長年培われた経験と紛争対応力で万全な競争法対応を
弁護士法人大江橋法律事務所の行動指針は、“総合力に裏付けられた専門性を追求すること”“個の力を融合し、独自の価値を創造すること”“クライアントを深く理解し、ともに社会に貢献すること”だ。弁護士はこの指針のもと、案件を通じて幅広い知見を培ったうえで専門性を高め、クライアント企業のビジネス全体を理解したうえで最適な解決策を提案する。この理念は、競争法関連業務を扱う“公正取引プラクティスグループ”にも活かされている。
同グループは10年ほど前に創設されたが、独禁法関連業務はそれ以前から事務所の中核を担っていた。創設者の石川正弁護士が、総合力を武器に競争法分野に取り組んで以来、同分野のトップランナーとして、大規模、高度、新規性の高い案件に対応している。
「独禁法案件は、重厚長大なメーカーのカルテルをイメージされがちですが、近年は非製造業の金融、卸売、保険、インフラなどの事業分野でカルテルの懸念が高まっています。公正取引委員会(以下「公取委」)もリソースが限られる中、コンプライアンスが未成熟な業種に着目し、浸透を促進しています。クライアントの多くも既に危機意識を持ち、社内研修のご依頼が増えています」と大阪事務所と東京事務所を兼務する長澤哲也弁護士は語る。
長澤弁護士によると、近年は事業者において消費者法のリスクへの意識が高まり、相談が増加しているという。「消費者法の専門性は近年高まっており、相談内容に応じて公正取引プラクティスグループの弁護士が対応しています。消費者法における“取引の公正さ”の考え方は独禁法と共通しており、消費者庁発足前は、景表法が独禁法の特別法的な存在で公取委が管轄していたという経緯もあります」(長澤弁護士)。
豊富な訴訟経験も同事務所の強みだ。「行政処分への対応が主となる競争法分野でも、紛争対応力は不可欠です。相談業務でも紛争を想定した具体的な助言をしています」(長澤弁護士)。
公取委・消費者庁OBの知見でアドバイスの精度をより高める
2023年、公正取引委員会前事務総長であり、消費者庁審議官も務めた小林渉氏が同事務所のアドバイザーに就任した。小林氏は毎週プラクティスグループのミーティングに参加し、弁護士に助言を行っている。
小林氏の関与について、大阪事務所の吉村幸祐弁護士は「公取委や消費者庁の内部事情や最新の動向、法律の条項に関する公取委側の解釈など、貴重な“温度感”についてアドバイスを受けています。特に、グリーン社会の実現に向けた取り組みや適正な価格転嫁の実現に向けた取り組みなど、近年注目されているテーマに関する知見は、クライアントにアドバイスを行う際に非常に有益です」と語る。
小林氏の知見はセミナーにも活かされている。2024年には公正取引プラクティスグループによる対面セミナーを東京、名古屋、大阪の3都市で開催し、公取委の最新の取り組みについて、ディスカッションを交えて解説した。
「対面形式でのセミナーは、参加者同士の情報交換やネットワーキングの場としても機能します。活発な質疑応答や意見交換を通じて、参加者の皆様に具体的な課題解決のヒントを提供することができたと感じています」(吉村弁護士)。
2拠点体制と緊密な連携で迅速・柔軟な調査対応
公正取引プラクティスグループは、東京事務所と大阪事務所の弁護士が緊密に連携し、一体で活動している。東京事務所の石井崇弁護士は、「専門性が高い案件への対応のため、日常的な情報交換と知見の共有を重視しています。電話、チャット、定例会議に加え、東京と大阪をつなぐランチミーティングで、公取委の発表情報、海外当局の情報、クライアントからの相談内容、各弁護士の専門知識など、多岐にわたる情報を共有し、最新の法規制や市場動向への対応力を高めています。ランチミーティングには小林氏にもご参加いただき、公取委の解釈や視点も共有しています」と説明する。
情報収集の内容は他社の事例や欧米を中心とした海外情報から、独禁法のトレンドをつかむための細かな情報にまで及ぶ。「競争法分野は変化が激しく、公取委からの情報発信も一元化されているとは言えません。海外情報も含め分担して収集・分析し、解説を加えて共有することで、効率的な情報活用とアドバイスの質の向上に努めています」(石井弁護士)。
大阪・東京それぞれに公正取引プラクティスグループの弁護士が常駐することも迅速な対応のために重要なポイントだという。「名古屋オフィスにも酒匂弁護士が定期的に通うなど、対応体制を整えています」(石井弁護士)。
企業結合事例集掲載案件も多数 高度かつ複雑な論点に知悉
