西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 - Business & Law(ビジネスアンドロー)

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外国法共同事業の開始とブランド刷新により卓越した国際性を世界市場に強調

西村あさひ法律事務所・外国法共同事業(以下、「西村あさひ」とも)にとって、2023年はまさに大変革の1年であった。マレーシアおよびフィリピンにおける現地法律事務所との提携開始(それぞれ1月、9月)によるアジア圏の体制強化、札幌事務所の開設(4月)、そして外国法共同事業の開始とコーポレート・ブランドの刷新(9月)。1966年設立から半世紀以上にわたり、日本、欧米はじめ主要国のグローバル企業から寄せられる国際案件の依頼に盤石の布陣で応えてきた同事務所の一人ひとりが、さらなる成長・発展に向けて抱く思いとは。
「以前から数多くの外国人弁護士・外国法事務弁護士が在籍し、クロスボーダー案件を中心に高品質なサービスを提供してきた当事務所にとって、外国法共同事業(以下、「GKJ」)開始は実態により近い体制になったといえるでしょう。また、我々が経営の中核に携わることで、人材の多様性や対応可能な案件の専門性と国際性がいっそう拡大されます。中長期的には、複雑さを増すクライアントニーズに対する、グローバルな視点を付加したサービスの充実に寄与できると思っています」(ラース・マーケルト外国法事務弁護士)。
ドイツ出身で国際仲裁を専門とするラース外国法事務弁護士も、GKJ渦中の当事者として、“西村あさひ”の看板と日本企業が近い将来直面しうる課題を背負うことへの意識は、生半可なものではない。
「たとえば仲裁において、グローバルな視点は、紛争当事者と仲裁機関の双方の見方を理解することでクライアントの課題解決を導くうえで欠かせません。また、海外投資家と投資先の外国政府間の紛争が昨今主に欧米・アジア諸国で増えており、日本企業にとっても動向が注目されます。いずれの当事者の代理経験もある身として、所内で外務省や経産省などへの出向経験者も擁する専門チームを立ち上げ、同分野における日本企業の対策支援に注力しています」(ラース外国法事務弁護士)。
GKJ開始と同時にコーポレート・ブランドの刷新を果たした同事務所。事業環境の変化著しい各業界をリードする国際ロー・ファームたる地位を国内外にアピールする意義について、直近の具体例をもって説明する。
「日本の製造業が東南アジア諸国に進出(拠点新設)し、さらに同国からEU圏に製品を輸出するといった場合、本店所在国、当該進出先の規制とEU圏における輸出法令やSCMに精通している点も含め、関係国すべてをマネジメントする能力・知見が必要です。常に事業の“先”を見据えた国際的な助言ができる法律事務所として、世界的な知名度向上を目指します。最近の例として、あるEU圏のコロナワクチン・メーカーの日本進出にあたり、ドイツ事務所に駐在する石川智也弁護士が、自身の専門であるGDPRおよび日本のデータ保護規制の相違を踏まえ、ドイツ弁護士とともに一貫助言した経験などが挙げられます」(ラース外国法事務弁護士)。
“Nishimura Arrow”と名づけられた右肩上がりの“三本の矢”。新ブランドは、過去の栄光に満足せず、今後も変わらず最先端の法律実務の担い手たらんとする開拓者精神のシンボルだ。
新ブランドの刻印された名刺のカラーは、好みに応じて選択できる。「多様性尊重の実践の一つです。私は全4種類注文して、クライアントのイメージや会議の雰囲気に応じて使い分けています」(ラース外国法事務弁護士)。

ラース・マーケルト 外国法事務弁護士(ドイツ)

