弁護士200名超の体制に 組織一体化と専門性を強化
弁護士数200名を超える規模となったシティユーワ法律事務所。近隣の明治安田生命ビルに新たなオフィスを確保し人員の増加に備えるとともに、事務所ロゴを刷新し、新たな成長・発展段階への準備を進める。
「クライアントの規模や案件の大型化に伴い、かつては少人数で対応していた案件も、現在では複数のパートナーとアソシエイトを含め、より大きなチーム編成で対応する必要が生じています。弁護士採用のニーズの高まりや“事務所内でのリアルのコミュニケーションが業務の効率化に資する”という意識から、物理的な事務所スペースの拡大が急務となっていました」と、栗林康幸弁護士は語る。
ロゴ刷新では、組織の一体性を重視した。「City-Yuwa」という文字を読みやすいデザインへと変更。従来の青色のコーポレートカラーは、事務所設立当初の若々しさや力強さを象徴するものとして維持された。
「事務所名を明確に打ち出すことで事務所の認知度を高めると同時に、“事務所設立当初の挑戦心とエネルギーを原動力に、これまで培ってきた堅実性・信頼性を継承しながら、トップファームとして、専門的かつ先進的なリーガルサービスを組織力をもって提供し続ける”というメッセージを込めています」(栗林弁護士)。
人員の増加が続くが、同事務所の若手育成方針に大きな変化はない。
「当事務所では、若手のうちから業務分野の専門性をより強く意識させる方針をとっています。シニア弁護士がチームを組成する際、特定の分野を志向する若手に機会を与え、早期から専門性を高めて経験値を蓄積させるよう努めています」(栗林弁護士)。
従来から進めていたワークライフバランスや多様な働き方への対応も進む。
「当事務所で重視しているのは、“子育てや介護など時間的制約があるメンバーであっても、その範囲内で最大限の貢献をしてもらう”という考え方です。コロナ禍を経てDXが進み、物理的に事務所にいなくとも業務が可能な環境も整っています。男性の育児休業取得も増加しており、ライフステージに応じた柔軟な働き方が定着しています」(栗林弁護士)。

栗林 康幸 弁護士
海外事務所との強固な信頼関係で国際業務の拡大に対応
野本新弁護士は「現在、全分野で稼働が高い状況が続いています」と事務所の状況について述べる。
中でもM&A分野は上場企業同士の大型案件から事業承継を含むミドルマーケット案件まで件数が増加し、ファイナンス分野においては、不動産に加え、再生可能エネルギーや船舶ファイナンスが活況だ。また、紛争解決分野では、ここ1~2年の傾向として、企業の不正調査案件に多くのリソースを割いている。一方で、新規分野への取り組みとしては、電力事業等の規制法分野、ビッグテックやAI、デジタルコンテンツを含むテクノロジー分野、さらにはモビリティやヘルスケアといった領域に対し、各パートナーが知見を深め、業務が拡大しているという。野本弁護士は、特筆すべきは国際業務の拡大だと指摘する。
「従来から定評のある韓国プラクティスに加え、中国、そして米国・欧州案件が伸長しています。近年では、留学や海外研修から戻った若手パートナーが、その経験を実務に直結させ、高い意気込みで取り組んでいます」(野本弁護士)。
同事務所の国際戦略の特徴は、海外オフィスを設置するのではなく、海外の法律事務所との強力なネットワークを活用する点にある。World Law GroupとPacific Rim Advisory Council(PRAC)に加盟し、各地の弁護士と連携を深める。
「World Law Groupは約80か国をカバーする世界的ネットワーク、PRACは環太平洋地域を中心としたネットワークです。これらを通じて、若手パートナーを定期的に会合へ派遣したり、海外事務所の弁護士を受け入れる人材交流を行ったりすることで、強固な信頼関係を構築しています」(野本弁護士)。
昨今の地政学的リスクの高まりや各国の技術規制の導入に伴い、サプライチェーンの見直しや法規制へのキャッチアップといった相談が増えている。こうしたグローバルな需要に対し、現地の専門家と連携しつつ、日本側で交通整理を行い、的確なアドバイスを提供する体制を整える。
今後の事務所のビジョンについて、野本弁護士は「一定の規模拡大を維持しつつ、専門性をより強化し、AI等の技術革新に対しても効率的に対応しながら、弁護士としての付加価値を提供し続けていきたいですね」と語る。