同事務所は、公取委が毎年公表している企業結合事例集に掲載されるような競争上の懸念が高い複雑な案件にも豊富な対応実績を持つ。東京事務所で国内外の競争法案件に携わる菅野みずき弁護士は、「競争上の懸念がない形式的な届出案件よりも、実質的な審査が必要となる案件の比率が高いことが、当事務所の企業結合案件の特徴です」と語る。
寡占市場において競業関係にある企業同士のM&Aにより、市場シェアが高くなるケースが典型的で、問題解消措置の検討が必要になるような事案の相談も多い。「事例集に掲載されるような案件はクリアランスの難易度が高く、専門知識と経験、戦略的思考が求められます。この掲載実績は、当事務所の対応力を示すわかりやすいベンチマークだと思っています。企業結合の届出に際して、その難易度から当事務所をご選択いただくことは多いと感じます」(菅野弁護士)。
事例集には、水平関係または垂直関係があり、競争上の懸念が生じうる複雑な案件や、最近ではデジタル分野やグリーンといった新しい論点を含む案件が掲載される傾向にある。同事務所は独禁法のトップランナーとして複雑または新規性の高い案件に数多く対応してきた。「企業結合課長を務めた小林はもちろん、石井も公取委の企業結合課に所属していた経験があり、公取委内部の実務や傾向を踏まえたアドバイスができる体制を整えています」(菅野弁護士)。
行政の意思決定に服従しない新しい論点を探る現場力
東京事務所の小田勇一弁護士は、カルテル・談合、不公正な取引方法など公取委調査案件について、個人でも30件以上の豊富な対応実績を有している。「案件の規模・種類・実情に応じて調査対応を設計・実行しています。案件によっては公取委と是々非々で議論することもあります。そのなかで行政処分に至らせない、行政処分の範囲を縮小、裁判所で勝訴判決を得る等の成果を上げてきました」(小田弁護士)。
公取委の処分に訴訟を起こすのは非常にハードルが高い行為だ。行政の意思決定を覆すことは困難だが、同事務所は案件の内容を精査し、“適正でない”と判断した場合は真正面から対応する。「たとえば、新たなカテゴリの調査や処分の場合は、未知の論点でも所内で議論し、他の法分野で基準や参考になるものがないか、アイデアや切り口を出します。独禁法領域では未知でも、他の法分野では既知の論点もあります。事務所の専門性を結集し、戦うべき側面がある案件は最後まで戦い抜きます」(小田弁護士)。
この姿勢は豊富な調査対応の実績と経験があるからこそ持てるものだ。「調査対応の経験を積むことでスムーズな対応が可能になり、その余裕を新たな切り口の発見につなげられます」(小田弁護士)。
小田弁護士には実際に制度の詳細な点を突いて依頼者に有利な状況を形成した経験がある。また、若手弁護士とともに取り組むことで、ベテラン弁護士は新しいアイデアを模索し、若手弁護士はオーソドックスな対応に磨きをかけることができるという。「どの弁護士も最初から完璧ではありません。基礎の土台の上に新たな知識やアイデアが生まれるため、経験を積むことで新たな対応が可能な人材を育てていきたいと考えています」(小田弁護士)。
グローバルネットワークと戦略立案で国際的な競争法対応をサポート
グローバル化が加速する中、多くの日本企業は海外に進出し、現地に拠点等を構えている。同事務所は海外進出に関する法的アドバイスでその歩みを支援し、共に経験を積み重ねてきた。
「国際取引は国内取引とは異なるリスクが伴います。当事務所は競争法の分野でも現地の法律事務所と密接に連携し顧客のビジネスを支援しています」と語るのは大阪事務所と名古屋事務所を兼務する酒匂景範弁護士だ。酒匂弁護士によれば、海外事業所が現地当局の調査対象となる場合も多いという。「国際調査対応では、各国の法規制、当局の動向、商慣習などを理解したうえで統一的な戦略策定が重要ですが、我々は企業グループにとって最適な対応をアドバイスしサポートします。複数の当局から調査を受けるケースもありますが、統一的な戦略があれば一部を認めるか、強く争うかなどの判断がしやすくなります」(酒匂弁護士)。
企業の海外進出におけるコンプライアンスは浸透しているものの、海外当局からの調査は稀なため、対応の知見を持つ企業は少ないという。「我々はこれまで欧米だけでなく、アジア各国、中南米の当局の調査案件にも従事したことがあり、これらの案件を通じて得た経験から、競争法違反の未然防止も含めた国際的な競争法対応をサポートしたいと考えています」(酒匂弁護士)。
デジタル社会の新たなリスクを踏まえマーケティング活動にも並走
消費生活のデジタル化に伴い、Eコマース、電子マネー、プラットフォームビジネス等の景表法を含む消費者保護法分野のコンプライアンスへの関心が高まっている。コロナ禍を経てB to Cビジネスに参入する企業も増加した。東京事務所の古川昌平弁護士は、消費者庁出向、IT企業部分出向の経験を踏まえ、実情に沿ったアドバイスを提供している。
