多様な商品・サービス、全世界を相手にする法務
双日株式会社は、自動車、航空産業・交通プロジェクト、インフラ・ヘルスケア、金属・資源・リサイクル、化学、生活産業・アグリビジネス、リテール・コンシューマーサービスの七つの営業本部体制で、国内外での多様な製品の製造・販売や輸出入、サービスの提供、各種事業投資などをグローバルに多角的に行っている。
「会社の中に複数の国があるような形ですね。商材ごとに文化や商慣習が異なるため、働く社員の雰囲気なども営業本部ごとにまったく違います」(双日株式会社法務部長 板倉寿美氏)。
それでは、多種多様にわたる総合商社の法務機能はどのような体制になっているのであろうか。
「現在は、6課と1ユニットの7組織から構成されています(総勢75名。組織概念図参照)。第1課から第3課が7営業本部の契約交渉などの事業から発生する案件を担当。一方、コンプライアンス統括課、物流コンプライアンス課、貿易管理課は、一般的および輸出入に関するコンプライアンス業務を担当します。また、企画戦略ユニットは、リーガルオペレーションを担い、組織運営、ナレッジマネジメント、育成・キャリアパス策定などを行います」(板倉氏)。
企画戦略ユニットは、いわば法務部の経営企画室のような位置付けといえよう。多様な商品・サービスを扱い、全世界を相手にする総合商社ならではの機能といえるのではないだろうか。
組織概念図
やりたい業務を目指せる充実のキャリアパス
配属後は、計画的なキャリアパスのもと、次の業務を担うことになる。
「第1課から第3課に配属されると、日々あがってくる契約のレビュー、ドラフトが日課となります。また、投資案件では外部弁護士とともにデューデリジェンスを実施し、出てきた問題点の解決方法について営業部門と検討し、先方との交渉などを行います。そのほか、紛争に対する支援や債権回収など、OJTで経験していきます」(板倉氏)。
このような総合商社ならではの多岐にわたる業務を見ると不安になるかもしれないが、新卒・中途に限らず、配属から一人前になるまで、手厚いサポート体制とキャリアパスが設計されているので心配は不要だ。また、総合商社の法務は入社時点で高い語学力が必須と思われがちだが、“第一に必要となるのは意志力”だと板倉氏は語る。
板倉氏自身も入社当時はビジネス英語が得意ではなかった。しかし、入社3年目にロシアで合弁会社を設立する案件を担当し、合弁契約の交渉のために営業担当者に随行してロシアへ渡航した。法務担当は自分一人。現在のようにネット環境も充実しておらず、日本とは時差があるため、誰も頼ることができない。英語での交渉の内容をよく理解することができない。このピンチを板倉氏は、意志力と徹底した予習によって乗り切った。
「事前に先輩指導員と予習をした中で、絶対に譲ってはいけない項目が一つだけありました。“ここについては相手方や営業が何と言おうと止めるんだ”、という強い意志を持って臨みました」。すると、相手方がその合理性を認めて譲歩をしてくれたという。英語は、留学などの制度によっていずれできるようになる。それ以前に、会社の利益を守る意志とそのための入念な準備をやり切る力こそが、双日の法務には求められている。
一人前の人材に育成するために、最初の1年目は先輩部員が指導員となり、新入部員はその指導員が担当する業務を一緒に遂行する。2年目以降は、シニアとのチーム制によって業務をこなしていく。3年目から10年目位にかけては、他の営業本部の業務や別の業務を経験するために、他の課や他部署を含めローテーションをすることになる。人によって順番・内容は異なるが、ローテーションは計画的に設計されているので、最終的には個々人のキャリアパスの方向性も踏まえ、幅広い経験を積むことができる。
「3年目以降は、自分で目指す方向が見えてくるステージになるので、人によっては米国や英国のロースクールに留学したり、海外トレーニー制度を活用して海外に赴任したりする場合もあります」(板倉氏)。
そして、10年目以降はチームリーダーとして、後輩を育成する立場となり、その後、管理職を目指す場合は、マネジメント力をつけるため、海外駐在や子会社出向を経験することも可能だ。そのほか、働き方としてはフレックス制をとっており、夫婦で育児の分担ができるなど、ワーク・ライフ・バランスを大切にしているという。
Why Sojitz 法務部?
最後に、双日株式会社法務部の魅力と求める人物像について、板倉氏は次のように語っている。
「まず、当事者として、案件の発生からクロージングまでを経験することができること。次に、世界のさまざまな商品・サービスを体験でき、最終的にその中から自分のやりたい仕事を見つけることができること。最後に、年次に関係なく若手であっても自由な発想でさまざまなことに挑戦する環境があること。これが当社法務部の魅力です。そして私たちが求めるのは、チャレンジが好きな人、いろんなことにトライしてみたい人、楽しくパッションをもって仕事をし、自分らしさを大切にする人、ですね」。
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板倉 寿美
双日株式会社 法務部法務部長
ニューヨーク州弁護士
05年双日株式会社入社。東京本社、米デューク大学ロースクール留学(LL.M.取得)、双日米国会社法務部、双日ロンドン会社法務部、Herbert Smith Freehills London Office勤務を経て、22年より現職。国内、米国、英国にて企業法務実務に携わり、各種取引、M&A、プロジェクトファイナンス、不良資産処理、担保管理、企業再編、訴訟・紛争処理等のさまざまな案件に関与。