東京・大阪2拠点で全国をカバー TerraLex加盟で海外案件にも対応
仮差押・仮処分制度研究のパイオニアである吉川大二郎弁護士により大阪で産声を上げ、80年以上にもわたって企業に寄り添い続けるきっかわ法律事務所。2009年6月の東京事務所開設からも早15年が経ち、大阪・東京の2拠点を軸とし、東北や他地域も含む日本全国のクライアントをサポートしている。また、加盟するTerraLex(世界中の200を超える法域の法律事務所が加盟)を活用して、増加傾向にある海外紛争案件対応や、海外企業買収時のデュー・デリジェンス(DD)や契約締結時など必要に応じて現地のファームとの連携も行っている。
「東京事務所において勤務する弁護士は、元々大阪事務所で勤務経験のある弁護士であるうえに、日常的に大阪事務所メンバーと連携した業務も多く、実際に双方の弁護士の行き来も多いことから、東京事務所・大阪事務所間での情報共有や連携はスムーズに行われています。たとえば、大阪を拠点とするクライアントが東京で訴訟を起こされた場合、東京事務所のメンバーが法廷対応をしつつ大阪事務所と共同で案件対応にあたるなど、案件ごとに東京・大阪の最適のメンバーをアサインすることが可能です」(野尻奈緒弁護士)。
ビジネス展開や社会情勢等を踏まえた総合的な観点から最適なアドバイスを提供
「特定の業種ではなく、幅広くあらゆる業種のクライアントに対して、法的観点にとどまらずクライアントのビジネス展開や社会情勢等を踏まえたリスク判断も含め、総合的な視点から最適のアドバイスを行っています」と那須秀一弁護士は語る。同事務所がこうした柔軟な対応が可能なのは、①各弁護士自身が個人的に重点的に取り扱っている法分野以外についても一定の知識を有していること、②法改正をキャッチアップできるよう事務所内で情報共有を行っていること、③定期的に所内勉強会を開催していること、④クライアントからのヒアリングについては時間をかけ、周辺事情や社内事情も含めて綿密に行うこと、の四つの確かな背景があるからだ。
「クライアントの事業の内容・社風・経営陣の考え方をしっかりと勉強して理解することを意識しています。稟議のプロセスや必要な時間、経営層が判断する際に理解しやすい道筋も異なりますので、この点もきちんと押さえて提案するよう心がけています。“自分だったらどのような弁護士に相談したいか”を常に想像しながら案件対応にあたります。そのためには事前の準備をしっかりと行い、ヒアリングをすることが重要です」と山本幸治弁護士は話す。ただ“法的にNG”という回答は誰でもできる。アプローチや方向性で切り抜け、時には“マイナスにならない対応”の仕方も提案する。
「たとえば競争法の案件の場合、“そのクライアントはどの分野で活躍しているのか”“どういった競合他社がいるのか”“どこで利益をとるビジネスをしているのか”を把握したうえで法律に当てはめていきます。また、アグレッシブな対応か、それとも保守的な対応をしたいのかなど、そのクライアントが持つスタンスや重視するポイントに応じたアドバイスを提供しています」(那須弁護士)。
「新規事業の相談を受けたとき、“現状のスキームでは法的に無理でも、方法を変えれば可能になることがないか”を考えます。M&Aの際も、株式取得ではなく新会社を設立して事業だけを取り出す、ホールディングス化を提案するなど、ビジネスの目的に辿り着けるよう模索します。私も含めて民間企業への出向経験のある弁護士も複数在籍していますので、“企業内部の意思決定過程でどのような検討や対応が必要か”といったことを意識できるのも私たちの強みです」(野尻弁護士)。
「人事労務においては、クライアントとしては懲戒処分としたい意向がある場合でも、紛争リスクにより“法的には厳しい”というケースがあります。その場合、紛争を未然に防ぐために裁判所の視点を意識しつつ、“処分は少々軽くするけれども、何らかの条件をつける”というようなアドバイスをすることもあります」(坪谷優作弁護士)。
企業側にも同事務所の理解の深さは伝わり、事業部から直接相談が寄せられることもある。大阪で培われた温もりある“相談相手”としての姿勢が全国で好評を得ていると言えよう。
クライアントや案件に応じた最適なチーム編成で信頼構築
固定のチーム制ではなく、案件ごとに東京・大阪全メンバーから最も適切なチームを柔軟に組成するところも同事務所の特徴の一つだ。
「クライアントごとに担当弁護士は固定しています。これはクライアントとの信頼関係の構築と情報蓄積、固有の状況や事情も踏まえたアドバイスを行うことを可能とするためです。一方、何か個別の案件があった場合には専門性を考慮したメンバー追加を、危機対応など大量の人員が必要な案件にはそれに応じた人数をアサインするなど、クライアントの利益を最大化するためのチームを編成していきます」(野尻弁護士)。
「信頼関係を築くためには、クライアントについて学ぼうとする姿勢をいかに示せるかが重要です。そのためには、本社だけではなく工場があれば工場にも足を運びます。事業会社での有事は工場などの現場で起こることが大半です。管理部門と現場の心情が乖離することも多々あります。その際、“いかに双方に納得感のあるバランスで調整できるか”が信頼につながっていきます」(山本弁護士)。
この特徴は新人教育においても同様だ。OJTによって最初はさまざまな分野の案件に関与することとなる。
「案件ごとに組む弁護士が変わりますので、法分野だけではなく、案件への取り組み方や準備の仕方もそれぞれ勉強になります。それらの一番よいものをハイブリッドで吸収して成長していきたいです」(坪谷弁護士)。
那須 秀一
弁護士
Hidekazu Nasu
04年京都大学法学部卒業。05年弁護士登録、長島・大野・常松法律事務所入所。07年きっかわ法律事務所入所。11~13年公正取引委員会事務総局審査局審査専門官(主査)。20~22年大阪大学法科大学院非常勤講師(「経済法2」「経済法演習」担当)。大阪弁護士会所属。
山本 幸治
弁護士
Koji Yamamoto
02年京都産業大学法学部卒業。06年弁護士登録。11年きっかわ法律事務所入所。大阪弁護士会所属。
野尻 奈緒
弁護士
Nao Nojiri
06年大阪大学法学部卒業。08年京都大学法科大学院卒業。09年弁護士登録、きっかわ法律事務所入所。15~17年民間企業出向。17年きっかわ法律事務所東京事務所。東京弁護士会所属。
坪谷 優作
弁護士
Yusaku Tsuboya
17年北海道大学法学部卒業。19年一橋大学法科大学院卒業。20年弁護士登録、きっかわ法律事務所入所。大阪弁護士会所属。