アジア各国と日本との“知”のネットワーク強化 各国のナレッジを集約し、新たなナレッジを創り出す

新興国のリーガル・リスクは、得てして明文化されない部分に潜む。よって、今般のマレーシア、フィリピンの2国における新たな現地事務所との提携も含め、現場サイドに肉迫したクライアントサポートに“過剰”という言葉はない。
「日本企業の法務がカバーすべき領域が、本店所在国および進出・投資先はもとより、現地法人の商圏や、バリューチェーン全体、勤務者の国籍所在国等に広がる中、我々は“国(法域)×産業分野×法分野”の三つのかけ合わせでスピーディーに的確な答えを出さねばなりません。提携する現地事務所の拡大は、各分野の専門家・ナレッジを内製化し、集約する拠点の拡大と位置づけています」(小口光弁護士)。
ナレッジ蓄積の重責を担う各事務所の代表パートナーが“One Firm”の一員として抱負を語る。
「我々は、インドネシアの複雑・多様な法的課題に対し、関連拠点と一体となって、包括的な解決策の提供に注力しています。特に、現地の習慣や文脈の中で、関連当局と築き上げてきたクリーンで良好な信頼関係に基づく円滑な案件遂行がクライアントからも評価されています。西村あさひのネットワークにおいて、各弁護士がさまざまな国の案件経験を通じ、異なる法制度・実務の理解や組織運営、時に敵対する相手方との交渉等、各種のスキルを高度化し、法的戦略や解決策の選択肢が増えたと実感します」(ルーキー・ワラランギ インドネシア弁護士・提携事務所パートナー)。
「2020年4月に、日本の大手法律事務所としては唯一、台湾に事務所を設立しました。以来、日本および各国拠点と一体となって、複数の専門性と多言語を駆使し、ワンチームで対応できる体制を構築しています。西村あさひの総合力を発揮した最近の事案の一例としては、台湾の世界的大手半導体メーカーによる日本メーカーとの共同出資による熊本工場建設にかかる契約、政府(補助金)対応、従業員の雇用、個人情報保護等を全面的にサポートした案件などがあります。また、台湾政府が誘致に傾注する洋上風力発電(再生エネルギー)事業にかかる日本企業の投資案件や、日本企業と台湾企業によるベトナムでの大型JV投資案件など、多くの法域が関わる複雑なクロスボーダーM&Aにおいても、関係国(地)の当事務所メンバーと柔軟にチームを組成することで、“台湾ほか各国当事者に対する各地での支援業務”を所内で完結して行うことを可能としています」(孫櫻倩 外国法事務弁護士)。

小口 光 弁護士 / ルーキー・ワラランギ インドネシア弁護士 / 孫 櫻倩 外国法事務弁護士(台湾)

「ここ数年でフィリピン経済は、エネルギー(電力)や運輸(航空・高速鉄道・地下鉄・国内貨物輸送)、インフラ(空港・通信)業界を中心に自由化(PPP事業)に向けた法改正が進んでおり、外資の投資家の参入の道がさらに開かれることとなります。クライアントのフィリピン進出や事業のさらなる拡大に際して、グローバルな活動において欠かせない各関連法域の専門的なサポートはもちろん、フィリピン現地において官民両面でさまざまなチャネルを通じた情報収集、現地における関連当事者との折衝等の対応においても当事務所で現地に根差したサポートが可能であり、西村あさひの東京オフィスやシンガポールオフィスなどと連携した、ワンストップサービスを提供でき、それが私たちの強みとなっています。個人としてはプロジェクト・ファイナンス分野を軸とし、新規プロジェクト組成に加えて、これまでさまざまな局面で規制当局へのインプットや意見交換も行い、関連法令やガイドラインの整備も支援しています。エネルギー・インフラなどの分野での日本からの投資がさらに増え、そういった案件で役立てることを期待しています」(フェリックス・シー フィリピン弁護士・提携事務所パートナー)。
「インド駐在経験を通じ、世界で活躍するインド人と同国の圧倒的な成長可能性に魅せられて、同国および南アジア地域案件と、グローバル人材育成と登用に注力しています。この地域は案件遂行が非常に難しいですが、長年日本人の感覚で集積したノウハウと粘り強い現地人材の強力なタッグで、時に前例ない唯一無二の最適解を導いてきました。また、国際経験豊富なインド弁護士を当事務所のドバイとドイツ拠点にも擁し、インドのみならず中東、欧米、アフリカのクロスボーダー案件に世界トップ人材が連携して対応する体制構築を推進しています」(鈴木多恵子弁護士)。