野本 新 弁護士
インハウス経験を活かす 電力・再エネ分野の専門家
こうした“組織強化”と“専門性重視”の方針が、具体的な成果として結実している。その一例が、2025年に新しくパートナーに就任した壷阪明宏弁護士、河西薫子弁護士、渡邉真澄弁護士だ。
壷阪弁護士は、電力・再生可能エネルギー分野を専門とし、新卒時から中部電力に同社初のインハウス弁護士として5年間勤務した経歴を持つ。
「電力会社の多くは法務部が充実していますが、外部弁護士としての価値提供はクライアントの規模によって異なります」(壷阪弁護士)。
大規模な法務部を擁する電力会社への支援は、社内では対応が難しい、非常に専門性の高い限定された分野でのアシストが中心となる。一方で、電力自由化に伴い増加した新規参入の小規模な電力事業者の場合、法務部が存在しないケースも少なくない。
「法務に慣れていない事業者に対しては、法務機能そのものを補完するような、事業運営全般に役立つ、より広範なアドバイスを提供しています」(壷阪弁護士)。
小売電気事業への新規参入支援も多く、業界特有の専門用語が多く含まれる電気需給契約書や約款のレビュー、需要家への説明義務や重要事項説明書の作成に関するアドバイスなど、支援は多岐にわたる。
「事業会社の出身である経験を活かし、単なる法的な見解を示すだけでなく、たとえば社内の上層部に対して承認を得やすくするための説明の仕方といった組織内での意思決定プロセスを円滑に進めるための実践的なアドバイスも心がけています」(壷阪弁護士)。
また、壷阪弁護士は、再生可能エネルギー分野において、発電所や蓄電所の“新規開発”や“セカンダリー取引”の両面で豊富な支援実績を持つ。新規開発においては土地関連の契約レビューやインハウス時代の経験を活かした電力系統への接続に関する実務的な助言を、セカンダリー取引においては法務デューデリジェンスやその結果を反映した契約交渉の支援を行っている。たとえば、太陽光発電所のFIT(Feed-in Tariff)・FIP(Feed-in Premium)案件では、地域住民への説明会が求められるケースがある。
「こうしたケースでのアドバイスのポイントは、第一に“国のガイドラインやFAQを遵守した資料となっているか”、次に“地域の自治会への事前確認など、適切な手続を踏んでいるか”といった点です」(壷阪弁護士)。
最近の相談の傾向としては、基本的な手続の枠組みは各社で確立されつつあり、より踏み込んだ“規制の解釈上、資料にどこまでの情報を記載すべきか”といった、緻密な論点に関する相談が増えているという。このような高度な判断が求められる場面では、過去の他社事例を含めた成功・失敗事例の蓄積が非常に重要となる。
「当事務所には電力・再生可能エネルギー分野に専門性が高い弁護士が複数おり、専門性を分担しながら経験した案件の知見を相互に共有しています。また、近時、再生可能エネルギー事業と地域住民との間でさまざまな問題が生じていることから、法令遵守はもちろん、レピュテーションリスクも考慮して助言しています」(壷阪弁護士)

壷阪 明宏 弁護士
ヘルスケア分野のM&Aに強み 出向経験も活かしたアドバイス
ヘルスケア分野を専門とする河西弁護士も、多様な専門性を持つ人材の一人だ。河西弁護士は、M&A案件、ジェネラル・コーポレート案件、そして訴訟・紛争案件を3本の柱として業務を行っている。
「一口に“ヘルスケア”と言ってもその範囲は広く、医療機関や調剤薬局はもちろんのこと、介護事業、健康相談サービス、さらには近年増加している健康関連のアプリケーションやシステム開発を行うIT企業なども対象に含まれます」(河西弁護士)。
特徴的なのは医療法人への出資に関する案件だ。医療法人は法律上“非営利法人”と定められ、株式会社のように剰余金の配当ができないなど、本来的な意味でのM&Aという概念とはそぐわない側面がある。
「医療法人の事業承継のニーズは非常に高まっています。そのため、医療法上の非営利性に抵触しない適法なスキームで、出資や経営関与をサポートするのが、この分野における特殊かつ重要な業務となります」(河西弁護士)。
個人開業医や小規模なクリニックにおいて院長が高齢で後継者不在であるケースなどはその典型だ。また、いわゆる保険診療を行う一般の医療機関だけでなく、美容クリニックなどの自由診療分野、さらにはそれに関連する化粧品会社、サプリメントや健康食品を扱う企業など、広義のヘルスケア・ウェルネス領域におけるM&Aも活発化しているという。
河西弁護士のもう一つの強みは、過去の企業内出向経験にある。製薬会社と上場企業の本社への出向経験を持つ。
「この経験は、外部の弁護士としてアドバイスを行ううえで非常に役立っています。“企業内部での決裁がどのように承認されていくのか”“各事業部から法務部へどのように情報が集約され相談がなされているのか”といった企業の内部力学を肌感覚として理解できました」(河西弁護士)。
河西弁護士は、“事業部から相談を受けた法務担当者が、現場に対していかに回答すれば事業部側が動きやすくなるのか”といった実務的な視点を踏まえ、法務担当者をサポートするような回答やアドバイスを心がけているという。
また、河西弁護士はM&Aやコーポレート業務と並行して、訴訟・紛争案件も継続的に取り扱っている。
「実際の紛争を知っているからこそ、訴訟に発展した場合のリスクや出口を見据えた視点を持ち、平時の予防法務やM&Aのデューデリジェンスにおいても実践的なアドバイスを提供できるのです」(河西弁護士)。

