契約書レビューのポイント 商人間売買における検査条項・契約不適合責任条項 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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はじめに

契約書レビュー総論

契約条項をレビューするうえでは、まず、「法律の定めに従った場合にどうなるか」というデフォルトルールを把握することが重要です注1 注2
そのうえで、自社(買主または売主)の立場から、このデフォルトルールにどのような変更を加え、または、具体化していくべきかを検討します。
そして、当該検討の結果がきちんと反映された契約文言となるように、契約条項をドラフト・修正します。

なお、契約条項の内容が強行規定に反する場合には、当該条項の規定が無効になってしまい(民法91条)、結果として、意図した法的効果を得られなくなってしまうおそれがありますので、契約条項をレビューするうえではこの点にも注意する必要があります。

検査条項・契約不適合責任条項に関する法律上の規律

商人間売買における検査条項・契約不適合責任条項に関する規律(デフォルトルール)を把握するうえでは、民法および商法の規定を確認する必要があります。

まずは、契約不適合責任に関する民法の規定である民法562条~564条および民法566条を確認しましょう。
また、損害賠償について定める民法415条や解除について定める民法541条および民法542条も関係してきます(民法564条参照)。
さらに、商人注3間における売買には、買主による目的物の検査について定める商法526条も適用されますので、この内容も理解する必要があります。

検査条項・契約不適合責任条項をレビューするうえでは、これら民商法が定める規律(デフォルトルール)をきちんと把握することが出発点となります注4

また、契約条項が無効となってしまわないように、強行規定の存在も確認しておきましょう。
契約不適合責任条項に関する強行規定としては、担保責任を負わない旨の特約について定める民法572条が存在します。民法572条については後述します。
加えて、宅地建物取引業法(いわゆる「宅建業法」)、住宅の品質確保の促進等に関する法律(いわゆる「品確法」)にも、担保責任に関する強行規定が存在します。これらの特別法の適用がある取引に関する契約書をレビューする場合には、契約条項の内容がこれらの強行規定に反するものとなっていないかにも注意する必要があります。

商法526条について

上記のとおり、商人間売買においては、デフォルトルールとして、目的物の検査について定める商法526条が存在します。
そこで、契約書においても、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」(民法562条1項参照。以下「契約不適合」といいます)に売主が買主について負う責任について定める条項のほかに、目的物の検査に関する条項を定めるのが通常です。
そのため、本稿では、検査について定める条項を「検査条項」、目的物につき契約不適合が発見された場合の処理について定める条項を「契約不適合責任条項」と呼び、それぞれの条項をレビューする際のポイントについて解説します

なお、商法526条は、(民法上の規律のみに服する場合に比して)買主にとって厳しい規律を定めるものです。
したがって、特に買主の立場から、検査条項・契約不適合責任条項をレビューする場合には、以下のような規定を設けることで、商法526条の適用を排除することができないかを検討すべきケースもあるでしょう。

本契約において、商法526条は適用されないものとする。

検査条項について

まず、検査条項をレビューする際のポイントを解説します。

検査条項の条項例

検査条項の条項例を紹介します。
なお、条項例のうち、第■条第4項は、契約不適合責任条項に分類すべき条項であることから、「Ⅳ 契約不適合責任条項について」で解説します。

第■条(検査及び検収)

1.買主は、本商品の受領後遅滞なく、受領した本商品につき、外観検査及び数量検査を行い、合格したものを検収する。

2.買主は、本商品の受領後●営業日以内(以下「通知期間」という。)に、前項の検査結果を電子メールにて売主に通知する。買主が、通知期間中に当該通知を行わなかったときは、当該本商品は、通知期間満了日に検査に合格したものとみなす。

3.第1項の検査により、本商品に種類、品質又は数量に関して本契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」という。)が発見された場合、買主は、売主に対して具体的な契約不適合の内容を示して前項の通知をする。

4.前項の場合、売主は、買主の選択に従い、本商品の修補、代替品若しくは不足分の納入、又は代金の減額をしなければならない。なお、本項の規定は、買主による損害賠償の請求及び解除権の行使を妨げるものではない。