「消費者法の関連する案件は、以前は各弁護士が担当していました。しかし、消費者庁への出向、近年の相談の増加や専門性の高まりを受けて、集中的に案件に関与するなどした結果、消費者法案件を多く取り扱う弁護士が生まれました。消費者法は近接分野が多いため、論点を取りまとめたうえで適切にチームで取り組む必要があります。個人情報保護法、資金決済法、割賦販売法など、さまざまな論点に目配りし、各専門弁護士に協力を要請し議論することが重要です。この点は若手の頃に幅広い分野を経験したことが活きますね」(古川弁護士)。
古川弁護士をはじめとする消費者法に注力する弁護士には、調査対応やビジネスに寄り添ったコンプライアンス対応など、難易度が高く機動性が求められる案件が集まる。古川弁護士には行政処分に関する弁明機会付与後に処分を退けた実績もある。「本来行政処分の要件を満たさないような案件は、本分野でもその旨主張します」(古川弁護士)。
また、表示のコンプライアンスに関しては、迅速な対応が必要となり、企業担当者等と別案のアイデアを出し合うこともある。「問題となりうる表示案について、知恵を出し合い修正案を検討します。改めて調べる時間的余裕がないこともあり、専門的知見の蓄積が必要な業務です」(古川弁護士)。
長澤 哲也
弁護士
Tetsuya Nagasawa
94年東京大学法学部卒業。96年弁護士登録、大江橋法律事務所入所。01年University of Pennsylvania Law School卒業(LL.M.)。02年ニューヨーク州弁護士登録。神戸大学大学院法学研究科客員教授(独占禁止法実務)。大阪弁護士会所属。
石井 崇
弁護士
Takashi Ishii
94年東京大学法学部卒業。00年弁護士登録、西綜合法律事務所入所。07年弁護士登録抹消。07~12年公正取引委員会勤務(任期付公務員)。12年弁護士再登録、大江橋法律事務所入所。神戸大学大学院非常勤講師(独占禁止法実務)。第一東京弁護士会所属。
酒匂 景範
弁護士
Kagenori Sako
01年京都大学法学部卒業。02年弁護士登録、大江橋法律事務所入所。09年UC Berkeley School of Law卒業(LL.M.)。10年ニューヨーク州弁護士登録。京都大学大学院法学研究科非常勤講師(経済法事例演習)。神戸大学大学院法学研究科非常勤講師(独占禁止法実務)。大阪弁護士会所属。
小田 勇一
弁護士
Yuichi Oda
04年一橋大学法学部卒業。06年一橋大学法科大学院修了。07年弁護士登録、大江橋法律事務所入所。15年Washington University in St. Louis School of Law卒業(LL.M.)。15~16年Weil, Gotshal & Manges LLP(New York)Antitrust Section勤務。16年ニューヨーク州弁護士登録。東京弁護士会所属。
古川 昌平
弁護士
Shohei Furukawa
03年立命館大学法学部卒業。06年同志社大学法科大学院修了。07年弁護士登録、大江橋法律事務所入所。14~16年消費者庁勤務(任期付職員。14~15年消費者庁課徴金制度検討室政策企画専門官。15~16年消費者庁制度課・表示対策課政策企画専門官)。東京弁護士会所属。
吉村 幸祐
弁護士
Kosuke Yoshimura
05年京都大学法学部卒業。07年京都大学法科大学院修了。08年弁護士登録、大江橋法律事務所入所。17年University of Virginia, School of Law 卒業(LL.M.)。17~18年Weil, Gotshal & Manges LLP(New York)勤務。18年ニューヨーク州弁護士登録。大阪弁護士会所属。
菅野 みずき
弁護士
Mizuki Kanno
04年東京大学文学部卒業。10年東京大学法科大学院卒業。11年弁護士登録、ブレークモア法律事務所入所。14年University College London卒業(LL.M.)、アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。16年大江橋法律事務所入所。第二東京弁護士会所属。
著 者:古川昌平[著]
出版社:商事法務
価 格:3,630円(税込)
著 者:松本亮・竹田昌史・森村元[著]
出版社:税務経理協会
価 格:3,630円(税込)
著 者:長澤哲也[著]
出版社:有斐閣
価 格:6,050円(税込)