長島・大野・常松法律事務所 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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国内外の多様な分野の知見をヘルスケア分野の推進力へ

2012年からヘルスケアに特化したチームを立ち上げた長島・大野・常松法律事務所。テクノロジーの発達に応じて台頭してきたヘルステックの分野にも所内の専門知見を横断的に取り込み、高度かつ複雑な問題に対処してきた。当初3名で取り組んできた本分野は、現在パートナーとアソシエイトを合わせて20名を超える規模となり、チーム外の弁護士を含む多様な専門性を持つ面々で定期的に所内勉強会を開催し、緊密に情報共有・意見交換を行っている。参加するメンバーは東京オフィスに限らず、オンラインで会場をつなぎバンコク、シンガポール、上海、ベトナムなど海外オフィスを含む全事務所での連携が行われている。
「ヘルステック分野はグローバルな視点が不可欠です。各国の法規制、特に個人情報保護法制の動向は常に変化しており、我々は世界各国の弁護士と連携し最新情報を共有することで国際的な動向を見据えたアドバイスを提供しています」と語るのは、チーム発足当初から本分野に取り組む鈴木謙輔弁護士だ。

鈴木 謙輔 弁護士

この点について、データプロテクション分野を専門とし、ヘルステック分野では規制・コンプライアンス対応や契約交渉の助言を行う滝沢由佳弁護士は「たとえばゲノムデータのような機微性の高い情報は、国ごとに異なる規制やガイドラインが存在します。海外の規制にも精通することで、クライアントが将来的な国際展開を視野に入れた戦略を策定できるようサポートしています」と説明する。

政策の未来と研究の最先端の知見を盛り込んだ提案を実施

ヘルスケアチーム所属メンバーには厚生労働省や個人情報保護委員会などの規制当局に出向経験を持つ弁護士も多い。
「コロナ禍での厚生労働省出向経験は、私の大きな礎となっています。先端的医療の普及や医療DX推進に向けて、現場で政策立案に携わってきた経験を活かし、クライアントのビジネスを法規制の観点からサポートするだけでなく、政策動向を踏まえた戦略立案も支援しています」と、ライフサイエンス・ヘルスケア分野を専門とする鳥巣正憲弁護士は語る。鳥巣弁護士は、M&Aやライセンス契約、データ取引などの取引案件から、規制・官公庁対応、政策提言まで幅広く手がけている。
大学病院や研究機関等のアカデミアとの連携も重要な要素だ。「研究機関の方々との対話を通じて、医療現場のニーズや最先端の研究動向をタイムリーに把握するように努めています。医療分野の研究や新たな診断・治療方法の開発場面では、患者同意の取得をはじめ複雑な手続が求められます。企業とアカデミアの橋渡し役として、双方に最適な法的スキームを構築することが重要です」(鳥巣弁護士)。
遺伝子治療等の高度な医療技術の発展に伴う倫理的問題にも配慮する必要がある。「ゲノム編集技術は大きな可能性を秘めている一方で、優生思想を招く危険性や生物多様性への影響など、倫理的な課題も孕んでいます。私たちには紋切り型のサポートではなく、数歩先の議論を見据えたグローバルな視点での見識が求められていると感じます」(鳥巣弁護士)。

鳥巣 正憲 弁護士

ヘルスケア×データ保護法制の国内有数の経験でサポート

ヘルスケア関連データの利活用は、規制対応だけでなく倫理的観点、政策動向、地域ごとの規制も把握する必要がある。滝沢弁護士は複雑な配慮が求められるデータの取扱いについて、クライアントのデータ取得、国内外の法規制対応、体制整備、二次利用、最新技術への対応などあらゆる面からのサポートを行う。
「たとえば、認知症の方など、意思能力に不安のある方や子どもからの同意取得方法は大きな課題です。ご家族や親権者への情報開示範囲、本人の意思確認方法など、状況に応じた適切な手続をアドバイスします。二次利用については、欧米の規制の動向は日本より先行しており、かつ改正が頻繁な分野であるため、その全体像を把握したうえでいかに制約を受けずにデータ取引の契約を行うか、ストラクチャーを組むかについてアドバイスをすることが多いですね」(滝沢弁護士)。

滝沢 由佳 弁護士

鈴木弁護士は、滝沢弁護士を「ヘルスケア領域でのデータ利活用の分野では、国内有数の経験と知識を有する弁護士」と評する。「若手ながら業界特有のルール、一元化されていない情報、業界団体や学会が出す踏み込んだ解釈などに精通する頼もしい存在です」(鈴木弁護士)。