検査条項のレビューポイント

検査条項をレビューする際のポイントとしては、

(1) 検査方法
(2) 検査期間・通知期間
(3) 通知に関するルール

の3点を挙げることができます。

(1) 検査方法

検査方法について、商法は、具体的な検査方法を定めていません(商法526条1項参照)。
そこで、契約条項において、目的物の内容・性質に合わせて具体的な検査方法を定めておくとよいでしょう。
なお、条項例では、検査方法を、「外観検査及び数量検査」と定めています(条項例第■条第1項)。

(2) 検査期間・通知期間

検査期間について、商法は、「買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない」(下線筆者)としています(商法526条1項)。
そのうえで、通知期間について、商法は、買主が、検査により契約不適合を発見したときは、「直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ」(下線筆者)その不適合を理由とする契約不適合責任の追及をすることができなくなるとしています(同条2項前段)。

しかしながら、「遅滞なく」や「直ちに」が具体的にどのくらいの期間なのかは必ずしも明らかではありません。そこで、契約条項において、検査期間や通知期間を具体的に定めておくことが考えられます。

なお、条項例では、検査期間については商法の「遅滞なく」のままとしつつ(条項例第1項)、通知期間についてのみ「本商品の受領後●営業日以内」という具体的な期間を定める形としています(条項例第■条第2項前段)。

(3) 通知に関するルール

上記のとおり、商法では、買主が、検査により契約不適合を発見したときは、ただちに売主に対して通知を発しなければ、その不適合を理由とする契約不適合責任の追及をすることができなくなるとされています(商法526条2項前段)。

そこで、自社(買主または売主)の立場から、商法が定める通知に関するルールを変更ないし具体化する必要がないかを検討します。
具体的には、通知方法(書面とするか、電子メールとするか等)、どのような場合に通知をするのか(合格または不合格の場合のみ通知をするのか、検査結果にかかわらず通知をするのか等)、通知をしなかった場合の効果(合格とみなすのか、不合格とみなすのか等)といった事項を定めておくことが多いでしょう。

なお、条項例では、電子メールで(条項例第■条第2項前段)、検査結果にかかわらず通知を行う形としつつ(条項例第■条第2項前段)、通知をしなかった場合には合格とみなす形としています(条項例第■条第2項後段)。

さらに、条項例では、買主に対し、通知において、不合格の場合に具体的な契約不適合の内容を示すことを要求しています(条項例第■条第3項)。

契約不適合責任条項について

次に、契約不適合条項をレビューする際のポイントを解説します。

契約不適合責任条項の条項例

契約不適合責任条項の条項例を紹介します。なお、「Ⅲ1.検査条項の条項例」で示した第■条第4項も、契約不適合責任について定めるものですので、合わせて確認をするようにしてください。

第▲条(契約不適合責任)

1.本商品に第■条第1項に定める検査では発見できない契約不適合がある場合、買主が本商品の納入日から1年以内に売主に対してその旨の通知を発したときは、売主は、買主の選択に従い、本商品の修補、代替品若しくは不足分の納入、又は代金の減額をしなければならない。なお、本項の規定は、買主による損害賠償の請求及び解除権の行使を妨げるものではない。

2.前項に定める通知をしなかったときは、買主は、その契約不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が、検収の時までに、当該契約不適合を知り、又は重大な過失により知らなかった場合には、この限りでない。この場合における買主の請求その他の権利行使については、期間制限について定める部分を除き、前項の規定を準用する。

契約不適合責任条項のレビューポイント

契約不適合責任条項をレビューする際のポイントとしては、

(1) 買主が契約不適合責任を追及できる場面
(2) 契約不適合責任の追及方法
(3) 契約不適合責任の追及期間

の定め方の3点を挙げることができます。

(1) 買主が契約不適合責任を追及できる場面

商法によれば、買主は、目的物を受領したときは、遅滞なく、目的物を検査し(商法526条1項)、検査により契約不適合を発見したときは、ただちに売主に通知を発することで、その契約不適合を理由とする契約不適合責任の追及をする権利を保存することができます(商法526条2項前段)。

また、商法によれば、種類または品質に関する契約不適合注5について、契約不適合を「直ちに発見することができない場合」注6においては、買主が6箇月以内にその契約不適合を発見し、ただちに売主に通知を発すれば、買主は、その不適合を理由とする契約不適合責任を追及する権利を失わないものとしています(商法526条2項後段)。

