東京事務所を3倍に拡張 関西の伝統と総合力を首都圏で展開
関西を拠点に長きにわたり企業法務の第一線で活躍してきたきっかわ法律事務所。2025年には移転により東京事務所の執務スペースを従来の3倍に拡張し、需要増加に対応する新体制を整えた。
開設から15年以上が経過した東京事務所では、長年支援してきた関西企業の東京への本社機能移転や新規紹介案件の増加により、関東圏のクライアントが着実に増加している。
「東京事務所のクライアントへの対応は、可能な限り東京のチームで一貫して行うことを理想としつつ、大阪の知見も最大限に活用できる、柔軟かつ強固な体制を構築できました」と東京事務所代表の野尻奈緒弁護士は語る。
近年増加しているのが、企業の不祥事などに関する第三者調査案件だ。社会的な要請もあり、企業が問題を解決し、ステークホルダーからの信頼を回復するためには、外部専門家による客観的な調査が不可欠となっている。こうした案件は迅速かつ的確な対応が求められるため、“組織力”が活かされる場面だという。同事務所では、特定領域への注力ではなく、所属する全弁護士が幅広い分野に対応できる基礎的な知識と対応力を持つことを基本方針としたうえで、各弁護士がそれぞれの興味や経験に基づき、重点的に取り扱う専門分野を深化させている。個々の専門性と事務所全体としての総合力が噛み合うことで、組織としてより質の高いサービスの提供を可能としているのだ。

野尻 奈緒 弁護士
裁判所から厚い信頼を得る実務力 チームプレーでノウハウを継承
現在、同事務所は近年大阪地裁に申し立てられた大型会社更生案件の3件すべてに関与している。これは裁判所からの厚い信頼によるものだ。裁判所が管財人となる弁護士を選任する倒産・再生案件でこれまでの実績を高く評価され、重要な案件を継続的に依頼されている。
入所4年目の伊東信芳弁護士は、その3件の会社更生案件の対象企業のうち1社に常駐している。会社更生はパートナーからの勧めで経験を積み始めたという。
「会社更生手続は書籍等の知見だけでは運用が難しい分野です。現場でパートナーや経験豊富な事務局スタッフから直接学ぶことで、“机上の知識”が“生きた知恵”へと昇華されていくことを実感しています。分野として深みのある案件が多数経験できることが当事務所のよさだと思います」(伊東弁護士)。

伊東 信芳 弁護士
同事務所に裁判所からの依頼が後を絶たない一つの要素として、経験豊富な事務局スタッフの存在もある。
「当事務所の事務職員は高度な専門知識と実務能力を有し、弁護士と一体となって案件を遂行します。そのスムーズな案件進行能力が評価されていると感じます」(野尻弁護士)。
正論よりも企業存続と発展を重視 世代交代を担う人材養成を
同事務所は特定のパートナーのもとに固定されるチーム制は採用せず、新しく加入した弁護士は原則としてすべてのパートナーと一度は共に案件を担う機会を持つ。これにより、パートナーそれぞれの仕事の進め方、クライアントへの対応、交渉術、事案の着地点の見極め方などを、実践を通して多角的に学ぶ。若手弁護士が自身の希望を伝えれば積極的に挑戦させるなど、個々のキャリア形成を支援している。
「採用した弁護士は長期的な視点で育成する方針です。東京事務所で採用した人材も、当人の希望との兼ね合いも考慮してではありますが、半年程度は大阪で執務し、大阪の弁護士とのリレーションをとりやすい関係性を構築してもらう予定です。これにより、当事務所の積み上げたノウハウという資産を全弁護士に共有できる体制を目指しています」(野尻弁護士)。
「オフィスは風通しがよく、パートナーにも気軽に相談できる環境が整っています。先輩弁護士からは、交渉の場面で“なぜあのタイミングで1歩引いたのか”など、戦略的な意図を問われることもあり、対話を通じて思考を深めることができます」(伊東弁護士)。
戦略面で野尻弁護士が特に重視しているのは着地点の見極めだ。「特に社会的に耳目を集める案件では、“法的な正しさ”だけを追求するのではなく、“企業の存続と発展”という大局的な観点から、いかに事態を軟着陸させるかを考えて助言しています」と強調する。
「これは、新人の頃には目の前の法的な論点にとらわれがちだった私自身が、多くの経験豊富なパートナーの仕事から学んだ当事務所の神髄ともいえる部分です。単に“裁判で勝つこと”“正論を通すこと”だけが最善ではないことを常に念頭に置いています」(野尻弁護士)。
同事務所では基本的に複数人のチームで案件を担当し、若手弁護士が一人で責任を抱え込むことはない。パートナーや中堅弁護士が常に目を配り、指導を行う体制が確立されている。一方で、クライアントとの関係構築においては、初期段階から若手弁護士が窓口担当の一員となる。すべてのやり取りはパートナーを含めたチーム全体で共有され品質管理は徹底されるが、若手が直接クライアントとコミュニケーションをとることで、責任感を持つとともに、信頼獲得の方法を学ぶことがねらいだ。
「担当チーム内の世代交代も視野に入れ、若手のうちから顔の見える関係を築くことで、企業の世代交代に合わせて、末永くお付き合いできる継続的で強固なパートナーシップを築いていきたいですね」(野尻弁護士)。

野尻 奈緒
弁護士
Nao Nojiri
06年大阪大学法学部卒業。08年京都大学法科大学院修了。09年弁護士登録、きっかわ法律事務所入所。15~17年民間企業出向。17年東京事務所に移籍。20年~東京事務所代表。大規模訴訟の企業側代理人や企業間の紛争解決、M&A、危機対応等を手がける。東京弁護士会所属。
伊東 信芳
弁護士
Nobuyoshi Ito
18年中央大学法学部法律学科卒業。19年司法試験予備試験合格。20年一橋大学法科大学院修了。22年弁護士登録、きっかわ法律事務所入所、東京事務所所属。大阪弁護士会所属。