求められるアドバイスの幅や厚み、重さの変化
「当事務所ウェブサイトにも掲げていますが、起業家と同じ目線で歩み、企業の成長に寄り添っていくことを当事務所の使命とし、クライアントのニーズに応え続けてきた結果、事務所設立から11年が経ちました。私が弁護士登録した1999年、新興企業を対象とした東証マザーズ市場が開設され、翌年に、ナスダック・ジャパン市場が開設されたこともあり“ベンチャーやスタートアップを中心にIPO(新規株式公開)を目指す企業や上場企業をサポートしていこう”という思いを抱いて無我夢中で取り組んできたところ、多くのクライアントがIPOを果たし、さらなる飛躍をしています。一方、11年前と比べて新しいビジネス、法分野が生まれ、また、資金調達の内容や手法、ストック・オプションの内容等我々に求められる仕事の幅や厚み、重さが大きく変わってきていますし、寄せられるご相談の難易度が高くなっていると実感しています。当事務所では上場を果たされた後も継続してご相談をいただいていますが、求められるアドバイスのフェーズが数段上がっているため、“生涯勉強”を常に意識しています」。
フォーサイト総合法律事務所の代表パートナーを務める大村健弁護士は“十年一昔”といわれる中にあって、常に先を見据え続ける。
IPO後も継続してサポートを依頼され多数の上場企業がクライアントに
同事務所はIPOを目指すベンチャー企業やスタートアップ企業支援を主軸としながらも、未上場企業がIPOを実現した後、シームレスに上場企業をサポートすることによって、いまや顧問先や社外役員関与先(以下「顧問先等」という)の多くを上場企業と上場準備企業が占めているという。
「ここ数年は、全IPO(TOKYO PRO Marketを除く)の10%ほどを当事務所の顧問先等が占めるようになってきました。直近10年ほどで見ても顧問先等のうち60社以上がIPOを果たされ、30社以上が東証一部に市場変更されています。そして、上場を果たした顧問先等は事業のオーガニックな成長とともに、M&Aを成長戦略として掲げる会社も多く、株式譲渡から事業譲渡、会社分割や株式交換・株式交付まで、M&Aに関するご相談が多くなりました。企業規模の拡大に比例して、求められる社会的責任も大きくなります。スタートアップの段階からサポートしてきた企業が他社を買収してさらに大きくなっていく過程で、他社(対象企業)に問題がないか等の法務DDを行い、リスクヘッジのために契約書にどのような記述が必要かといったご相談が急増しています」(大村弁護士)。
「人事労務やHR系の事業に関するご相談を主に受けています。我々のクライアントはIPO準備の過程で人事労務については特に厳しく整備されているため、上場前後でアドバイスに大きな変化はありません。ただ、社会的課題の解決のために頻繁に法改正が発生する分野ですし、同一労働同一賃金など社会的関心が高い問題も多く、違法でないことはもちろん、些細なことが報道されるだけでも大きなダメージを負いかねません。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、働き方や仕事に対する価値観が大きく転換しつつある中、組織への帰属意識や理念の浸透、透明性のある評価など、企業の在り方が問われていると感じています」(由木竜太弁護士)。
「知財やIT法務周りに関しても上場前から整備しているクライアントがほとんどですが、上場により企業はいわば“公器”となりますので、単に法を遵守しているだけでなく、社会常識に則っていることも求められます。また、世間一般の関心が高い個人情報保護法は今後3年に1回ペースでの改正が予定されておりますので、大なり小なり個人情報を取り扱う事業者は日頃から次回改正の方向性等を視野に入れてスキームを考え始めなければならないなど、法改正等の動きを常に追い続ける必要があります。法令に加え、ガイドラインなどソフトローにも対応することも、“上場する”上では重要となります」(深町周輔弁護士)。
「不動産会社からのご相談を多く担当していますが、ここ数年、投資用マンション・アパートに関して社会的に問題となったケースが目立ち、寄せられる視線が厳しくなっているせいか、法に則って正しくビジネスを進めるにはどうすればよいか、また投資用物件となると金融機関が関わることが多く、どのように対応すべきかアドバイスを求められる場面が増えています」(美和薫弁護士)。
「SaaS(Software as a Service)にまつわるご相談は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うデジタル化の促進によって、着実に増えている印象です。従来のIT企業はもちろん、製造業などと協業することによって新たなビジネスを生み出していこうという取り組みが目立ちます。しかし、新しい仕組みを構築しようというアイディアを実践していく過程で、例えば個人情報の扱いをどのようにすればよいのか、お互いに理解できておらず、大問題に発展してしまうケースも少なくありません」(春山修平弁護士)。
質問の背後にある課題の解決を弁護士から提案
クライアントの疑問や質問に答えるだけでも弁護士としての役割を果たしているといえよう。しかし、それは弁護士であれば誰でもできることであり、フォーサイト総合法律事務所の弁護士はクライアントの疑問・質問の背景を読み、一歩踏み込んだ対策を提案する。
「弁護士には法的な思考の深さはもちろん、クライアントへの対応能力が求められ、それは弁護士登録後、数年間の経験が、その後の長い弁護士生活を左右すると考えています。そのため、当事務所では新規登録弁護士ないしは登録後5年目以内の期の若い弁護士を毎年数名採用し、生え抜きを指導、育成する方針をとっています」(大村弁護士)。
このような信念を積み重ねてきた結果、所属弁護士は16名となった。2022年中にさらに弁護士複数名が増える予定だという。パートナーから新規登録弁護士まで、クライアントのビジネスの成功という共通認識のもと、提案し続ける。