そこで、自社(買主または売主)の立場から、買主が契約不適合責任を追及できる場面(売主の立場から言い換えれば、自らが契約不適合責任を負う場面)に関する商法のルールをどのように変更ないし具体化すべきかを検討します

まず、買主の立場からは、以下のような帰結となるように契約条項をドラフト・修正することが考えられます。

 ただちに発見することができるか否かにかかわらず買主が契約不適合責任を追及できる形とする

買主側の立場からすれば、売主に対して契約不適合責任を追及できる場面はできるだけ限定されたくないのが通常でしょう。
そこで、ただちに発見することができるか否かにかかわらず、一定の期間内(後述の「Ⅳ2.(3) 契約不適合責任の追及期間」参照)に契約不適合を発見して売主に通知さえすれば、契約不適合責任の追及が可能な形にしておくことが考えられます。
また、この趣旨から、検査条項に定める合格ないし合格の通知は、売主の責任を何ら免責するものではないことを明記しておくことも考えられます。

次に、売主の立場からは、以下のような帰結となるように、契約条項をドラフト・修正することが考えられます。

 売主が一切の担保責任を負わない形とする

売主側の立場からすれば、自らが契約不適合責任を負う場面はできるだけ限定しておきたいところです。この観点から、売主が一切の担保責任を負わない形とすることは、売主にとって最も有利な定め方といってよいでしょう。
ただし、このような契約条項とした場合でも、売主は、知りながら告げなかった事実については、責任を免れることはできません(民法572条・強行規定)。

 検収後の目的物については責任を負わない形とする

もっとも、上記のように、売主が一切の担保責任を負わないとすることは、買主側の抵抗が大きいでしょう。
そこで、検査によって発見された契約不適合については売主が責任を負うとしても、目的物が買主等による検査を経て検収された場合には、売主が責任を免れる形としておくことが考えられます。

 検収後の目的物については検査では発見ができない契約不適合についてのみ責任を負う形とする

もっとも、必ずしも検査では発見できない契約不適合も存在しうるところであり、上記のように、検収後の目的物について、売主の責任をすべて免れさせることもまた買主側の抵抗が大きいことが予想されます。
そこで、売主は、(検査で発見された契約不適合について責任を負うほか)検査・検収を経た後の目的物については、検査で発見することができない契約不適合がある場合に限って契約不適合責任を負う形、すなわち、買主が検査で発見できたにもかかわらず契約不適合を見落とした場合には売主が免責される形にしておくことが考えられます。
なお、条項例は、「第■条第1項に定める検査では発見できない契約不適合がある場合」と定めており、この形となっています(条項例第▲条第1項前段)。

 契約不適合があっても契約不適合責任を負わない場面を定める

また、契約不適合がある場合にも、売主が契約不適合責任を負わない場面を定めておくことが考えられます。
たとえば、たとえ契約不適合が発見されたとしても、買主がその契約不適合につき悪意であった場合には、売主が契約不適合責任を負わない形とすること等が考えられます。

(2) 契約不適合責任の追及方法

契約不適合がある場合に買主が採りうる手段については、民法上、

① 履行の追完請求(562条)
② 代金減額請求(563条)
③ 解除権の行使(541条、542条)
④ 損害賠償請求(415条)

の4つが存在します。

そこで、自社(買主または売主)の立場から、かかる民法の規定によるルールをどのように変更ないし具体化すべきかを検討します

なお、契約不適合がある場合に買主が採りうる手段につき、条項例では、検査で契約不適合が発見された場合(条項例第■条第4項)と検査・検収後に契約不適合が発見された場合(条項例第▲条第1項)とで同じ手段を定めていますが、前者の場合と後者の場合とで異なる手段を定めることもありうるでしょう。