一歩踏み込んだサポートで未来のヘルスケア分野の発展を促進

厚生労働省の「ヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策検討プロジェクトチーム」委員などを務める鈴木弁護士は近年、ヘルスケア分野のスタートアップ支援に注力している。
「スタートアップは未来の医療を創造する原動力。限られたリソースの中で複雑な法規制やビジネス環境に対応しています。法規制への対応はスタートアップにとって大きな負担になりえますが、同時に、正しく対応していくことで、企業の持続的な成長の基盤を築くことができます」(鈴木弁護士)。
すべてのリスクを排除するのではなく、事業への影響が大きいリスクから優先的に対応していく必要があるため、経営状況や事業計画を丁寧にヒアリングしたうえで戦略的なアドバイスを提供している鈴木弁護士は、厚生労働省委託のMEDISO(医療系ベンチャー・トータルサポートオフィス)のサポーターも務めている。「スタートアップ企業は人的資源や費用面での制約があることが多いため、よりリスクの軽重を判断して前向きな解決策を提示するよう心がけています。スタートアップ企業の熱意に応え、日本のヘルスケア分野の発展に貢献したいと思っています」(鈴木弁護士)。

ヘルスケアチーム

不動産分野のパイオニアが大規模で難易度の高い案件をサポート

同事務所の不動産プラクティスチームは、20名のパートナーと約100名のアソシエイトから構成される国内最大級の専門家集団だ。オフィスビル、商業施設、ホテル、リゾート、レジデンス、インフラ・エネルギー関連施設など、あらゆるアセットタイプの売買、賃貸借、流動化/証券化、不動産ファイナンス、M&A、REIT等を含むファンド組成、海外不動産投資・開発、紛争・コンプライアンス案件など、幅広い案件を取り扱う。
「当事務所は、合併前も含め数十年前から不動産分野に強みを持ち、不動産市況や市場トレンドの変化に合わせて成長を続け、今の体制を築いてきました。近年は、データセンター、物流施設など、新しいアセットタイプの案件も増加しています」と語るのは、J-REIT、私募ファンド、クロスボーダー案件などを幅広く手がける内海健司弁護士。内海弁護士は、市場トレンドに合わせて多様なアセットクラスを扱い、事業会社による新リース会計基準を踏まえたセールスアンドリースバック取引や自社保有不動産を活かした私募ファンド運用支援にも精通している。
クライアントは国内外の不動産会社、アセット/ファンドマネジメント会社、レンダー、引受証券会社、投資家、テナント、鉄道会社、商社、電力供給者など多岐にわたり、大規模で難易度の高い案件が多い。「クロスボーダー案件、M&Aや組織再編を伴う不動産取引など、複合的な案件が増加しています。大規模な案件では100人規模のチームで各分野の専門家が作業を分担して行うなど、案件の規模や複雑さを問わず対応できる体制と専門性の高さが当事務所の強みです」(内海弁護士)。

内海 健司 弁護士

個別性の高いアセットライト化も盤石の専門家集団が対応

近年、東京証券取引所による上場企業の低PBRの問題視を受け、多くの企業が自社のアセットライト化を検討している。同事務所は日野自動車株式会社による日野工場跡地の売却、株式会社電通による本社ビルのセールスアンドリースバック、株式会社TBSテレビによる赤坂再開発など、数多くの著名かつ大規模な案件を支援してきた。アセットライト化においては、企業が保有する不動産を単に売却・切り離すだけではなく、組織再編や事業提携を伴うなど複雑な要素が絡み合う。
「企業の資産状況の改善を伴う複合的な要素を加味した大規模な不動産売却は多くの企業にとって経験がありません。当該企業内のチーム構成という“組織作り”からアドバイスする必要があります。まだ一般的な手法が確立している分野ではなく、不動産の個別要素も大きいので、意見交換をしながら打ち手を考える必要があることが多いですね」と、クロスボーダー案件や複合的な案件、中でもM&Aや組織再編を伴う不動産取引を数多く担当する齋藤理弁護士は指摘する。

齋藤 理 弁護士

アセットライト化の手法はさまざまであるが、同事務所が手がける代表的な事例としては、メーカー等による工場跡地の売却、店舗等のセールスアンドリースバック、私募ファンドの活用、ディベロッパーと共同での本社ビル建替共同再開発などが挙げられる。
国内企業の海外投資や海外企業の国内不動産取得などクロスボーダー案件を数多く取り扱う洞口信一郎弁護士は「工場跡地の売却では土壌汚染への対応が重要なポイントです。土壌汚染対策業者を活用した契約ストラクチャーなどを提案しています。また、煩雑な入札プロセスをすべてサポートできる点は当事務所の強みと言えます」と説明する。
また、セールスアンドリースバックを行う場合は新リース会計基準への対応、私募ファンドの活用ではファンドストラクチャーの選択、ディベロッパーと組んでの本社ビルの建替共同開発であれば再開発手法や地権者・テナント交渉が重要になるなど、アセットライト化の手法に応じて焦点となるポイントや執るべき手法は異なる。「私募ファンドについては私募REITや特定の投資家向けファンドの組成が増えています。ただ、多くの企業にとって不動産ファンド運用は未経験の領域であり、新たに金融規制への対応が必要です。体制作りなどからサポートすることも多いですね」(内海弁護士)。