フェリックス・シー フィリピン弁護士 / 鈴木 多恵子 弁護士

リーガル・リスクを網羅する確かな目 リモートの時代こそ“One Firm”として結束・相互研鑽を

法域別でソートし、管轄する幅広い産業・法分野を網羅するプロがいれば、法域横断的に“横串”をさせるプロの活躍も見逃せない。
「アジア各国での駐在経験を経て、危機管理やM&Aを専門としており、現在はベトナム(ホーチミン)で、複数国にまたがる案件、特に国際仲裁にかかる戦略立案から証拠収集・分析および最終解決(強制執行等)まで一連の実務を手がけています。危機管理・不正調査案件では、ガイド役の日本の危機管理チームと現地拠点(ベトナム弁護士)が協働しながら、現地企業の社内調査や民事・刑事上の措置を助言しています。新興国を舞台とするM&A案件では、複数のマーケットにいち早く進出して機先を制したいといったクライアントの要望が存在します。このような要望に対し、当事務所では、複数諸国に対応できる所内のチーム体制と知見を活かし、複数法域にまたがる法務DDとクロージング後のPMIを支援する業務にも日常的に対応しています。このような支援形態は、日本チームと各国チームの間の密な連携体制があるからこそ対応できるものです。企業結合規制やデータ保護規制といった往年の法規制や、ビジネスと人権等、近時のテーマを専門とするチームとも連携します」(今泉勇弁護士)。
総勢800名を超える一大ファームに成長した同事務所に寄せられる相談の複雑さとスピードは一段と増している。クライアント法務部門の専門性のレベルも非常に高く、外部アドバイザーに求められる水準はどんどん高まっている。そのような中で頼られる事務所になるポイントは、受任時点までに各弁護士がビジネスと法域をいかに広く深く理解し、実際の案件で十分な研鑽を積み、メンバー間で日々タイムリーに最新の経験知を共有できているかにある。
「各国法実務で、日々問題となっている法規制と実務的な解決策の最善手とが十分に頭に入っている状態で本題(個別事案)の検討に入るのはもちろんですが、個別のタスクに落ちる前のグランドデザイン、たとえば、スコープの設定、論点整理、戦略と段取りの整理といったところから、各タスクごとの最適な所内外専門家の選定を、所内のどの拠点、どの弁護士を通してご相談をいただいても、当たり前に対応できる体制を目指しています。今後は、欧米企業に加えてアジア企業による日本へのインバウンド案件の増加も見込まれますし、知財、情報技術やデータ保護法制など各国規制内容がそれぞれ他の法域の法令を参考に策定されている法分野等、各国専門家間の知の共有も加速度的に進行中です。さらに、プラクティスグループや法域の垣根を越えたナレッジ共有のしくみも全面的に導入しています。たとえば、新人、中堅アソシエイトからパートナーまで定期的(年1~3回)に海外事務所に送り、同じ空間で仕事をする機会を増やす一方、200名を超える海外オフィスのメンバーを、日系企業のホーム法域である日本に一同に集めて徹底的なグループディスカッションを実施するなど、各人の研鑽と経験知の共有、自国における将来のクライアントニーズの予測と備えに役立てています。これらのさまざまな活動により生まれた強固な一体感は、物理的距離を問わず、24時間365日、いつでもクライアントのニーズに応じてチーム編成できる体制の礎となります」(小口弁護士)。
「アジア圏の拠点に所属する非日本人弁護士と他国の拠点との連携を強化すべく、定期交流制度も取り入れています。海外法の理解やプレゼン能力の向上により、クライアントサービスのさらなる充実につながることを肌で感じています」(今泉弁護士)。

今泉 勇 弁護士

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 DATA 

ウェブサイトhttps://www.nishimura.com/ja

所在地・連絡先
〒100-8124 東京都千代田区大手町1-1-2 大手門タワー
【TEL】03-6250-6200(代表) 【FAX】03-6250-7200

【E-mail】info@nishimura.com


所属弁護士等:パートナー/外国法パートナー/法人社員249名、アソシエイト/法人アソシエイト493名、オブカウンセル9名、カウンセル/外国法カウンセル67名、税理士/弁理士/アドバイザー24名(2023年11月現在)

主な取扱業務分野
法分野:▽M&A▽コーポレート▽ファイナンス▽リアルエステート▽事業再生/倒産▽争訟▽知的財産法▽情報法▽危機管理▽独占禁止法/競争法▽税務▽労働/人事▽消費者法▽通商法/投資法▽国際関係法務▽ウェルスマネジメント▽公益的活動▽公共政策
産業:▽自動車/自動車部品/CASE/MaaS▽航空/宇宙/ドローン▽ケミカル化学▽コンシューマー&リテール▽エネルギー/電力▽金融機関▽FinTech▽食品/農林漁業法務/アグリ・フードテック▽建設/インフラ▽機械/その他製造業▽海事/船舶▽鉱業/金属▽医薬品/ヘルスケア/ライフサイエンス▽プライベート・エクイティ▽不動産▽官公庁/地方自治体▽スポーツ▽メディア/エンタテイメント▽AI/テクノロジー/テレコミュニケーション▽デジタルトランスフォーメーション/デジタルイノベーション▽サステナビリティ
国/地域:▽アジア▽北米▽ヨーロッパ▽中東▽中南米▽アフリカ▽オセアニア