まず、買主の立場からは、以下のような帰結となるように契約条項をドラフト・修正することが考えられます。

 売主が、買主が請求した方法と異なる方法で履行の追完をすることを禁止する

民法は、買主が、履行の追完請求を行う場合の具体的な方法として、「目的物の修補」、「代替物の引渡し」または「不足分の引渡し」という3つの方法を定め、これらのうちどの方法で履行の追完を請求するかの選択権を買主に与えています(民法562条1項本文)。もっとも、民法は、「買主に不相当な負担を課するものでないとき」は、売主が、買主が請求した方法と異なる方法で履行の追完をすることを認めています(同項ただし書)。
そこで、かかる民法の規定によるルールを変更し、売主が、買主が請求した方法と異なる方法で履行の追完をすることを禁止しておくことが考えられます。
なお、条項例は、特に売主による履行の追完方法の選択に言及することなく、「買主の選択に従い」と定めており(条項例第■条第4項前段、第▲条第1項前段)、売主が、買主が請求した方法と異なる方法で履行の追完をすることを禁止していると解釈することができると考えますが、契約条項でそのことを明示的に規定することで、より疑義のない契約条項としておくことも考えられます。

 履行の追完を催告することなく代金減額請求を行うことができるようにしておく

民法は、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、催告期間内に履行の追完がないときに、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができるとしています(民法563条1項。ただし、同条2項各号に該当する場合には催告不要)。
そこで、かかる民法の規定によるルールを変更し、買主が、履行の追完を催告することなく、代金減額請求を行うことができるようにしておくことが考えられます。
なお、条項例は、特に催告に言及ことなく、「買主の選択に従い」と定めており(条項例第■条第4項前段、第▲条第1項前段)、買主による履行の追完の催告は不要であると解釈することができると考えますが、契約条項でそのことを明示的に規定することで、より疑義のない契約条項とすることも考えられます。

 解除権の行使、損害賠償請求を妨げないことを明確にしておく

民法の契約不適合責任に関する規定は、解除権の行使や損害賠償の請求を妨げるものではありません(民法第564条)。
そこで、契約条項においても、そのことを確認的に明記しておくことが考えられます(条項例第■条第4項後段、第▲条第1項後段参照)。

次に、売主の立場からは、以下のような帰結となるように契約条項をドラフト・修正することが考えられます。

 履行の追完方法を売主が選択できるようにしておく

上記のとおり、履行の追完方法について、民法は、第一次的に買主に選択権を与え(民法562条1項本文)、「買主に不相当な負担を課するものでないとき」に限って、売主が、買主が請求した方法と異なる方法で履行の追完をすることを認めています(同条1項ただし書)。
そこで、かかる民法の規定によるルールを変更し、履行の追完方法について、売主が任意に選択できるようにしておくことが考えられます。

 履行の追完請求以外の方法を排除する

上記のとおり、契約不適合責任の追及手段としては、民法上、履行の追完請求、代金減額請求、解除権の行使および損害賠償請求の4つが存在します。
そこで、買主による契約不適合責任の追及方法として、履行の追完請求以外の方法を排除しておくことが考えられます。

 賠償範囲を限定する

現行民法下における契約不適合責任に基づく損害賠償については、債務不履行の損害賠償の規律(民法415条、416条)に服することとされています(民法564条参照)。
そこで、かかる民法の規定によるルールを変更し、賠償範囲を限定することが考えられます。
たとえば、賠償責任の対象となる損害の範囲を「直接かつ現実に生じた通常の損害」に限定する、賠償額に上限を設けるといった方法が考えられます。

(3) 契約不適合責任の追及期間

商法では、契約不適合をただちに発見することができない場合において、買主は、目的物の受領後6か月以内に契約不適合を発見してただちにその旨の通知を発しなければ、契約不適合責任を追及することができなくなるとされています(商法526条2項後段、判例注7)。
そこで、自社(買主または売主)の立場から、契約不適合責任の追及期間についての商法の規定によるルールを変更ないし具体化すべきでないかを検討します

まず、買主の立場からは、以下のような帰結となるように契約条項をドラフト・修正することが考えられます。

 契約不適合責任の追及期間を延ばす

買主の立場からすれば、できるだけ長い期間、契約不適合責任の追及をできるようにしておきたいと考えるのが通常でしょう。
そこで、契約不適合責任を追及できる期間につき、商法526条2項後段が定める「6箇月」よりも長い期間とすることが考えられます。