変化し続けるホスピタリティ分野を豊富な経験と新分野研究で対応

同事務所は、1980年代から国際的なホテルチェーンとの契約交渉やSPC(特別目的会社)を活用したホテル開発など、ホスピタリティ分野でリーガルサービスを提供してきたパイオニア的存在でもある。「国際的なホテルオペレーターと国内オーナーとの間で、文化や商慣習の違いを橋渡しする役割も担っています」(齋藤弁護士)。
ホスピタリティ分野は単棟型のホテルだけでなく、リゾートホテルや複合施設内のホテルなど、多様な形態に対応する必要がある。「リゾートホテルでは、他のアクティビティ施設との調整が必要となります。区分所有型の複合施設内のホテルでは、オフィス床などの非ホテルとホテル床との間の責任区分を、区分所有法を踏まえて明確にする必要があります」(洞口弁護士)。

洞口 信一郎 弁護士

さらに、同事務所は、タイムシェア、ブランデッドレジデンス、民泊、IR、MICEなど、新しいコンセプトのプロジェクトにも積極的に取り組んでいる。「私たちは新しいビジネスモデルが登場するたびに関連する法規制を精査し、最適な法的スキームを構築することで不動産プラクティスチームのサービスの幅を拡大してきました。常に変化する市場に対応していくことは私たちの使命と言えますね」(斎藤弁護士)。

需要が高まるデータセンターには新スキームの検討で資金調達を促進

AIの実用化などを背景に、需要が増加し続けるデータセンターについても、開発・運用、投資についてアドバイスを行っている。「データセンターは単なる不動産賃貸とは異なり、サービスなどの運営能力によって価値が左右されるオペレーショナルアセットです」(内海弁護士)。
同事務所はTMK(特定目的会社)を用いたデータセンター案件にも多数関与し、竣工したデータセンターの出口戦略としてJ-REITの活用を関連団体とともに模索している。「実現できれば、投資家からの資金調達を促進し、市場のさらなる発展に貢献できます。関連団体と協力し問題点のピックアップや対応を検討するとともに、規制当局への働きかけも行う予定です」(内海弁護士)。

不動産プラクティスチーム

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 DATA 

ウェブサイトhttps://www.noandt.com/

所在地・連絡先
〒100-7036 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー
【TEL】03-6889-7000(代表) 【FAX】03-6889-8000(代表)


所属弁護士等:弁護士595名(日本弁護士539名、外国弁護士56名)(2024年12月現在)

沿革:2000年1月に長島・大野法律事務所と常松簗瀬関根法律事務所が統合して設立

鈴木 謙輔

弁護士
Kensuke Suzuki

99年東京大学法学部卒業。00年弁護士登録(東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。06年Stanford Law School卒業(LL.M.)。06~07年Kirkland & Ellis LLP(シカゴオフィス)勤務。07~09年に金融庁総務企画局市場課専門官。14~15年厚生労働省参与。24年厚生労働省「ヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策検討プロジェクトチーム」委員。

鳥巣 正憲

弁護士
Masanori Tosu

07年東京大学法学部卒業。10年早稲田大学大学院法務研究科修了。11年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。17年Duke University School of Law卒業(LL.M.)。17~18年Steptoe & Johnson LLP(Washington, D.C.)勤務。19~21年厚生労働省大臣官房勤務。23~24年厚生労働省「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」構成員。

滝沢 由佳

弁護士
Yuka Takizawa

19年東京大学法学部卒業。20年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。ライフサイエンス・ヘルスケア分野、データプロテクション分野を中心に、規制・コンプライアンス対応や契約交渉に関する助言を行う。

内海 健司

弁護士
Kenji Utsumi

92年東京大学法学部卒業。94年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野法律事務所(現 長島・大野・常松法律事務所)入所。99年University of Pennsylvania Law School卒業(LL.M.)。99~00年Paul, Hastings, Janofsky & Walker(Los Angeles)勤務。22年〜東京大学法科大学院客員教授。

齋藤 理

弁護士
Makoto Saito

99年東京大学法学部卒業。00年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。06年University of Michigan Law School卒業(LL.M.)

洞口 信一郎

弁護士
Shinichiro Horaguchi

03年京都大学法学部卒業。05年京都大学大学院法学研究科修了(法学修士)。06年弁護士登録(第一東京弁護士会)、長島・大野・常松法律事務所入所。12年 Duke University School of Law卒業(LL.M.)。12~13年 Haynes and Boone, LLP(ダラス)勤務。

『ヘルステックと法』

著 者:鈴木謙輔[編著]、小山嘉信・箕輪俊介・粂内将人・鳥巣正憲・萩原智治[共著]
出版社:一般社団法人金融財政事情研究会
価 格:1,980円(税込)

『アドバンス債権法』

著 者:長島・大野・常松法律事務所[編]
出版社:商事法務
価 格:11,000円(税込)

『不動産証券化ハンドブック2024』

著 者:一般社団法人不動産証券化協会[編]
(共著者として、井上博登・山中淳二・齋藤理・小山嘉信・洞口信一郎・糸川貴視・粂内将人・宮城栄司・渡邉啓久・加藤志郎・北川貴広が執筆に参加)
出版社:一般社団法人不動産証券化協会
価 格:2,200円(税込)