近時の受賞歴:▽The Asia Legal Awards 2021にてAsian Law Firm of the Yearを受賞▽ALB Japan Law AwardsにてJapan Law Firm of the Yearを4年連続(2019-2022)およびOverseas Practice Law Firm of the Yearを受賞(2021、2023)▽FT Innovative Lawyers Awards Asia-Pacific 2023にてFT law firm index - Asia-Pacificの総合順位において5年連続で日本の法律事務所として最上位を獲得▽Thomson Reutersが実施する法律事務所のリージョナルブランド調査であるRegional Law Firm Brand Index 2022にてアジア太平洋地域において5位に選出▽Chambers Global 2023にて多岐にわたる分野が高く評価され、日本および世界全域いずれにおいても、日本の法律事務所の中で最多の事務所ランキングを獲得▽アジア全域の女性弁護士の活躍を称えるALB Women in Law Awards 2023にて最多のノミネート数、最多の受賞数を獲得▽ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業を認定する日本最大のアワードであるD&I AWARD 2022にて大企業部門 D&Iアワード賞を受賞

ラース・マーケルト

外国法事務弁護士(ドイツ)
Lars Markert

01年Julius-Maximilians-University Wuerzburg卒業(First State Examination)。04年ドイツ弁護士登録。04~05年Shearman & Sterling LLP。06年Georgetown University Law Center卒業(LL.M)。07年ニューヨーク州弁護士登録。06~07年Simpson Thacher & Bartlett LLP。07~18年Gleiss Lutz法律事務所。12~14年西村あさひ法律事務所東京事務所出向。18年外国法事務弁護士登録。

小口 光

弁護士
Hikaru Oguchi

96年東京大学法学部卒業。98年弁護士登録(第一東京弁護士会)。03年Harvard Law School卒業(LL.M.)。04年Stanford Law School卒業(J.S.M.)。05年ニューヨーク州弁護士登録。10〜15年ホーチミン事務所代表。12~15年ハノイ事務所代表。16~21年ベトナム事務所統括パートナー。

ルーキー・ワラランギ

インドネシア弁護士
Luky Walalangi

Vrije Universiteit, Amsterdam, the Netherlands(LL.M.)およびUniversity of Parahyangan卒業。インドネシア弁護士登録。17年Walalangi & Partners設立、代表パートナー就任。18年~提携開始。

孫 櫻倩

外国法事務弁護士(台湾)
Ing-Chian Sun

01年国立台湾大学法学部卒業。03年台湾弁護士登録。09年東京大学大学院法学政治学研究科卒業(LL.M.)。03~04年Formosan Brothers法律事務所。04~06年北美智権股份有限公司。14年外国法事務弁護士登録。15年外国法パートナー就任。20年~西村朝日台湾法律事務所共同代表。

フェリックス・シー

フィリピン弁護士
Felix Sy

National Defense College of the Philippines、Cornell Law School(LL.M. Honors)およびAteneo de Manila University(J.D.)卒業。フィリピン弁護士、カリフォルニア州弁護士登録。23年Sy & Partners設立、代表パートナー就任、提携開始。

鈴木 多恵子

弁護士
Taeko Suzuki

03年上智大学法学部卒業。06年弁護士登録(第一東京弁護士会)。12~13年Nishith Desai Associates法律事務所(ムンバイ、バンガロール)。

今泉 勇

弁護士
Isamu Imaizumi

04年東京大学法学部卒業。06年弁護士登録(第一東京弁護士会)。12年University of Southern California Gould School of Law卒業(LL.M.)。13年ニューヨーク州弁護士登録。21年ベトナム外国弁護士登録。12~13年Khaitan & Co法律事務所(ムンバイ)出向。13年~Khaitan & Co法律事務所(ニューデリー)出向。16~17年ホーチミン事務所勤務。19年~ヤンゴン事務所副代表。22年~ホーチミン事務所共同代表。

『「ビジネスと人権」の実務』

著 者:西村あさひ法律事務所「ビジネスと人権」プラクティスグループ[編著]
出版社:商事法務
価 格:3,960円(税込)

『アグリ・フードビジネスの法実務―食農のサステナビリティとイノベーションを支える法戦略』

著 者:杉山泰成・辻本直規・平田えり[編著]、西村あさひ法律事務所アグリ・フードプラクティスグループ[著]
出版社:一般社団法人金融財政事情研究会
価 格:3,300円(税込)

『敵対的買収とアクティビスト』

著 者:太田洋[著]
出版社:岩波新書
価 格:1,100円(税込)