なお、契約条項において契約不適合の責任追及期間を定める場合、何の期間を定めたものなのかを明確にする必要がある点には注意が必要です。
すなわち、商法526条2項後段は、目的物の受領から契約不適合を発見するまでの期間を「6箇月」とし、発見をしてから通知を発するまでの期間を「直ちに」としています。
これに対し、条項例は、契約不適合を発見してから通知をするまでの期間を問題とすることなく、「納入日から1年以内」に通知を発すればよい形としています(条項例第▲条第1項前段)。

 期間制限の定めが適用されない場面を定める

商法は、商法526条2項が定める契約不適合責任追及の期間制限について、売主が、契約不適合について悪意であった場合には適用しないこととしています(商法526条3項)。
そこで、契約条項においても、売主が悪意であった場合には契約不適合責任に関する期間制限の定めが適用されないことを明記しておくことが考えられます。
また、期間制限が適用されなくなる場面を商法526条3項が定める場面よりもさらに広げることも考えられます。
たとえば、売主が契約不適合を過失(または重大な過失)によって知らなかった場合についても、期間制限が適用されない形としておく方法がありうるでしょう(条項例第▲条第2項ただし書参照)。

次に、売主の立場からは、以下のような帰結となるように契約条項をドラフト・修正することが考えられます。

 契約不適合責任の追及期間を短くする

売主の立場からすれば、契約不適合責任を追及されうる期間は、できるだけ短い方がよいでしょう。
そこで、契約不適合責任を追及されうる期間を、商法526条2項後段が定める「6箇月」よりも短い期間とすることが考えられます。

留意点

上記で述べたドラフト・修正の例は一例に過ぎず、他にも様々なパターンが考えられます。
また、契約条項をレビューするうえでは、個別事案の事情に応じた検討が必要になり、検討すべき事項は必ずしも上記で述べた事項に限られません。
たとえば、目的物の保管や輸送に特別の費用がかかる場合には、不合格となった目的物の取扱い(保管方法、返還方法、保管・返還の費用負担、売主による返還受取拒否の場合の処理など)を定める規定を設けるべきではないかの検討をしておくべきでしょう。

[注]
  1. 便宜上「法律」と書きましたが、判例等を含みます。要するに、「契約において特別なルールを定めなかった場合に想定される帰結を把握せよ」ということです。[]
  2. 契約では、法律上のルールが存在しない事項についてルールを定める場合もあります。このような場合には、一般的な商慣習、言い換えれば、「当該取引類型における一般的な契約条項」をデフォルトルールとして考えるとよいでしょう。「当該取引類型における一般的な契約条項」を知るうえでは、自社の過去事例における契約書や書籍等が参考になるでしょう。[]
  3. 商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいいます(商法4条1項)。したがって、会社は、当然に「商人」にあたります(会社法5条参照)が、個人であっても、自己の名をもって商行為をすることを業としていれば「商人」にあたります。[]
  4. 検査条項・契約不適合責任条項に関する民商法の規律については、「契約不適合責任とは?追及手段や期間制限などわかりやすく解説」(BUSINESS LAWYERS)でも解説しています。[]
  5. 商法526条2項後段には「種類又は品質に関して」と規定されており、数量不足に関する言及がありません。学説においては、数量不足については期間制限にかからないという説(青竹正一『商法総則・商行為法〔第3版〕』(信山社、2023)と6か月の期間制限にかかるという説(弥永真生『リーガルマインド 商法総則・商行為法〔第3版〕』(有斐閣、2019)105頁参照。)がありますが、契約条項においては、数量不足を除外することなく期間制限の対象とする定め方や、反対に、数量不足については期間制限の対象外とする定め方も考えられます。[]
  6. その業種の商人が通常用いるべき注意を基準として判断されるものと解されています(弥永・前掲注(5)105頁)。[]
  7. 最判昭和47年1月25日集民105号19頁[]

幅野 直人

かなめ総合法律事務所 パートナー弁護士

12年東京大学法科大学院修了、13年弁護士登録(東京弁護士会)、22年Fordham University School of Law(LL.M. in International Business and Trade Law)修了。契約法務、M&A、企業間紛争などの企業法務案件を幅広く取り扱う。主な著作として『企業法務1年目の教科書 契約書作成・レビューの実務』(中央経済社、2024)

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