり、アドバイスを実施することは簡単ではないという。
「インターネットで調べた他社のサービスについて、自社でも参入したいというご相談は多いですが、慣れているとはいえ毎回苦慮しながら回答をしています。前述の収納代行に当てはめることを希望する事業者が多い印象を受けますが、どのような形態の収納代行なのかによって結論を異にしますので、契約内容、サービス内容等を精査した上で、回答・説明を行っています」(覺道弁護士)。
何が為替取引に当たるのかについては、法律上の定義がなく、難しい側面もあるという。
「為替取引の定義については、銀行法・資金決済法等に規定がなく、最高裁の判例においてのみ言及されていますので、企業の担当者や弁護士が自らの見識・経験に基づき判断していく必要があります」(覺道弁護士)。
覺道弁護士は金融庁在籍時代の経験を基に、為替取引の該当性を検討しているという。
「なぜ為替取引を行う銀行・資金移動業者について免許制・登録制を採用しているのか、つまり“為替取引にはどのようなリスクがあるのか”ということを正確に理解した上で、個々の事案を検討し、より具体的・説得的なアドバイスができるよう心がけています」(覺道弁護士)。

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 DATA 

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所属弁護士等:弁護士92名、外国法事務弁護士2名、中国法弁護士1名、司法書士1名(2022年10月現在)

沿革:1973年創設。2002年東京事務所開設。2006年福岡事務所開設

過去の主要案件:事業再生案件、国内外のM&A・組織再編案件、労務(使用者)関係紛争処理およびコンプライアンス対応、株主総会対応等会社法関連案件、行政訴訟(行政側)、独禁法違反、不当表示、企業不正に対する調査対応およびコンプライアンス対応、税務訴訟、知的財産関連訴訟、国際仲裁を含む海外紛争処理

覺道 佳優

弁護士
Yoshimasa Kakudo

09年北海道大学法学部卒業。11年神戸大学法科大学院修了。12年弁護士登録(大阪弁護士会)、北浜法律事務所入所。18~21年金融庁総合政策局リスク分析総括課に任期付公務員として赴任、リスク管理検査室経営管理等チーム、フィンテックモニタリング室等にて勤務。専門分野は銀行法・資金決済法・金融商品取引法など金融関連法令、コンプライアンス・リスク管理。

太田 慎也

弁護士
Shinya Ota

10年京都大学法学部卒業。12年京都大学法科大学院修了。13年弁護士登録(大阪弁護士会)。14年北浜法律事務所入所。21年大阪府中小企業活性化協議会統括責任者補佐就任。専門分野は、金融商品取引法・銀行法など金融関連法令、倒産・事業再生。

『株式会社・各種法人別 清算手続と書式』

著 者:尾島史賢[編集代表](堀野桂子・太田慎也が共著者として執筆に参加)
出版社:新日本法規
価 格:5,500円(税込)

『下請法の法律相談』

著 者:内田清人・石井崇・大東泰雄・籔内俊輔・池田毅[編](籔内俊輔・若井大輔・加藤駿征・小松原崇史が共著者として執筆に参加)
出版社:青林書院
価 格:6,930円(税込)

『法律構成の違いがわかる!依頼者の属性別 弁護士が知りたいキャッシュレス決済のしくみ』

著 者:金子宏直[編著](堀野桂子・太田慎也が共著者として執筆に参加)
出版社:第一法規
価 格:3,520円(税込)