河西 薫子 弁護士
ファンド実務の伴走者として長期的な信頼関係を構築
不動産投資・証券化およびファンド運営を専門とする渡邉弁護士は、金融機関、証券会社、不動産会社、アセットマネジメント会社等をクライアントとする案件を取り扱っている。
「近年では、不動産ファンドやプライベート・エクイティ・ファンドの組成および運営の支援業務、ならびに証券・金融規制法全般に関する助言業務に携わる機会が増加しています」(渡邉弁護士)。
具体的には、合同会社やTMK(特定目的会社)、REIT(不動産投資信託)、投資事業有限責任組合等を用いたファンド関連の案件が中心となる。こうしたスキームでは取引関係者が多岐にわたり、契約関係も複雑化する傾向にある。
「各契約間で齟齬が生じないよう細心の注意を払うことはもちろんですが、ファンドの運用期間は長期にわたるため、将来的にクライアントをはじめ関係者のご担当が変わられたとしても、契約書等のドキュメントに立ち返り、“安定してファンドを運営していけるか”という目線に立って業務を行っています」(渡邉弁護士)。
また、この分野は法令や自主規制機関の規則等が頻繁に改正される領域でもある。
「法改正情報などについても常にキャッチアップし、最新の法令等に即した的確なアドバイスができるよう心がけています」(渡邉弁護士)。
同分野は今後、暗号資産の取り扱いがファンド実務においても増加していくと予想される。不動産関連であっても、セキュリティ・トークン・オファリング(Security Token Offering:STO)や暗号資産関連商品の習熟度が求められる。実際、クライアントからも不動産STOへの取り組みや、ブロックチェーン技術等を用いた新サービスと金融規制法との兼ね合いの相談を受けているという。
「新技術の対応を含め、当事務所は固定的なチーム制を敷いていません。その都度、当該分野に精通した弁護士と柔軟にチームを組み知見を結集して対応しています」(渡邉弁護士)。
渡邉弁護士は、2020年に第1子、2024年に第2子を出産し、それぞれ産前産後休業・育児休業を取得して事務所に復職している。
「いずれの復職時も、パートナー弁護士と相談しながら業務量を調整できたこと、同僚・スタッフのサポートがあり復帰直後から案件に関与できたことで、いち早く業務の感覚を取り戻せました。子どもの送迎のために夕方5時過ぎには退所する必要がありますが、チームメンバーへ事前に進捗を報告・共有し、連携してスムーズに業務を進められています」(渡邉弁護士)。

渡邉 真澄 弁護士
栗林 康幸
弁護士
Yasuyuki Kuribayashi
大阪大学法学部卒業。92年弁護士登録。96年ペンシルバニア大学ロースクール卒業(LL.M.)。97年ニューヨーク州弁護士登録。クデール・ブラザーズ法律事務所ニューヨーク事務所および東京事務所等を経て現職。東京弁護士会所属。同事務所パートナー。
野本 新
弁護士
Arata Nomoto
一橋大学法学部卒業。97年弁護士登録、小中・外山・細谷法律事務所入所。02年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。02~03年Paul, Hastings, Janofsky & Walker LLP(New York)勤務。03年ニューヨーク州およびカリフォルニア州弁護士登録。04年ポールヘイスティングス法律事務所・外国法共同事業入所。16年~いちごグリーンインフラ投資法人監督役員。第一東京弁護士会所属。同事務所パートナー。
壷阪 明宏
弁護士
Akihiro Tsubosaka
京都大学法学部卒業。京都大学法科大学院修了。13年弁護士登録。13~17年中部電力株式会社勤務。18年シティユーワ法律事務所入所。18~20年京都大学大学院法学研究科非常勤講師。25年パートナー就任。東京弁護士会所属。同事務所パートナー。
河西 薫子
弁護士
Kaoruko Kasai
成蹊大学法学部卒業。一橋大学法科大学院修了。13年弁護士登録。14年シティユーワ法律事務所入所。25年パートナー就任。東京弁護士会所属。同事務所パートナー。
渡邉 真澄
弁護士
Masumi Watanabe
東京大学法学部卒業。14年弁護士登録。15年シティユーワ法律事務所入所。25年パートナー就任。第一東京弁護士会所属。同事務所パートナー。