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ビジネス環境の急速な変化に伴い、経営戦略に深く関与する“戦略法務”の必要性が高まっている。その推進役であるCLO(Chief Legal Officer:最高法務責任者)やジェネラルカウンセルの育成と機能強化を目的に、2020年4月、一般社団法人日本CLO協会が設立された。
同協会を牽引する理事長の堀龍兒氏、専務理事の谷口宏氏、理事の淵邊善彦氏に、設立背景や活動内容、そして今後の展望についてうかがった。

企業価値向上に寄与する法務人材の育成

堀氏 グローバル化が進み、企業を取り巻くリスクが複雑化する中、経営の一角を担う法務人材として、CLOへの期待が高まっています。CLOは単なる法務部門の責任者ではなく、経営に関する議論や意思決定に深く関与する存在。ビジネスの知識に加え、幅広い経験と判断力が求められますが、日本ではそうした人材が圧倒的に不足しているのが実情です。日本CLO協会はその育成を目的に設立されました。

谷口氏 CLOには、未来を見据えてビジネスを先導するという大きな役割が課せられます。現在CLOとして活躍しているのは、卓越した個性と能力を備えた、いわば“突然変異”とでもいうべき方々ばかりです。そのような人材をいかに輩出し、後継者を育成するかは大きな課題です。社会動向を敏感に察知し、時代の変化に対応できる経営センスを備えた人材を育成するため、当協会ではさまざまな機会を提供しています。

淵邊氏 海外企業においてCLOは一般的な役職であり、リスクをとってグローバル競争を勝ち抜くために不可欠な存在です。会社全体のビジネスを俯瞰して経営者に助言する役割は、外部の弁護士では代替できません。海外展開が進む中で、たとえば、新規ビジネスで合弁会社を設立する際にCLOが不在であれば、リスクの把握が困難となり、不利な契約を締結してしまう可能性が高まります。

堀氏 CLOを目指すのであれば、法律知識の習得はもちろん、海外出張をはじめ、ビジネスの現場で積極的に経験を積むことが肝要です。大手商社のCLOは法務以外にも、人事、総務、広報など複数の部門長を兼任していることも珍しくありません。経営陣に対して具体的な助言をできる、実践的な能力を磨くことが必須でしょう。

次世代CLO育成とC×O連携―業界を越えた学びと対話の場を提供

谷口氏 当協会の主な活動の一つが、月に一度、CLOに相当する役職の方々限定で開催している“CLOラウンドテーブル”という朝食会です。参加者は15~20名ほどで、少人数だからこそ悩みを打ち明けやすく、他社のCLOの課題や考え方に刺激を受け、自社の取り組みに活かせる貴重な機会になっています。CLOは孤独な役職であるため、このように他社のCLOと課題や経験を共有し、情報交換や人脈形成ができる場が不可欠です。最近ではガバナンスへの関心が高まっており、取締役会の実効性向上や社外役員の活性化など、CLOに期待される役割がますます増えていると感じます。

淵邊氏 ほかにも、法務関連分野の専門家を講師に招いたCLOセミナーや、CLOを目指す方々向けの勉強会“次世代CLO会議”を開催しています。法務に限らず、経営企画や管理本部といった部署の方々も参加して、企業や業界の枠を越えた学びの場になっています。

谷口氏 企業経営における特定領域の意思決定を担う幹部として、CLOだけでなく、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)といった、いわゆる“C×O”の役員が、部門を越えて連携する機会も設けています。合宿形式でのグループ討議は、“異なる部門の担当者同士が互いの視点を知ることで新たな気づきが生まれる”と好評でした。

今後の展望―CLO普及への課題と期待

淵邊氏 生成AIの進化により、契約書チェックやリサーチといった定型業務はAIに代替される可能性が高まっており、法務の役割は今後ますます経営に資するサポートに移行していくことが予想されます。新たなビジネスモデルを検討する場合でも、CEOとCFOだけでは財務面にのみ注目が集まりがちなので、ガバナンスやリスクの指摘はCLOが担う必要があります。ただし、あくまでビジネスを推進する方向で指摘するのがポイント。ブレーキ役と受け取られないサポートが肝心です。

谷口氏 日本におけるCLO設置率の低さの原因は、優秀なCLOの供給不足と、法務の重要性に対する経営者側の認識不足という両面があると思います。かつて法務は煙たい存在だと思われがちでしたが、経営陣の意識もようやく変わりつつあります。国際競争を勝ち抜くためには、CLOがCFOやCHROと協力し、全方面からCEOを支える体制づくりが欠かせません。

淵邊氏 経営陣にCLOの必要性を認識してもらうには、経営に近いところで仕事をするチャンスを積極的に捉えるべきです。M&Aや新規事業、不祥事対応など、法務が最前線で活躍する場面で、建設的で前向きなアイデアを提示し、貢献することで、CLOの重要性を経営陣にアピールできます。また、CLOが設置されれば、法務部としても経営との直接的な連携が可能となり、自分たちの仕事が経営にどう貢献しているか見えやすくなるので、モチベーション向上につながるでしょう。

堀氏 経営陣に近い存在である社外取締役や外部の弁護士などを活用し、CEOにCLO育成の重要性や存在意義を伝えてもらうことも効果的です。人と人とのつながりは、今なお強い力を発揮します。当協会としても、CLOの重要性を社会に啓発し、日本企業の国際競争力強化に貢献していく活動を今後も継続していきます。

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 DATA 

ウェブサイトhttps://www.jaclo.jp/

所在地・連絡先
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-1
【E-mail】info@jaclo.jp

堀 龍兒

一般社団法人日本CLO協会 理事長、早稲田大学名誉教授、TMI総合法律事務所 顧問
Ryuji Hori

66年大阪市立大学法学部卒業。日商岩井株式会社(現 双日株式会社)入社後、法務部長、取締役、常務取締役、専務執行役員を経て、03年より早稲田大学教授(法学部・法務研究科)。14年定年退職、TMI総合法律事務所顧問に就任。著書に、『債権管理回収の知識』(商事法務研究会、2000)『国際法務戦略』(共編)(早稲田大学出版部、2000)など。

谷口 宏

一般社団法人日本CLO協会・一般社団法人日本CFO協会・一般社団法人日本CHRO協会 専務理事
Hiroshi Yaguchi

89年東京大学経済学部卒業、株式会社住友銀行(現 株式会社三井住友銀行)入行。同行にて企業調査・金融、人事に従事した後、00年日本CFO協会を設立。11年国際財務幹部協会連盟(IAFEI)会長(現在は諮問委員)。18年日本CHRO協会、20年日本CLO協会を設立、両団体の専務理事。人事・法務を含む本社機能全般の人材育成活動を展開。

淵邊 善彦

一般社団法人日本CLO協会 理事、ベンチャーラボ法律事務所 代表弁護士

87年東京大学法学部卒業。89年弁護士登録(第一東京弁護士会)。95年ロンドン大学UCL卒業(LL.M.)。00年~TMI総合法律事務所にパートナーとして参画。08~22年中央大学ビジネススクール客員講師(13~22年同客員教授)。16~18年東京大学大学院法学政治学研究科教授。19年ベンチャーラボ法律事務所開設。主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。著書に『実践 会社役員のための法務ガイド』(中央経済社、2021)『強い企業法務部門のつくり方』(共著)(商事法務、2020)など。